プロダクション・ノート

「エレキの若大将」の製作裏話をお楽しみください。

<若大将は上機嫌>

 ベンチャーズが来日した時に、ドン・ウィルソンからもらった時価30万円もするというサイン入りの名器”モズ・ライト”を愛用して、寺内タケシとエレキの腕を競っている。”僕のエレキは聞き手の興奮を演出するほうだから、とにかくゴキゲンなんです”と加山。

<万年大学生の弁>

僕が若大将でいつまでも学生ということには、いろいろ意見もあることでしょうが、気分はそんなに変わっていないし、まだ学生と同じですよ。

<こんどはアメラグのキャプテン>

青山の秩父宮ラグビー場で撮影された試合場面。日大アメリカンフットボール部の指導でグラウンドに出た京南大学の即製”アメラグ部員”たちはぶっつけ本番で撮影に挑んだという。

<幻のスタジオセッション>

クランクイン早々、東京タワー前のスタジオで、宣伝を兼ねた演奏会がマスコミに公開された。グレーのスラックスに赤いチョッキの加山が奏でるエレキの景気のいい音色に、ヤング・ビートの衣装の星由里子も参加したスタジオセッション。本編未使用だが予告編ではチラリと見ることができる。

<京南大生ら乱闘>

「23日新橋からす森にあるクラブレストラン”FアンドF”で、大学生と街の不良グループとの間に乱闘が行われた。
ことの起こりは、千代田公会堂で開催されたTNTエレキ大会「歌って踊って天下は太平」に出演した京南大学の学生バンド”ヤング・ビーツ”とこれに挑戦した不良グループバンド”ザ・シャークス”の果し合いである・・・」とは劇中使用の新聞記事の抜粋。。

雄一と石山、そして赤田エイサクの顔写真もバッチリ載った本格的なもの。
事件の背景には、青少年の間に爆発的人気のエレキブームがある、とも論評。
俳優仲間とバンド活動をしていた加山のエピソードや、脚本を執筆のため使用していた旅館の息子がエレキに熱中していたことからなどが、ストーリーに取り入れられ、本格的な音楽映画となっている。
そして、いよいよ「君といつまでも」が登場。渡辺プロ社長・渡辺晋に依頼された加山が即席で作ったラブ・ソングだが、最終的には350万枚を越すミリオンセラーに。
それまで人気映画シリーズだった若大将は「君といつまでも」のヒットで、加山雄三ブームという社会現象を生んだ。
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若大将トラックス

若熱狂的なブームの真っ只中、一九六五年の末に公開された本作は、当時のエレキ少年少女たちをシビレさせた、モニュメント・ムービー的作品。
弾厚作の才能も遺憾なく発揮された。

「ブラック・サンド・ビーチ」

エレキ合戦のシーンで演奏される同曲は、加山雄三&ランチャーズのエレキ・インスト(唄のない演奏のみの曲)の代表作。

コード進行はベンチャーズの”ウォーク・ドント・ラン”の逆パターンで、タイトルは”ダイヤモンド・ヘッド”に対抗して、ハワイにあるビーチの名から付けられたもの。本家ベンチャーズも絶賛の名曲である。

”ヴァイオレット・スカイ”とのカップリングでシングル盤も製作され、「君といつまでも/夜空の星」と同時発売された。

「ランニング・ドンキー」

エレキ合戦のシーンや、アメラグ部の練習シーン、そしてエンディングにまで使用される印象的なエレキ・インストのナンバー。
後に安井かずみの詩で”走れドンキー”となる。加山自身のポピュラー音楽への入口となった「カントリー&ウェスタン」を背景に作られた曲で、「ドンキー」はロバの意。

ちなみにブルージーンズのメンバーと共に、エレキを弾きまくる若大将が持っている白いモズライトは、この年の夏にベンチャーズが来日した際、メンバーのノーキー氏からプレゼントされたもの。
他にも当時のヤマハやテスコの名品など、ギター・マニア垂涎の
アイテムが多数登場する。作曲弾厚作
「夜空の星」

(作詞岩谷時子/作曲弾厚作)

加山雄三の作品には、モーツァルト作品の整理におけるケッヘル番号に倣って、Kナンバーがつけられている。
同曲はK−1、つまり中学二年の時に初めて作られたと云う作曲第一号。岩谷時子の詩と寺内タケシのアレンジを得て、加山ソング指折りのエレキ・ナンバーとなった。
本作の見どころは、エレキ・ファンの憧れの的、加山雄三と寺内タケシの競演シーンだ。蕎麦屋の出前持ちからバンドのメンバーになる役どころの寺内は、挿入曲の演奏やアレンジを担当し、実質的な音楽監督とも言える活躍ぶり。
”GO!GO!エレキ合戦”で雄一が歌い出す場面はシリーズ最高のカッコ良さ。レコードと異なる、テケテケをより強調したアレンジが秀逸。

脅かされる青大将(写真左)と、ピンチを「夜空の星」の歌で脱っした雄一(写真右)
「君といつまでも」

(作詞岩谷時子/作曲弾厚作)

加山の音楽的才能に一早く目を付けた渡辺プロ副社長・渡辺美佐(現会長)は作曲家・弾厚作と契約し、音楽出版権を獲得。
ヒットした”恋は紅いバラ”と同タイプの更に良い曲をとの注文から、ジャパニーズ・ポップスの永遠の名曲が誕生した。森岡賢一郎の編曲も素晴らしく、六五年十二月に発売されたシングルは、映画との相乗効果も手伝って大ヒット、加山雄三ブームが到来する。またレコード売り上げは三五〇万枚に達し、六六年度の日本レコード大賞・特別賞を受賞した。
間奏のセリフはレコーディングの際、加山のアドリブがそのまま採用されたと云う。
澄子とデュエットする映画バージョンはレコードとメロディが微妙に違う。

「君といつまでも」仏頂面の雄一(写真左)と、一緒に歌いだす澄子(写真右)
番外

全編エレキ・サウンドに溢れる本作品のタイトル曲は”夜空の星”と”ウィリアム・テル序曲”のメドレー、他にも”金髪のジェニー””日光和樂踊り””ドナウ河のさざ波”のエレキ・アレンジが寺内タケシとブルージーンズによって演奏されている。正に究極のエレキ映画である。

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10年01月01日新設