アルバム『若大将50年!』について

 日頃から親交のある仲間達と一緒に作ったこのアルバムを、僕はとても気に入っている。50年以上音楽活動をやってきた今、エルダー世代により楽しんでもらえる音楽を作りたいと思っていたところ、企画・プロデュースをお願いした石田 弘さんとサウンド・プロデューサーの武部聡志さんがタッグを組んで制作にあたってくれて、この素晴らしいアルバムが生れた。

 このアルバムのテーマ曲とも言うべき「座・ロンリーハーツ親父バンド」は、森山良子さん、谷村新司君、南こうせつ君、さだまさし君、THE ALFEEが“ザ・ヤンチャーズ”として参加してくれた僕の久しぶりの新曲だけど、これ以上豪華なメンバーは二度と集まらないだろう。さだまさし君が書いてくれた詞も素晴らしく、人生の応援歌と言えそうな感動的な曲になったと思う。40代以上の人達の心にすごく沁みるんじゃないかな。

 僕も弾 厚作として沢山の曲を書いてきたけど、その中からいくつかでも時代を超えて歌い継がれていったらいいな、との思いから、ヤンチャーズの面々に参加してもらい、それぞれ僕の歌とコラボしてもらったのが、僕の代表作5曲のニューバージョンだ。「夜空の星」は、THE ALFEEの三人が一緒に歌い演奏してくれた。この曲は、14歳の時に初めて作曲したピアノ曲だけど、後に岩谷時子さんの詞がついてヒットソングになった。そして今、高見沢君のアレンジであっと驚くハードロックに変身。時代を超えて歌が生きているようで感動するね。
「君といつまでも」は、さだまさし君と一緒に歌った。彼はヴァイオリンの腕も超一流。昔から僕のことをリスペクトしてくれていて、加山雄三がいなかったら僕は歌手にならなかったとまで言ってくれる。嬉しいよね。
「旅人よ」は、云わば加山版フォークソングで、今でもとても人気のある曲なんだけど、当代髄一のヴォーカリスト、森山良子さんとのコラボにより、こんなにも新しいテイストが生れるんだ。良子さんに感謝!
南こうせつくんとは、今回「白い砂の少女」を一緒に演れて楽しかった。彼の歌うフォークソングは、僕の歌とはまた違うジャンルなんだろうけど、不思議と共感出来る部分は多いんだよね。彼とのデュエットだからこそ、こんなラテン・タッチの曲に仕上がったのかもしれない。
鳥山雄司さんのアレンジとギターも素晴らしいね。
 そして谷村新司君とは、これまでに何曲か一緒にコンビを組んでるけど、いつも雄大で素晴らしい詞を書いてくれる。僕が古希を迎えた時の「星の旅人」も良かったな。でも何といっても二人の最高傑作は「サライ」だろう。
最近の僕の曲の中では、最も多くの方々に親しんでいただいている曲だと思うけど、今回、18年振りに二人で録音したら、武部さんの素晴らしいアレンジと相俟って、見事にスケールの大きい「サライ」が誕生した。

 僕は日本の歌のカバーはあまりやってこなかったけど、今、自分がこの年齢になってきたからか、自分が歌い始めたころの昭和の時代には沢山の名曲があるとつくづく思う。これらの曲も懐メロとしてやがて消えていくのではなく、日本のスタンダード・ナンバーとして残っていくべきだ思うので、次のブロックでは、そんな昭和の名曲の中から、皆もう天国へ逝ってしまったけど、僕と所縁のある方々の歌を歌わせてもらった。
「知床旅情」を自作自演した森繁久彌さんは、俳優兼シンガーソングライターの第1号かもしれない。だったら僕は俳優兼シンガーソングライターの第2号かな? 森繁先生は芸能界ではもちろん、人生の大先輩。船がお好きで海の友達でもあった。教えられたこともいっぱいあった。敬愛する森繁さんへの想いを込めてこの歌を歌ったんだ。
 
次に忘れられない石原裕次郎さんも、海つながりあるいはスキーつながりになるかな。同郷であり、学生時代の先輩でもあり、いろいろ楽しい話をしてくれた。その裕次郎さんの歌の中で一番好きなのが「夜霧よ今夜もありがとう」。浜口庫之助さんが書かれたとてもいい曲だよね。とても気持ちよく歌えた。
 
昭和が生んだ最高の歌手は、何といっても美空ひばりさんだろう。僕よりずっと早くから芸能界にいた人だけど、実は同い年なんだよね。たくさん名曲があるけど、小椋 佳さんが作った「愛燦燦」は特に好きな一曲だ。この曲も聡明で素晴らしい人生歌だと思う。
 
坂本九ちゃんとも親しい間柄だった。女房同士も同じ東宝の女優で仲が良かったからね。六八九トリオによる「上を向いて歩こう」は世界中で一番知られている日本最高のスタンダードソングだろう。ちなみに僕のデビュー曲「夜の太陽」は中村八大さんの作曲だったんだ。
 
そしてザ・ワイルドワンズの「想い出の渚」。これはもう身内を誉めることになっちゃうけど、やっぱりずっと歌い継がれてゆくべき名曲だよね。加瀬もいい曲を書く奴だったなぁ。まだ若いのに惜しい人を亡くしたもんだ・・・あれ? 彼はまだ生きてるか! なんてこれは悪い冗談。
彼の作曲の才能は素晴らしいし、50数年来の長い友達でもある。
加瀬、これからもよろしく!

 今回、弾 厚作は2曲の新曲を書いた。一つは冒頭の「座・ロンリーハーツ親父バンド」。そして、もう一つはこのラブバラード「ハーモニー」。
これは「君といつまでも」の現代版だと作詞してくれたさだ君は言っている。ずっと傍で僕を支えてきてくれた女房への感謝の気持ちを込めて、このアルバムではセリフ入りで歌っている。

 最後にボーナストラックとして収められているのは、文字通りの親父バンド、僕が大学生時代に組んだバンド、カントリー・クロップス。エルヴィス・プレスリーやハンク・ウィリアムスなど色々な曲を歌っていたけど、一番想い出に残っているのが、レイ・プライスが歌っていたカントリー&ウェスタンの名曲「My Shoes Keep Walking Back To You」。米軍キャンプでこれを演ったらものすごくウケた記憶がある。最も古い音楽仲間だが、今でも定期的に集まって演奏している。
今回も僕の自宅のスタジオで楽しみながらレコーディングした。カントリーはクラシックと共に僕の音楽の原点なんだ。

 50年以上、曲を作り、歌い続けてきたけど、僕が今やるべきことは、良い音楽をどう残して、次の世代に繋げていくかだと思っている。それがこのアルバムで出来たと思うので、携ってくれたすべての人に感謝、感謝!
声の出る限りまだまだ歌い続けてゆくつもりなので、皆さん、これからも70代の若大将をどうかよろしく!

1.座・ロンリーハーツ親父バンド

  (作詞:さだまさし 作曲:弾 厚作 編曲:武部聡志)

  加山雄三とザ・ヤンチャーズ
 (森山良子、谷村新司、南こうせつ、さだまさし、THE ALFEE)

2.夜空の星

  (作詞:岩谷時子 作曲:弾 厚作 編曲:高見沢俊彦)

  with THE ALFEE(Vo,Gt,etc.)

3.君といつまでも

  (作詞:岩谷時子 作曲:弾 厚作 編曲:武部聡志)

  with さだまさし(Vo,Vln)

4.旅人よ

  (作詞:岩谷時子 作曲:弾 厚作 編曲:鳥山雄司)

  with 森山良子(Vo)

5.白い砂の少女

  (作詞:岩谷時子 作曲:弾 厚作 編曲:鳥山雄司)

  with 南こうせつ(Vo)

6.サライ〜若大将50年!ver.〜

  (代表作詞:谷村新司 作曲:弾 厚作 編曲:武部聡志)

  with 谷村新司(Vo)

7.知床旅情

  (作詞・作曲:森繁久彌 編曲:鳥山雄司)

8.夜霧よ今夜も有難う

  (作詞・作曲:浜口庫之助 編曲:鳥山雄司)

9.愛燦燦

  (作詞・作曲:小椋 佳 編曲:武部聡志)

10.上を向いて歩こう

  (作詞:永 六輔 作曲:中村八大 編曲:鳥山雄司)

11.想い出の渚

  (作詞:鳥塚繁樹 作曲:加瀬邦彦 編曲:武部聡志/鳥山雄司)

12.ハーモニー〜セリフ入りver.〜

  (作詞:さだまさし 作曲:弾 厚作 編曲:武部聡志)

〈ボーナストラック〉

    My Shoes Keep Walking Back to You (Lee Ross-Bob Wills)

   カントリー・クロップス(リード・ヴォーカル:加山雄三)ル

10年12月30日新設