「こころの玉手箱」 音楽家 加瀬邦彦
かせ・くにひこ 1941年東京生まれ 慶大卒

66年ザ・ワイルドワンズ結成、「想い出の渚」でデビュー。71年の解散後は作曲家、沢田研二のプロデューサーとして「危険なふたり」「TOKIO」あどヒットを連発。81年ワイルドワンズ再結成。
現在は加山雄三と組んで全国公演中。

第5日 自宅の屋上菜園  毎朝30分の気功、元気の源
 自宅の屋上には50メートルプールならぬ5メートルプールがあったのだが、昨年一念発起して菜園にした。小さな池やジャグジーを造り、ビールを冷やす冷蔵庫も用意した。写真はちょうどジャグジーから見下ろしたアングルだ。自治体からは屋上緑化の補助金が出た。僕の秘密の花園である。
 自称「加瀬菜園」。今年の夏は4種類のトマトを育てたし、今はバジルやミント、レモングラスなどのハーブ類を植えている。ヤマモモやサルナシなど実のなる木もあるし、九条ネギも育てている。どれも結構おいしくいただける。
 最近は休日になると、小さな釣り竿を持って、この屋上の池に釣り糸を垂れるのが楽しみだ。えさはごはん粒で、狙いは8匹の金魚たち。飼い始めたころは小さな金魚らしい金魚だったが、最近はかなりの大きさに育っているから、相当な引きが来て、竿先もぐっと曲がる。何匹か釣れたら、また池に戻すのである。
 実は小学生時代にも同じようなことをやっていた。我が家の庭に穴を堀り、大きな火鉢を埋め込んで、水草と金魚を入れた。休日になると朝早く起きて、ごはん粒で金魚を釣るのが趣味だった。中学時代は学校から帰ると多摩川の丸子橋下へ出かけて和船を借り、ハヤなどを釣っていた。

 今の家は東京都港区の高台にあり、3階建ての屋上だから、見晴らしだけはなかなかのものだ。東京タワーや六本木ヒルズをはじめ、新橋や品川、恵比寿などまで一望できる。背の高いススキを植えたのは、ジャグジーで月見をしながら一杯としゃれ込むためだ。
宇宙を見ている感じで
気持ちが大きくなるし、何とも心安らぐひとときである。
 15年前に食道がんの手術をしたことは連載の1回目に書いた。抗がん剤を使わなかったから、自然治癒力を高めようと気功の呼吸法を学び、毎朝この屋上で30分ほど実践している。
コンサートや作曲、レコーディングと忙しい毎日だが、この加瀬菜園がある限り、いつまでも元気でやっていけそうな気がする。

09年10月30日新設
10年11月04日更新