「スペシャルインタビュー」 (デジタルTVガイド 2011年2月号) |
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Special Interview | ||||
加山雄三 | ||||
KAYAMA YUZO |
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好きだからこそ音楽は 趣味でやっているつもり |
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好きこそものの上手なれ。何かに挑戦すること、継続し続けることへの情熱は、ほかの何にも増して”それが好きだから”という思いから生まれる。今年芸能生活50周年を迎えた加山雄三も、若々しい情熱が燃えるような明るいオーラを放ち続けてきた。映画やテレビ、音楽、絵画・・・さまざまな分野に才能を発揮している芸能生活はまず俳優としてテイクオフ。 | |||
「父(=上原謙)と同じ俳優として世に出たんだけど、最初はイヤだったね。本当は船に関係した仕事に就きたかったんだ。いまで言う就活を始めたころ親友に”学生時代お前がやってたのは音楽とスポーツばかりじゃないか。サラリーマンは無理。親父の跡継いでひと儲けして好きな船作ればいいじゃないか”と言われてね(笑)。もし、黒澤明さんに会っていなかったらとっくに辞めていたと思うよ」。 | |||
黒澤作品には「椿三十郎」(’62年)と「赤ひげ」(’65年)に出演している。世界的巨匠との出会いが転機となり、演技することの面白さ、奥の深さに目覚めた。それ以降、俳優として”若大将”とは異なるさまざまな役柄に挑み続けている。では、音楽では? | |||
「音楽で転機というのはほとんど無いね。ある意味、好き勝手やってるから(笑)。いまだに音楽は趣味でやってるつもり。”音楽で飯を食っていこうと思うと音楽に対する愛情がなくなるよ”と言われたことがあってね。音楽はずっと好きでいいんだ。だから作りたくないときは、無理して曲は作らない(笑)。もちろん、いまでも音楽はめっちゃ好きだよ。新しい音楽が出てきたら片っ端から聴いているんだ。最近ではゆずや絢香、幸田来未とかが面白いね。よく聴いているよ」 | |||
大好きな音楽だからこそ情熱を失わないようにしたい。いつも新鮮な思いで音に向かい曲を作り、奏でてきた。なるほど。加山雄三の音楽がいつもみずみずしいのもうなずける。 | |||
遊び心いっぱいに楽しむ 周りに音楽好きが集結 |
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文字通り”音”を”樂”しむ。加山の本格的音楽人生は高校1年でカントリー・ミュージックとギターに出会ったことから始まった。その数年後、エルビス・プレスリーが登場。 | |||
「エルビスの登場は大きかったね。一生懸命彼の歌を覚えることで、歌を歌うということを覚えた。それまでは何となくやってたバンドもエルビスを聴いてから、ちゃんとやっていこう、という気持ちになったんだ。それが後のザ・ランチャーズの始まり」。 | |||
エルビスをはじめ洋楽のレコードを買い漁り、FENで新しい音楽をチェック。覚えた曲を自宅ガレージで演奏する。音楽をむさぼるように楽しむ日々のなか、父が入手した2台の録音機を使って多重録音を始めた。これは日本で初めてのこと。現在の宅録派やガレージバンドを何十年も前に先取りしていた。 | |||
「片方のレコーダーに録音したものを流してもう1台で録る・・・それを繰り返すと多重録音ができる。ガレージのなかは風呂場みたいに音が響くから、それを利用してエコーを作ることも。当時はそんな情報や知識なんて入って来ないから何もかもが試行錯誤。後からアメリカでも同じことをやっていたと知って”何だ、俺たちもやってたよ!”って(笑)」。 | |||
新しいギターやハイエンドのシンセサイザー、コンピューターによる打ち込みにもいち早くチャレンジ。旺盛な好奇心と遊び心いっぱいに音楽を楽しんできた。そんな加山の周りに音楽好きが集まるのは必然のことだろう。 | |||
「ザ・ワイルドワンズの加瀬邦彦は後輩というより兄弟みたいな感じ(笑)。ブレッド&バターも茅ヶ崎出身で、彼らが俺のいとこと開いたカフェにはミュージシャンがよく集まっていたし(若き日のユーミンもその一人)。桑田佳祐は俺の最高の茅ヶ崎の後輩だね(笑)。中村八大さんや平尾昌晃とか作曲家も多い。茅ヶ崎とか湘南は地場がいいのかな(笑)」。 | |||
聴く人に希望を与える力の |
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今回、番組を通じてTUBE、キマグレンとの共演が実現した。同じ湘南出身で音楽を愛するもの同士ぼセッションの手応えは? |
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「世代を超えて共演できる。それが音楽のいいところだね!年齢や国境さえも超えられるところが俺の音楽をこよなく愛するゆえん。73歳と若いのがコラボって何かやってる、というのはなかなかないと思うよ」。 |
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ベンチャーズや「エレキの若大将」にシビれていた同世代、ベルボトムをはいてフォークを口ずさんでいた団塊の世代、ホコ天にイカれていたバンドブーム世代・・・若い世代まで幅広くパワーを与えてくれそうだ。 |
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「もう一度押入れからギター出してアンプにつないでみたら?音出るよ、と(笑)。番組では音楽を通して希望や明るいものを感じてもらえたら。人間って考えた通りになっていくもの。ポジティブな考えをする人間のところにはポジティブな人間が集まって、ポジティブなことが起きる。観ている人がひとりでもそういう方向に向かってくれたらいいね。音楽はそういう力を持っているし、音楽って気持ちいいな、と思うだけでもいいんだ」。 |
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日本武道館を含むアリーナツアーを敢行し記念アルバム「若大将50年!」をリリースするなど、2010年は充実した50周年アニバーサリーイヤーを送った。けれど、新たな挑戦はまだまだ続く。 |
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「新曲も書きたくなったら書きますよ。女性とコラボしてみるのも面白いね。何より若い人の曲を歌ってみたいんだ。中高年の人たちに”加山雄三が歌えるんだったら俺たちにも歌える”と思ってほしい。ある年齢になったら音楽なんてどうでもいい、なんていうんじゃなくてずっと聴き続けてほしいからね!」。 |
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音楽という大海原を行く加山雄三の航海は永遠なり。 |
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KAYAMAYUZO ’37・4・11生まれ。神奈川県出身。映画「男対 |
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11年01月01日新設
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