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『知的障害と裁き』
レビュー集

(1)高谷清読書メモ45(2014年5月)



(1) 高谷清読書メモ45 (2014年5月)

丸山啓史、河合隆平、品川文雄「発達保障ってなに?」全障研出版部 2012
黒澤和子編「黒沢明が選んだ100本の映画」文春新書 2014
都築政昭「黒澤明と『七人の侍』」朝日文庫 2006
佐藤幹夫「ルポ 高齢者ケア-都市の戦略、地方の再生」ちくま新書 2014
精神薄弱児育成会編集、復刻版「手をつなぐ親たち」国土社 2012
小出裕章「100年後に人々へ」集英社新書 2014
平和・民主・革新の日本をめざす滋賀の会「いまこそ平和と自由を守れ憲法」2014
                                     
丸山啓史、河合隆平、品川文雄「発達保障ってなに?」全障研出版部 2012
 全障研が「発達保障」の基本的な考え方を、わかりやすく、本質をしっかり把握できるもの」として企画したと本書「おわりに」で書いてある。本書は三部から成り、丸山が「1.発達保障とはどういうことか?」を叙述。河合は「2.発達保障はどのようにして生まれたか?」と経過を述べている。品川は「3.障害児学級の実践から」で、自分がとりくんだ教育について述べている。ここでは、1を重点的に紹介する。
 「発達」は、「質的に新しい能力獲得していくときに使う」と定義するが、それだけでなく、「ヨコへの発達」がある。つまり、「同じことが違う場面や相手にできる」ことは「ヨコへの発達」であり、「無限にあり得る」。さらに「能力の向上や拡大だけでなく」、「人格的な豊かさ(人間の内面)」、つまり「人格的な『発達』」も叙述している。
 そして「能力の獲得と人格の形成が、まったく別々に進むわけではありません」と記述。
 なお2(河合)と3(品川)については説明省略。84ページ、500円+税

 この冊子では、上記に要約したように、全障研の「発達や発達保障」の考え方を正確に紹介している。そういうことでは、まったく問題はないが、この発達の考え方がどうであるかということでは、検討が必要と思われることも含まれているので、わたしの考えを「添付」しておきたいと思います。関心のある方は、読んでください。

黒澤和子編「黒沢明が選んだ100本の映画」文春新書 2014
 一本の映画を左右見開き2ページで紹介。左上に映画のスチール写真1枚があるが、この写真がいい、この写真を見ているだけで、その映画の情景、雰囲気が浮かぶ。映画の説明を黒澤明の娘の和子が、黒澤明の言葉を入れて語る。そして簡単にストーリが書かれている。たのしい本である。映画ファンだけでなく、読めばたのしいと思う。
228ページ。780円+税。

都築政昭「黒澤明と『七人の侍』」朝日文庫 2006
 「七人の侍」の撮影現場、黒澤の気持ち、飽くことなき探求とスタッフへの叱咤激励。よい映画を創りたいという執念である。著者は、この映画の素晴らしさを薀蓄(うんちく)を傾けて語っている。著者の思い入れが伝わってくる。写真も多い。「七人の侍」はほんとうに素晴らしい映画である。上映されたのは、1954(昭和29年)。私は、高校2年生であった。国語の先生に勧められ一人で観にいった。映画館は満員で迫力ある大音声で、圧倒されたのを覚えている。友人たちで議論した。ひとりが、にせ侍の菊千代(三船敏郎)の存在があるから映画が深まっていると言ったのを覚えている。その頃、本を競うように読み、クラス雑誌をだしていた。さらに文藝部をつくり、それぞれが、小説、詩、随筆、評論を書いていた(自分は随筆が主で、ときに文芸評論を書いていた)。卒業してからもそのようなことをしていた。305ページ、600円+税
 2年前、ある映画会社が「糸賀一雄」の映画をつくる計画があり、私にもシナリオをということで書いたが、映画会社が立ちゆかなくなったようで、映画化は中止になり、残念であった。

佐藤幹夫「ルポ 高齢者ケア-都市の戦略、地方の再生」ちくま新書 2014
 前回も佐藤幹夫の本を2冊紹介したが、最新作である。高齢者の比率が増え、その対応をしておかなければ、混乱が起こるというより、経済的・身体的・家族的に恵まれない人が、生きていくのが困難な状態におかれてしまう、という危機意識が著者にある。都市と地方では問題は異なるが、切迫している状態は同じである。著者は先取的なとりくみをしている各地の自治体を訪ね、ルポしている。今日の日本の問題、課題を明らかにし、対策を提示しようとする著者の問題意識と、労を厭わず取材する意気込みと努力に見習いたいと思う。254ページ、800円+税

精神薄弱児育成会編集 「復刻版・手をつなぐ親たち」国土社 2012
 アメリカのパール・バック(『大地』などの小説で有名、ノーベル文学賞受賞)の娘が知的障害で、「母よなげくなかれ」を出版したのに励まされ、昭和27年に発行された本の復刻版である。22名の母親や父親が書いている。第二次世界大戦中や戦後のきびしい時代に障害のある子を育てている姿、気持ちである。子どもに対する愛情と、その子が現実におかれている姿、どうしたらよいか困惑する父母。まざまな辛いこと、とくに障害児を理解してもらえない悲しみ、つらさ、苦労が身に沁みる。222ページ。1000円+税

小出裕章「100年後に人々へ」集英社新書 2014
 自分がとりくんできた原子力に関する仕事について、忸怩たる思いを語り、人間・人間社会はどうあらねばならないかを真摯に提言している。読みやすく、原子力発電の危険性、問題を分からせてくれる。制御できない原子力を乱用し、生物や地球を壊す危機感と自分の気持ちを吐露している。189ページ、700円+税

平和・民主・革新の日本をめざす滋賀の会「いまこそ平和と自由を守れ憲法-湖の国から」  
略称「革新の会しが」が発行した小冊子である。題名通り「憲法」を守るために書かれた滋賀県各界15名の手記と45名の短文・俳句・短歌である。それぞれが思いを込めて書いている。執筆者は、今関信子(児童文学作家)、久保田暁一(日本ペンクラブ名誉会員)、武村正義(元内閣官房長官・滋賀県知事)、成瀬龍夫(元滋賀大学学長)、橋本健(元びわ町長)、平尾通雄(米原市長)、藤澤直広(日野町長)などである。「自民党憲法改正草案批判」を弁護士の近藤公人が書いている。109ページ、頒価500円。
発行所:「革新の会しが」〒520-0044 大津市京町三丁目4-12 アーバン21、5F
    滋賀第一法律事務所気付 革新の会しが。 TEL&FAX  077‐515‐7100。

 なお私の書いた文書を添付しておきます。憲法自体にかかわる文が多いだろうと思ったので、子ども時代のことを、戦争があってはいけない、憲法を変えてはいけないとの思いで書きました。


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