勝新太郎フィルム観戦録(2) 6・22〜 6・28 119. 1964.08.08 悪名太鼓 大映京都 監督:森一生 原作:今東光 脚本:藤本義一 撮影:今井ひろし 間もなく祭りが来るというとき、ムラの河内太鼓を九州のある親分衆のところに貸し出す約束をした清次。当然、金がらみのうまい話に乗ったものだった。止める朝吉を振り切って九州へ行く清次。ところが清次の母より「清次殺される」という電報が朝吉の元に届く。朝吉が九州へ飛ぶと、殺されたのはある組の親分で、同名だが、清次の戸籍を売買で無断入手し、清次に成りすましていたことが判明する。その黒幕である元締めは密輸入にも手を染めていて、肩棒を担がされるのを拒んだために、偽清次は殺され、組の若い衆は元締めのところにいってしまう。一人残ったおかみさん(朝丘雪路)、当然ながら身の危険が迫っている。朝吉親分はここでももてる。一方、太鼓を返してほしい清次は、悪いのは偽清次だと騙され、元締めの悪巧みに手を貸すことになる。やって来た朝吉といったんは敵対関係に。そのあとの解決までドンパチはいつもの展開。しかし何しろ脚本が藤本儀一。戸籍の売買への着眼、密貿易の組織の仕組み。さすがにきっちりとこしらえています。朝丘雪路さんも美しかった。(07・6・22) 137. 1966.05.03 座頭市の歌が聞える 大映京都 監督:田中徳三 原作:子母澤寛 脚色:高宮肇 撮影:宮川一夫 美術:西岡善信 作品冒頭、浪人黒部玄八郎(天知茂)と市がすれ違う。黒部の激しい殺気を感じ、市は立ち止まるが受けない。次のカット、黒部はすれ違いざまにヤクザ者の為吉を一太刀で切る。瀕死の傷を負った為吉の金を、追いかけてきたヤクザの集団が盗ろうとしているところへ行き合う市。市は連中を切って捨て、金を懐にする。(・・・とこの作品も殺陣のシーンから始まる)。舞台は転じて、道中、琵琶法師に道を尋ねる市。この琵琶法師が、いろいろと謎かけのようなことを市に言うが、言った挙句、腹が空いたと請われ、だんごをご馳走することになる。これから行くのはヤクザがいない村だ、という法師の言葉に誘われるように市もその宿場へ向かう。ところがそこは、死んだ為吉の母親おかん婆さんと、息子の太一の暮す村。しかもついこの間やって来た板鼻権造一家が、ここは自分たちの縄張りだ、ここで商売したければ金を出せ、と脅しにかけ、おかん婆さんの茶店からも脅し取ろうとしている。宿場には一軒の女郎屋があり、あんま商売に出た市は、女郎お蝶(小川真由美)に呼び止められる。そのお蝶、黒部玄八郎の女房で、身請けしたい黒部は50両のために板鼻の一家に腕を売りに行く。再び宿屋で琵琶法師に出会った市は、力に頼る事の愚かさを諭され、太一の前で無闇に力を誇示することの愚を指摘されるが、事態は市の望まぬ方へと進んでいく。そして黒部玄八郎との勝負へ。さてタイトルがどうして「座頭市の歌が聞こえる」なのだろうか。・・・何かを見落としたかもしれない。(07・6・26) 140. 1966.08.13 座頭市海を渡る 大映京都 監督:池広一夫 原作:子母澤寛 脚本:進藤兼人 撮影:武田千吉郎 四国へ渡り、金毘羅さんをはじめとする八八ヶ所を巡礼に来た市。最初のシーンは船の中。握り飯をほおばる市。船が大揺れした隙に、他人の財布に手を出したすりが現われ、他の客とひと悶着になる。見つかって開き直ったそのすりの腕を、いきなり叩き切った市。その市を人影から伺うわけありのヤクザ者。しかし当の市は、お参りに来た金毘羅で「これまで望んで人を切ったことは一度もない、しかし、斬ったことは間違いない。だから体中が血にまみれている。生きているときはどんな悪党でも、死ねば仏。なんとか成仏できるように」と念仏をあげ、もうこれ以上人斬りせずに済むように、と願いをする。しかしそうは問屋が卸さなかった。突然栄五郎という若い男に斬りつけられ、逆に斬ってしまう。栄五郎の馬に着いて来たところ、家には妹のお吉(安田道代)がいて、兄が市に殺されたと知ったとたん、市に斬り付ける。よけない市。お吉の手当てを受けることなる。村には藤八という野盗の親分がいて、お吉はその嫁になるよう命じられる。藤八は、村を自分の縄張りにすると名主に宣言する。皆で藤八から村を守ろうと、名主他、村の百姓連中に請うお吉。しかし百姓はずるい。結局市だけが藤八と闘うことになる。(07・6・26) 179. 1972.04.22 新兵隊やくざ 火線 勝プロ 監督:増村保造 原作:有馬頼義 脚本:増村保造 撮影:小林節生 八路軍のスパイだと疑われた村長の息子。その子どもの命を救った大宮一等兵と有田上等兵(田村高広)は、新に配属になった部隊の部隊長・神永軍曹(宍戸錠)と、一気に敵対関係に入ってしまう。神永軍曹は村長の娘、芳蘭(安田道代)もスパイであると言い募り、暴行しようとする。それを阻止した大宮一等兵。小隊長(大瀬康一)より、真偽を確かめるために芳蘭を口説いて自分の「女」にするよう命じられる。芳蘭も大宮に好意をもち、八路軍が部隊を襲撃する日時を教えてしまう。そのお陰で部隊を救う大宮。しかし2回目の攻撃がはじまり、そのさなか、どさくさにまぎれ、神永軍曹は小隊長を銃殺し、逃亡する。大宮も逃亡兵となり、有田上等兵を探し出そうとするが、脱走兵とした逮捕されてしまう。そこには有田もおり、二人の命を助けることと引き換えに、芳蘭は神永の「女」になることを承諾する。目の前で暴行される芳蘭。この辺の展開は増村らしく、非情でニヒリスティック。勝プロの作品で、日活のスターだった宍戸錠をゲストに迎えている。ちなみに火線とは最前線のこと。(07・6・28) 148. 1967.08.12 座頭市牢破り 勝プロ=大映(京都撮影所) 監督:山本薩夫 原作:子母澤寛 脚本:中島丈博、松本孝二、猿若清方 撮影:宮川一夫 勝プロダクション、第一作目作品。 一宿一飯の恩義から富蔵親分の使いに立った市は、出先の親分、朝五郎(三国錬太郎)の気っぷ、任侠への思いを知り、ヤクザの中のヤクザと気に入る。朝五郎を追い落す機会を伺っていた富蔵は、それが気に入らない。しかも、市が頼まれもしないのにインチキ賭博の人質にとられていた百姓を助け出したことから、頭にきた富蔵は子分の貞松や仁三郎らに市を襲わせる。一方、村には百姓に農業を教える大原秋穂おり、大原に刀を持つことの虚しさを教えられる。しか結局は、再び市を襲わせた富蔵を切り、凶状持ちとして諸国へ出る。市は按摩一党の仲間にはいるが(藤岡琢也ほか、芸達者が按摩の生態を面白く見せてくれる)、市は結局は終われる身に。しかも、男の中の男と惚れこんだ朝五郎親分が、市が去ったあと十手を預かる身となって、百姓衆から搾り取っている、しかも仁三郎の恋人志乃が奉行のめかけにされたと知らされる。信用しない市。しかし村に戻る途中、ある女郎屋に入った市。志乃が女郎として客をとっていることを知る。一方大原は、百姓を唆し、お上に謀反を企てた疑いがある、と謀られ、捕まってしまう。朝五郎に真偽を正しに行く市。大原を助けようとする百姓衆。(07・6・28) |