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 ボロ酔い編集雑記

[8月8日]
【ボロ酔い日記3】―飢餓陣営39号編集後記

八月四日(日)
●思った以上にページがかさんでいる。発行人の原稿を落とし、いくらかでも削減の足しになれば、とかんがえたが、代わりにボロ酔い日記で途中途中を埋めているから、おんなじだった。相変わらず計画性なし。●インターネット隆盛のこの時代、小部数で手づくりの雑誌を作ることに、いったい、どんな意味があるのか、と思う人がいるかもしれない。たぶん大文字の(というか)、声を大にしていわなければならない「意味」は、ない。昔からあまりなかった。●雑誌作りが面白い、全部の工程を、時間を見つけてこつこつと進めていく作業が楽しい。この、楽しいということだけが、変らずに続けている理由だと思う。●翌日の予定を考え、この日はさすがに九時前には作業を終える。

八月五日(月)
●千葉県の某特別支援学校で、講演。「加害者になる障害者」というテーマ。一応レジュメは用意するが、その通り進行することは滅多にない。脱線と思い付きを繰り返す。だからパワポもつくらない。一時間半ほど喋らせてもらったが、学校も、卒後支援の問題にだいぶ関心をもち始めたという手ごたえがある。●まっすぐ帰って仕事をしようかと思ったが、さすがにへばった。オクサン、昨日より草津へ二泊三日のご旅行。そのため、当方、帰って食事を作らなくてはならず、それが面倒で船橋駅前の鮨屋に引っかかる。あまり飲めなかった。

八月六日(火)
●今号は、人間と発達を考える会やふるさとの会での講演・講座を中心にテーマ構成をした。申し述べたいことは端的にひとつ。既成の福祉にたいして、強く発想の転換を求めていることだ。いくら新しい制度を導入しても、福祉が旧態依然の発想と支援スタイルを続ける限り、収容福祉≠フ危険はなくならない。本当に「地域生活の定着」を支援しようとするのであれば、援助論を鍛え直す必要があるのではないか。僭越ながら、それが今号最大のメッセージ。●最後にお詫びを。前号刊行以来一年という時間が過ぎてしまいました。ほんとうに申し訳ありません。赤字がかさんで身動きがつかなくなったら店じまいだと思っていますが、それまでは細々とでもつづけるつもりです。二年三年と出さずにいて、そのままずるずる終刊、ということだけはしませんので、よろしくお願いします。●
次は、がんばって半年後の刊行を目指します。連載ご執筆の方は、一二月末までにお送りください。今号の発送作業が終了したあたりから、原稿執筆の依頼を発信していくつもりです。●振込みにてご送金の際、振込用紙の領収書を保管しておいてください。住所変更の際はお知らせください。ぜひとも、予約購読をして応援していただけると、心強い限りです。●昨年に続く猛暑の夏の編集作業、なかなかナイスでした。ご協力いただいたすべての皆さんに、お礼を申します。今号も菊地信義さんの手になる表紙をお送りすることができました。ではまた次号で。(幹)



(2013・8・2)
 月日のたつのが本当に早い。この前、もう7月かと思っていたら、8月になってしまった。7月27日締め切りだった『ドキュメント東金事件』(520枚)を脱稿し、そこまで死に物狂いで執筆作業を続けていたので、7月はわけわからん状態だった。(本のほうは、なんとか10月に岩波書店より刊行の運びとなった)。
 そんなわけで、目下、飢餓陣営編集作業の最終コーナー。枚数を数えてみると、ページがかさんでしまっている。相変わらず計画性なし。自分の原稿を全て落とし、下記のラインアップで発行したいと思う。


飢餓陣営 NO39・2013年夏号 
 予価 1200円+税(予約購読者は1000円のまま)

【追悼・監督若松孝二
・宗近真一郎■若松孝二を奪還するためのエスキス
・高岡健■若松映画についての断章

【特別インタビュー】
・橋爪大三郎のマルクス講義(最終回)――現代の経済問題と『資本論』

【小特集】吉本隆明と戦後思想
・添田馨■「
吉本隆明「超」資本主義論」ノート(1)
・近藤洋太■戦後思想私記(3)桶谷秀昭
・浦上真二■吉本隆明と保田與重郎(続)

【特集1】ハイリスク社会の対人援助

T 法に触れる人の援助
山本譲司■福祉施設化する刑務所、刑事政策の課題
滝川一廣■発達障害と思春期の「反社会的行動」
小林隆児■罪を犯した障碍者との医療面接で見えてきたもの
・佐藤幹夫■大阪地裁判決と「社会的受け皿」(『世界』より転載)

U 思想としての「ケア」論
・西研■人の生を支える条件とはどのようなものか

・愛甲修子■現象学的発達障害論の試み(4)
V 現場からの援助論

水田恵■「ふるさとの会」の取り組みと対人援助論
石川恒■新しい支援論を創ろう――「かりいほ」の実践とこれから


V ケアの本を読む
・内海新祐■自閉症論を読む(4)
・浜田寿美男■『学校へ行く意味休む意味』(滝川一廣著)を読む
・山竹伸二■『「甘え」とアタッチメント』(小林隆児編著)
を読む
・藤倉英世■『哲学の練習問題』(西研著)を読む

【特集2】東日本大震災の記憶と記録
・村瀬学■原発と『古事記』
・夏木智■東日本大震災個人的体験記(3)
・阿久津斎木■子ども・発達・ハンディキャップ(3)原発汚染と子どもたち
・青木みさき■震災日記(2)

【連載】
・倉田良成■日本の絵師たち(5)
・木村和史■家をつくる
(4)
・尾上義和■大阪拘置所勾留記(3)

(2013・7・9)
 2012年冬号の予定が2013年春号になり、とうとう夏号になってしまいました。7月下旬から8月初旬の刊行を目指して営為編集作業のまっただ中です(でも、こんなことをやっていたら、購読者や書店さんに信用されなくなってしまいますね)。お待ちいただいている皆様には、本当に申し訳ない限りです。
 構成とラインアップがほぼ(98%くらい)決定しました。お知らせします。

若冲、抱一、其一はもちろん。
江戸には怪物がうじゃうじゃ。


 それにしても一気に猛暑の日となりました。
 皆様、くれぐれもご自愛のうえお過ごしください。(7・9)


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(2013・5・20)


 『発達障害と感覚・知覚の世界』

  【まえがき】

 本書のもとになったのは、「人間と発達を考える会」という私的な集まりが開催した講演会である。「人間と発達を考える会」というのは、七、八年ほど前に、滝川一廣さんを中心に福祉、教育、医療、福祉行政、児童福祉、心理、児童養護など、多方面の若い実力者たちに編者(佐藤)が呼び掛け、二月に一度ほど集まってもらって始めた勉強会である。

 いまやみんな現場の責任者クラスになったけれども、せっかく集まるのだから外にもアピールしようとメンバーの力を借りて(無理を願って)、年に一度、講演会の開催を目標としてやってきた。回を重ねていると、ありがたいことに、児童精神科医の小林隆児さんと哲学者の西研さんが、そこに加わってくれることになった。これは百人力。こんな贅沢な会などあるものではない、と一段と加速がついた。

 そして「発達障害と感覚・知覚の世界」というテーマのもと、お三方にお話しいただいたのが二〇〇九年三月、第三回講演会のときであった。演題は、各章のタイトルになっているように

 「感覚・知覚とは何か フッサール知覚論から」西研
 「発達障害における感覚・知覚の世界」滝川一廣
 「原初的知覚世界と関係発達の基盤」小林隆児
というものであった。

 講演会から数えるとすでに五年の歳月を要しているが、このたび、知的障害者施設「かりいほ」を紹介する編者(佐藤)の原稿を一本加え、やっと本書のような形として皆さんにお届けすることが適った次第である。

 編者にとって、この企画の書籍化は何としてでも実現しなくてはならないもののひとつであった。というのは、現在、ハードな支援現場で奮闘する人々とタッグを組んだ取り組みを進行させており、それを足が地に着いたものにするためにも、まずは堅固な地固めをしておく必要があったのである。

 地固めとは、「発達障害とは何か」「精神現象とは何か」「人間関係や世界はどう体験されているのか」といった基礎的な問いについて、自分たちなりの考えを明らかにしておくことである。

 「感覚・知覚の世界」というテーマは、発達臨床や福祉実践、治療実践に携わる方々にとって、強い関心を持っておられる領域だろうと思う。発達障害・自閉症と呼ばれる子どもたち(人びと)の示す感覚世界は、おそらくだれもが不思議だと感じ続けてきたはずである。そして多くの方々が、そのような特徴は、脳のどこかに何らかのトラブルを抱える結果であるという説を、とりあえずは受け入れてきたことだろうと思う。

 しかし本書はそのような立場には立っていない。発達障害・自閉症が「生まれつきの脳機能障害のため、対人関係の構築やコミュニケーションを苦手とする」といった仮説には、依拠しない立場にある。流布されている仮説とは別の仮説に基づいて、より臨床の側に立って、「発達障害と感覚・知覚の世界」を、「発達障害」と呼ばれる人びとの生きている世界を、記述しようとしたものが本書であるといってもよい。このことを明確に、そして説得的に指し示したいというモチーフが、このようなテーマと構成を取らせることになった。

 なぜ別の仮説に立つか。それがどのようなものか。
 詳しくは本文をお読みいただきたいが、先にも述べたように、著者たちの人間観、障害観、治療観、援助観・支援論、といった基本的なテーマが、本書には一貫して流れているが、そのことと深くかかわっている。

 西さんの、フッサール現象学を土台とした世界構成・世界体験の、リアリティ溢れる哲学世界。原理的強度をもちながらも、その語りの「開かれ」具合の大きさ。滝川さんの、深さと広さを持つ人間理解、根っこから考え抜かれていく「発達と精神現象」についての洞察。そして小林さんの、人間の「関係」に真正面から切りこんでいく、ダイナミズム溢れる関係発達の理論。知覚と情動への深い臨床的思考。そしてお三方に共通する、洞察力と共感力(これは「かりいほ」の石川恒氏についても言えることである)。
 どうしてもこの著者と、この構成でなくてはならなかった。

 日本評論社の遠藤俊夫さんによって、こうした編者の意を受けとめていただくことができたのは、たいへんに光栄で、ありがたいことであった。

 当方のもくろみがどこまで説得的かは読者のみなさんの判断に委ねることになるが、表層にとどまらない支援を、という筆者たちのテーマに関心を持ち、賛同してくださる方々が少しでも増えてくれることを願っている。そして何よりも、日々、現場で奮闘しておられる方々にとっての一助となるならば、これほどありがたいことはない。

二〇一三年三月一一日
                                   佐藤 幹夫


グレコ展拝観
絵から漲る聖性が、すごい、の一言。



(2013・3・31)

『飢餓陣営』39号の目次予定をお知らせします。
やっと、企画当初の目標の100%に近い構成メンバーになってきましたので、ほぼこの陣容で、39号は行きたいと考えています。映画監督追悼は大島渚ではなく、若松孝二にしました。深い理由はないのですが、若松監督のほうが「飢餓陣営」らしいのではないかという直観です。

39号のご執筆を承諾いただいた皆さんには、ほんとうに感謝いたします。また早くから原稿をお寄せいただいている方には、遅れていることをこころよりお詫びいたします

今回はインタビューや講座・講演など全部で8本ありました。(これに刊行したばかりの小川哲生さんの(聞き書き)の最終章を、年明けに仕上げました。もう2本、企画段階ではインタビューの予定があったのですが、さすがに労力的に無理だと判断しました)。昨年の秋より、過重負担にならない範囲で、コツコツとテープ起こしを続けてきて、やっと、あと一つのところまで漕ぎ着けました。橋爪大三郎さんへのインタビューの起こし作業ですが、これが最大の難関です(それにしても橋爪さんは、いまノリにノッていますね)。

当方は、「飢餓陣営」の作業と並行して、連載(「健康保険」「世界」)と、書き下ろし(千葉・東金事件関係)の執筆も行ってきました。当然、合間に取材が入りますから、なかなかハードではありますが、着々と進めています。書き下ろしのほうも、4月の連休に入るごろにはなんとか脱稿したいと、鞭打っています。相変わらず居酒屋さんとは仲良しですが。

東寺五重塔
初めて塔の初重内部に入りました。


「飢餓陣営叢書」という企画は、何の前触れもなく始まり、村瀬学さん、瀬尾育生さんに続き、小川哲生さんの『生涯一編集者』でナンバー3になりました。言視舎の杉山尚次さんの、無私と無言の激励によるもので、お礼の申しようもありません。個人が発行している超マイナーな雑誌から、「叢書」と銘をうって、掲載原稿を出版ルートに乗せていただけるというのは、このご時世、奇跡です。

ただしお願い。

そんなことなら、われも、と思った方もおられるかもしれません。申し訳ありませんが、いきなり原稿の束を送っていただいても、すぐには対応できません(当方もそうですし、言視舎もそうです)ので、くれぐれもご寛恕願います。まずは「飢餓陣営」の定期購読者になってください。そしてさらには、バックナンバーや発行人・佐藤の著書をお読みください。なぜかは、小川さんが『生涯一編集者』の中で述べているとおりです。

円空展拝観
現代アートでした



(2012・8・9)

飢餓陣営38号
「追悼総力特集 吉本隆明を新しい時代へ」

総ページ328.定価1300円(送料200円)

吉本隆明、最後の文学談義 夏目漱石と太宰治(遺稿)
森崎和江(特別寄稿)「吉本隆明さんの笑顔」

T 『試行』のころの吉本隆明
月村敏行「思い出すままに」
村瀬学「吉本隆明さんとの出会い」
浮海啓「〈魂〉は暁闇の彼方へ」
矢野武貞「吉本さんと、私の吃音論」
高岡健「〈資質〉を倫理に変えるとき」
高堂敏治「「大衆の原像」から「思想としての菜園」へ」

・西尾幹二(特別掲載)「吉本隆明氏との接点」

U 吉本思想の源流をめぐって
佐藤通雅「「姉の死など」にふれて」
長谷川三千子「ひゆうひゆうと吹き渡る風」
近藤洋太「戦争と聖書」
寺田操「ことばの花びらを播く詩人」
浦上真二「吉本隆明と保田與重郎」

V 舞台裏の演出者たち
(聞き書き・120枚)宮下和夫と弓立社−「吉本隆明の講演のことなど」
田中紘太郎「吉本隆明雑感」
脇地炯「「衆議院」はお断りだ」
齋藤愼爾「〈アジア的なる〉編集者私記
(聞き書き・100枚)編集者=小川哲生「八〇年代、『吉本隆明全集撰』のころを中心に

W 吉本隆明断想
勢古浩爾『吉本さんの空に向けた両手」
宗近真一郎「ミシェル・フーコーのパリで吉本隆明の訃報を聞く」
水島英己「影のすべてを」

X 吉本隆明を新しい時代へ
北川透「『最後の親鸞』という思想詩」
秋山基夫「『言語にとって美とはなにか』再読」
瀬尾育生「夜の銀河鉄道」/神山睦美「無限世代の輪廻転生」
齋藤祐「『超戦争論』再び」
西脇慧「吉本隆明のオウム言説をめぐって」

Y 「反核・反原発」異論から考える
添田馨「大震災後≠フ吉本隆明」
由紀草一「『「反核」異論』をふりかえって」
本田徹「未来としての歴史に寄せて」
倉田比羽子「「私の本はすぐに終わる」−私たちの本もすぐに終わる」
築山登美夫「吉本隆明と原子力の時代」
島亨「反核・反原発異論、私注」

「執筆者が選ぶ吉本隆明のこの一冊」+100字コメント

Z 北明哲+佐藤幹夫「吉本隆明の遺した宿題―三島由紀夫の戦後と吉本言論」