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図書紹介:『認知症とは何か』
2004年12月に「痴呆」という用語が「認知症」に変更になった。著者によると、本書はこの用語変更にあたって、誤解されることの多い、認知症という病の真実を世に伝えたいという思いで書かれた。 以前に紹介した『痴呆を生きるということ』の続編という意味合いを持つとのことである。 本書は二部構成からなる。 第一部は「認知症の医学」という表題で、認知症という病気について、認知症の定義、原因、症状、経過、告知など全般的に医学的視点から説明している。 認知症について全般的な知識を得たい人には大いに役に立つと思う。 第二部は「認知症を生きる心の世界」という表題で、認知症を抱えて生きる人たちの不自由と行動について、患者の手記や著者自身の治療・ケア体験から、この病気を病む人の心の内側から描いている。 認知症を研究あるいは処遇の対象として外側から見るのではなく、痴呆を生きる一人ひとりのこころに寄り添うようなまた一人ひとりの人生が透けて見えるようなかかわり をもつことにより彼らの心的世界に分け入り、彼らの心に添ったケアが必要という著者の熱い想いが伝わって来る。 私たちは認知症患者のケアを考える場合、ともすれば介護する側の事情・立場から考え勝ちであるが、もっと患者の側から考える必要があるというを本書は認識させてくれる。 本書は、一般の人が読めば、認知症という病について表面的ではなく、奥深く真実の姿を理解するのに役に立つであろう。 また、現在、介護を行っている人々が読めば、多くのヒントと希望と勇気を与えてくれるであろう。 |
(2005年9月2日) |
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