図書紹介：『私は私になっていく 痴呆とダンスを』
- 著者：クリスティーン・ブライデン、訳者：馬籠 久美子・桧垣 陽子
- 発行所：株式会社かもがわ出版、ページ数：２９５ページ
発行日：２００4年11月15日第一刷、定価：２０００円＋税
本書は以前に紹介した『私は誰になっていくの？ アルツハイマー病者からみた世界』の続編として書かれたアルツハイマー病者自身による手記である。
その後の1998年から2004年までの6年間について書かれている。本書によれば、著者は結婚相談所でのポールとの運命的な出会いにより、1999年9月に結婚した。ポールという素晴らしいパートナーを得たことにより、その後の活動のために大きな力になった。
著者は痴呆症を持つ身でありながら、痴呆に対する認識を変えるために、そしていつの日にか痴呆とともに生きる人びとへの対応が敬意のこもったものになる時が来ることを願って下記のような多くの活動を行った。
| (1) | 1998年から2001年まで、最初は著者が住んでいる地域で、次に全豪アルツハイマー病協会を通して、痴呆とともに生きる人びとのための啓発活動にかかわった |
| (2) | 更にアルツハイマー病にかかわる国際的な活動として「痴呆症啓発支援ネットワーク」（DASN)につながった。そしてアメリカ、カナダ、イギリス、ドイツ、ポーランドを訪問し、各地のDASNの人々に会ったり、講演をしたというような活動を行った。 |
| (3) | 2003年には、痴呆症を持つ者の代表として、国際アルツハイマー病協会(ADI)の理事に選出された。活動は更にグローバルになり、インド、イスラエル、フランス、イギリス、南アフリカ、ブラジル、ドミニカ共和国、台湾、日本を訪問した。 |
本書では、以上の活動内容の他、痴呆症があるとはどんなことか、ということを痴呆症を持つ本人から本人の病状の経過を踏まえて詳細に説明している。
更に痴呆症の患者がして欲しいことが書かれている。
そして最後に一冊目の本の題名でもあった「私は誰になっていくの？」ということに関して、痴呆の旅は真の自己に向う旅であり、痴呆症によって認知と感情の層がはがれ落ちていき、本当の自分になっていく、という最近の著者の考え方が示されている。
本書は、痴呆症と診断されて約10年経った人でもこれ程の活動ができるという貴重な記録であり、初期の痴呆症の方に大きな勇気と力を与えると思う。また著者等の活動は痴呆症に対する世の中の認識を変えることに大きな力になっていると思う。