2003 |
夏のハウス作物の代表としてスイートコーンの栽培を中心に紹介します。
他の作物・露地作物にも応用できると思いますのでご利用ください。
色枠付きの写真はサムネイルになっています。画像をCLICKして下さい。
2/28 圃場の準備
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春夏作のスタートは、この状態からです。 奥の枯れ木は前作のシシトウ。一面の雑草と共に 鋤きこみます。 真面目な農家から見たら怒られそうですが、前作の 食べ残し養分を吸収するための緑肥と考えれば 気になりません。 ただし、後作が大根・にんじん等の根菜類の場合は 又根になるので注意します。また、枝豆・落花生等の 春播き豆類にもタネバエの被害を避けるため有機質 の資材を一切使用しないようにします。 |
私は作物の栽培中も基本的に雑草を処理しません。ひどくなれば草刈機で刈り倒す程度です。 特に夏場は土壌の温度上昇・過乾燥の防止に役に立ちます。 また、雑草の生育状態によって圃場の肥沃度・酸性度等の分布状態も良く判ります。 まあ雑草は毛嫌いせず、上手に付き合うことだとおもっています。 |
3/1 その続き
元肥としてはカキガラ石灰のみを施用し、定植が 出来る程度にごく浅く耕起し管理機で畝にします。 つまり、畝の芯は不耕起ということです。 次の作付けまでに時間の余裕が無い時は完全に 不耕起で定植します。 ハウス作物は全て元肥ゼロでスタートしますが、 我が家の圃場は酸性土壌(PH4.2前後)なので 毎作県内産のカキガラ石灰で中和とミネラル分の 補給をします。 |
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その後、畝の中央を歩いて鎮圧したっぷり潅水 します。 写真では判りにくいですが、中央の足跡の溝が マルチ後の潅水及び施肥用の溝になります。 あまり細土せず水の吸い込みを良くする事が ポイントです。 |
![]() この様な畝になります。 (畝幅100cmX高さ20cm) |
![]() 植え付け位置は図のようになります。 (マルチにも同規格があります。) |
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作物の根っこは耕起層と不耕起層の境に多く 分布するようになります。 多くの作物は、この様な状態を好むようです。 |
3/12 種蒔き
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我が家ではほとんどの作物を写真のセルトレーか 苗箱で種蒔き・育苗後、圃場に定植します。 ヤンマー根巻き防止トレー 30X128穴を使用し 、用土には肥料分の添加されていない種蒔き 専用培土を使用します。 種蒔き1日前にたっぷり潅水し地温の上昇を待ちます。 |
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スイートコーン(あまいろ・キャンベラシリーズ) 例年より10日遅れです。 最近の強甘味種は発芽率の低いものが多い ので極力浅播きになるよう用土に軽く押し込む 程度の深さにします。 また用土は気相率の高い軽めのものを用います。 |
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種蒔き・覆土後は潅水を避け、乾燥防止の ため新聞紙または苗箱でおおいをします。 |
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インゲン・コーンは発芽までの3〜4日間 20〜30℃に保温します。 |
3/16 発芽
3/16 スイートコーンの発芽 播種後4日目 |
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3/22 播種後1週間目 葉枚数2.5枚で定植します。後10日程。 |
3/28 播種後2週間目 出葉枚数2.5〜3枚 明日定植します。 |
3/30 スイートコーンの定植
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セルトレーの深さの2倍程度の角穴を あけておきその中に苗を落とし込みます。 その後、周囲の土と共に水をたっぷり 流し込みます。 畝の中央の溝にも一杯に水を入れます。 この水がマルチ押さえと夜間の保温の 役に立ちます。(黒マルチ上の水は日中50℃ 以上になります。) 追肥期には適当に穴を開け流れ込むようにします。 |
4/2 活着
定植後の早朝、葉先に露を結ぶようになれば 活着した証拠です。 数日で葉幅が広くなってきます。 |
4/14 スイートコーン 追肥1回目
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定植後2週間目、6〜7葉期です。 葉枚数5〜8枚目で初めて追肥をします。 畝中央の溝に施肥し潅水と共に流し 込みます。 肥料は14-14-10アサヒポーラスです。 この時期が花芽分化期に当たりコーン の大きさが決まります。 |
3〜4日で1葉展開が正常な生育ペースです。 中心で展開中の葉色が薄いほど、施肥量を 多くします。 写真のように下葉が黄色く枯れ込んでいる のは土中水分不足・老化苗の定植等何らか のストレスが原因です。水を多めに与えます。 |
4/22 スイートコーン 8〜10葉期
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この時期一気にスイートコーンらしくなり、生育が 順調ならば第2・3葉節から分けつを出します。 この分けつはコーンへの栄養の転流に役立つので 取らずに育てます。 また、分けつ節から出る根が倒伏を防ぐのでマルチ してない場合は土寄せをします。 |
5/5 スイートコーン出穂直前
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2週間経ち背丈は1メートル近くなりました。 葉枚数11〜12枚目が出てきました。 品種にもよりますがスイートコーンは一定の葉枚数 で雄穂を出します。 |
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上の写真の地際です。 分けつと新根の発生の様子がよく判ります。 特にハウス内でマルチした場合、植え穴に塩分が 集積する事があります。 地上の節から出る根が地中に入れなくなり倒伏の 原因になるので植え穴からもしっかり潅水します。 |
5/15 スイートコーン雄穂出穂 追肥2回目
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草丈1.5メートルキャンベラ82の雄穂が出揃い ました。やや遅れて雌穂(コーン)が出穂します。 同時に葉色もさめてきますので2回目の追肥をします。 この時期の追肥は稲の穂肥に相当し、歯並びと 先端部の実入りを良くしコーンの肥大に重要です。 1回目の追肥と同じアサヒポーラスを同量与えます。 |
5/18 スイートコーン雌穂出穂
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雄穂出穂後3日で雌穂が出穂しました。 開花中無風の時は受粉を助ける為、茎をゆすって歩くと 良いといわれています。 この後は収穫まで特に気を使うことはありません。 |
5/25 スイートコーン雌穂摘果
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スイートコーンは条件にもよりますが、一本の茎に2個の コーンが付きます。 上のコーンが優先的に大きくなりますので下のコーンを 若いうちに取ります。 中生より遅い生育の良い品種では2個取りも可能です。 摘果した方のコーンはヤングコーンとして料理に利用できます。 |
6/2 突風
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季節外れの台風に伴う田畑の冠水は引いたの ですが、その後突然吹き出した風でハウスの被覆 が全損しました。 |
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収穫間際のスイートコーンがほとんど倒伏して しまいました。 一日がかりで立て直しはしましたが、どれくらいの 被害になるか判りません。 |
6/2 出荷開始
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本日から出荷を開始しました。 少し小ぶりですがとても甘いコーンです。 朝採りコーンとして午前中に店に並びます。 |
つづく
スイートコーン品種特性表 |
2003年度栽培品種の記録をまとめました。
品種 | 特性 ただし、我が家の栽培条件によるものであり普遍性は?です。 | |
キャンベラ82![]() |
●草丈 190cm ●出葉枚数 13枚 ●着果節位 8節目 ●発芽性 良好 ●生育揃い やや不揃い ●生育日数 85日 ●果重 350g ●品質 ○ ●甘味 ○ |
●判定 △ ●特記事項 ●草丈150〜220cmでばらつき有 ●草色やや薄く多肥を要す ●生育期間短いため初期の生育を 重視する |
キャンベラ86![]() |
●草丈 220cm ●出葉枚数 14枚 ●着果節位 9節目 ●発芽性 良好 ●生育揃い 良好 ●生育日数 88日 ●果重 420g ●品質 ◎ ●甘味 ○ |
●判定 ◎ ●特記事項 ●生育揃いが良い ●最も果重が大きい |
キャンベラ90![]() |
●草丈 250cm ●出葉枚数 14枚 ●着果節位 9節目 ●発芽性 やや悪い ●生育揃い 良好 ●生育日数 94日 ●果重 400g ●品質 ◎ ●甘味 ○ |
●判定 ○ ●特記事項 ●草丈が高く倒伏の可能性あり ●露地抑制作型に良い ●生育揃いが良い |
あまいろコーン![]() |
●草丈 160cm ●出葉枚数 11枚 ●着果節位 7節目 ●発芽性 良好 ●生育揃い やや不揃い ●生育日数 85日 ●果重 400g ●品質 ○ ●甘味 ◎ |
●判定 ○〜◎ ●特記事項 ●生育期間の差が大きい ●着果位置が低い(地上30cm) ●粒皮の黄色味が薄い ●5品種中糖度が最高 ●5品種中最も草丈低くがっしり型 |
おひさまコーン![]() |
●草丈 150cm ●出葉枚数 14枚 ●着果節位 9節目 ●発芽性 良好 ●生育揃い 良好 ●生育日数 90日 ●果重 350g ●品質 ○ ●甘味 ○ |
●判定 ○ ●特記事項 ●生育揃いが良い ●耐倒伏性が良い ●最も果重が小さい |
我が家の農法について少しだけ言わせてください。
私は有機農法や無農薬農法といった特定の農法にこだわりは持っていません。
また、そういった農法そのものへのこだわり自体が付加価値であり、生産物は高価
であるとも思っていません。
目指しているところは低投入・安定収量のローコスト農業です。
最近は農業でも家庭菜園でも、作物の特性にはお構いなしに、栽培者の思い込みによる
肥料・土壌改良剤等の過投入になっているのではないでしょうか。
その結果害虫や病気を多発させて農薬にたよる栽培になっているように思います。
よほど土壌成分の流出の激しい場所で無い限り、基本的には収穫して圃場外に持ち出した
作物に含まれる成分のみを圃場に返すことで物質の循環は成立すると思うのです。
つまり、田畑から持ち出した(もの)だけをジャストインタイムで補充する「かんばん方式」
の栽培をイメージすればよいのかもしれません。
我が家の肥料・農薬等の資材費は平均的な農家の3分の1程度ですが、収量・品質は
平均以上だと思っています。
減農薬栽培としても通用するのでしょうが、それはうたいたくありません。
なぜならば、有機・減農薬・減肥料といった方向が農業にとってはコストダウンの手段
であり、農産物の高価格化の為の手法ではないとおもうからです。
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