Topics ビニルハウスって  その2



ハウス内温度について

 暖房装置のないビニルハウス(簡易パイプハウス)は、締め切った
 状態では左図のように、日中太陽熱により暖められた地面と空気
 が夜間には熱輻射・被覆を通しての伝導・空気の対流によって冷
 やされてゆきます。
 
 地温と室温の分布は図のようになりますが、実際には日中
 、換気のためにサイドを開放しますので、その温度分布はもう少し
 複雑になります。



 特に冬場は季節風が強く吹き、横風を受けるハウスでは
 風上側のサイド際に寒気が入り、風下側から温まった空
 気が逃げてゆきます。



 
 長いハウスに平行の風が吹く場合、妻面を回り込む気流で
 風上側から暖気が吸い出され、風下サイドから冷気が吹き
 込むことになります。

 ハウス内では矢印のような空気の流れが出来ます。




 我が家のハウスは北西の季節風が常時斜めに当るため、
 図のような温度分布と気流の向きになります。

 この状態が毎日繰り返されるため、室内の地温・気温とも
 @の場所で最も高く、Aの場所で最低となり、その結果
 内作物も、下の写真のように大きな影響を受けます。


冬作ストック

 @正常な生育です。                   Aの場所で凍害を受けている様子です。






土壌について

古いハウス土壌と新設ハウスの土壌分析をしました。

分析項目 新ハウス(水田) 旧ハウス 適正値
pH 5.1 4.0 5.5〜6.5
EC 0.22 2.60 0.5〜1.5 ms/cm
CEC 42.4 10.1 20〜40 me/100g
有効態燐酸 45.1 113.0 45〜100 mg/100g
交換性カリ 103 196 --- mg/100g
硝酸態チッソ 3.0 53.5 --- mg/100g
交換性石灰 136 935 --- mg/100g
交換性苦土 27 119 --- mg/100g
塩基飽和度 19.8 430.8 60〜90 %
石灰/苦土比 3.6 5.6 4〜8
苦土/カリ比 0.6 1.4 2〜5
腐植    2.43 2.43 ---

元々は同じ水田でしたが、ハウス建設後十数年間で土壌の状態は大きく変化しました。

○○色の数値は水田を畑に転換するために改善を要する項目です。
○○色の数値は畑として継続使用するために改善を要する項目です。


ここで、上の表の分析項目から重要な点について説明します。

pH
 土壌の酸性度を表す数値です。
 作物により、好む酸性度は異なりますが、通常5.0〜7.0に矯正します。
電気伝導度
(EC)

 土壌塩類濃度を表す数値で、チッソ分(硝酸態チッソ)残留量の指標にもなります。
 作物により、好む肥料濃度は異なりますが、ECが0.8(砂土)〜1.5(壌土)以上で障害の恐れがあります。

塩基置換容量
(CEC)
 プラスの電荷を持つ肥料成分を吸着する土壌の能力、いわゆる肥持ちの良さを表す数値で、
 値が大きいほど緩衝能が高く、施肥がしやすくなります。
 堆肥・粘土鉱物などの投入で向上することが出来ます。
塩基飽和度
 土壌のCECの内、カリ・石灰・苦土などの塩基性肥料要素が何%占めているかを示す数値です。
 60〜90%が適度な管理目標です。


ECとpHから推定される土壌の状態は下の表のように分類できます。

EC
pH
圃場の状態
対策
 痩せた酸性土壌(水田としては問題無し)  酸性度の改良をしてから元肥を入れる
 稲作も可能な安定した畑土壌  多肥により高品質・多収が可能
 石灰のみを多投した痩せ地  石灰を入れない。バランス良く施肥する
 ほぼ健康な土壌。 硝酸態チッソによるpH低下?  苦土炭カル等でpHを上げると良い
 ほとんどの作物にベストな状態  このままの管理を続ける
 畜糞等の堆肥投入過剰?  単肥化成肥料のみの計画的投入
 酸性肥料要素(硝酸)投入過多?塩基不足  石灰による中和は不可。堆肥投入
 塩分濃度障害の危険大  除塩。堆肥投入
不安定な土壌。 塩分濃度障害の危険大  作付けを停止し除塩。客土。腐植質の多投

安全 要改善 危険
表中の色分けは、圃場の要改善度・危険度を示します。



これらの分析結果を元に、次ページからは、初めての畑作物栽培の様子を紹介します。

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