もういくつ寝ると・・ お正月を迎えるページ


○松阪は間もなく周辺地域との広域合併により市域が3倍の新しい松阪市になります。
 行政コストの削減が大きな理由といわれますが、伊勢湾岸から奈良県境にいたる
 広大な地域が同じ歴史・文化を持っているわけではなく、我々庶民にとってはあまり
 身近な変化とは思えないのが実態です。


○松阪の町は戦国時代の武将 蒲生氏郷によって『松阪城』の城下町として開かれ、
 また江戸期以降は三井家(三越百貨店)に代表される『松阪商人』の商都として発展して
 きた比較的新しい町です。
 ・・・が、昭和初期の町村合併により松阪市となった旧周辺町村には旧市街より古い
 歴史を持つ地域も多く、我が家がある神戸地区(旧かんべ村)をはじめ南部の地域は
 参宮街道に沿った『伊勢神宮領』としての歴史が長かったのです。

○ただ近年農家の減少・市街地の広がりとともに、古い伝承やら仕来たりやらはその
 ほとんどが失われて行きました。
 平成17年の正月はそんな消えて行きつつある歴史・文化の一端として、我が家の
 お正月 『神々を迎える準備』 を記録してみようと思います。

 伊勢平野南部からご訪問のお客様、「チョット違うよ」とご指摘がありましたらぜひとも

 ご指導のほどをよろしく願いします。


   12.15  神事(じんじ)



  12月中旬、正月を前にして、宮さんのしめ縄の
  架け替えが行われます。

  村人総出で集落内の神様全ての注連縄を作り
  換えて、神々をお迎えする準備です。
  


   12.25  しめ縄


 古くからの農家では正月が近付くと、土地柄、自宅に
 神を迎えるため、大小多数のしめ縄を作ります。



 使う物は、藁と近くの山から取ってきた植物です。

 藁は、長くてしなやかな物が良いのですが、最近の
 品種は藁細工にあまり向きません。

 普通縄を綯う場合、藁をすぐった後、槌で繊維を
 柔らかくしますが、しめ縄は張りを良くするため、
 硬いまま使います。

 
 前日にたっぷりの水をかけ、良く湿らせておきます。

 


 普通に綯う縄は右縄(右手を前方に押して撚りを
 かける)ですが、しめ縄の場合だけは、左縄(右手を
 引いて撚りをかける)です。

 上が普段使う縄。下がしめ縄用の縄です。

 縄綯いに慣れたうえで、また少し練習が必要です。

   基本形

 7〜8本の藁で、全長の半分まで縄を綯った所から
 垂れになる藁を直交させ、1撚りごとに1ヵ所づつ

 追加していきます。


 5ヵ所に垂れを作ったら、残りを先端まで綯います。


 余分な部分を切り揃えた後、半紙で作った幣を
 付けて完成です。


   床の間飾り


 適当な長さ(1メートル程)の縄を綯います。

 昔の藁は1本で足りたのですが、最近の藁は
 短いので、2本分足します。


 縄を3回束ね、1箇所で固定します。


 だいだいと、今年取れた稲穂を取り付けて完成です。

 丸い縄は天照皇太神(アマテラスオオミカミ)である
 鏡を、稲穂は豊受大神(トヨウケノオオカミ)を表す
 ものだと聞きました。


 このように飾ります。

 旧神戸村は、伊勢
神宮領としての歴史が長かった
 ため、床の間には、天照皇大神(アマテラスオオミ
 カミ)・豊受大神(トヨウケノオオカミ)・猿田彦大神
 (サルタヒコノミコト)の三神を迎えます。

   玄関飾り

 同じ太さの藁を3束作り、1箇所でまとめます。


 それぞれの束に撚りをかけながら、


 2本撚りの縄にします。


 残った1束で3本撚りの縄を作り、元と先端を
 ほつれないようしっかり止めます。


 縄に垂れを1束づつ巻きつけ、仮止めしながら
 7本取り付けます。

 玄関用のしめ縄には方向があります。

 我が家では、穂先が集落の上流方向を向く様に
 作ります。

 これは、神様がやって来られる方角を指している
 そうです。


 垂れと株元を切り揃えて整形した後、取り付け用
 の紐を付けます。

 これでほぼ完成。


 ダイダイ・ユズリハ・ウラジロを付けて、玄関に 
 飾ります。

 伊勢地方では、しめ縄を1年間外しません。
 翌年の正月明けまで風雨に耐えるよう丈夫で
 ないと形が持ちません。


   神棚(恵比寿様)


 基本は玄関飾りと同じです。

 ただし、藁の束の中に藁のスペーサを入れ太さを
 強調します。


 垂れは付けず、稲穂を差し込み幣を付けて完成です。

 恵比寿様(えべっさん)が抱える鯛をかたどっています。


    餅つき

 12月30日は餅つきでした。
 
 大小さまざまな鏡餅は、お祀りする神様によって
 それぞれ違います。
 お正月編で紹介します。

 のし餅は家族の食用です。

 どちらの餅も、昔に比べると半分以下の量に
 なりました。

 

    壺

 藁の株元3分の1の所で蓑を織るように繋げて
 いきます。


 端をまるめて筒状にします。


 同じものを大小3個作り、ひとつに束ねて完成です。

 これは、神様の食器をかたどった物だといわれます。


 微妙に違った形のものを4種類作ります。



 壺に雄松(クロマツ)・シイの木・竹の枝を束にし、
 しめ縄とウラジロでひとつにまとめます。

 高天原から下られた神々が よりしろ とされる
 重要な場所 神籬(ひもろぎ)です。


    神籬 


 左上 歳徳(としとく)さん
     
     庭の木に歳神様が下られるよりしろです。
     門松に当たるもので、昔は三階または
     5階の松の大きなものでしたが、松が手に
     入らなくなったので、小さくなりました。

 右上 神棚さん

     恵比寿・大黒様ほか幾つかの神様です。

 左  井戸神さん

     井戸を守る神様です。


 他にも、昔のかまどの神様 三宝荒神さん等を
 祀ります。


    裏山の神様


 稲荷さんほか、家の中に御祀り出来ない多くの
 神々が山に祀られています。


    大晦日

 大晦日の日が暮れると、家中全ての神様に
 明かりを灯し、神々が下られるのを待ちます。


 神様のお食事です。

 かわらけにご飯、カタクチイワシの丸干し・干し大根
 の味噌汁が決まったメニューです。

 箸はシイの木の若い枝で、1回だけの使用です。
 


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