ハラハラワールドを出発しておよそ半日。

ラムネス、ミルク、アップルの3人はベルベルワールドへ到着した。

「ここがベルベルワールド・・・、いい景色ね〜。」

ミルクが見渡すこの星の様子は、都会的な街並みというよりも、のどかな田舎の雰囲気が漂う世界だった。

「さぁ、早速シロップを探しに行こうぜ!」

ラムネスを先頭にベルベルワールドでのシロップ捜索が始まった。

が、この日は全く手がかりを得ることができず、気付けば日が暮れていた。

「う〜ん、有力な手がかりがないなぁ・・・。 しょうがない、今日はこの辺にして宿でも探そうか。」

「そうね、また明日、探しましょ。それでいいかな、アップル?」

「ええ。また明日探すことにしましょう。」

3人が宿を探していると、ミルクがとある露店の前で足を止めた。

その店はオルゴールを売っている店で、

そこにはシンプルなものからきれいな装飾が施されているものまで、

手作り風の様々なオルゴールがいくつも並べられていた。

「わー、ステキー! これって、やっぱり全部手作りなんですか?」

ミルクが店の人に尋ねる。

「はいはい、こちらのものは全てオルゴール職人のベル・ゴールが作ったものなんですよ。」

「へぇ〜、これ全部その人が一人で作ってるんですか? すごいなぁ。」

「ええ、ベルさんはオルゴール作りの名人ですからね。

 最近は、他の星からも買いにこられる人も増えてきましたしね。

 何日か前には、ベルさんの家を教えてほしいって言う青年がユラユラワールドから来ましたよ。」

 (え、それってシロップかも!)

突然、思わぬところから飛び出した有力情報に表情が明るくなるミルク。

「あ、あの、私にもそのベル・ゴールさんの家を教えてくれませんか?」

「かまわないけど、遠いですよ〜。この町から少し離れたところにある森の奥にある山小屋に住んでいますから。」

「いいです、いいです! その場所を詳しく教えてください!」

「そうですか? じゃあ・・・。」

と、ミルクがベルゴールの家を教わっていると、

「おーい、ミルクー! 宿が見つかったぞー!」

ミルクを呼ぶラムネスの声が。

「あ、はーい! すみません、ありがとうございました!」

ミルクは店の人にペコリとお辞儀をして、ラムネスたちのもとへ走っていった。


その日の夜の宿屋。

ミルクは露店のオルゴール屋で聞いたことをラムネス達に話した。

「・・・な〜るほど。そりゃ、そのベルさんの所へ行ってみないとな。そこにシロップがいるといいんだけど。

 いなかったら・・・どうしよう(汗)。」

「ラムネス、そういうネガティブな方に考えないの!

 大丈夫よ、アップル。きっとシロップはそこにいると思うから。」

「はい、そうですね。(シロップ様、ご無事でいてくださいね・・・)」


翌日。早速、3人はベル・ゴールが住んでいるという森へと入っていった。

しかし、行けども行けども家らしきものは見えてこない。

「うひ〜、結構、歩くよなぁ。」

「ホント・・・、まだ着かないのかしら・・・。」

ぼちぼち疲れの色が見え始めたラムネスとミルクに対し、

アップルはシロップを探すのに必死なためか、はたまた影の軍団時代に鍛えられたためなのか、

疲れる様子など全く見せず、一心不乱に歩いていた。

(シロップ様・・・。)

そして森へ入ってから3時間。ようやく一軒の山小屋が見えた。

「おー、あれだ!」

と、ラムネスが声を上げ、残りの体力を振り絞り、小屋へダッシュした。


トン、トン、トン・・・。


扉をノックする。しばらくすると、


ガチャリ。


と扉が開く。

「はい、どちら様・・・あっ! ラムネス殿! それにミルク姫と・・・アップル!」

出てきたのはベル・ゴールではなく、シロップだった。

「シロップ!」

「シロップ!」

「シロップ様!」

突然現れたシロップの姿に3人が驚いたのはもちろん、その3人を見たシロップ本人も驚いていた。

「どうかしましたか?」

と、小屋の奥から別の男性が。

その男性は20代半ばの若者で、シロップの紹介によると、彼がオルゴール職人のベル・ゴールであるという。

「ここで立ち話もなんですから、どうぞ中へ。」

と、ベルは3人を中へ招き入れた。

「遠い所からようこそいらっしゃいました。何もありませんが、どうぞ。」

と、ベルは3人にお茶を出した。

「あ、おかまいなく。」

ラムネスは、早速シロップのことについて、ベルに尋ねた。

「はい、確かにシロップ陛下がこられたのは5日ほど前だったと思います。

 オルゴールの作り方を教えてほしいとおっしゃられまして・・・。

 陛下が直々にいらっしゃったので驚きましたが、かなり真剣なご様子でしたので、

 私もお手伝いをしながら、オルゴール作りを教えさせていただきました。

 いやはやしかし、国の方々に内緒で来られていたとは・・・、思っても見ませんでしたよ。」

と、ベルは苦笑い。

「オルゴールを作るために・・・、陛下はこちらへ来たのですか?」

と、アップルは不思議な表情。

「はい。というのも、陛下が・・・」

と、ベルが話そうとした時、

「ベル先生、ここからは私が・・・。」

と、オルゴールをひとつ持ってシロップが家の奥から出てきた。

「ラムネス殿、ミルク姫、それに・・・アップル。ご心配をおかけして、すみませんでした。

 先日、ラムネス殿のお宅におじゃました時にお借りしたCDに入っていた曲で

 ある人がとても気に入っていた曲があったんです。

 その曲をある人のために、オルゴールにしてプレゼントをしたいと考えていたのです。

 しかし、自分ひとりでゼロから作るなど、とても無理な話。

 そこで、無理を承知でベルベルワールドのオルゴール作りの名人、ベルゴールさんに教えていただき、

 オルゴールを作りたいと思い、ここへやって来ました。

 1〜2日で完成するものだと思っていたのですが、考えが甘かったようですね。

 ベル先生に手伝っていただいても、予想以上に時間がかかってしまって・・・、

 本当にご心配をおかけしました。」

頭を下げるシロップ。そこへミルクが、

「でもシロップ、どうして黙ってベルベルワールドへ行ったの?」

「・・・それは私が作ったこのオルゴールを、先ほど言った『ある人』に渡して、

 その『ある人』をビックリさせようと思っていたんです。

 その『ある人』とは・・・・アップル、君だよ。」

「わ、私・・・ですか!?」

アップルは驚きを隠せないでいた。

「ギリギリだが、今日の日に間に合って良かった・・・。

 これは、余・・・いや、僕から君へのプレゼントだ。

 今日は僕が11歳、君が12歳のときに初めて出会った記念の日なんだ。

 その日に何か記念になるものを君に贈りたくて・・・。

 僕が作ったこのオルゴール、受け取ってほしい。」

 「シロ・・・様・・、うっ・・・、ひくっ・・・。あり・・とう・・ござ・・す・・。」

アップルは嬉しさのあまり、溢れ出る涙を止められずにいた。

アップル自身も二人がはじめて出会った記念の日を覚えていた。

しかし、まさかシロップもこの日のことを覚えていてくれていたうえ、

自分のために贈り物をもらえるとは思ってもみなかったのだ。

「ありがとうございます・・・、シロップ様・・・。

 その日を覚えてくださっただけでも嬉しいのに・・・、こんなことまでしてくださって・・・。」

シロップの手からオルゴールを受け取るアップル。

ラムネスとミルクもそのオルゴールを見せてもらうことにした。

みたところ、そのオルゴールの蓋には小さなくぼみが2つある、変わったものだった。

「ねえシロップ、このくぼみは何なの?」

疑問に思ったミルクがシロップにたずねる。

「このオルゴールはこのまま蓋を開けても音楽はならないようになっているんですよ。

 蓋のくぼみにコレを入れるんです。」

そう言ってシロップが取り出したのは白いガラス玉。

そう、シロップとアップルが子供のときの思い出の品、あのガラス玉である。

それを2つあるくぼみの一つに入れた。

ガラス玉とくぼみはピッタリとおさまった。

「あ、アップル、君の赤のガラス玉をもうひとつのくぼみに。」

シロップに言われたとおり、アップルも自分が持っていた赤のガラス玉をもうひとつのくぼみに入れた。

そして蓋を開けると・・・


♪〜♪〜〜


どこかで聞いたことがある音楽が流れ出した。

その曲はディズニーアニメ「ピノキオ」の曲、『星に願いを』だった。

「この曲はオレが貸したCDに入っていた曲『星に願いを』だ・・・。」

「そうなんです、ラムネス殿。

 ラムネス殿のお宅で聴いていた時、アップルがいたく気に入っていた曲とはこの『星に願いを』だったんですよ。

 ですから、この曲をぜひオルゴールにしたいと思いまして・・・。」

「なるほど〜、そういうことだったのね! やるわね〜、シ・ロ・ッ・プ!」

そう言ってミルクがシロップの背中をバシンと叩く。

「うっ、ゴホッ、ゴホッ・・。

 それよりもアップル、心配をさせてすまなかった。

 だけど、再会して迎える最初のこの記念の日に、何か形に残るものを君に贈りたかったんだ。」

「シロップ様・・・。嬉しいです、最高の記念日になりました。

 けど、私からシロップ様に差し上げるものが何も・・・。」

「いや、何もいらないよ。逆にアップルに心配をかけさせてしまったからな。」

「しかし、それでは私の気が・・・。」

「そ、そうか・・・。それでは・・・、その・・・、なんだ・・・。」

シロップは急に顔が赤くなり、言葉をつまらせ始めた。

「それでは・・・、い、一度でいい。余・・いや、私のことを『様』付け無しで呼んではくれないか・・・?」

「え・・・?」

シロップの頼みを聞いて、アップルも顔が赤くなる。

「ほ、本当によろしいのですか・・・?」

「もちろんだ。いや、む、むしろ普段もそう呼んでほしいのだが、気をつかうだろうから・・・。

 だから一度でいい。『様』付け無しで呼んでほしい。」

「は、はい・・・。え、では・・・。」

アップルは一度小さく呼吸をして、少しうつむきながら、

「シ、シロッ・・プ・・・。」

と、シロップの名を呼んだ。

「ありがとう、アップル・・・。」


その様子を眺めていたラムネスとミルク。

「はぁ〜、初々しいねぇ、あの二人・・・。オレ達にあんな時ってあったっけ〜?」

「『あったっけ〜?』じゃないわよ、ラムネス! あるに決まってるじゃない!」

「なはははは・・・、冗談だって、ミルク・・・んっ!?」

笑っておどけるラムネスにミルクは何も言わずそっと腕組みをして寄り添った。

「なんだか、あの二人がうらやましくなっちゃって・・・。しばらくこのままでいてもいいかな、ラムネス?」

「ん・・・。」


2組のカップルの幸せを願うかのように、シロップが作ったオルゴールは曲を奏で続けていた・・・。


星に願いを・・・。








 いかがでしたでしょうか、今回の小説。
誰も待っていなかったと思いますが、お待たせしました(笑)。
『星に願いを』の後編です。
前作から7ヶ月以上も間があいてしまった理由は色々ですが、
一番の理由は、「後編に続く」と引っ張っておいて、良い展開がさっぱり思いつかなかったことでしょうかね。
結局、ようやく書き上げたこの話も、どこか既存の作品の影響が結構あるようなものになってしまいましたし、
盛り上がりもまったく・・・。
特にベル・ゴールさんが消化不良〜っ(^^;。

いつもこんな小説を読んで頂いて、ありがとうございます。
次はいつになるかわかりませんが、
これからもよろしくお願い致します。











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星に願いを (後編)