ハラハラワールドの夜。

その夜に、アララ城内の廊下を歩く一人の少女の姿があった。

「おなかすいたな〜。調理場に何かないかな〜?」

その少女とは、ミルク。この日は実家に泊まりに来ていた。

おなかがすいたと言ってはいるが、ミルクが夕食を食べてから、また1時間もたっておらず、

しかも、いつもの食欲でたらふく食べたはずなのにもう空腹とは、アッパレである。

「あれ? 明かりが点いてる。誰か何か作ってるのかも!」

そう言うと、ミルクはパタパタと駆け足で調理場へ向かった。

調理場にいたのは、一人の男。

「ダ・サイダー! なんで、あんたがこんな所にいるの!?」

意外な場所に意外な人物がいたことに驚くミルク。

「あ!? いちゃ悪ぃのかよ!」

「誰も悪いなんて言ってないじゃない!

 そんなことよりも、ダ・サイダーがこんな所にいるなんて珍しいわよね〜。

 あ、ダ・サイダーも夕食だけじゃ物足りなくて、ここへ来たんでしょ!」

「おめーと一緒にすんな!

 オレ様は仕事が忙しくて、夕飯を食い損ねたんだよ!

 だから仕方なく、自分でサンドイッチでも作ろうとしとったんだ。

 ・・・ったく、なんでオレ様の分を残しておかねえんだよ。ブツブツ・・・。」

と、ブツブツ言いながら、ダ・サイダーは食パンを切っていた。

「あれ? ダ・サイダー、夕食の時にいなかったっけ?

 あ、じゃあ、私がダ・サイダーの分を食べちゃったかも。

 あはははは・・・、ごめんね〜。」

ミルクにしてみれば、食事の時に誰かがいないなんてことは気にならないみたいで、

そんなことよりも自分が食べることが大事なようだ。

ま、それが彼女らしいと言ってしまえばそれまでなのだが。

「まったく、しょうがねーヤツだな〜、お前は。

 まぁ、もう食っちまったもんはしょーがねぇな。

 ラムネスも大変だな、こりゃ。」

と、ラムネスに少し同情しながらも、次々と手際よく、ダ・サイダーはサンドイッチ作りを続けていた。

玉ねぎとピクルスをみじん切りにして、トマトを輪切りにする。

さらにツナを湯通しして、布巾で水切り。

さらにそのツナとみじん切りの玉ねぎ・ピクルスを混ぜ、また布巾で水切り。

けっこう、手の込んだやり方をしている。

「へぇ〜、慣れたものね〜。」

ダ・サイダーの手際の良さに、ミルクも感心していた。

「ねえねえ、私の分も作ってよ、、ダ・サイダー!」

「アホ! お前の分も作るとなると、何十人分も作らにゃならんのだ!

 そんなに作れるか!」

ダ・サイダーの言う事はごもっとも。

「3人分でいいから〜、お・ね・が・い! だって〜、美味しそうなんだも〜ん!」

『1人分でいいから』と言わないところはさすが、ミルク。

美味しそうと言われてダ・サイダーも気を良くしたのか、

「たく、しょうがね〜な〜。3人分だけだからな!」

と、あっさり了承。

「やったね!」

ミルクは大喜び。

ダ・サイダーは野菜やツナの下ごしらえを終えた後、

ツナ・玉ねぎ・ピクルスをマヨネーズ、塩、粒コショウで味付けして、トマトにはマーガリンを塗る。

そして少しトーストした食パンにレタス、トマト、玉ねぎ・ピクルス・ツナを味付けしたものを乗せ、

もう一枚の食パンで挟む。

そしてできたサンドイッチを対角にカットしてツナサンドの完成。

まぁ、なんとここまで手際の良いことか。

「ほれ、できたぞ。」

できた先から、早速食べる二人。もちろん、先に飛びついたのは、ミルク。

「やった〜っ! いっただっきまーすっ!

 (パクッ、モグモグ・・・) ん〜、おいし〜い!

 ダ・サイダー、これ、すごく美味しいよ! どこで覚えたの、ツナサンドなんて!」

「(モグモグ・・・)んあ? これか?

 2,3ヶ月前かな〜、部下の兵士から『ある方からの差し入れです』って

 このツナサンドがオレに差し入れられてきててな。

 それを食ったら、超〜美味かったわけよ。」

「ある人から?」

「おお。それからも何度かこのツナサンドがオレ宛に差し入れられててな。

 そのたびに誰からの差し入れなのか聞いてはいるんだが、

 『緑のの髪をしたキレイな女性から』としか、わからんらしいのだ。」

「ふ〜ん。けど、あんたそんな誰が作ったかわからないものをよく平気で食べたわね〜。」

「うっせーな! あん時はちょうど、腹がへってたんだよ!

 で、オレはこのツナサンドが気に入って、自分でも作ってみようと差し入れのツナサンドの材料とか味を

 色々と調べて自分でも作ってみたんだが・・・。

 何度作っても、差し入れのツナサンドと同じ味が出せねえんだ。

 材料は間違っていないと思うんだが・・・、何が足りねえのかな〜?」

ダ・サイダーはサンドイッチを見つめ、難しい顔をしていた。

「(ムグ)あたし、何が足りないのか、(モグ)わかるよ。」

そう言うと、ミルクは3人分のツナサンドをあっさりと食べ終えた。

「おまえに〜? ホントか〜?」

「なによ、その疑った目は! まぁ、確かに私の推測ではあるんだけどね。

 ダ・サイダーのツナサンドに足りないものは『気持ち』ね。食べてもらう人に対する『気持ち』。」

「『気持ち』? あぁ、白菜やきゅうりのから〜い漬物のことか。」

「それは、キムチ! まじめに話、聞きなさいよ!

 要するに、ダ・サイダーが差し入れで食べたツナサンドは

 その作った人がダ・サイダーに食べてもらいたいっていう想いが込められているから、

 超〜美味しかったんだと思うの。」

「しかし、そんねもので、味が変わるとは思えんがなあ〜。」

「変わるわよ! 他のみんなが美味しいって言ってくれなくてもいい、

 食べてもらいたいその人だけが美味しいって言ってくれれば、

 それでいいんだっていう気持ちがこめられた料理ってその人だけには特別に美味しく感じられるものなんだから!」

「そんなもんかねぇ〜!?」

ダ・サイダーは、まだ疑った顔をしている。

そんなダ・サイダーにミルクが重大なことを言う。

「それに、そのツナサンドを作った『緑色の髪をしたキレイな女性』ってたぶん私、知ってると思うわ。」

「何!? だ、誰だ!?」

がたっと椅子から立ち上がるダ・サイダー。

「その人の名前、『ソーダ』か『スカッシュ』っていうわよ、たぶん。

 じゃ、ごちそうさま〜! 私、食糧庫の方へ食べ物探しに行ってみるわね。じゃ〜ねぇ〜。」

ミルクは席を立ち、調理場を後にした。

「ふふふっ、このサンドイッチって3ヶ月前にカフェオレお姉様がラムネスのお義母様に教わってたやつじゃない。

 なるほど、そういうことだったのね。フフッ!」



調理場に一人になったダ・サイダーは考え込んでいた。

(スカッシュ・・・、ソーダ・・・、どっかで聞いたことのある名前だよな〜・・・。

 ! それって確か、昔にあいつが変装してた時の・・・!)

ダ・サイダーにもそのサンドイッチを作った女性が誰か、わかったようだ。

「・・・なるほど、そういうことか。

 ヘッ! ったく、あいつも変装なんかしないで直接オレに渡せばいいのによ。

 前にラムネスのところへ一人でこそこそ行っていたのは、そういうことだったんだな。

 なるほど、確かにそれなら、ミルクの言っていたことは正しいのかもな。

 ・・・食べてもらう人への『気持ち』、か・・・。」

するとダ・サイダーはも席を立ち、再びツナサンドを作り始めた。

が、そのツナサンドにはこれまでとは違い、材料としてあるものがひとつ、確かに加わっていた・・・。



ところ変わって、レスカの部屋。

「あ〜、つっかれた〜っ!!」

そこにはぐったりとした様子で自分の部屋へ戻ってきたレスカの姿があった。

早急の仕事が深夜までかかり、ようやく解放されていた。

「あ〜も〜、なんでこんなに忙しいんだろ・・・。

 ホント、泣きたいよ、あたしゃ・・・。 ん? あれ、何かしら・・・。」」

レスカは自室のテーブルに置いてあったある物に気付いた。

置かれてあったものは、ツナサンド。しかも、まだ温かい。

「なんで、私の部屋にサンドイッチなんかが・・・。」

さらに、サンドイッチのそばには、メモ書きのようなものがあった。

そこには、

     ”スカッシュへ

          差し入れのお返しだ!!”

と書かれてあった。

その文字を見て、レスカには誰の字だかわかったようだ。

「ふふふっ。なあんだ、バレちゃってたのか。

 いくら、鈍感なアイツでも、さすがにわかっちゃったかな。

 じゃ早速、いただきます!

 (はむっ)・・・、おいし。ありがと。」

作った人の『気持ち』や『想い』が込められたサンドイッチが、

レスカの疲れを癒してくれるようだった。








 いかがでしたでしょうか、今回の小説。
たまには変わった組み合わせもいいかな、と思いダ・サイダーとミルクを出してみたのですが・・・。
はっきり言いまして、このお話は結末に持っていくために、
途中の話の内容や展開をかなり強引に持っていってしまっております。
おそらく、この話を読んだ方々のほとんどが、
「なんじゃ、こりゃ?」と思ってしまったかと。

いつもこんな小説を読んで頂いて、ありがとうございます。
次はいつになるかわかりませんが、
これからもよろしくお願い致します。











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