マジマジワールドでのゴブーリキとの壮絶な戦いから数年・・・。
あの戦いで壊滅的な被害を受けた東京の街は完全に復興し、いつもと変わらない時間が流れていた。
季節は冬。年末が近いためか、街の人々の動きはどこかあわただしい。
そんな街の人が行き交うとある駅の入口で一人の赤い髪の女性が誰かとの待ち合わせのために立っていた。
勘の良い方はおわかりであろうが、その女性とはミルクである。
「・・・ラムネス、まだかな〜・・・。
もう約束の時間から20分経つけど・・・。
仕事、まだ終わらないのかな〜。
一度、携帯に電話してみようかな・・・、いや、もうちょっとだけ待ってみようか・・、
いや、やっぱり・・・。」
などと、ぶつぶつ独り言を言っていると、遠くの方から
・・・お〜い!
と、ミルクの方に向かって手を振りながら走ってくる男性の声が。
勘の良(略)、その声の主はラムネスだった。
「はぁはぁ。ミルク、ごめんごめん! ちょっと仕事が長引いちゃって!」
「も〜ぅ、こんな寒空の下でかわいい女の子を待たせるなんて・・・、と怒りたいトコだけど、
今回だけは特別に許してあげる!
今日はラムネスとひっさびさのデートだからネ!」
と言いながらミルクはラムネスの腕をギュッと抱きしめる。
「ははは。ミルク様、許していただき、ありがとうございま〜す!」
あの戦いから数年が過ぎ、もう学生ではない二人は社会人となりお互いに忙しい毎日を過ごしていた。
もちろん、二人は今でもラムネスの実家に住んでいるため、顔を会わすことは多い。
しかし、デートをする時間を取ることがなかなか出来なくなっていたのだ。
そして今日、ようやく久々のデートを出来る日がやってきたのだった。
腕組みをしながら賑やかな街の中を歩く二人。
「ふ・ふ・ふ〜ん♪」
「なんか今日はご機嫌だな、ミルク。」
「そりゃ〜そうよ! 久々のデートってこともあるし、今日はラムネスがご馳走してくれるって言うから、
もう朝からルンルンだったのよ♪ で、で、何を食べさせてくれるの〜?」
「ん? あぁまあ、もうすぐ着くからそれまでのお楽しみ!」
駅から歩いて十数分。
外観からしていかにも高級そうなレストランに到着した。
「ここだよ、ミルク。」
「えええーっ! ここってフランス料理のお店よね!?
あ、あたし、こういう所、初めてなんだけど大丈夫なの!?」
「だ、大丈夫さ! さ、入ろうか。」
と言うラムネスもやや緊張気味。
緊張気味の二人は店内へ案内され、着席。
渡されたメニューを開けてみると、そこには当然ではあるがフランス語がずらっと並んでいた。
もちろん、ひとつひとつメニューの下に日本語で訳されたメニューも書かれているが、
名前だけでは想像がつかないものばかり。
「う、うわ〜・・・、何て読むんだ、これは・・・。」
「ラムネス、ホントに大丈夫?
フォアグラとかさぁ、なんか高級そうなものばっかだよ。」
「むむむむ・・・。よ、よし決めるぞ。」
「うん、ラムネスが決めて。」
何分もメニューとにらめっこしていた二人は、結局、2人で2万円のディナーコースを頼むことに。
「かんぱ〜い!(×2)」
「おいし〜い! 本当においしいよ〜、これ!」
「よかったよ、ミルクに喜んでもらえて」
「ちょっと緊張するけど、こういうところもたまにはイイね!
いつもはさ、ラムネスと二人で行くところといったら、
ラーメン屋さんとか、焼肉屋さんとか、食べ放題のお店とかでしょ?」
「まーね。ミルクが食べる量のことを考えると、いつもそういう所になっちゃうけど、
たまにはこういう感じのお店もいいだろ?」
「うん♪」
食事を終え、店を出た二人。
「は〜、うまかったなぁ〜。」
「ラムネス、ごちそうさま!」
「満足できた?」
「うん(量的には少し物足りないけど)。ちょっと緊張したけどね。」
「ははは。緊張したのはオレも一緒さ。あんまり慣れないことはしない方がいいのかな?」
「ふふふっ。ねぇラムネス、このあとはどうするの?」
「そうだな〜、ちょっとこの辺を歩こうか。」
二人がやってきたのは都内の大きな公園。
年末ということもあって、公園の木々などあちこちに綺麗な電飾のイルミネーションがキラキラと輝いていた。
「ミルク、ちょっと座らないか。」
「え? う、うん。」
二人は公園内のベンチに座って、公園で輝いているイルミネーションをしばらく眺めていた。
「キレイだね〜。こうやって座ってじっくりとこういうものって、あまり見ないよね、ラムネ・・・ス?」
とミルクがラムネスの顔を見ると、彼はさっきまでの穏やかな表情とは一変し、かなり真剣な表情になっていた。
レストランの時とはまた違った緊張感が、彼の顔から感じ取れた。
(ラムネス、どうしたんだろ・・・?
今日、やっぱりちょっと様子がおかしい・・・。)
そしてラムネスは何かを決心したかのように小声で「よしっ」と気合いをいれ、口を開く。
「あ、あのさ、ミルク・・・。」
「? な〜に?」
「今日はミルクに言いたいことがあってさ。ちょっと聞いてくれるかな。」
「う、うん。いいけど・・・。」
「ミルクと出会ってさ、もう10年以上経つじゃん。
それまでを振り返ってみたんだけど、これってやっぱり運命だなって思うんだ。」
「ふふふっ、どうしたの? 急にそんなこと言うなんて。」
「先代勇者様とミルク姫が出会い、それから5000年っていう長い時を経て俺とミルクが出あった。
運命だったとしても、これってすごい確率だと思わない?」
「・・・うん、そうだね。それは確かにホントすごいと思う。5000年かけて、会えたんだもんね。」
「ミルクと初めてこの東京で出会ってから、ドキドキスペースでの色々な冒険の連続。
そしてその冒険のなかで、気がつくとミルクのことが気になっていて、好きになっていて・・・。
そして、そして今でもミルクのことがすごく好きっていう気持ちは変わらない。」
「・・・・・。」
「もちろん、これからもミルクのことは大切にするし、幸せにする。だから・・・
結婚、しようっ。」
その言葉を聞いた瞬間、ミルクの瞳から一筋の涙が。
「・・・やだ、なんでだろ。涙が出てきちゃった・・・。」
もちろん、この涙は嬉しさによるもの。
嬉しくないはずがなかった。
今まで、ラムネスが自分に面と向かって「好きだ」と言ってくれたことなんて、滅多になかった。
そんな彼が今、真剣な顔で、自分の目を見て言ってくれた言葉、ひとつひとつが嬉しかった。
「10年経っても、50年が経っても、ミルクとこの場所にまた来て、
この日のことを思い出して・・・、二人で笑っていられるように・・・さ。」
ラムネスはそう言って、ミルクに微笑みかける。
そんな彼にミルクも2回うなずいてから、涙目ながらも精一杯の笑顔で答える。
「・・・はいっ!」
そして・・・・、ミルクは目が覚めた。
ありがちな展開だが、これは夢だったのだ。
「・・・・な〜んだ、やっぱり夢だったか・・・。
そ〜よね〜。こんなうまい話、あるわけが・・・ないか。はぁ。
でも・・・、心がすごくあたたかいな・・・。やっぱり、嬉しいよね。ふふっ。」
朝支度を済ませ、朝食の場へと行くと、既にラムネスが座っていた。
「あ、おっはよ、ラムネス!」
「・・・・おはよう。」
なぜか、照れたように顔の色が赤いラムネスは、ミルクの顔を見ずに小声で返事をした。
(・・・? どしたんだろ、ラムネス・・・。
!
まさかラムネスも私と同じ夢を見たとか・・・?
・・・ふふっ、まさかね。
ラムネスにそのことをちょっと聞いてみたいけど・・・、
やっぱり自分の心の中だけにしまっておこ〜っと!)
夢に出てきたあの場面が、いつか現実になると信じて・・・。
いかがでしたでしょうか、1年ぶりの小説。
ありがちな夢オチ、大変失礼致しました。
そしてプロポーズのネタという、ある意味禁じ手に近い行為、かさねがさね失礼致しました!m(_
_)m
書いていたときは何にも考えずに勢いに任せて書いてみたのですが、
清書の際に読み返してみると、「うっわ〜、寒いな〜こりゃ!」と鳥肌がたちました。
自分で書いておいて、こんなコトを言うのもおかしいかもしれませんが(^_^;)
しかし、小説がこのHPのメインではないにしても、
1年も新しいものを書いていないのはさすがにいけないな〜と思いましたので、
今回は、この話をUPさせて頂きました。
ちなみに今回のタイトル、「scene」は私の好きな歌のタイトルを使わせて頂きました。
いつもこんな小説を読んで頂いて、ありがとうございます。
次はいつになるかわかりませんが(また1年後かも・・・)、
これからもよろしくお願い致します。