始まり
・・・ぴっぴっぴっぴっぴ・・・
今日も1日の始まりを告げるベルが鳴る。
肌に厳しい初春の気候が目覚めを邪魔する。
ブラインドからこぼれる日差しに耐え兼ねて、逃れるように目を開ける。
すぐにはベットから出られず、どこを見るでもなしに布団から顔だけを出し、
部屋を眺めていた。
あれ・・・
頭によぎる微かな疑問。いつもは感じない違和感。
いつかどこかで感じたことのあるあの感覚が体に入ってくる。
夢の続きを見ていた頭が急速に起きだし、送られる情報を解析しだした。
この部屋の風景は確か・・・
「おいケン!!今日から高校やろ。初日から遅刻するんか。」
父の声が下から鳴り響く。
えっ・・・
頭の中がハッキリし、驚きが心突きぬける。
心臓がバクバクドキドキしてきた。
「高校・・・。」
引っかかった言葉が口から飛び出す。
確かにベット脇にある革のカバンは高校のだ。
それに、タンスにかかっているネクタイは確かに高校のだ。
でもそんなはずはない。なぜなら今は大学3年生だし、高校のものは、
卒業したとき片付けて今ではその形跡はない。
いや、なくなっていた。
昨日までは・・・