いや、正確にはある。
でも、違う。
今通学に使っているのは兄がローンを組んで買ったダイハツのテリオスのはずだ。
兄は、自分が買ったのにもかかわらず、ほとんど使っていない。
兄は父と同じ仕事で、父の車に一緒に乗って仕事に行ってしまうので、普段は僕が通学に利用している。
土、日、祝日は、兄に使うから乗るなと言われていたが、結局あまり乗ることがなく、僕がほとんど使っている。
一応兄が乗るときに不自由がないようにガソリンは切らさないようにしてるし、車検代も自分で払っている。
当たり前といえば当たり前だが、学生の僕にはこれが精一杯だ。
・
・・ない!!・・・
いや、正確にはある。
でも、違う。
目の前にあるのは三菱トッポだ。
大学2年の後期に廃車になったはずの、あのトッポだ。
なにがなんだか気持ちに整理がつかない。
手にある感触がしたので、取り出した。
財布だった。
しかし、それは昔自分が愛用していた財布で今は存在し得ない財布。
中を見てみると、わずかなお金とカード類、そして、JRの定期券が入っていた。
ここまでくると、もう自分が過去に来てしまったことを認めざるを得ない。
とりやえず家に戻り、このあとどうするか考えた。
行くか・・・
高校へ・・・
今から行くと入学式が終わったころにつくだろう。
家の中にいても状況は何も変わらないし、ここにいたら親がうるさいだろう。
それに、ちょっとの興味もあるしな。
外も、あのときのままかな。
そんな遠くない過去だけど懐かしいところはきっとあるはず。
友達の顔も見たいし、行くか。
思い立ったら早く行こうと気持ちも高ぶりだした。
制服着替え、自転車に乗り、駅へと向かう。
さすがに、ラッシュアワーが過ぎたこの時間帯は人気が少ない。
電車に乗り込み学校の最寄駅に向かう。
こうして制服に着替え電車に乗っていると、なんか犯罪的なことをしている感情にとらわれる。
だって、20歳を過ぎたええおっさんが高校の制服に着替えて電車に乗っているんやで。
心の臓もさっきからバクバクなりっぱなしやし、周りの視線がとても気になってしょうがない。
早く駅につけー。
つづく