サマナ☆マナ!3

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 パパが淹れてくれたお茶がふるまわれたところで、主にあたしの口からそれぞれの紹介をすることに。
 せっかくなので、ここでパパとママについて改めて紹介しておこうかな。
 パパの名前はランバート。
 普通の人間じゃなくて、魔族の出身なの。
 白い髪に白い肌、赤い瞳に先端が少し尖った耳。
 魔族は人間よりもずっと寿命が長くて、パパも優に200歳は超えているんだって。
 それでも人間の男性の30代くらいにしか見えないわ。
 お料理やお掃除が得意で、家の中のことはみんなパパがこなしてくれているの。
 更にはこの島に伝わるドラゴンの伝説の研究や、ドラゴンの種の保護、繁殖などに取り組んでいるの。
 そしてママの名前はエイテリウヌ。
 金色の髪に青い瞳が特徴的かな。
 女性にしては背が高くて、あたしを窒息させるほどお胸も大きくて。
 それなのに娘のあたしの胸は、どうして相変わらず成長しないのかしらね?
 ママのお仕事はドラゴンの神殿を訪れた観光客の案内人。
 それと同時にお土産物の販売なんかもしているの。
 今ママが着ているタンクトップも、売り物のうちのひとつ。
 ママってば、夏服を忘れたシン君にも、早速Tシャツを1枚売っちゃったのよね。
 シン君も何もお金を出して買わなくたって、Tシャツの一枚くらいただであげても良かったのに。
 ママの口車に乗せられて、ちゃっかりお金を取られたのよねえ。
 ちなみにシン君が買ったTシャツは、背中のところに東洋の文字で「龍」とプリントされているの。
 黒地に白抜きの「龍」の文字が素敵なデザインになっていて、シン君も気に入ったみたい。
 パパが「『龍』というのはドラゴンの意味だよ」って教えてくれたら、マーカスさんもお土産用に一枚買ってくれたの。
 マーカスさんて、本当にドラゴンが好きみたいね。
 あれっ、話がそれたわ。
 えーと、ママも昔は冒険者をやっていて、ジェイクさんやベアさんとパーティを組んでいたのよね。
 当時はバルキリーとして大活躍したって、ママは散々自慢していたわ。
 あたしはそんな話は信じていなかったんだけど、ダリアに行ってジェイクさんやベアさんからお話を聞いて、ママの自慢話のほとんどが本当のことだったって分かったの。
 そんな話を聞いていたから、パロさんやシン君もダリアを出発する前からママに会うのをとても楽しみにしていたんだ。
 一通り紹介が終わったら、次は今回の旅の目的の説明。
 写真のモデルなんて言われてもパパもママもいまいちピンと来ないみたいだけど、とても綺麗なパロさんを見て二人とも納得していたわ。
 そしてみんなが楽しみにしていた食事の時間。
 今日の晩ご飯はパパのご自慢の手料理。
 最初はママが腕を振るうなんて言い出したんだけど、そこはあたしが「パパの料理が食べたい」って押しとどめたの。
 島で採れる食材がほとんどだから、新鮮なお魚がメニューの中心かな。
 もちろんあたしもお手伝い。
 ダリアで磨いた料理の腕をパパに見せたら、パパはとても驚いてくれたわ。
 あたしたちが晩ご飯の支度をしている間は、ママがパロさんたちの相手をしておしゃべりに花を咲かせていたわ。
 どちらかと言えば、ママにはお料理よりもお客様の相手のほうが適任よね。
 もっとも、パパにお客様の相手をとお願いしても、それはちょっとって感じだし。
 二人を見ていると、夫婦ってうまくバランスが取れているんだなって感心しちゃうわ。
 晩ご飯の席でも楽しいおしゃべりは尽きなかったの。
 そこで出てきた話題が、ドラゴンの神殿についてだった。
 お客様全員が見たいって言うものだから、急きょパパが案内するっていうことになって。
 あたしたちは全員で、家からほど近い場所にあるドラゴンの神殿へ向かったんだ。

「うわぁ・・・」
「へぇー」
「これはすごい・・・」
 パロさんにシン君にマーカスさんまで。
 初めてこの神殿を訪れた人がそうするように、目の前の光景に目を丸くして驚いているわ。
 ドラゴンの神殿。
 大理石を積み上げて造られたこの神殿は、この島に今もいるというドラゴンの神様を祀ったものなの。
 神殿の中に入ると、石造りのドラゴンの像たちが迎えてくれる。
「はい皆さん良いですか? これがファイアードラゴン、そしてあっちにあるのがワイバーンを模したものよ」
 いつも観光客相手に神殿を案内しているママ、慣れた口調でパロさんたちにドラゴンの石像について説明している。
 多くのドラゴンたちに見守られながらも神殿の奥に進むと、壁一面に埋め込まれた巨大なレリーフ。
 この先はドラゴンの洞窟へと繋がっている。
 昔はこのレリーフのところで結界が張られてあって、先へは進めなかったそうなの。
 でも今ではその結界も解かれて、誰でも自由に先に進めるようになったんだ。
 ちなみにその結界を解いたのはジェイクさんなんだって。
 さすがはジェイクさんよねえ。
 パパがレリーフに手をかざすと、そこから大きく波紋が広がる。
 そしてしばらくすると、人が通れるほどの通路が開いたの。
 パロさんたちはその様子に口をあんぐりとして驚いているけど、あたしにとっては子供の頃からお馴染みの見慣れた光景。
 整備された石造りの神殿から無骨な洞窟へ。
 常夏のアルビシアだけど、ここへ来るとヒンヤリとした冷たい空気が気持ちがいい。
 程なくして、あたしたちは地底湖の前にやって来たの。
「あら・・・ここで行き止まりかしら?」
「橋もないし、他に道もないみたいだな」
 周囲を見回すパロさんとシン君。
 そんな二人の様子にクスリと笑いながら、ママがカバンの中から小さな小瓶を取り出したの。
 その小瓶を湖にそっと浮かべると
「うわっ」
「えっ?」
「うーむ」
 なんて、またもゲスト三人の目がまん丸に見開かれるの。
 それもそのはず、ママが湖に浮かべた小瓶が、次の瞬間には人が乗れるくらいの本当の船に姿を変えちゃったんだから。
「さあ、この船で対岸に渡りましょう」
 案内役のママに促されて、パロさんたちはおっかなびっくり船に乗り込んだ。
 あたしはもう慣れたもので躊躇なく、そして最後にパパが乗って準備完了。
「さあ、行くわよ」
 船首部分でママが操縦盤に手をかざすと、船は静かに動き始める。
 鏡のような湖の水面を、滑るように進む船。
 ママたちが初めてここに来た時は、モートモンスターっていう水竜が襲ってきたそうなの。
 でも今ではちゃんと調教をされていて、人を襲うようなことはなくなったんだ。
 地底湖だから波もないし、襲ってくるモンスターもいないから、快適な遊覧を楽しめるわ。
「ほら、あそこ」
「あれがモートモンスターってやつか」
 水上に顔を出したモートモンスターを見つけて、はしゃぐパロさんとシン君。
「少し近寄ってみましょう」
 お客様の反応に気を良くしたママが、サービスで船をモートモンスターに近付ける。
 湖を泳ぐモートモンスターを間近に見て、船の上は賑やかに盛り上がっているわ。
 やがて対岸に着いたら船を下りて、少し通路を進むと縦に伸びる木製の螺旋階段。
 ここも昔は切れそうな縄梯子が下がっていただけだったのを、パパを中心にした島の人たちの力で、立派な螺旋階段が設置されたんだ。
 階段は急だけど手すりもあるから、それをしっかりと掴んで登れば平気よね。
 螺旋階段を登りきるとまた通路、そしてその先へ進むと少し開けたドーム状の空間に出るの。
「「「・・・」」」
 ゲストの三人が、声もなく目の前の光景に見入っているわ。
「ここでは多くのドラゴンたちを直接見てもらえるようになっているのよ」
 ママの説明の言葉は果たしてみんなの耳に届いているのかしらね?
 パロさんたちはおそらく生まれて初めて見るであろうドラゴンの群れに、圧倒されていたみたい。
 頭上では翼竜のワイバーンが飛び交い、向うの水辺では緑の鱗を持つガスドラゴンがのんびりと過ごしているの。
 更に一番奥のほうには、ファイアードラゴンの親子も。
「どうですか?」
「すごい・・・」
「ああ、ちょっとこれはすごいな」
 まるでお菓子の国に迷い込んだ子供のよう、パロさんもシン君も大興奮しているのが伝わってくるわ。
「これは良い。いや素晴らしい!」
 中でもマーカスさんの興奮ぶりはすごいの。
 肩から下げたバッグからカメラを取り出し、いきなりシャッターを切り始めたんだ。
 ドラゴンのほうもそんな観光客の様子に慣れたもので、牙を剥いたり吠えたりとかもせずに悠然とその場に構えていてくれる。
 しばらくはそんなふうにして時を過ごしたのね。
「あれ・・・パパは?」
 ふと気付くと、パパの姿が見当たらないじゃない。
「ねえママ、パパはどこかしら?」
「ふふ。マナ、ほら、あっちよ」
 ママの指差すほうを見ると、なんとパパがガスドラゴンの背中に乗って登場してきたのね。
「パパ、何やってるの?」
「マナ、良いドラゴンだろう」
「そりゃ、まあ・・・」
 パパはあたしの質問には答えず、ガスドラゴン背中から飛び降りた。
「どうだマナ、コイツと戦ってみないか?」
「えっ!」
「もしマナがこのガスドラゴンと戦って勝ったら、コレをプレゼントしよう」
「それって、召喚契約しても良いってこと?」
「ああ。ただし、勝てたらの話だけどな」
 思いがけないパパからの挑戦状。
 だけど、こんなチャンスは滅多にないわ。
 勝てばガスドラゴンと召喚契約。
 これはやるしかないでしょう。
「やる。やらせてパパ!」
 かくして、ガスドラゴンとのバトルが決まったの。
 この戦い、何がなんでも負けられないわ〜。

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