ジェイク4

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 外周通路から再びピラミッドの内部へ、そしてまた通路へと目まぐるしく出入りを繰り返す。
 すると、途中で通路が切れてそれ以上進めない場所に出てしまった。
「行き止まりだな。戻るか」
 後退を指示するベア。
 しかし。
「いやちょっと待った。ここ、いかにもって感じやで。ちょっと調べてみようや」
 これぞ盗賊の勘なのか、ラッキーは付近の壁を丁寧に調べ始めた。
「えーと・・・おっ、何やスイッチみたいなのがあるで。押してみるから少し離れてや」
 オレ達が通路の切れ目から離れたのを確認してから、壁に埋め込まれたスイッチを押す。
 するとどうだ、ピラミッドの内部からズズズと橋がせり出してきて向うへの道が出来上がった。
「こんな仕掛けになっていたのね」
「うむ、さすがは盗賊だな。ワシらだけではこの仕掛けに気付かなかっただろう」
 すっかり感心しているエイティとベア。
「盗賊やのうて、トレジャーハンターやって」
 そう言いつつも、ラッキーもまんざらでもなさそうだ。
 そんな感じでピラミッドの探索は続き、とある扉の前に辿り着いた。
 扉に手を掛けたベアの動きがピタリと止まる。
 それだけでもうオレやエイティには事態が飲み込めていた。
 扉の向うの気配を探ってみると、ガサゴソと何かが蠢く音がする。
 目配せだけで意思の確認をすると、ベアが扉を蹴り開け一斉になだれ込んだ。
 そこは2×4ブロックの横長の部屋だった。
 そのかなり広めの部屋を我が物顔で陣取っていたのが、これまた巨大なアリだったんだ。
 それもかなりの大群だ。
 砂漠にいた巨大なアリジゴクの本来の餌は、この巨大なアリだったんじゃないのかっていうくらいにピッタリな大きさだった。
「これは厄介だな。ジェイク、頼むぞ」
「ああ、任せろって」
 もしも昆虫が人間と同じくらいの身体だったら、この世界の覇権を握ったのは昆虫だったろうという話を聞いた事がある。
 昆虫は硬い甲羅で身体を被い、自分の何倍もの重さの物も軽々と持ち上げるパワーを持っている。
 加えて空も飛べるしな。
 幸いにも普通の昆虫はせいぜい手のひらサイズだけど、もしも目の前の巨大アリがそこかしこにいたらと思うとぞっとする。
 硬い甲羅故に屈強の戦士が放つ剣戟を軽く弾き返し、鋭い牙はフルプレートの装甲を容易に貫いてしまう。
 しかし、地下通路で戦ったゾンビが炎に弱いように、多くの昆虫は寒さに弱いとされている。
 巨大昆虫の群れと戦う時には、無理に戦士が立ち向かうよりも、魔法使いの呪文で一掃してしまうのがセオリーだ。
 そこでオレの出番って訳さ。
 唱えた呪文はもちろん・・・
「マダルト!」
 強烈な吹雪を発生させる呪文、マダルト。
 その冷気に巻き込まれたアリどもは、その場にのた打ち回りながら、次々と動きを停止していく。
「こんなもんかな」
 ベアやエイティが手を出すまでもない、アリの群れは一瞬にして全滅してしまったんだ。
「お疲れ様」
「なんのなんの」
 エイティのねぎらいの声に軽く手を振って応える。
「この部屋いかにもやで。ちょっと調べてみようや」
 ラッキーは既に部屋の中を見て回っている。
 そして・・・
「お宝や!」
 入り口とは反対側、つまりは東側のニブロックの壁には二つの窪みがあって、その右側に宝箱を発見したんだ。
 一同足取りも軽く宝箱に近付く。
 が、だ・・・
 オレ達が宝箱の前に近付くと、その宝箱が目の前から消えてしまったんだ。
「な、何でや? 何で宝箱が消えたんや」
「見て!」
 エイティが反対側の壁を指差す。
 つまりは西側の壁だけど、そこにはやっぱり二つの窪みがあって、その右側に今消えたと思われる宝箱があったんだ。
 もう一度みんなで宝箱に近付くと、やっぱりと言うか何と言うか・・・
 またも宝箱は目の前から消えてしまい、東側の壁、つまりは初めにあった方の壁の今度は左側の窪みに移動していた。
 もう一度宝箱に近付くと、西側の壁の左の窪みへ。
「これじゃあ宝が取れへんがな」
「よし、四人が別行動を取ろう」
 ベアの提案で、四人でそれぞれ別の窪みに向かう事になった。
 オレとエイティが西側、東側にベアとラッキーだ。
 ついでに言っておくと、ボビーはエイティの足元にいるので、念の為。
 せーの、の合図で一斉に宝箱に近付いた。
 するとなんてこったい。
 宝箱は目まぐるしく移動を続け、一箇所に留まる事は無かったんだ。
 どうやら誰かが宝箱の前にいると移動する仕掛けになっているらしい。
 だから全部の場所を押さえられたら留まる事無く移動し続けるって訳さ。
 一同部屋の真ん中に集まってみる。
 すると宝箱は、初めにあった窪みに落ち着いてしまった。
「仕掛けを解除するスイッチか何かがあると思うんやけど・・・」
「それを探すのが盗賊の仕事でしょ。頼んだわよ」
「エイティはん、ワイはトレジャーハンターやって」
「何でも良いわよ。お願いね」
 エイティに追い立てられて、ラッキーは部屋の中を調べ始めた。
 特に念入りに調べたのが、宝箱が無い状態の窪みだったけど、結局は何も見つからなかったらしい。
「アカンわ。なーんもあらへん」
「本当? ちゃんと調べたのかしら」
「調べたって。それでも何も無かったで」
「まったく、大した腕前の盗賊さんね」
 お互いに口が減らないラッキーとエイティ。
 そんな二人を置いといて。
「仕方ない。ここは一回諦めよう。他で何かあるかも知れないしな」
「んー、そうだな。案外近くの部屋にスイッチがあるかもだし」
 ベアとオレで話をまとめるとさっさと移動を始めてしまった。
「あっ、ちょっと待って」
「待ってえな〜」
 まだ言い合いを続けていたエイティとラッキーが慌てて付いて来たんだ。
 
 例によって外周通路を出たり入ったり、階段を上ったり下りたり、隠れた通路をスイッチを押して出現させたりしながら未踏のエリアを進んでいく。
 アリ、クモ、ムカデなどの巨大な蟲達とのバトルも何度かあったけど、それらは難無く切り抜けられた。
 そして。
 オレ達は宝箱のあった部屋のすぐ南側に位置している部屋へと辿り着いたんだ。
 マップ上ではすぐ隣だけど、ここに来るまでかなり遠回りさせられたよな。
 そこは2×2ブロックの部屋だったけど、他と違って特徴的な事が一つあった。
 部屋の一郭が粘土の塊で組まれたアーチによって区切られていたんだ。
「ここやな。いかにもって感じやで」
 盗賊の勘が働いたのか、ラッキーは早くもそのアーチの中を調べに掛かった。
「ちょっと待ちなさい。何かいたら・・・」
 エイティの忠告は最後まで続かなかったんだ。
 何故なら・・・
「ひ、ひえ〜」
 部屋中に響くラッキーの悲鳴でかき消されたてしまったからさ。
 アーチの中から伸びてきた植物の蔦のような触手が、ラッキーの身体を追って這いずり回っている。
 しかしラッキーも盗賊だ。素早く逃げ回って触手の追跡をまぬがれていた。
 やがて、なかなか捕まらない獲物に痺れを切らしたのか、アーチの中から植物の本体が伸びてきた。
「きゃあ」
「な、なんだアレは?」
「何とも奇妙な・・・」
 その姿にオレ達も呆然となった。
 それは太い茎が何本も絡まって一つの形状を成していた。
 無数に伸びた蔦が触手となって、縦横に動き回っている。
 そこまではまだ良い。
 最も特徴的なのは、花の部分だ。
 花弁が内側に向かって伸び、その先端は肉食動物の牙を思わせる程に鋭い。
 それが開いたり閉じたりする様は、正に餌を求める肉食獣の口の動きのようだった。
「食虫植物か!」
 それがバケモノのの正体だ。
 このピラミッドに巣食っている巨大なアリやクモやムカデなんかを餌にしている食虫植物。
 餌がでかけりゃそれを喰う植物もまた巨大だった。
 茎なんてベアの腰周りぐらいの太さだし、背丈は優にこの部屋の天井まで達するくらいだ。
 いい加減にして欲しいぜ。
 食虫植物は花弁の中からベトベトの粘液を吐き出しオレ達を攻撃してきた。
 この粘液で獲物の動きを封じてからゆっくりとご馳走になるって寸法か。
 初めのうちはみんなそのベトベトの粘液を難無くかわしていたけれど、縦横に伸びる触手に追われ、次第に動ける範囲が狭められていく。
「反撃するんだ!」
 ベアがヘビーアックスを植物の蔦に叩き付けた。
 植物に対する斧ってのが良い感じだろ?
「負けるものですか!」
 エイティもハルバードの斧の部分で蔦をぶった切っていく。
 スピアに変えての新しい武器だけど既に使いこなしているようだ。
 ラッキーとボビーは素早く動き回って、こちらは触手を引き付ける事に専念していた。
 そしてオレだ。
 ベア、エイティ、ラッキー、ボビーの活躍で、オレの所へは全く触手の攻撃が伸びて来ない。
 その隙に精神を集中させ呪文の詠唱を完成させる。
「みんな、下がれー!」
 オレの号令で全員が一斉に散開する。
 そしてそれと同時に放たれたラハリトの業火が部屋中を駆け抜けた。
 植物の蔦、茎、葉などが炎に焼かれ次々と燃え広がっていく。
 それでも植物は動きを止めなかった。
 最後のあがきとばかりに大量の粘液を吐き出してくる。
「いい加減にせんかー!」
 ベアが吐き出された粘液を掻い潜って近付くと、食虫植物の命とも言うべき花の部分に渾身の力でヘビーアックスを叩き込んだ。
 ドワーフってのはどうも植物があまり好きではないらしい。
 これでもかとばかりに斧を振るい、ついに花の部分を本体から切断してしまった。
 本体から花を切り落とされ、全身は炎に焼かれて黒こげとなっては、さすがの食虫植物ももう動けない。
 ようやくの事でバケモノ退治は完了って訳さ。

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