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審査の問題点

 審査登録を希望する利害関係人の中で最も多いのは顧客ですが、その他にも経営者、株主、従業員、合併する相手方企業等が考えられます。そしてそれらすべての利害関係人が審査登録を希望する動機は「組織が顧客要求事項及び適用される規制要求事項を満たした製品を一貫して提供する能力を持つと実証されることで安心したい。」ということです。審査員は、これらの利害関係人に成り代わってそれを実証し、その利害関係人を安心させなければなりません。つまり、審査の目的は、組織が「顧客要求事項及び適用される規制要求事項を満たした製品を一貫して提供する能力を持つことを実証する」ことなのです。能力は最低「利害関係人を安心させる程度」必要というのは当然のことです。
 しかしながら現実的にはこの実証をしている審査は多くありません。「審査では規格の要求事項に対しての適合性を評価するのみで、その会社の品質マネジメントシステムの質までは評価しません。」とまじめに言っている審査員をよく見かけます。顧客要求事項及び適用される規制要求事項を満たした製品を一貫して提供する能力がないような品質マネジメントシステムでも規格に適合するというのです。これでは利害関係人にとって、審査登録の意味がありません。
 また最近、審査機関は「役に立つ審査」という言葉をよく使います。本来、役に立つ審査とは、組織が顧客要求事項及び適用される規制要求事項を満たした製品を一貫して提供する能力を持っているか規格要求事項を通して検証し、不十分な部分を不適合として指摘するものです。品質マネジメントシステムのこの部分は、利害関係人を安心させるのに不十分ですよ、と組織に教えてあげられるからです。
 しかしながら現実的にはこれができる力量を持った審査員はほとんどいません。多くの審査員が、役に立つ審査を経営コンサルタントまがいのことをすることだと勘違いしています。ISO9001は、評価の基準であるにもかかわらず、「ISOで利益を出しましょう。」と平気でいっています。
 残念ながらこれが日本の審査の現状なのです。 



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