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「……残る煙が癪の種……か」

 【ネルフ】保安部第二課所属・相田二尉はそう小さく呟いて、今し方第三新東京を離
れた【アーガマ】を見送っていた。その視線の先には、地下ドックを抜け出した【アー
ガマ】が小さくなっていく光景がある。

 相田二尉は、そこまで続く白い航跡を見て感慨に耽ってしまったのだ。

「たいちょー、なんか云いました?」

「いいや……」

「そーですかぁ?」

 相田二尉の呟きが微かに聞こえたようで、部下の甘木三尉が尋ねてきた。
 それを適応に受け流す相田二尉。

「そうだ、なんでもない……」

 そして、一転して人の悪い笑みを浮かべて、相田二尉はぼそりと言った。

「さぁてと!
 出しゃばりもいなくなったことだ。
 テメェら、ビシビシ鍛えてやるから覚悟しておけよ!」

「「「ひぃ〜〜〜〜〜〜〜」」」

 三人の部下は、相田二尉のその言葉に恐怖した。






スーパー鉄人大戦F    第伍話〔救出:A hero's duty〕
Eパート


<ロシア・キエフ地方>      


「フン、クの男妾が小賢しい!」

 そう言って、ナの国先鋒隊を指揮する白の三将コエン・ホゥは豪快に毒づいた。

 ここでいう【男妾】とはクの国々王ビショット・ハッタのことである。
 本来なら圧倒的に格上である筈のクの国の国王ビショットが、成り上がりのドレイク
の風下で媚び諂っていることをなじったモノだ。

 だが、彼の指揮するナの国も、相手であるクの国も、殊この様な機動兵器同士の大規
模戦闘は始めてである。

 自分の采配がどれほど通じるものか、疑念を抱きつつもコエンは乗艦の艦橋で憤然と
してクの国の軍勢に立ち塞がるようにして構えていた。

 その鋭い視線の先では、火線が徐々にその密度を増していた。
 どうやら、オーラバトラーの接触が本格的に始まったようだ。

 それを見て、コエンは獰猛な笑みを浮かべた。
 戦いになれば余計なことなど、考えなくて良い。

 存分な戦働きをするだけだ。

 彼は、檄を飛ばした。

「どうした、右翼押されているぞ!
 押し返せ!」



<バイカル湖上空18000m・機動巡航艦【アーガマ】>      


「ホントにあの女スパイ、今度会ったら見てなさいよ!」

 アスカはそう言ってトレイのウィンナーに荒々しくフォークを突き刺した。
 つい半日前に熨されたとは、信じられない様な元気さだ。

 それを見て、シンジは《こっちに飛び火しません様に……》と本人ですら判らない
何者かに願っていた。

 無論レイはそんな光景が目に入っていないかの様に、黙々とサラダを頬張る。

 そんな同席人達の様子を見て、少し機嫌を悪くするアスカ。

「ちょっと、聞いてんの!」

 その言葉に含まれる危険な香りに、シンジは直ちに反応する。

「き、聞いてるよ。
 ホント大変だったね、身体大丈夫?」

 よっぽど、女スパイ・レッシィにやられたのが悔しかったのだろう。
 アスカはいつも以上に不必要なぐらい、自分を誇示しようとする。

「あんなチャチな無力化兵器で、この惣流・アスカ・ラングレーが何時までも調子悪く
 してる訳無いでしょ!
 もう完っ璧に一点の曇り無く、直ってるわよ!」

 アスカはその言葉の最後の方ではイスを立ち上がって力一杯握り拳を作っていたが、
脇が痛んだのか一瞬眉を顰めたことを珍しくシンジは見逃さなかった。

 その一連の行動が何となくアスカらしく感じられて、シンジの顔は自然に綻ぶ。

「何笑ってんのよ、このバカシンジ!」

 そう言ってアスカは、シンジを引っ捕まえて脇に抱えて、開いた拳でシンジのこめか
みをネジり込むようにして圧迫した。

「うわっ、痛い!
 痛いよ、アスカ!!
 やめてよ〜〜〜」

 シンジは真っ赤になりながら、アスカに抗議する。
 グリグリと圧迫されるこめかみが痛いのは当然だが、それより肩辺りに感じられる柔
らかい暖かみをシンジはより強く意識してしまう。

 そのアスカに後ろから声を掛ける人物が居た。
 加持リョウジだった。

「よっ、元気そうだな」

「加持さぁん(はぁと)」

 その声を聞いて、喜色満面といった具合になるアスカ。

 アスカは、シンジを解放し加持へとジャレつくようにして、まとわりついた。

 シンジはこめかみの痛みで涙目になりつつもその様子を見て、少しだけ、ホンの少し
だけ胸の奥に違和感を覚える。

 シンジは、解放されようやく与えられたこめかみの痛みが、全力を発揮して存在をア
ピールし始めたその時、そこへ手が当てられた。
 それはひんやりとした冷たい手で、痛むこめかみにはとても気持ち良かった。

 誰の手かと差し伸べられた手を伝ってそちらの方を向いていると、そこには紅玉の瞳
があった。

 その瞳の持ち主はいつもの無表情のままで何を考えているのか、シンジにはよく判ら
ない。

 シンジが戸惑っていると、レイは手を当てたこめかみを軽く撫で始めた。

 シンジはどう反応すべきか迷ったまま、ジッとしてる。

 レイはただシンジを撫で続けていた。

 加持とのスキンシップが一段落したアスカはそれを見咎め、例のよって怒声を飛ばした。

「何しているのよ、ファースト!」

「……別に」

 そう言ってレイはシンジから離れる。

 離れ際に何かを云いたそうな目をしたのは気のせいか?
 シンジにはよく判らなかった。

「アンタも何デレデレしてんのよ、まったくもう!」

《なるほど、リッちゃんの云う通りだな……》

 加持は、自分には見せないそんなアスカの一面を見ながら、微笑んだ。
 そして、シンジに冗談めかしてとんでもないことを云う。

「ほ〜〜〜、シンジ君モテモテだな。
 お兄さんにも少し分けてくれないかい?」

「「ちっ……違いわよ(ます)、加持さん!!」」

 口々に否定するその内容よりも、妙に息の合う彼らの行動に苦笑しつつ加持は応えた。

「そんな息の合ったところを見せつけて、ソレはないだろう?」

 加持のその言葉でお互いを見合い、そして真っ赤になって俯くアスカとシンジ。

 そんな彼らを加持は、温かい目で見続けていた。

        :

 その光景に触発されたように、無言で席を立つレイ。
 その行いは、いつもよりどこか棘々しかった。



<カリブ海上空>      


「あれが、そうか……巨きいな……」

 そう言って彼は、年代物の飛行ゴーグルの奥の目で目標を見つける。

 そこには、黒光りする艦体を持った巨艦が超然と漂っていた。

 向こうもこちらに気付いたらしく、巨艦の周辺に慎ましげに寄り添う幾つかの如雨露
モドキの浮遊戦闘艦から小型の人型機動兵器が数機飛び出し、こちらに向かってきた。

 その一隊を見て、彼はコパイ(ロット)に指示を出す。

「信号弾発射!」

「了解!
 緑・蒼・赤ですね」

「そうだ。
 間違うなよ!」

「行きます!」

 そう言って、コパイが手元のパネルを操作した。

 すると彼らが乗っている【ドダイ改】の機体上面から3発の信号弾が間を置いて順次
打ち出された。

 それを見えたらしい相手方では、戸惑ったような動きがある。

 暫くして、ブライトから指定されていた一般呼び出し回線から通信が入ってきた。

『(ズゥ−ゥ)……聞こえているか!?
 こちらは【ゴラオン】、貴方は何者か答えられたい!
 繰り返す、こちらは【ゴラオン】、貴方は何者か答えられたい!』

 それを聞いて、彼はやや緊張を解いて返答していた。

「こちらは【カラバ】のハヤト・コバヤシだ。
 バイストンウェルのショウ・ザマより依頼を受けて、貴方を迎えに来た。
 繰り返す、貴方を迎えに来た!」



<ロシア・キーロフ東方170km>      


 兵の用意した戦飯を口にしながら、ナの国の部将コエンは先程まで戦っていた戦闘空
域の方を見やる。

 そちらでは、ナの国とクの国のオーラバトラー隊が依然として激戦を繰り広げている
のがよく判る。

 戦闘開始当初から果敢に戦闘を行い弾薬が底を尽き掛けたため、前線集積所まで後退
した彼だが遅々として進まない補給に焦れている。

 その彼へ話し掛けてくる人物があった。

 白の六将ミズル・ジャンフォだった。

「コエン余り急くな、犬死するぞ」

 その忠告に応えるコエン。

「あぁ……判っている。
 だがな、今の状況で焦るなという方が無理だ」

「そんなに戦況は悪いのか」

「芳しくないな」

 豪放を持ってなるコエンのその一言は、現在の戦況を如実に表していた。

 確かにナの国もクの国も大規模なオーラバトラー戦を行ったことはない。

 だが、オーラバトラーのそのものに対する熟練度ではクの国に軍配が上がる。
 これは、オーラマシンの最先進国アの国へかなり早期から人員を送り込んでおり、それ
を通じて操縦方法のみならず運用ノウハウ等を存分に吸収していたためだ。

 そのため、最後発であるナの国では、その充実した国力を投入してオーラバトラー開発
能力については最早遜色無くなったものの、その運用能力では依然としてアの国やクの国
の後塵を拝していた。

 ソレが現在徐々に影響してきているのだ。
 戦闘開始当初こそお互いに不慣れな大規模戦闘であったため互角であったが、基本運
用方法に於いて優位に立つクの国オーラバトラー隊に現在では徐々に押され始めていた。

 無論ナの国も健闘している。

 【ナの国の白き護り】と呼ばれ、兵から深い信頼を寄せられている近衛の面々が中核
となって当たり、どうにか対抗していた。が、結局のところ個々の個人的武勇に頼ると
ころが多く、クの国の組織的戦闘相手では旗色が悪い。戦線崩壊も時間の問題だと思わ
れた。

 その様な現実にナの国を代表する二人の武人が苦悶しているその向こうでは、更なる
激戦が続いている。

 その戦場に新たな動きがあった。

 激戦を繰り広げるその更に向こう側から、X字状に羽を広げているように見える黄褐
色の何かが現れたのだ。

「あれが……【ゲア・ガリング】か……」

 クの国が建造した超大型浮揚戦艦だ。
 バイストンウェルで間諜を用い入手した情報では、ナの【グラン・ガラン】よりかな
り大型で数多くのオーラバトラーを収容可能なことが判明していた。

 まだまだかなりの距離があるのが、その圧倒的な存在感は歴戦の戦士をして心底寒か
らす。
 そして情報を裏付けるようにその巨体の至る所から、小さな燐光が溢れ出す。

 間違いなくクの国のオーラバトラー隊の主隊だろう。

「ちぃ、マズいな……
 弾薬の積み込みはどの程度終わっている!?」

 戦線崩壊の兆候に舌を打ち鳴らしてコエンは、忙しく動き回っている兵に補給状況を
確かめた。

「6割程度しか済んでません!」

 その返答を聞いてコエンは決断した。

「積み込み中止!
 出陣するぞ、急げ!」

「ハッ!」

 コエンの怒号に反応して、積み込みを中止する兵達。
 それを横目で見ながらコエンは、戦友に言い残す。

「ミズル……ここはシーラ様が到着するまでは、何としても食い止める。
 後を頼んだぞ」

 そう言って、きびすを返すコエン。
 その後ろ姿を見送りながら、ミズルは呟いた。

「死ぬな……コエン」



<ウラル山脈東方上空18000m・機動巡航艦【アーガマ】格納庫>      


「だめだね、こりゃあ……」

 アーガマ整備隊大元締めモーラ・バシット中尉はそう云って、機体の足下で心配そう
にしているショウに所見を伝えた。

「やはり、そうですか……」

 ショウは、嘆息しつつモーラに応える。

「ああ、このよく判らない材質の外装は兎も角として、この【おーらこんばーたー】だ
 ったけ?
 2つあるその片方に大きな損傷があるね。
 機械部分だけが壊れているんなら何とかするけど、この強獣とかの組織使った中枢部
 まで傷が入っているじゃ、こりゃ私たちの手に負えないよ」

 それを聞いて、心配そうにショウの傍らに浮かんでいるチャムがショウへ問い掛ける。

「ショウ、【ビルバイン】もう動かせないの?」

「……どうなんですか、モーラさん?」

「わかんないね。
 でも、モビルスーツでジェネレーターやメインスラスターがこんなになったら、何時
 爆発しても不思議じゃないね」

 そういってモーラを手に持ったラチェットで肩を叩く。

「ちょっと、見せて貰えるかしら?」

 そういって、彼らに話し掛けた人物があった。
 それはショウの隣で何やらゴソゴソと調査を行っている妙齢の女性から発せられたも
のだ。
 その肩上で切り揃えられた金髪の持ち主は、間違いなく赤木リツコだった。

 モーラがリツコへコンバータ部を見て貰うべく、昇り方を教える。

「そっちの梯子から昇ってきて下さい」

「判ったわ」

 そう言ってモーラの指示に従い、リツコは梯子へと移動しようとする。
 傍らで助手を務める伊吹マヤが、不思議そうにリツコへ尋ねる。

「先輩、判るんですか?」

「さあね」

 その問いに一瞬足を止め短く答えて、梯子を昇った。

        :

「……取り敢えず、組織の傷を塞ぐことで何とか動かすことは出来そうね」

 それを聞いて、チャムはその小さな身体一杯に喜びを表す。

「やったぁ、ショウ!
 動くって!」

 ショウは、喜色を押さえつつリツコに短く質問した。

「いけますか?」

「何とかよ。
 あくまで応急修理だから、それなりの出力しか保証できないわ」

「それで十分です。
 では、頼めますか?」

「お安い御用よ。
 では、ちょっと用意するモノがあるから後ろから取ってくるわ」

 ここでいう【後ろ】とは、本来バリュート収納ブロック(大気圏突入する際に展開す
る保護バルーンを納めたブロック)を取り付ける船体中央最後尾に増設されたEVA格
納庫ブロックのことだ。

 リツコが下に降りようとするとモーラが声を掛けてきた。

「博士にばっかり動いて貰ってでは申し訳ありませんから、ウチの若い連中使って下さ
 い」

 リツコは、その言葉にニッコリとして柔らかく拒絶した。

「ありがとう。
 でもモノが置いてあるのが、P区画だから有資格者じゃないとダメなの」

 それを聞いて、眉をしかめるモーラ。

「そうですか。
 あのブロックって、そんなトコばっかりですね」

「ごめんなさい。
 EVAって、これまでにない新技術が随所に使用されているの。
 その関連でね、中には有機化学系の危険な部品を使用して所があるのよ。
 そんなモノが転がっている所に何も知らない入って間違いが起こって、バイオハザード。
 で、総員退艦……なんて、イヤでしょう?」

「それはイヤですね」

「そういう訳で取ってくるわね」

 リツコは、鮮やかな笑顔を残して後部ブロックへ向かった。

        :

「ショウ君、ちょっと動かしてみて貰えるかしら」

 処置を終え、下へ降りて計器を見ながらリツコはショウへ指示する。
 リツコの言葉に従って、【ビルバイン】を動かしてみるショウ。

「……いい感じです」

 なんとかなりそうだと云う安堵感を滲ませながらショウが応えた。
 それを聞いて、ショウと一緒に居たチャムがはしゃぐ。
 破滅的な一言を付け加えて。

「やったぁ、これでシーラ様を助けに行けるね。
 オバサンありがとう」

 計器を見つめて俯いていたリツコの耳がピクリと動いた。
 チャムは、さらに破滅的な発言を続ける。

「金色の髪しているのに黒い眉していて、変なオバサンだなって、思ってたけど……
 オバサンそれだけじゃなかったね。
 これでショウも活躍できるわ、ありがとう…………」

 チャムが最後に不敬な称号でリツコを呼びかけた時、チャムはいつの間にか【ビルバ
イン】コックピット入り口にいるリツコに両頬をその細いしなやかな指に摘まれて、捕
まっていた。

「……チャムちゃん、誉めてくれてありがとう。
 でもね、私のことはお姉さんでしょ。
 
 間違えちゃ、いけないわ」

 そう言って、掛けていた眼鏡を光らせながら摘んだ指でチャムの頬を引っ張る。

「いひゃい、いひゃい!!!」

 自らの発した言葉の代償を受け取るチャムに、ショウは大股を開いて【ビルバイン】
に足掛けているためチラチラと見えるリツコの何かから目を逸らすようにして、言った。

「チャム、今のはお前が悪い。
 リツコさんに謝れ」

 ショウのその言葉に、涙混じりに謝るチャム。

「ごぉ……こめんなひゃい……りぁつこおねーさまぁ……
 (ごっ……ごめんなさい……リツコお姉さま……)」

 チャムの謝罪を聞いてようやく手を離すリツコ。

 解放されたチャムは、素早く隠れるようにしてショウの背中に廻った。
 チョコリと出されたその顔は、実に恨めしげである。

 その様子を下から見ていたモーラとマヤは、お互いの顔を見合って微笑みあった。



<ロシア・キーロフ東方150km>      


「敵ながら、よく支える……」

 そういって、クの国にその人ありと畏れられる【赤の三騎士】筆頭ガラミティ・マリ
ガンは、【ゲア・ガリング】艦橋より戦場を見据えた。

 【ゲア・ガリング】の戦場到来によって、圧倒的優位に立ったクの国軍勢であるが、
未だナの国の先鋒隊を殲滅できずにいた。

 【ゲア・ガリング】の登場当初こそ押されていたナの国の先鋒隊が、数機のオーラバ
トラーと浮揚戦闘艦が参入したことによって戦線を立て直し、巧みな防御戦闘でクの国
の軍勢に当たり、間隙を衝いて寧ろ押し返しすらしていた。

 加えて、とうとう【グラン・ガラン】が戦場に到着したことによって、形勢が逆転し
始めていた。

 その様子を面白くなさげに、艦橋に設けられた玉座にて観戦するクの国々王ビショッ
ト・ハッタ。

「えぇい、何をしておる!
 高々数十機のオーラバトラーなど蹴散らして見せんか!
 何のために、お前達を抱えておるのか判らんではないか!」

 甲高い声を上げて、不甲斐ない(と思っている)自軍をなじるビショット。

 その言を聞き、ガラミティはビショットの前に進み出た。
 跪きビショットの目を見据えて、静かに言い放つ。

「ビショット様、それはあまりなお言葉でございます。
 その様なお言葉を聞いて捨てるは、我らクの国もののふの名折れ。
 我らの真の力お見せいたしましょうぞ」

 その迫力に押されるビショット。

「い……いや、その様な意味で言ったのではない。
 【赤の三騎士】の誉れ高きガラミティ殿が出てくれるなら、これほど心強い事はない。
 ハハハ……」

 掌を返した様に態度を変える君主に、僅かながらの嫌悪感を抱きながらガラミティは
一声発した。

「ではっ!」

 立ち上がり、同様に艦橋へ詰めていた二人の戦友とその部下達へ向け、檄を飛ばした。

「怖じけずくな、我らクの国の真の力、ナの者共に見せてやろうぞ!
 出撃する、続けぇ!!」

「「「「「「おぉ〜〜〜〜〜!」」」」」」

 その声は、【ゲア・ガリング】の艦橋を確かに揺るがせた。

        :

 与えられたオーラバトラー【ビアレス】カスタムタイプを立ち上がらせながら、指示
を出すガラミティ。

「今は押されているが、慌てるな!
 落ち着いて行けば、数はこっちの方が圧倒してる!
 いいなっ!?
 ニェット、ダー、出るぞ!」

『『了解!』』

 その返事と共に、出撃したガラミティの機体と同じ仕様の【ビアレス】併せて3機の
オーラバトラーが、燐光を巻き起こして【ゲア・ガリング】から飛び出していた。



<カリブ海上空・超巨大浮揚戦艦【ゴラオン】第18格納庫>      


 あの奇妙な機動兵器に案内された格納庫へ着艦させたハヤトは、コパイ(ロット)の
肩を叩いて機体を降りようとする。

 コパイが何とは無しに呟く。

「降りたら、いきなりズドンってのはありませんよねぇ」

 それを聞いて、真顔で怖いことを云うハヤト

「さぁな、案外そうかもしれんぞ」

「脅かさんで下さいよ」

「ハハハッ、そうビクつくな。
 人生なるようにしかならんよ」

 そのハヤトの判ったような判っていないような答えに首を傾げるコパイ。
 そうしつつも、乗込ハッチを開く。

 一瞬外の明るさに目を細めるハヤトだったが、やがて目が慣れてきた。

 そこにいたのは、どう見ても映画の撮影でもやっているようにしか見えない、あの奇
妙な印象を受ける機動兵器と銃や剣に手を掛けた甲冑姿の兵士達だった。

 一番向こうにいるのが、ここの統率者らしい。
 ブライトからの連絡で伝えられた特徴に合致する、少女といって良い年の女性と年か
さの男がそこに居た。

 ハヤトは毅然とした態度で、告げた。

「【カラバ】のハヤト・コバヤシだ。
 バイストンウェルのショウ・ザマより依頼を受けて、貴方たちを迎えに来た」

 それを聞いて、少女の脇に居る年輩の男が兵へ向け手を振った。
 一斉に周囲の兵士から緊張が解けるのが見て取れた。

《何とか、話は聞いて貰えそうだな……》

 ハヤトは、兵達の様子を見てそんなことを思っていた。



<ロシア・ウラル山脈東裾野>      


「ショウ・ザマ、【ビルバイン】出ます」

 そう言って、ショウは出撃しようとする。
 そこへブリッジから応答がある。

「ショウくん、こちらも直ぐに追いつく。
 無理はするなよ!」

「判りました」

 そう言って、アーガマのカタパルトデッキから飛び立つショウの【ビルバイン】。

 後には白い飛行機雲が一条残るばかりだった。

 しかし、それで終わったわけではない。
 甲板士官の怒鳴り声が、スピーカでガ鳴り立てる。

『次、ゲッターとゲシュペンストが出るぞ!!
 準備急げぇ〜〜〜〜!』

 【アーガマ】の喧噪は一層激しさを増していた。



<ロシア・キーロフ東方160km>      


「ナの白鬼か……やるぞ、ニェット、ダー!」

 近寄るナの国のオーラバトラーを切り捨てながら、指揮をとっているらしい白い【ボ
チューン】を見つけるガラミティ。

 あのオーラバトラーを討ち取れば、この周辺の抵抗は下火になることだろう。
 彼は未だ激しい抵抗の止まないナの国軍勢を叩くため、指揮機らしきその【ボチュー
ン】を討ち取るを決断する。

『気が進まみませんな……』
『承知しました!』

 それぞれの言い方で承知する戦友の返事にニヤつきながら、ガラミティは朱に染めら
れたオーラバトラー【ビアレス】を駆って、獲物へ襲い掛かった。

 だが、その彼らの一撃を熟達した戦士が操っているらしい白い【ボチューン】は受け
止める。

 切り結びながら、ガラミティは怒鳴って問い掛けた。

「名のある戦士とお見受けした!
 名をお聞かせいただきたい!」

『ナの国近衛、白の一将ネア・メデス!!』

「クの国【赤の三騎士】筆頭、ガラミティ・マリガン!!
 いざっ!」

 ガラミティの一声で弾けるように離れる二機。

 ガラミティは、僚機に指示を飛ばす。

「ニェット、ダー!
 やるぞ、トリプラーだ!」

 その言葉でネアとガラミティ達を結ぶ線が、一直線になる。
 ガラミティ達は、そのまま高速でネアに迫撃した。

『子供騙しよっ!!』

 そういってネアはランチャーを向け、撃つ。
 が、ガラミティ達は素早く三方に別れ、避けた。

 そして、正面からガラミティ、両脇からダー・ニェットと、三方から同時に襲いかか
り、その斬撃はネアの【ボチューン】を斬り裂いた。

 その白い【ボチューン】は、ネアが脱出する間も無く爆発、四散した。

 その光を醒めた目で見つめながら、ガラミティは広域隊内回線へ繋ぎ、自軍を鼓舞し
た。

「ようし、これでここの連中は雑魚ばかりだ!
 押し返せ〜〜〜!」


        :

「くそう、ビショット軍が押しているじゃないか!」

 白い【ボチューン】が、爆発する光景を見ながら、ショウは憤った。
 舌打ちしつつ、近付いてくる【ビアレス】を背負い式に装備されたキャノンで、一撃
の下に墜とす。

 そして、ナの国広域隊内回線へ怒鳴る。

「戦士ショウ・ザマだっ!
 怖じ気づくな!
 俺がついている!」

 その根拠のよく判らない怒号は、指揮官を討たれ崩れかけていた戦線の一翼を立て直
させていた。

        :

「シーラ様、聖戦士殿が!」

 カワッセが、短く言葉を発する。

「えぇ……」

 シーラはその報告に、想いの全てを一言に込めて応じていた。
 そして、言葉を続ける。

「全軍に通達……聖戦士に続け……と」

「はっ!」

        :
        :
        :

 戦場は再び混戦の模様を強くしていた。

 新たな戦力を投入したクの国に対して、聖戦士の参入によって一気に士気を高めたナ
の国が後先を考えない全力出撃を行ったためだ。

 この様な乱戦になると多少の戦術的優位など関係なくなる。
 そこは力と力がぶつかり合い、血で血を洗う修羅場であった。

 激しい戦いの中、ショウに続いた【ロンド・ベル】の面々だが機体に書き込んだナの
国の紋章によって、誤攻撃を受けることは避けられていた。

 このような乱戦では極一部の例外を除いて、人の理性が本能に圧倒される。
 本能に導かれるまま戦っているため、一際大きく目立つ【ゲシュペンスト】や【ゲッ
ター】は(全高30〜40m程度。オーラバトラーは7〜9m)に、クの国のオーラバ
トラー隊の猛攻が集中していた。

 他にも、エマ&カツの【ガンダムMk.2】やジュドー&ルーの【ReGZ】が戦闘
に参加していたが、同様に激しい戦火に晒されていた。

        :

「えぇい、次はどいつだ!」

 ショウが苛立たしげに言い捨てる。

 そのショウへ近付いてくる【ボチューン】があった。

『ショウ殿、お下がり下さい。
 シーラ様がお待ちです。』

 そういった時だった。
 その【ボチューン】を火線が貫いたかと思うとコンバータが爆発した。

 墜落する【ボチューン】であったが、搭乗員は小型飛行ユニットで脱出する。

「くそっ、どこだ!」

 回避運動を行いながら周囲を見渡して、敵を探すショウ。
 だが見つけたのは、チャムだった。

「ショウ、あそこ!」

 ショウがそちらを見ると三機の赤い【ビアレス】が急速に接近してきていた。

「近衛を殺った連中か!?」

「くるよ!」

 チャムのその言葉と同時に敵機が突撃してきた。

「くそっ、こいつら手強い!
 どうした、【ビルバイン】の動きが鈍いぞ!」

        :

「あの新型、ショウ・ザマのものか!?」

 ガラミティは、見たことのないオーラバトラーに敵方英雄の噂を重ね合わせる。

「なら、ヤツを殺れば……ニェット、ダーやるぞ!
 もう一度トリプラーだ!」

「「応っ!」」

        :

 散開していた三機の【ビアレス】が再び集まるのを見て、ショウは身構える。

「……何かやる気だな、来る!」

 一直線に突っ込んでくる三機の【ビアレス】へ発砲するショウ。

 それを【ビアレス】達は一糸乱れぬ機動でかわす。

 そして、そのまま散開して【ビルバイン】を囲もうとする。

「させるか〜!」

 そう叫んで一番動きの鈍い右の【ビアレス】へ斬りかかり、一刀のもとに切り捨てた。

「次っ!
 くそ、動きが鈍い!」

 損傷が激しい【ビルバイン】は、既にショウの操縦についてこれなくなってきていた。

 目前に他の敵が近付いていたが、いつもの様に十分な余裕で対処できそうもない。

「この〜〜〜〜っ、殺られるか!!」

 そういってショウは斬り掛かってくる【ビアレス】を踏み越えるようにしてやり過ごす。

『お、俺を踏み台にしたぁ!?』

 そんな声が接触回線から聞こえたような気がするが今のショウにそれを意識する余裕
はない。踏み越えた【ビアレス】の丁度後ろへ位置していた【ビアレス】が居たからだ。
 だが、そいつは思い掛けない【ビルバイン】の行動に一瞬の隙が出来ていた。

 ショウはそのまま剣を正面の【ビアレス】胴体へ突き入れる。
 その【ビアレス】は、くぐもった声と共に何度か小刻みな動きをした後、動かなくなっ
た。

 最後の一機へ掛かろうと剣を抜き向かい合おうとするが、機体の動きが鈍い上、剣が
機体と一緒に串刺しになって事切れているであろうパイロットの執念が乗り移ったかの
ように抜けなかった。

『ニェット、ダーの仇!!』

 もたつく【ビルバイン】に、先程踏み越えた最後の一機の【ビアレス】が背後から斬
り掛かった。

 その一撃は、損傷したコンバータを破壊した。
 その爆発につられるようにして、もう一方のコンバータも暴走した。

「うわぁ〜〜〜あ!」

 生き残ったコンバータの暴走は、ショウの【ビルバイン】を戦場より放逐した。

        :

「ネア様、戦死!
 聖戦士ショウ殿、生死不明!」

 連絡兵が悲報をコエンに伝えた。
 一瞬、ネアの笑顔が脳裏に浮かんだが、コエンはそれを振り払うかのように素早く指
示を出す。

「くそっ……、体勢を立て直す!
 オーラバトラー隊を集結させろ!」

 そうコエンが指示を出した時には、既に勢いづくクの国オーラバトラー隊に、ナの国
オーラバトラー隊は随所で分断され、撃破されていた。

「左、【ビランビー】来ます!」

「対空砲火!!
 撃ち落とせぇ!」

 そう怒号を飛ばすが、クの国のオーラバトラー【ビランビー】に弾は当たらず、逆に
それが放った一撃がコエンがいる艦橋に命中する。

 額から流れる血を拭いながらコエンが立ち上がると、そこは地獄だった。

 艦橋左には破口が開き、床や壁面にはかつて人間であった部品が至る所に赤黒い染み
をつけて散らばっていた。

 伝令管から被害報告が相次ぐ。

「格納庫、半壊!」
「機関室、もう持ちません!」
「右舷機銃座……全滅……」

「……ここまでか……」

 腹部からの出血で霞む目を叱咤しながらコエンは、生き残っている伝令管を開いた。

「総員退艦!
 繰り返す、総員退艦!
 速やかに艦から脱出せよ!」

 そうして、操舵輪を手にとって目前に広がる【ゲア・ガリング】を見据える。

「……只では死なんよ……」

 コエンは、機関出力スロットを一杯にした。

        :

 ガラミティが出陣したことによって、一気に好転した戦局に【ゲア・ガリング】艦橋
で浮かれている人物がここに居た。

 クの国々王ビショット・ハッタだ。

「ハッハッハ、いいぞ、いいぞ!
 ナの国の屑共など、一気に蹴散らせてしまえ、ハァ〜〜〜ハッハッハ!」

 その様子をみて、ドレイクとビショットの同盟に対する人質として【ゲア・ガリング】
に遣わされたルーザ・ルフトが小さく呟く。
 本来人質である筈の彼女が、此処にいるのはビショットと通じているためである。

「器の小さな男だ事……」

 そう言いながら、《所詮はバイストンウェル制覇の後、夫ドレイクと角突き合わせて
夫共々始末する予定だった輩だ。その程度の器の方が後腐れ無く、よいか》などと、考
えていた。

 その考えが終わろうとした時、悲鳴のような声があがる。

「てっ……敵艦、特攻してきます!!」

 その報告を聞くまでも無く、その敵艦は見えていた。
 随所から煙を噴きながらもそのフネは何か底知れない執念を持っているかのように急
速に迫ってくる。

 それを見て、ビショットは情けないほど取り乱した。

「なっ、何をしておるっ!
 はやく、墜とさんかぁ!!」

 言われるまでもなく、その敵艦へは攻撃している。
 それは【ゲア・ガリング】だけでなく、旗艦の危機を察したクの攻撃部隊までもがナ
の部隊の殲滅を放棄して、引き返して攻撃を行っていた。

 しかし、その敵艦は更なる爆発を起こしつつも、全くその進撃を止めない。

 瀕死の筈の敵艦は【ゲア・ガリング】まで後少しまで肉迫していた。

「ひっ……ひぃぃぃぃ〜〜〜〜」

 ここでビショットのその情けない様子を咎めるモノは居なかった。
 【ゲア・ガリング】艦橋にいた全ての人々が、その時似たような状態であったからだ。

        :

「やらせるかぁ〜〜!」

 その時、敵艦の側方より敵艦に肉迫したガラミティは右舷オーラコンバータを攻撃し
た。
 コンバータの爆発は、暴力的なまでの横方向の推力を生み、【ゲア・ガリング】中
央艦橋へ目指して最後の進撃を行っていたコエンの乗艦は左舷上部艦体へとメリ込み、
その進撃を終えた。

        :

 そこは、端的に言って地獄だった。
 油や肉の焼ける匂いと炎が充満したそこは、人の居るべき世界ではなくなっていた。

 だが、そこでコエンは未だ意識を保っていた。
 ただ意識を保っていた、それ以上の意味を持っては居なかったが。

 下半身を艦橋構造物に押し潰され、至る所火傷と血で覆われたコエンは囁くように何
かを言っていた。

「花は春……夏は……陽炎、秋紅葉……冬の白雪既に..な..し..か……」

 既に出血多過によって視力を失っていた彼であるが、彼には間違いなく故郷バイスト
ンウェルの風景がみえていた。

《……これで還れる……》

 それが、ナの国近衛・白の三将として恐れられたコエン・ホゥの最後の想いだった。

 新たな爆光が、小さな、しかし煉獄と云うに相応しいその世界全てを清算した。

        :

「ネア様、戦死!
 コエン様、連絡取れません!
 【ビルバイン】回収しましたが、機体は大破!!
 聖戦士殿の生死不明!!」

 連絡兵は、その報をシーラの元へもたらした。
 振動が【グラン・ガラン】の艦橋を揺さぶる。

 先程の報告と相まって、兵の間に動揺が疾った

 日頃から面識のある近衛の将達の悲報に胸を痛めながらもシーラは毅然として言い放っ
た。

「狼狽えるな」

 シーラは、皆の動揺をその一言で鎮め、カワッセに指示を出す。

「心配ありません、ショウは生きています。
 【グラン・ガラン】へ収容なさい」

「聖戦士殿ですか……ですが、もう動かせるオーラバトラーがありません」

「心配無用です。
 アレを渡します」

「アレと申されますと……
 !!
 いけません、アレは……」

「カワッセ……良いではありませんか。
 ここで勝たねば、消えゆく身なのですから……」

「……承知いたしました。
 中央格納庫に伝令!!
 【ボテューン】の発進準備!
 急げよ!!」

        :

「モビルスーツ隊発進!
 主砲、敵大型戦艦を狙え!
 対空砲火、敵機動兵器を寄せ付けるな!
 ……ハイメガ粒子砲、スタンバってとけよ!」

 艦橋ではブライトが手継ぎ早に指示を出す。

 ブライトの指示にトーレスが疑問を投げ掛ける。

「しかし、敵戦艦にビームは効果がありません!」

「かまうな!
 目眩まし程度にはなる!」

「了解!」

 その下方では、ミサトが戦況ボートを視界に収めつつ、目立つ【アーガマ】に集中し
始めた敵の攻撃に対応すべく、【ロンド・ベル】機動戦闘団各小隊を誘導・指示してい
た。

 無論、その中にはシンジ達EVA三機も含まれていた。

「状況報告!」

 ミサトの指示を受け、日向二尉が声を張り上げる。

「現在、先発隊が本格的な戦闘状態です。
 ショウ・ザマが後退した模様ですが、連絡が取れないので詳細は不明です。
 EVA小隊は、後30秒ほどで敵第一派と接触します。
 第一小隊は現在展開中!
 第二小隊・火力支援小隊も順次展開します。
 P小隊はパイロット準備できていません」

「急がせて!
 後続は!?」

「前方210゜の範囲から殺到しています。
 総数不明!
 観測限界を超えています!」

「選り取り見取りって訳ね。
 先発隊に深追いしないよう通達!
 各小隊も連携可能な範囲から逸脱しないように伝えなさい!」

 それを聞いて、日向と青葉が声を揃える。

「「了解!」」

        :

「目標をセンターに入れて……違う、そこじゃない!」

 シンジは、射撃レーティクルが【ドラムロ】の胴体中央を捉えても射撃を行わせなか
った。激しい緊張をしていることがよく判る。もし、プラグの中がLCLで満たされて
いなかったら、激しい汗が吹き出ていることは間違いないだろう。

 激しい戦闘機動を行う【ドラムロ】を全神経を動員して捕捉し続け、ようやく頭部か
ら背部コンバータの部分をレーティクルに収める。

「そこっ!」

 重金属製の杭が音速を遙かに超える速度で飛び、その哀れな獲物の頭部付近を粉砕した。
 破壊はそこだけに留まらず、機体背部のコンバータをも貫いた。

 煙を噴きながら、墜落する【ドラムロ】を見ながら、シンジは懇願するようにして心
の中で呟く。

《脱出……脱出して下さい!》

 シンジの祈りが通じたわけではあるまいが、墜落する【ドラムロ】のコックピットが
開きそこから小型飛行ユニットでパイロットが脱出していた。

 ほっと一息つくシンジ。

 その時、その側方から接近する【ドラムロ】に気付く。
 が、その機体はシンジが知覚すると同時に撃墜されていた。

 プラグ内スピーカーから、聞き慣れた始めた怒鳴り声が響く。

『こらっ、バカシンジ!!
 呑気にタメ息なんかついてるヒマあったら、手ぇ動かしなさいよ!
 手!』

 シンジは心持ち柔らかくなった表情で、次の目標へと照準を向けた。

        :

「……バカシンジ!!
 呑気にタメ息なんかついてるヒマあったら、手ぇ動かしなさいよ!
 手!」

《全く……この間みたいにジャマしないだけ、マシなんだろうけどね……》

 初撃墜機に気を取られるEVA初号機の横から接近した敵オーラバトラーを、瞬時に
撃墜したアスカはその様な事を思っていた。

 だが、ふと違和感を持つ。
 今日は、あの戦闘時に感じる狂おしいまでの高揚感を殆ど感じないのだ。
 その変わりと云っては何だが、周りの様子が手に取るように感じられる。
 まるでこれまでは目隠しされた状態であったのが、急に取り去られたような感覚である。

《ワタシもようやく、実戦慣れしてきた……って、事かしら?
 !!
 来た!》

 新たに現れた敵を迎え撃つべく、考えを中断してアスカはEVA弐号機を操った。

 その向こうでは、EVA零号機が淡々と手にしたスナイパーライフルを放っていた。

        :

「聖戦士殿、大丈夫ですか!?」

 そういって、整備長らしき兵が半壊した【ビルバイン】から降りたショウに声を掛ける。
 ショウは数ヶ所で打撲による痛みで顔を歪めるが、それを口にしなかった。

 無理をしているショウを心配そうにしてチャムが顔を覗き込む。
 だが、その時ショウはチャムを構う余裕はなかった。

「あぁ、大丈夫……だ。
 それより、【ビルバイン】は直せるか!?」

「無理です。
 ここまで壊れているのでは、直ぐにという訳にはいきません」

「なら代わりの機体はあるか!?」

「出せる機体は全て出ております」

「くそっ!!」

 ショウがそう毒づいた時だった。

「ショウ・ザマ!」

 聞き覚えのある華憐な声が聞こえた。
 声のした方を見るとそこにはシーラが居た。

 シーラへ駆け寄るショウ。

「シーラ女王、どうしてこの様な場所へ?」

「渡したいモノがあります。
 ショウ・ザマ、こちらへ」

 そういって、シーラは歩き始める。

「女王!!
 今は……」

「判っております。
 着きました」

 そこは中央格納庫奥だった。
 一機の純白のオーラバトラーが降機状態で待機している。
 その機体をよく見てみると細かい金のカービング等が施されており、一目で通常の機
体ではないと判る。

「まだ、動かせる機体があるじゃないか……」

「ショウ、アナタにこの【ボテューン】を託します」

「【ボテューン】……?
 近衛の【ボチューン】じゃないのですか?」

「いいえ、違います。
 これは【ビルバイン】と同時に開発された、もう一つのオーラバトラーです。
 【ビルバイン】のように背中のキャノンを積んでいませんが、機動性はこちらの方が
 上です。戦闘能力は遜色無い筈と思います」

 云われてみると機体そのものも【ボチューン】より一回り以上大きい上に、背部のコ
ンバータも大型のモノが装着されている。

「その様な高性能な機体をどうして誰も使っていないのですか?」

 ショウが素直な疑問を口にしたところ、シーラは俯いて押し黙ってしまった。

「女王……?」

 普段から毅然として事にあたるシーラがとる不可思議な態度をいぶかしむショウ。
 その問いかけを聞いて、ようやくシーラは顔を上げ答えた。

「……こちらにも事情というものがあるのです。
 いけませんか?」

 潤んだピュアピンクの瞳に見つめられ、ショウは動揺する。
 何かを求めるようなその瞳に引きずられるにして、ショウは答えていた。

「……いいや、構わない。
 では……行って来る」

 動揺の余り敬語を使うことすら出来ずショウは、その場を逃れるようにして【ボテュ
ーン】へ乗り込んだ。
 コックピットを閉じる瞬間、シーラの呟きが聞こえた気がした。

「期待しています、ショウ……」

 そこに含まれた意味をショウは読みとることが出来なかった。

        :

「うわ〜ぁ」

 そんな情けない声を上げて、サイド1ジャンク屋店員イーノ・アッバーブは四苦八苦
して、バランスを崩した【高機動型ジェガン】を操ろうとする。
 が、その努力は報われず転倒するイーノ機。

 そんな格好の的を敵が見逃すはずもない。
 数機のオーラバトラーがランチャーを放ちながら、押し迫る。

 だが、イーノ機に気を取られ過ぎている彼らを【テスラ・ライヒ研】所員のシドルー・
リグ・マイヤーは、上空より【ゲシュペンスト】で逆落としを掛けて攻撃した。

『喰らえっ!
 ブラスター・キャノン!』

 その熱線は、射線上の一機の【ビアレス】の半身を蒸発させ、更に一機の【ドラムロ】
を行動不能にしていた。

 残りの敵は、突然の横やりに逃げまどう。

 シドはイーノ機に近づき、回線を開く。

『イーノ、どうした!?』

 シドのその問いに、イーノは泣きそうな声で答えた。

「この【ジェガン】全然云うこと聞いてくれないんです。
 だから、ボクは【ネモ】でいいっていったのに……」

 それを聞いて、気が抜けそうになるシド。

「帰ったらいくらでも聞いてやるよ。
 そら、お客さんのお出ましだ」

        :

「状況、どうか?」

 艦橋へ戻ったシーラは、カワッセに戦況を尋ねる。

 それまで怒号を飛ばしていたカワッセは驚いたように応じた。

「シーラ様、此処をお下がり下さい!
 敵の一部が密集体型をとって、此処に突撃してきます」

 カワッセの報告に顔色一つ変えずに応えるシーラ。

「落ち着きなさい、士気に影響します。
 ……大丈夫、ショウが上手くやってくれます」

 そういって、シーラは安心しきった翳り一つない微笑みを浮かべた。

 その時カワッセと艦橋要員は、敬愛する女王の微笑みに百万の味方を得た気になった。

        :

「キリが無い!
 後どれぐらい殺ればいいんだ!?」

 機体を乗り換え、再出撃したショウだが慣れる暇など全くなかった。
 入り乱れる戦線は双方母艦間近に及び格納庫を飛び出したとたん、敵オーラバトラー
と接触する有様だった。

「ショウ、あそこ!!」

 焦るショウにチャムは、異変を知らせる。
 ショウがそちらの方を見ると、先程討ち漏らし【ビルバイン】を行動不能へおとしめ
た赤い【ビアレス】が先頭に立ってナの国のオーラバトラー隊を蹴散らしながら【グラ
ン・ガラン】へ再び迫ろうとしていた。

 ビショット軍の一部が、集結し体勢を立て直して【グラン・ガラン】へ突撃を敢行し
てきたのだ。

「ヤツを墜とせば……」

《ビショット軍も退くだろう……》そう判断したショウは近付く敵オーラバトラーを
薙ぎ払いながら、赤い【ビアレス】に斬り掛かった。

「此処が正念場だ!
 みんな続けーーーーーーぇ!」

 そのショウの鼓舞に応えるようにして、ナの国オーラバトラー隊が続く。

『誰だ、貴様!』

「ショウ・ザマ!」

『聖戦士か!!!
 二人の仇、取らせて貰うぞ!』

「出来るものかよ!」

 2機は、牽制の射撃を加えながらも、数合打ち合う。
 【ボテューン】の圧倒的な格闘性能にパワー負けしたのか、ガラミティの【ビアレス】
が体勢を崩した。

 無論、歴戦の戦士であるショウはその様な隙を逃さない。

「貰った!!」

 そう言って繰り出されたショウの一撃は、ガラミティの【ビアレス】の頭部を斬り飛
ばした。

『ぐぅ!?
 頭が無くなったところで!!』

 なおも戦おうとして一直線に向かってくる敵に、ショウは【ボテューン】の手にして
いるライフルの残弾全てを撃ち込んだ。

『地上び……』

 そこまで口にして、【赤の三騎士】最後の一人ガラミティ・マリガンの【ビアレス】
は、爆散した。

        :

 一機のオーラバトラーの撃墜によって敵側の動きが悪くなった時、その報告がブライ
トの元へ届けられた。

「ハイメガ粒子砲、充填終了!」

 待ちわびたその知らせに、ブライトは笑みを浮かべる。

《どのような方法でビームを無効化しているか知らないが、(完調ならば)コロニーの
 一つや二つブチ抜けるこれを喰らって、平気でいる筈がない!》

 その様な事を考えつつ、ブライトは命令を下した。

「よし、戦いにケリを付けるぞ!
 目標、敵大型戦艦左舷上・損傷部!」

 ブライトは、コエンの浮揚戦闘艦の特攻によって大きく損傷した部分を狙うよう指示
を出した。

「照準セット!」

「目標軸線上の友軍クリア!」

 ブライトは腕を振り下ろし、力強く号令した。

「ハイメガ粒子砲!
 ってぇ〜〜〜〜!」

 【アーガマ】舷側下方より放たれた光条は、数機の不幸なオーラバトラーを消し飛ば
して、コエンの突撃で崩れ掛かった【ゲア・ガリング】の左舷上部へと突き進んだ。

        :

 ビショットはその時、余りの眩しさに我を忘れた。

 そして、次に起こった激震で我に返った。

「なんだ、どうした!!」

 愚かしくも兵の前で狼狽えるビショット。

「ひっ、な、これは……」

 その狼狽が伝染したかのように、兵の報告も要領を得ない。

 更に激震が起こった。

 誰に聞くともなく騒ぐビショット。

「何だ!
 この揺れは!?」

 その問いに答えるかのように兵が艦橋横を指差し、叫んだ。

「ビショット様、あれを!」

 兵が指差した先にあるのは、分断され崩れ落ちる左舷上部構造体だった。
 それを見て、ビショットはうなされたように呟く。

「……ひけ……」

「はっ!?」

「退けといったのだ、馬鹿者が!
 全軍後退、我が軍はこの戦域から離脱する!!」

「はっ!!」



<【グラン・ガラン】艦橋>      


「シーラ様、聖戦士殿がやりました。
 ビショット軍が撤退いたします」

「よい。
 カワッセ、追撃は可能か?」

「……無理でございましょう。
 こちらも消耗し過ぎました」

 その報告に

「……そうか。
 では、負傷者の救助を」

「はっ!」

 シーラ達にとって、この戦いはようやく終りを告げようとしていた。



<ロシア・キーロフ東方150km>      


 ビショット軍が一斉に後退に転じたのを見て、ショウは呟いた。

「退くか……」

《何とか、あのお姫様を助けることが出来たか……いや、女王だったな……》

 戦況判断と同時にその様な呑気なことが考えられる自分に苦笑しながら、そんなこと
を考えていた。

 そんなショウを見ながら、チャムが訪ねてくる。

「ショウ、追い掛けないの?」

「あぁ、こっちも損害が多し、消耗している。
 追撃は無理だな」

「じゃあ、どうするの?」

「先に【グラン・ガラン】へ行って、ブライトさん達のことをシーラ様へ伝えるさ」

「そうだね!」

「そうだ……行くぞ」

 そういって、ショウは【グラン・ガラン】へと【ボテューン】を向けた。


<第伍話・了>



NEXT
ver.-1.02 2001/11/25 公開
ver.-1.01 1998/07/19 公開
ver.-1.00 1998/07/07 公開
感想・質問・誤字情報などは こちら まで!

<なんかとっても久しぶりに書く気がする後書き>      


作者  「てぇ〜〜〜い!」

 掛け声と共に賽は投げられた。
 8つの数を在るべき所へ据えるべく、コロコロコロと淡い光を煌めかせて、そのクリ
スタルブルーの正八面体は、転がる。

作者  「ふむ……2か」

 作者は、転がり終えたその物体の上面に彫り込まれた、古代人類の発明で最も偉大な
モノの一つとも言うべきアラビア数字を読みとり、記録した。

 そして、傍らのレーティングシートに照らし合わせる。

 その作者へ詰問口調で、理性的な触ったら切れそうな冷徹な声が掛かる。

マッドR「何をしているのかしら」

 今日は誰だと思いつつ、そちらを見やるとそこにはマッドRがいた。
 作者が恐怖で硬直していると再度マッドRは詰問した。

マッドR「今日は気分がいいから、もう一度聞いて上げる。
     何をしているのかしら」

 切れそうな冷徹さに変わりは無いが、そこに含まれる危険性は爆発的に増大していた。
 作者は人間としての尊厳の危機に渾身の力を発揮して、硬直する口を従わせた。

作者  「い……いえ。
     だ……伍話時点で別室になったシンジとアスカを第六話でどうするか決め
     ていたんです」

マッドR「で、結果はどうだったの」

作者  「しょ、少々お待ちを…….」

(レーティングシートをみる作者)

作者  「2ですから、軟弱小僧と戦慄のおぜうの二人同室ですね。
     これで6〜8だと面白かったんですが」

マッドR「あら、どうして」

作者  「それが出ると無表情少女も同居でした」

マッドR「一体、その数値の根拠は何なの?」

作者  「えっ、読者のアンケートでの比です。
     現在、戦慄のおぜう&無表情少女イベントだと5:3程度のレートになります。
     これに国防少女が絡むと5:2:1ぐらいになりますね」

マッドR「それをこの八面体サイコロで決定している訳ね」

作者  「えぇ、そうです。
     まあ、根本的なストーリに関係のない部分のみですけどね。
     でも、それは八面体サイコロじゃ無いですよ」

マッドR「じゃあ、何なの?」

作者  「よくぞ、聞いてくれました。
     それこそ、汎用菱形運命決定使徒【ラミエルくん弐號】です!!」

マッドR「あらそう」

 面白く無さげにそういってマッドRは、八面体サイコロ【ラミエルくん弐號】を指先で粉砕した。

作者  「あら〜〜〜〜〜ぁ」

マッドR「これで、運に頼るような執筆出来ないわね」

作者  「何の!
     こんなこともあろうかと、汎用菱形運命決定使徒【ラミエルくん参號】が!!」

 そういって、作者は新たな八面体を取り出した。
 今度は只の青い不透明なモノだったが。

マッドR「あら、懲りないわね」

 懐から取り出した拳銃で【ラミエルくん参號】を撃ち砕くマッドR。
 だが、作者は慌てない。

作者  「何の、何の!!
     出ませい、汎用菱形運命決定使徒【ラミエルくん四號・伍號・六號】!!」

 そうするとテーブル脇より、更に新たな八面体三つが出てきた。
 マッドRはいささか疲れた様子で独白する。

マッドR「……何でそんなに特殊なモノ、数持っているの?」

作者  「ふっ、学生の頃D○Dにひたっていた時期がありましてね。
     その時の遺物です。
     他にも四面体に十面体・十二面体。
     あって当然二十面体ときて、トドメに究極・百面体もありますよ」

マッドR「……もう、いいわ」

《ふっふっふ。勝っ……た》

 勝利を噛み締める作者に、マッドRは質問を続ける。

マッドR「でも、最後のパートでえらく血生臭いことになっているわね」

作者  「遺憾ながらそうなっています」

マッドR「そうかしら、遺憾という割にはSS始まって以来の死者乱発じゃない」

作者  「しょうがないじゃないですか。
     あの小さいオーラバトラー(6〜9m程度。ブロペラ戦闘機より小さいです
     )で戦っているんですよ。
     一番動きが小さいから狙ってしまう胴体中央を貫通したら、ほぼ確実にお亡
     くなりになります。
     浮揚戦闘艦の方も同様でダメージコントロールの”ダ”の字も理解していな
     い様な設計みたい(伝令管を使用していることなどから。これを伝わって火
     災が拡がる。)ですから。
     被撃墜数に対する搭乗員喪失率が高くてもしょうが無いですよ」

マッドR「どれぐらいだと思っているの?」

作者  「オーラバトラーで約30%。
     戦闘艦の方は艦長次第ですね。
     大体15%程度ですか。
     ただし、伍話では異世界に放り込まれて多少兵が暴走気味なのでそれぞれ
     70%/50%程度だと考えてます」

マッドR「ついでに他の機動兵器では?」

作者  「標準的には18m級MSで約3%、15m級小型MSで10%程度。
     HMで1%以下だと思っています。
     戦闘艦艇の方では、ちょっと変動しやすいですけど3%程度ぐらいですか」

マッドR「チョット少な過ぎはしないかしら?」

作者  「そうですか?
     例えば、第二次世界大戦でドーバー海峡挟んでろくな防御のない航空機が入
     り乱れて戦った【バトル・オブ・ブリテン】なんかでは、被撃墜機に対する
     搭乗員喪失率を見ると20%程度なんです。
     要するに旧日本軍みたいに自ら望んで死ぬような真似 -脱出できるのに脱出
     せず機体と運命を共にする- をせず、充分な救護活動がありさえすれば、あ
     の当時の脆弱な英独航空機ですら、その程度の損失で済むという良い例です
     ね。
     いわんや、防御が堅く脱出装置が充実しているMSをや、ってところですね」

マッドR「でも、それは航空機でしょう。
     陸戦兵器に近い機動兵器には当てはまらないのではないかしら?」

作者  「装甲車輛に目を向けるともっと条件は良くなります。
     戦車の方を見ますと、第何次か忘れましたが中東戦争でも搭乗員損失率は
     20%以下だったようです。
     極端な例だと湾岸戦争何かじゃ、イラク側はおいといて多国籍軍側では、
     精々負傷による後送が良いところで、中には味方主力戦車に装甲車が防御
     の薄い後ろから誤射されて、車輛は行動不能で全損したが搭乗員は全員無
     事なんていう事例の報告も数件あります。

     まあ、それなのに今回血生臭いのは、戦いがどんなに下劣でおぞましいも
     のか判って貰う必要があったのですけどね」

マッドR「どうしてなのかしら?」

作者  「次でシンジくんにもう一へこみして貰いますから。
     ただへこむだけでは、彼の繊細な心が受けた衝撃を理解でき無いじゃないで
     すか。
     彼が放り込まれた世界の一端を少しでも理解して貰う必要もありましたから。

     まあ、この話はこれぐらいにして、質問良いですか?」

 その問いに応じるマッドR。

マッドR「何を聞こうというのかしら」

作者  「質問があったもので。
     では、質問です。
     『何故、Mカレーを軍事転用しないのですか』(関西・神田くん・??才)
     だ、そうです」

マッドR「そんなことなの」

作者  「そうです」

マッドR「簡単な事よ。
     ……動かないのよ、組み込んだ物品の悉くが」

作者  「はぁ!?」

マッドR「取り敢えず、手始めにミサイル作ってみたの。
     61%が全く機能せず。残り28%が明後日の方向へ飛んでったわ」

作者  「あの……残り11%は?」

マッドR「製造直後に原因不明の爆発を起こして失われたわ」

作者  「そうなんですか」

マッドR「そうなの。
     他にも砲弾やロケット弾、挙げ句の果てには地雷まで作ってみたけれど似たようなものよ。
     とかく、この世は謎ばかりね。
     ミサトが絡むと、事象の全てが歪曲しかねないわ。
     ……それはそうとして、ワタシの質問にも答えて貰うわ。
     どうして、ショウ・ザマは【ボテューン】に乗ることになったの」

作者  「良いんですか、云っちゃって」

マッドR「無論よ」

 マッドRがそう言ったとき、辺りから光が途絶える。

マッドR「わ……ワタシじゃ無いわよ」

 そこへボソッと声が響いた。

作者  「バグ……」

マッドR「ひっ!」

作者  「バグバグバグバグバグバグバグバグバグ、バァ〜グゥ〜〜〜ゥ!!」

マッドR「ひ〜〜〜ぃ!」

 そこで明かりが灯った。
 そこには、勝ち誇る作者と座り込み肩で息をするマッドRが居た。

作者  「と、まあゲテモノ好きの嫁き遅れをイジめるのはこれぐらいにして、と。
     この件はこのSSの原作世界で起こった現象が原因でこうなりました。
     詳しく云うと専用機であるはず【ビルバイン】より【ボチューン】の乗り換
     えた方が攻撃力が上がってしまうんです。
    (乗り換えるだけで最大攻撃力が40%以上上がるんだもんな〜)」

 合いの手を期待するが、マッドRは依然として復活しない。
 何やらブツブツと云っているようだが、まあ置いておこう。

作者  「同様の理由でスーパーロボット系のオリジナル主人公シドルーの恋人も当然
     NTです。
     他にも、出来ることならバグネタやりたいですねぇ、ハッハッハ。
     あの〜聞いてます?……まだ、復活できないのかな?」

 横をみるとマッドRは一向に回復する様子が無い。
 彼女がこのまま復活しないとSS連載に支障をきたす。
 しょうがないので作者は、ショック療法を試みた。

 マッドRの耳元に口を近付け、囁く。

作者  「面クリ前に変形すべからず」

マッドR「ひぃ!」

作者  「夢は夢うつつ幻。
     忘却の彼方にごあんなーい」

マッドR「ひぃぃ!」

作者  「暴走で記録吹き飛ぶ、メモリージェノサイド」


 プチッ


 作者はその様な音を聞いたような気がした。

《ま、まずいかもしんない。》

 危機を察して作者が逃げるよりも速く、作者の首には無痛注射器が当てられていた。
 無論手にしているのは、マッドRだ。
 プシュッと云う音と共に作者の身体から力が抜ける。

マッドR「(クスクス)いいわ、いいのよ。ワタシにはもうコレしかないの。
     ワタシをイジめる様な人は、優しくなれるよう改造して上げる。
     ふふっ、ふふふふふ。
     おーほっほっほっほ」

 そう言って、マッドRは動けなくなった作者の首根っこを捕まえて、立ち去っていく。

 だが、数歩歩いてマッドRは振り返った。

マッドR「そうそう、忘れていたわ。
     ……この次もサービスして上げるわ」

 そして、彼女は作者を引きずって、闇へと消えた。


ps.この次は暫定板設定資料作成と6話詳細プロット作成でチョット遅れます。





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