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「よう、どうした?」

 そう言って、パイロットスーツ姿で格納庫中程に設けられたキャットウォークより漂
い来る男が居た。

 その声を聞いて、何かの部品箱に腰掛けながら今まで手に持っていたやや大きめのペ
ンダントに視線をやっていた少女は、顔を上げた。

 短かめの栗色の髪が少女の頭の動きを追い掛けるようにして、揺れる。

「あっ、大尉...」

 慌てて立ち上がり、敬礼を行おうとする少女。
 だが、大尉と呼ばれたパイロットスーツ姿の男は、笑いながら言った。

「おいおい、大尉はやめてくれって言ったろう。
 『マッハ・ザ・サード』とか、『偉大なるマッハ様』とか、はたまた『親愛なるマッ
 ハ隊長』って呼んでくれって言わなかったか?
 まあ呼び辛いってなら、ぎりぎり妥協して『マッハのおじさま(はぁと)』で勘弁し
 てやらんでもないがな」

 歴戦の勇士が言い出した無茶な内容にどう反応すればいいのか、少女は戸惑う。

「『マッハのおじさま』...ですか?」

「違う、『マッハのおじさま(はぁと)』だ。
 心の奥底から溢れだす親愛の情を込めてじゃないとダメだ!」

「...そうなんですか?
 じゃあ、ムサシとケイタにもそう言っておきます」

「云わんでいい。
 野郎に、親愛の情しめされても嬉しくない!」

 それを聞いて、戦略自衛隊特別教育隊より地球連邦軍地球軌道艦隊へ派遣された少女、
霧島マナは吹き出していた。






スーパー鉄人大戦F    第伍話〔救出:A hero's duty〕
Dパート


<ウラル山脈西側>      


 明らかにその一室は、通常の基準からは外れていた。
 無論部屋の大きさのことだけではない。
 その呆れるほど大きな部屋には、さり気なく、それでいて少なからざる極上の絵画や
美術品などがひしめいている。

 その部屋へ男の鋭い一声が疾る。

「申し上げます!」

 昨日今日着始めたようには見えようもない着こなしで、戦装束に身を包んだ男が跪い
た。

「どうした、申してみよ」

 跪いた男の向かう先には、犯しがたい雰囲気を漂わせた年の頃17、8の少女が玉座
に座っていた。

 その少女は、切り揃えられたライトグリーンの長い髪と見た目麗しい美貌、そして全
てを見通しているような神秘的なピュアピンクの瞳を持ち、同年代の少女であれば一度
は着てみたいと思わせる派手ではあるが嫌みを感じさせない技巧溢れる長衣に身を包ん
で、その腰には見事な錦の飾り布を締めていた。
 そして、その声は鈴を転がすように華麗であったがよく通っていた。

 バイストンウェルはナの国の女王、シーラ・ラパーナである。

「はっ。
 各斥候隊の報告を申し上げます。
 北方1000リーグ先に凍てつく海、南方1500リーグ先にて見たこともない巨き
 な湖、西方1000リーグは果てしない大平原、東方200リーグには南北に広がる
 大山脈との報告がありました」

 その報告に威風堂々たる立派な戦装束に身を包んだ逞しい壮年の男が応じた。

「うむ、報告大儀である!
 ...シーラさま、この様な地形は、バイストンウェルでは聞いたことがありません。
 やはり、ここは...」

「やはり、ここは間違いなく地上か...」

 その呟きを聞いて逞しい壮年の男、ナの国の宿将カワッセ・グーがシーラに問い掛け
る。

「しかし、フェラリオがここまでコモンの世界に干渉するなど聞いたことがありません」

「それだけ、ドレイクのしたことがバイストンウェルへ害を為したということでしょう。
 いや、それは我らもか...ドレイクの野望を打ち砕くためとは云え、オーラマシン
 という毒を造り出したのだから...」

「ですが...」

「よい。
 まずは、ショウ達と接触することを優先します」

「聖戦士殿...ですか」

「そうです。
 彼の者ならば、よき道を示してくれるでしょう」

「...承知いたしました。
 通信兵っ!」

「はっ!」

 カワッセには、力強く通信兵に命令した。

「全斥候隊へ伝達!
 聖戦士殿との接触を最優先にせよと伝えい!
 だが、引き続きドレイクの者共にも注意を怠るなっ!
 地上人には手を出すなよ!
 行けぇい!」

「はっ!」

 通信兵がカワッセの命を受けて、駆け去っていった。

「...これで宜しゅうございますな、シーラ様?」

「よい...」

 その時、シーラのその流麗な貌には微かに焦りと疲れが浮かんでいた。



<ジオフロント外郭地下ドック・機動巡航艦【アーガマ】>      


「申し訳ありません、僕の一存でスパイを逃がしてしまって...」

 そう言ってダバは、ブリーフィングルームに集まった皆に謝った。
 ブライトが訳を尋ねる。

「どうして、君はスパイを逃したのかね?」

「...僕にはどうしてもあの女スパイ、レッシィがポセイダルの元に居続けるような
 人には見えなかったのです。
 無論僕の独りよがりの勝手な判断だとは判っていますが...」

「そうか、それならばもうこの件に関しては何もいわない。
 だが、他のモノに与える影響もある。
 ケジメは付けなければならない」

 それを聞いて同席していた皆がどよめく。
 それを代表するようにして、同席していたシンジが静かにブライトへ問い掛けた。

「どうして、そうなるんですか...
 スパイは追い払って、みんな助かったんでしょう!
 なのにどうして...」

 それを聞いて答えたのは、ブライトでは無くダバだった。

「ありがとう、シンジ君。
 でも、いいんだ。
 しょうのない事なんだよ。
 人が集まって行動するには、規律が必要だ。
 今回のこともそれを示すだけなんだよ」

 それを聞いて、ブライトがダバに尋ねる。

「では、いいんだな?」

「はい」

「では、処分を下す。
 ダバ・マイロードに三日間の実習室入りを命じる。
 ...それでいいな?」

 ブライトはそう言って、アムロへ視線を向ける。

 アムロは、おもむろに答えた。

「...ああ、妥当なところだろう。
 ダバ君、いいね」

「はい、ありがとうございました」

 その一言が解散の合図となった。

        :

「何でダバが罰を受けなければいけないの!!」

 そう言って、黒髪の少女アムは憤慨していた。
 それをダバが窘める。

「しょうがないよ。
 レッシィを逃がしたのは事実なんだ。
 それでも、一番軽い処罰で済ましてくれんだろうから感謝しなくちゃな」

「う〜ん、もうダバったら優等生なんだから」

 アムの意見に同調するキャオ。

「まったくだ」

 そうして、部屋から出ようとするダバをシンジが呼び止めた。

「ダバさん...」

 心配そうな顔をするシンジに笑顔を向けるダバ。

「大丈夫だよ、シンジ君。
 ブライトさん達も判ってくれている。
 ケジメをつけただけさ。
 ...謹慎が終わったら、また”剣”の練習に付き合って貰えるかい?」

「はい!」

 気持ちよく返事をするシンジの肩を叩きながら、彼らはそこを後にした。



<サイド7第一バンチ周辺空域>      


 昨日よりわだかまっている胸の中の何かを晴らすため、カクリコンから借用した【リ
ーオー】を飛ばしながら、ジェリドは呟いた。

「気が晴れんぜ、こんなモビルスーツ乗ってもよ!」

 先刻【トールギス】の操縦ミスでコロニー内壁へ墜落したジェリドだが、腕が悪いわ
けではない。
 いや寧ろ非常に優秀な部類に入る。

 で無ければ、海の物とも山の物とも知れない【トールギス】の様な機体の搭乗許可な
ど降りよう筈もない。

 ジェリドとしては、適当な性能を持っていれば何でもよかったのであるが、現在ティ
ターンズで正式に運用している機体の中にはDCの優秀な機体に乗り慣れた彼を満足さ
せる機体は無かったのである。

 もし、出来得るならばDCの機体がよかったが、他の部隊では運用されているDCの
鹵獲機体はテロ対策が主任務のティターンズでは運用していなかった(同じ機体を使っ
ていると有視界戦闘が基本のモビルスーツ戦では問題がある)。
 しかし、GM系列の機体は、空いている機体が無かったし、空いていたところで癖が
気に入らないジェリドは乗る気もなかった。

 そうなると残っている機体は、この今乗っている【リーオー】だけだが、これがまた
元々の機体コンセプトが『治安維持任務を遂行する際の最低レベルの性能を低コストで
』と云うものだったから、これもまたジェリドの選択肢とはなり得なかった。

 以上の消去法的な結果から、【グリプス】へ試験的に持ち込まれていたOZ製のモビ
ルスーツ【トールギス】を持ち出した訳である。

 だが、その【トールギス】もジェリドの気を紛らわす事は出来なかった。
 寧ろそれは、ささくれ立っていたジェリドの精神を逆撫でしていた。

 カタログスペックは大したモノだったが、実際に乗ってみると設計者はこれに人間が
乗ると云うことが判って設計したのか甚だ疑問な機体だった。

「...やりきれんぜ、全く」

 ジェリドが何に苛立っているのか自分でも判らず、そう呟いたときだった。
 【グリプス】管制室からの通信が入る。

『行動中の全モビルスーツに告ぐ!
 【グリプス】へテロリスト侵入。
 ターゲットは、MP包囲網を抜け、詳細不明の機動兵器にて【グリプス】を脱出した
 模様。
 至急、これを追われたし。
 機動兵器とパイロットの捕獲を第一とするが、抵抗する場合これの撃墜を許可する!
 繰り返す...』

 ジェリドはどこか後ろ暗さのある笑みを浮かべて、通話回線を開いた。

「こちら、【リーオー103】!
 ジェリド中尉だ。
 了解した。
 直ちに追撃を開始する」



<サイド7空域・外縁部>      


 ジェリドがそこへ着いた時には、既に一個中隊以上のMSが煌めきを撒き散らせて統
率のとれないダンスを舞い踊っていた。

 ダンスを舞い踊っているのは、殆どが濃淡の紺色を塗りつけたティターンズカラーの
モビルスーツ【GMクウェル】だった。この機体は連邦量産型モビルスーツの代表格で
ある【GM】をティターンズ向けに改修して再就役させた機体だ。

 そして、中心にいるのは白を基調として赤のアクセントが印象に残る、不格好な鳥の
様な機動兵器だった。
 これが件のテロリストが、乗り込む機動兵器なのであろう。

「またぞろ、試作型モビルアーマーか?
 いや、サイズが小さい。
 まさかな...」

 ジェリドは当初、モニターへ映されたソレはやたら機種が多いことで知られるDCの
機動兵器の内、試作のみで大戦に実戦投入されなかったモビルアーマーかとも思った。
 が、通常高い火力と凄まじいまでの高速性能を追求されることの多いことから大型化
する傾向にあるモビルアーマーにしては、かなり小さい。
 ジェリドは脳裏に前大戦では敵に廻して戦ったある機動兵器を思い出す。

「まさか...とは思うが、TMS(Transformable Mobile Suit/可変型モビルスーツ
 )か?」

 その間にも、先に血生臭いパーティを始めていたティターンズのMS隊がテロリスト
が乗り込んでいると思われる正体不明の機動兵器を追いつめていた。

「【リーオー103】より追撃隊リーダーへ!」

『おうっ!
 こちら【ジョリーロジャース102】、ブライアンだ。
 そっちは【リーオー】だろう。
 腐れMSで出張ってきてご苦労だが、テメエの出番はねえ!
 おとなしくそこで見てろ!』

 ブライアンと名乗った【ジョリーロジャース】リーダーは、ジェリドは通信の意味を
早とちりしているらしい。

「そうじゃない!
 その機動兵器に気を付けろ!
 もしかするとTMSかもしれんぞ!」

 だが、ジェリドの忠告も追撃隊には届いていないようだった。

『TMS〜ぅ?
 だから、どうしたってんだ?
 あんなデク、怖かないぜ!』

 【ジョリーロジャース】リーダーの言うとおりだった。
 確かに追い掛けられている機動兵器は逃げる一方で反撃してこない。
 追撃隊が増長するのも無理はなかった。

 そうして調子に乗る追撃隊が、その機動兵器を取り囲み退路を断ったときだった。

 その機動兵器は一瞬の間に変形を終えた。

 それを見て、ジェリドは驚きの声を発していた。

 その機動兵器が変形して人型になったことではない。
 その頭部が、ジェリドに確執を感じさせる特徴を持ってからだ。

「あれは...ガンダム!」

 吐き捨てるように言い捨てるジェリド。
 そう、それは間違いなくガンダムだった。
 前大戦の重大な局面で、必ず彼の前に立ち塞がり、苦渋を舐めさせられ続けた因縁の
機体だ。

 ジェリドは反応の悪い【リーオー】を何とか戦闘空域へと近付けつつ、再度忠告を発
する。

「【ジョリーロジャース102】!
 あれはガンダムだ!
 気を付けろ!」

『【リーオー103】へ!
 こっちでも、見えている!
 あんなの虚仮威しだ!
 臆病風に吹かれたなら、さっさと帰るんだな!
 オーバー。』

 そう言って通信を打ち切り、ガンダムもどきへ攻撃を行う追撃隊の【GMクウェル】。

 だがそのガンダムは、小五月蠅い追っ手に辟易したように、今までの逃げの一手から
、GM等とは比べモノにならない機動で一気に行く手を塞ぐ正面の【GMクウェル】の一
群との間合いを詰めた。

 迂闊にも逃げ回ることしかしていなかったガンダムの打って変わった積極的な行動に
、その三機の【GMクウェル】は対応できなかった。

 ガンダムと【GMクウェル】は一瞬のランデブーを閃光の軌跡で飾って、離れ去った。

 そして、赤い爆光が3機の【GMクウェル】を包む。
 無論、撃墜された機体からは脱出ポッドにて脱出している。
 が、その数は2つしかなかった。

『野郎!
 ヒンギスを殺りやがった!
 殺りやがったな、このクソヤロー!!』

 僚友が葬り去られたことで完全に冷静さを失ったらしい【ジョリーロジャース】リー
ダー。

『【ジョリーロジャース】全機!
 プロペラント(推進剤)残量何ざぁ、構うなっ!
 全力加速っ!
 あのクッソタレに全弾叩き込んで地獄にブチ込んでやれっ!』

『『『了解っ!』』』

 理性をかなぐり捨てた【ジョリーロジャース】リーダーの指示に、同じく理性を月軌
道外へ放り投げたらしい部下の返答が返る。

「おいっ...」

『やかましい!
 仲間を殺られて引き下がるとは、キサマそれでもティターンズか!』

 ジェリドが諫めようとするが、既に彼らは聞く耳を持っていなかった。
 忠告に罵声で答え、一目散にガンダムを追った。

《馬鹿野郎!
 死にたいのかっ!?》

 ジェリドは、心の中でそう叫んで彼らの後を追った。
 そうしたときだ。

 背中を見せて飛び去ろうとしたガンダムがこちらへ向き、その大型ビームライフルら
しい銃器をこちらへ向けた。

 だが、その銃は機動兵器同士の戦闘で使用するには大き過ぎた。
 この様な大型銃は、質量が大きすぎるため、白兵戦を繰り広げているこの場では、多
数の追撃機の内、ただ一機のMSの機動を追尾することすら困難を極める。

『フンッ!
 そんなドデカいだけの銃なんざぁ、怖いものかよ!』

 そう【ジョリーロジャース】リーダーが言い捨て、回避機動を一層激しくして迫った
時だった。

 ガンダムは、その凶器のトリガーを引き絞った。
 銃口から信じられない量の光流が、追っ手たちへと延び拡がった。

『『『『『『なっ...』』』』』』

 それがティターンズ第2MS大隊所属第105MS中隊【ジョリーロジャース】の面
々が発した最後の言葉となった。

 光の瀑流の飲まれ、一瞬掻き消える【GMクウェル】達。

 そして、光流の通り過ぎ去りそのシルエットが現れたがそれも一瞬。
 彼らは真球の光となった。

 追っ手が全て無力化したことを確認すると、ガンダムはサイド7へ背を向け再び鳥の
ような形態へと変形し飛び去った。

        :

 【ジョリーロジャース】達からは離れており、歴戦の戦士だけに許された直感に従っ
たジェリドは、機体の半身を焼かれ行動不能に陥りつつも間違いなく生きていた。
 そのコックピットで激昂するジェリド。

「何故だ!
 何故、またオレの前に現れるっ!
 オォォォォ〜〜〜〜〜ォ、ガァンダァム〜〜〜〜!」



<ジオフロント外郭地下ドック・機動巡航艦【アーガマ】>      


 ここは、機動巡航艦【アーガマ】後部に特設されたEVA整備格納庫ブロック内の一
室。

 ここを自らの居城と定めたのは、誰であろう特務機関【ネルフ】技術部々長、赤木リ
ツコである。

 神速の速さで自らの機材・資料・その他を【アーガマ】へ持ち込んだリツコは、割り
当てられたこの一室を極短時間で完全に自分の色に染め上げていた。

 そのデスクの端末を小気味よくタイプしていた彼女は、最後に気持ち力を込めてキー
を叩き、端末への入力を終える。
 そしてイスごと振り返り、問い掛けた。

「報告して貰えるかしら、レイ?」

 そう振り返った彼女の正面には、常に無表情を崩さない少女が佇んでいた。
 無論、EVA零号機パイロット・綾波レイである。

 リツコの言葉に頷き、答え始めるレイ。

「...報告します。
 本日0740、初号機パイロット及び弐号機パイロットと合流。
 同...」

「そんな関係ないところはいいわ。
 【アーガマ】艦内案内から先の報告をして頂戴」

「了解しました。
 同1045、【アーガマ】内私室へ。
 同1100、弐号機パイロットと再合流。
 同1120、初号機パイロットと再合流。
 同1130、【アーガマ】食堂にて軽食を摂取。
 同1250、【アーガマ】トレーニングルームへ。
 初号機パイロットと弐号機パイロットのトレーニングに同席。
 同...」

「ちょっと待って。
 ...初号機パイロットと弐号機パイロットがトレーニング?
 一体何をしていたの?」

「弐号機パイロットによる初号機パイロットの格闘訓練です」

「それでレイの所見では?」

「弐号機パイロットの指導は実戦的すぎて、初号機パイロットの技量では不適当かと思
 われます。
 また初号機パイロットの体力的な問題も見過ごせないと思われます。
 訓練終盤では、オーバーロード直前でした」

「そう、他には何かある?」

「初号機パイロットのオーバーロードを無視する弐号機パイロットに代わって、異星人
 協力者ダバ・マイロードが剣術の相手と称して初号機パイロットを弐号機パイロット
 から引き離しました。
 効果的なストレッチの後、初号機パイロットの技量に即した剣術の訓練を施していま
 した」

「...その異星人協力者は信用できるの?」

「彼らの言動・行動は、諜報活動を行うには余りに感情的で洗練されていません。
 現時点での断定は出来ませんが、過剰な警戒は必要ないと思われます」

 レイが言っているのは、ダバ達がスパイとして教育を受けたにしては余りに裏付けが
有り過ぎることなのだろう。
 一般的にスパイは、短期間で効果的な教育を施されているため、かなり洗練されてい
る。言い換えれば洗練され過ぎて、人間的な泥臭さとでも言うべきモノが乏しいのだ。

「そう、では続けて頂戴」

「はい...
 同1430、【アーガマ】下層格納庫にて異星人機動兵器の見学。
 同1442、同格納庫にて異星人間諜を発見・交戦し各協力者と合同で撃退しました」

「...もう少しその戦闘を詳しく報告して貰えるかしら」


「同1442、【アーガマ】下層格納庫にて異星人間諜を発見。
 同1445、弐号機パイロット、敵間諜へ接触・交戦。
 同1447、敵間諜により弐号機パイロット制圧。
 それを...」

 何故かそこで言い淀むレイ。
 そのレイの様子を見ながら、先を促すリツコ

「それをどうしたの?」

「...申し訳有りません...報告を続けます。
 同1447、制圧された弐号機パイロットのカバーをすべく、初号機パイロットが敵
 間諜との戦闘に参加。
 初号機パイロットの制圧直前に保安部第四課加持一尉が戦闘に参入。
 同1449、異星人協力者ダバ・マイロードの登場で敵間諜の逃走を確認。
 同1450、弐号機パイロットの状態確認。
 緊急対処の必要性の無い事を確認の後、初号機パイロットの状態を確認。
 極度の戦闘ストレスにより全身硬直を起こしていたので、弛緩方策を施術。
 同1454、救急チームの派遣を要請。
 同1510、赤木博士の召還により此処へ出頭いたしました」

「いくつか、質問をしていいかしら?」

「はい」

「初号機パイロットや弐号機パイロットの交戦中、アナタは何をしていたの?」

「通話機による加持一尉と異星人協力者ダバ・マイロード他、【ロンド・ベル】隊員の
 誘導を行っていました」

「貴方自身が交戦に参加しなかった理由は?」

「敵間諜の戦闘能力が、こちらを完全に上回っていたからです。
 接触開始時の戦力では、最良の結果で150秒程交戦時間が延びた程度で全員制圧さ
 れていたと思われます」

「それほど高い戦闘能力だったの?」

「はい。
 あの脅威に対抗・制圧可能な人物は、異星人協力者ダバ・マイロードだけだと思われ
 ます。
 辛うじて対抗可能なのは、加持一尉・葛城三佐・他【ロンド・ベル】ニュータイプの
 数名だと考えます」

「何故そう思うのかしら?」

「敵間諜はその反射速度が常人の域を超越しています。
 これに対抗するには、より高い反応速度を持って当たるか、戦闘経験による先読み、
 又はその両方が必要だったと思われます」

「...よく判ったわ。
 では、レイ...最後に一ついいかしら?」

「はい、問題有りません」

「初号機パイロットに施した硬直弛緩の内容を教えて頂戴」

 いつもよりホンの少し、そうホンの少しだけ躊躇いがちにレイは答えた。

「....双方口唇部による一時接触にて硬直弛緩を試みました」

 その回答にイスからズレ落ちそうになるリツコ。

「レイ!?」

「はい、何でしょうか?」

「どこでそんなこと憶えたの?」

「一般的社会知識の資料として、伊吹二尉より渡された本に記述されていました」

「どこに書いてあったの?」

「『青春爆走』第三巻・112p・4行目に」

「どのような内容の記述をしていたの!?」

「私と同世代の男女が何かの原因で硬直に陥りましたが、それを双方口唇部による一時
 接触にて状態の解消に成功したとの記述がありました」

「...そこには『好き合った二人が』とか云う記述はなかった?」

「ありました」

「では、何故その状況に初号機パイロットを当てはめたの?」

「対象者が硬直していたことを重視しました」

「『好き合った二人が』の部分は?」

「理解できなかったので、考慮しませんでした」

 その回答にリツコは溜息を付きつつ、レイに指導する。

「...レイ、そういう大事なことを無視しないように。
 『好き』って云うのは、何よりもその人のことが大事に思えて四六時中頭から離れな
 い様な状態のことを云うのよ」

「では、問題有りません。
 現在、私は最優先項目として最大の戦闘能力を持ちながら作戦遂行能力に問題のある
 初号機パイロットのカバーとその為の有効な戦術を常時思案しています」

 この時点でリツコは、この件の追求を諦めた。

「......あらそう......」

 その返答が、如実に彼女の内面を映し出していた。

「退出して宜しいでしょうか?」

「...許可します。
 初号機パイロットに『アスカは私が看ておきますから1900に迎えに来るように』
 と伝言をお願いするわ。
 以後の行動は、初号機パイロットと所在を同じにすること。
 いいわね?」

 その指示に対するレイの答えは、何かを急ぐようにいつもより短かった。

「...了解」



<旧合衆国マサチューセッツ州ボストン市郊外>      


 彼は、微睡んでいた。
 幼き日よりの馴染み親しんだ陽の暖かさを身体一杯に浴びながら、様々な夢を見なが
ら。

 ...幼少の頃、トモダチと川で遊んだ事
 ...小学校へのスクールバスを待ちながら、やっていない宿題の言い訳を考えあぐ
    ねた事
 ...気になるあの子にどうやって声を掛けようかと悩んだ事
 ...始めてのキスの事
 ...空軍士官学校に進むと決めたときの事

 そして、その夢があのバイストンウェルへ喚び出された時のことへと移った時、彼は
絶叫して目覚めた。

「うぉおおぉぉぉぉぉ〜〜〜〜!
 ...おっ?」

 彼は流れ落ちる汗を拭いながら、辺りを見回した。
 そして、再び驚愕する。

「何ぃっ!
 ...ここは...オレの家じゃないか...」

 そこで彼が見たモノは、二度と目にすることはあるまいと思っていた、生まれ育った
町並みと...そして自分の家だった。

 彼は信じられぬモノを見たようにぎこちない動きで更に周囲の様子を窺う。

 そこには、警察の進入禁止テープの向こうの群衆と何人かの警官だった。

 群衆にも、そして近くに居る警官にも彼は見覚えがあった。

 それを見て、彼は堪らず自分と彼らとを隔てている装甲板を開いていた。
 辺りの群衆がどよめいた気がするが、彼には気にもならなかった。

「トーマス!
 ジェリー!
 オレだよ、トッドだ!
 トッド・ギネスだ!!」

 その呼び掛けにトッド・ギネスが乗るオーラバトラー【ビアレス】を取り囲んでいた
警官の内、二人が反応した。
 
「「トッド...か?」」

「そうだ、お前達と一緒に学校の屋上から小便垂れて大目玉食らったトッド・ギネスだ!」

 それを聞いてその二人から、猛獣を相手にしているような緊張感が解けた。

 群衆の中から年輩の女性が出て、叫んだ。

「トッド!
 トッドなのね!?」

 その女性を見て、トッドは今度は歓喜の叫びを上げた。

「ママ!
 ママじゃないか!!
 逢いたかったよ、ママッ!!」

 そう言ってトッドは、【ビアレス】を飛び降り、駆け寄ってきた母親を抱擁した。

 そこへトーマスと呼ばれた警官の詰問が入る。

「確かにトッドのようだが、このロボットは何だ!?
 大体、貴様訓練中の事故で死んだんじゃなかったのか!?」

「何だよ、いきなりだな。
 でもよ、こっちでも色々訳有りで、ここではチョット言えないね」

「やはりキサマ、トッドの偽者だろう!」

 それを聞いて、眉をひそめるトッド。

「いいのか?
 このオレにそんなこと言って?」

 そう言ってトッドはビシッと自分の顎を親指で指しながら、意地の悪い笑みを浮かべ
た。

「なっ、何を言っている!?」

 トーマスと呼ばれた警官が怯む。

「そうか、言わなきゃわからんか...」

 トッドはそこでアメリカ人らしくオーバージェスチャーでワザとらしく溜息をつき、
そして大きく息を吸って言った。

「あれは...そう...7年前の...風薫る春のことだった...
 それまでいつもツルんでた俺達三人のなのに、トーマス!
 そう、お前だけが隠れるように一人で川の方へ行くんだ...
 オレはジェリーと一緒に後を追って...そして、見たんだ....
 そう、そこにはメア...」

 そこまでトッドが口にしたところで、一発の銃声が鳴り響いた。
 その音を聞いて、トッドは言うに及ばず、母親、周りの群衆が一斉に屈む。

 一瞬の間を置いて皆が顔を上げてみると、そこには貌を真っ赤にして銃口から煙をた
なびかせた銃を天に向けるトーマスがいた。

「てっ、てめぇ!
 そいつは云わねぇ約束じゃなかったのか!?」

 それを聞いて皆が爆笑した。
 それはもうどこかタガが外れたように。

 ジェリーと呼ばれた警官が腹を押さえて、トーマスの肩を叩きながら、

「まっ、間違いねぇよ...(イッヒッヒッヒ)...アイツはトッドだ(ヒッハッハ)。
 あのこと、知っているのは...トッドとお前とアイツとメっ」

 トーマスは、今度はジェリーが禁断の単語を口にしようとしたのを、正義の鉄槌を与
え黙らせた。

「その先言うんじゃねぇ!
 このバカトッド!!
 署でキッチリ搾ってやるから、さっさと来い!」

 そう言って、トーマスは大きな足音を立ててパトカーへと向かった。

 他の警官は苦笑しながら、集まった群衆を解散させている。

 トッドは母親に

「心配しないでいいぜ。
 すぐ帰ってくるからさ」

 と言って抱きしめ、トーマスの後を追った。



<機動巡航艦【アーガマ】EVA整備格納庫ブロック内リツコ研究室>      


「さて、今度はアスカね...」

 そう言って、リツコは施術台に載せられたアスカに目をやった。
 ついさっきまで端末に継ながれ、調整が施されていたヘッドセット・インターフェー
スを手に彼女へ近寄った。

 台の横まで来たところで、リツコはアスカの顔に手を添えて言った。

「アスカ...ごめんなさい...
 今まで苦しめてしまって...
 でも、安心なさい...これでアナタは楽になれるのだから...
 戦いに赴くのは仕方のないことだけれど...もうこれからは四六時中苦しめられる
 ことは無いわ...
 ね、アスカ...」

 そう言って、アスカの頭に装着されている古いヘッドセットインターフェースに手を
掛ける。
 その時だった。

 今まで静かだったアスカが、急に目覚めままならない身体を無理に動かしながら、リ
ツコの手を払った。
 そのアスカの目は狂的な光を宿しつつもどこか虚ろだった。

「...サワルナ...」

 リツコはその様子を見て、理解した。

《こんな事にまで暗示を掛けて!!》

 微に入り細に入り、不必要なまでに人を弄り廻すドイツ支部のやり方に反発を覚えな
がらもリツコはアスカを鎮めようとする。

「アスカ、アナタに危害を加える気は無いの。
 インターフェースを取り替えさせて貰えないかしら?」

 リツコの話も、今のアスカには只の戯れ言でしかないようだ。
 再び感情が感じられない口調で答えた。

「...ウルサイ...」

 リツコは溜息を吐きつつ、最終手段を採ることにした。

「...出来れば、やりたくなかったのだけど...しょうがないわね。
 謹聴...誓言...希望...祝福...開錠...
 適格者、約束されし運命の子、惣流・アスカ・ラングレー。
 束縛よ...退け


 それを聞いて、アスカは抵抗を止める。
 狂的な光のおさまった目は、ただ虚ろだった。

「...ハイ...」

 些か緊張した空気の中でリツコは、アスカの頭に着けられたヘッドセットインターフ
ェースを外し、新しいソレに付け替えた。

 リツコは手の中の古いインターフェースを能面のような冷たい無表情で暫く見つめる。

 そして、何の前触れも無く...握り潰した。

 手に残った先程までインターフェースであったモノの残骸をゴミ箱へ投げ捨て、一息
吐いてアスカの頭をその胸に抱きしめた。

 その手で髪をすきながら、沁みいるように独白した。

「もうこれでアナタを縛る枷は無いわ。
 羽ばたきなさい、キョウコさんから分け与えられたその才を活かして...
 あの人が、命を懸けてまで護ろうとした未来を創るために。
 だけど、今は少しお休みなさい。
 アナタの待っている人が迎えに来るまで」

 それに虚ろな目をしたアスカが答えた。

「...ハイ...」

 その答えは虚ろだったが、いつの間にか虚ろな目からは涙が溢れ流れていた。



<サイド7第三バンチ【エヴァーグリーン】>      


 その家で長い銀髪が印象的な逞しい男は考えに耽っていた。

《あの時、連中に手を貸したのは間違いではなかったのだろうか?》

 それは前大戦で自らの所属する組織が存在理由 -外宇宙よりの驚異に対抗する- を忘
れ、異星人と手を組んだことを知り、【ロンド・ベル】と共同戦線を張ったことだ。

《いや、あの時はああせねばならなかったのだ!
 いやしくも彼方より驚異より来る地球を守るために成立した筈のDCが、事もあろう
 にそれと異同合従するなどあってはならんのだ。》

 その想いを握り締めるように、拳を固める男。

《...だが、その結果はどうだ。
 自らの役目すら忘れ果てた輩がのさばる、堕落した連邦が在るだけではないか!
 これでは、志半ばで死んでいったモノたちに申し訳が立たん!》

 その拳は爪が肉に食い込むまで堅く握り締められ、微かに血すら滲み始めていた。

 不意にその拳へ小さな手が当てられた。

「!!」
「おじちゃん、どうしたの?」

 無邪気な声が男に掛けられた。
 それは先程助けた母娘の内、娘のエイミーだった。

 その幼い顔を心配げに曇らせて上目遣いに男の顔を覗き込む。
 男は無理をして笑顔を作り、娘の健気な姿に応えた。

「いいや、何でも無い。
 何でも無いんだ」

 そう言って、小さな娘の頭を撫でる。
 娘はそれを気持ちよさそうにして、呟いた。

「おじちゃんの手、お父さんみたい...」

「うん?
 そう言えば、エイミーちゃんのお父さんはどこなのかな」

 その問いに娘は暫く頭を抱えた後、答えた。

「う〜んとね、わかんないの」

「おや、どうして判らないんだい?」

「おかあさんに聞いたけど...【でぃーしー】ってところでエイミー達を守っている
 って言ってるけど、どこにあるのってエイミーが聞いてもお母さん教えてくれないの
 ...
 あっ、おかあさんに【でぃーしー】のこと、言っちゃダメって言われてたんだ。
 でも、おじちゃんならいいよね。
 おじちゃん、知ってる?
 あれ、おじちゃん?」

 娘の話を聞いて、男は硬直した。

 そこへ陰から聞いていたらしい若い母親がエイミーの側へ寄って窘める。

「これ、エイミー。
 お客さんを困らせるんじゃありません。
 すいませ...きゃあ!」

 男は謝る母親と小さな娘を一緒にして、その逞しい腕で抱きしめた。

「すまぬ。
 我らが力の及ばぬばかりに辛い思いをさせてしまう。
 すまぬ...」

 それを聞いて、母親は今まで我慢していた何かが堰き切れるようにして静かに泣き始
めた。

 小さい娘は、よく判っていないようであったが男の抱擁に気持ちよさそうにして身を
委ねていた。



<旧合衆国マサチューセッツ州ボストン市32分署取調室>      


 トッド・ギネスは、ウンザリするほど取り調べを受けた後もその部屋を出ることは出
来なかった。

《まぁ、あんな話されても誰も信じられないだろうな...オレでも信じないぜ》

 そんな事を思いながら腐っていたところへ新たなる人物達が現れた。
 その一目で高級将校と判る面々を見て、口笛を一つ鳴らしてトッドはおどけて見せた。

「へぇ〜、こりゃ厳めしい連中の登場だ。
 で、このオレをどうするつもりだい!?
 まさか、エリア51にでも放り込んで標本にでもするかい?」

 その物言いに、後ろにいたゴーグル姿の大男が怒声で応じた。

「貴様、何だその言いぐさは!!
 望み通り、宇宙空間にでも放り出してフリーズドライして標本にでもしてやろうか!!」

 それを最後尾から、いささか生え際の後退した白髪の眼光鋭い一筋縄ではいきそうに
ない年輩の男が進み出て窘めた。

「やめんか、バスク!
 そのような事をしに来たわけではないぞ!」

「ですが、閣下...」

「言うな!
 この非常時だ、時間が惜しい」

 そのやり取りをみて、トッドは男達に質問を発する。

「よう、威勢がいいねぇジイサン。
 アンタ、一体何者だい?」

「この...」

「よい、黙っていろ!
 申し遅れたな、ワシは地球連邦軍中将ジャミトフ・ハイマンだ」

 トッドは、感心したように口笛を一つあげて、更に質問を重ねる。

「そのお偉いさんが、こんな田舎町の警察署で尋問されているこのオレに何の用だい?」

 それを聞いて、ジャミトフは背後にいるもう一人に向け指を振った。
 そうするとその男はブリーフケースから写真をトッドとジャミトフの間にある机に出した。

 そこには、赤黒い物体が克明に写っていた。

「【ウィル・ウィプス】!?
 なんでコイツが...
 もしかして、地上に出ているのか!?」

「やはり、知っていたか...」

「ジイサン、どう言うことだい!?」

「それはこちらが聞きたい。
 ...まあ、それは置いておくとしてだ。
 貴様に頼みがある」

「ほう、何を頼もうってんだい?」

「何、簡単なことだ。
 このネバダに現れた【ウィル・ウィプス】とやらへ、ワタシの親書を運んで貰いたい。
 それだけだ」

 今一度、ジャミトフは背後にいる先程の部下に向け、指を振った。
 すると今度は、やたら仰々しい封書を机の台上に出した。

 再び用件を確認するように口を開くジャミトフ。

「これをその戦艦まで運んで貰いたい。
 出来るだろう。
 あの【オーラバトラー】とか言う連中と同じ機動兵器に乗っていた貴様なら」

 封書を手にとって色んな方向から眺めながら、トッドは聞いた。

「もし運ばなかったら、どうするつもりだい」

「どうもせんさ。
 利敵行為を行った咎で一生外へ出られなくなるだけだ、ギネス候補生」

 トッドは、目の前の老人が自分の事を【候補生】と呼んだことから理解した。
 まだ自分が、軍籍に在ると言うことだ。

 即ちそれは候補生であるトッドの処遇など、連邦軍中将たるジャミトフの胸先三寸で
どうにでも出来ると言うことなのだろう。

 トッドは、憤慨してジャミトフへ非難の声を浴びせかけた。

「きたねぇぞ、この野郎!」

 だが、ジャミトフはそれを冷たく応じただけだった。

「すまんな。
 こちらも異星人と戦争状態にあってな。
 余裕がないのだよ」

「ちっ!」

 そう言って、封書を懐に入れるトッド。
 そして、出来うる限り悪態をついて吐き捨てるように云った。

「届けてやるから、さっさとここから出しな!」

 それを聞いてジャミトフは、暗い笑みを浮かべた。



<機動巡航艦【アーガマ】ドリンクコーナー>      


 その一角で【マジンガーZ】パイロット兜甲児は、整備でくたびれた身体を休めてい
た。
 パックのコーヒーに口を付けながら、ぼんやりと何かを考えているようだ。

 そののどかさすら漂い始めたその空間に甲児にとっては馴染みある、溌剌とした空気
を漂わせて訪れる者があった。
 マリア・グレース・フリードだ。

「ハァイ〜」

 そう呼び掛けを受けてようやく、彼女が居ることを甲児は知覚した。

「よう、元気しているか?」

「何言ってんのよ、さっきまでずっと整備手伝ってたじゃない」

「あれ、そうだったけ?」

「そうよ」

 そう言って、小さく頬を膨らませるマリア。

 その姿を微笑ましげに眺めながら、パックコーヒーに口を付ける甲児。

 そうしていてもしょうがないので、甲児はマリアに尋ねた。

「で、何のようだ?」

「用がなければ、来ちゃいけないの!?」

「いいや、そんなことはないさ。
 俺とマリアの仲じゃないか」

 その言葉を聞いて、マリアの表情は一転して真っ赤になってはにかんだ。
 マリアは、照れ隠しに話題の転換を図る。

「そ...それはそうとして、甲児。
 前にマサキ君から通信機貰ってなかった?」

「ああ、貰ってるぜ」

「今大変なことになっているし、マサキに連絡取ってみた方がいいんじゃない?」

 それを聞いて、少し困った表情をする甲児。

「ああ、でもな...どうもあの通信機壊れてんじゃねえかなぁ」

「どうして?」

「この前一度使ってみたんだ。けどよ、うんともすんとも言わねえし、マサキもいつま
で経っても来なかったぜ」

 その甲児の発言から、マリアは一つの推論に至る。
 生返事をした後に取り敢えず、甲児にその推測をぶつけてみた。

「ふうん...。もしかしてマサキ地上に出たけど、迷っていたりして」

「まさか。ははは.........」

 甲児は一応否定して見せ、軽い笑いを続けながら、更に否定するための要因を探す。
 が、全く考えつくことが出来ない。
 思いつく要因のこと如くは、マリアの推測を補完するモノばかりだった。

「...ありえるな」

 眉間に皺を寄せて、ボソリと呟くようにして甲児はのたまった。

「でしょう。マサキってひどい方向音痴だから、今頃南極にでも居るんじゃない?」

 流石にソレはないだろうと、甲児は思ったが。

        :
        :
        :

 同刻、北極圏。

「へーっくしょい!」

 そのどこか時代掛かった大げさなくしゃみをしたのは。緑の髪に意志の強そうな顔つ
きの、丁度少年から青年へと変わり際の男子であった。

 その彼とは誰であろう、中世地球内部にある言われたが、近代になってその存在が否
定された筈の地底世界【ラ・ギアス】で製造された、機動兵器【サイバスター】パイロ
ット、マサキ・アンドーだった。

「マサキ、風邪?」

 何かにつけ、大雑把なきらいのあるマサキに問い掛けたのは艶やかな黒の毛並みが見
事なネコだった。

 その後をつぐようにして、これまた見事な毛並み -但し今度は白- を持つ別のネコが
やや呆れ気味に喋った。

「いくらサイバスターが冷暖房完備だからって、こんニャに、ニャがくシベリアにいた
 ら風邪くらいひいて当たり前ニャ」

 ネコが言葉を喋る(それも2匹も!)異常な光景にも、マサキは動じる様子もなかっ
た。
 まあ当然だろう、彼ら(?)は【ラ・ギアス】で発達した呪法的手段にて、マサキの
無意識から抽出して創られたファミリア(使い魔)なのだ。
 姿形は似ていても、根本的に異なる存在である。

 ただ、その彼らに付けられた名は”シロ””クロ”という、どうしようもなく普遍的
なモノであったが。 -「三日三晩考えた抜いた、自慢のネーミングだ」(本人談)-

 その彼らの指摘に、やや投げやりに言い返すマサキ。

「うっせい、それより早くナビゲータ直しちまおうぜ」

 そういったマサキの手には、ドライバーと予備部品がある。
 どうやら、故障したらしいモジュールの交換をしようとしているらしい。

 その呼び掛けに溜息混じりにネコ達は応える。

「はいはい。ニャンでこういつも壊しちゃうのかしらねぇ」

「甲児さんから呼び出しがあったのは2週間前だからニャあ。もう遅いと思うけど」

「見事に日本だけ避けて地球を10周もしたもんねぇ。どうしたらそんニャ器用ニャこ
 とできるのかニャ」

 本人を目の前にして、好き放題のたまうネコ達を叱るマサキ。

「クロ、シロ、無駄口叩いてないで手伝え!」

 そこで、ふと思いついたように云った。
 限り無くくだらない内容だったが。

「...しかし、これがホントの猫の手も借りたいって状況だな」

 余りのくだらなさに、頭痛がしてきたらしい二匹がボソッとユニゾンして呟いた。

「「もう、お気楽ニャんだから」」

 自らのファミリアが呆れ果てる姿を見て、ふと何故かある二人の顔が思い浮かぶ。

《今頃、どうしているかな...》

        :

 同刻、【ラ・ギアス】ラングラン王宮内錬金学師棟

「ここでこの変数にこれを代入すると...やっぱり、これで式が成立したわ!
 マサキに逢うには、ここへ行けばいいようね」

 その呟きは、間違いなく部屋にいる第一級の美女が発していた。
 ウェーブのかかった長い髪とそこに巻き付けられた飾り布が印象的だ。

 年の頃は、よく判らない。
 20と云えば、その光り輝く美貌がそれを肯定させてしまう。
 はたまた、100と云ってもその何処か神秘的な、風格漂う雰囲気がそれを納得させ
てしまう。

 そんな不思議な印象を与える女性であった。

 彼女が行っているのは、通常の数式の解などでは無い。

 神秘学の発達した【ラ・ギアス】で生み出された、未来を在る程度予測する事を可能
とする【ラプラスの公式】を解いていたのだ。

 端末に表示された地上世界の地図を確認しながら、足元にあった大きな旅行鞄を手に
して、彼女は胸元から取り出したペンダントを見た。
 想いのこもった視線でソレを見つめた後、自分に言い聞かせるように呟いた。

「待っててね、マサキ。
 今、逢いに行くわ」

 そうして、彼女は地上への旅へと向かっていった。

        :

 同刻、【ラ・ギアス】ラングラン王都市街

 誰もいない部屋を見て、額にバンダナ、そしてタンクトップにカッティングジーンズ
というかなりラフな格好をした金髪の少女が、呆然としていた。

 少女の正面には、呼び掛けがあると返事をするフダがヒラヒラと漂っている。

 少女の鍛えられてはいるが女性らしさを十全に主張する手には、手紙らしきモノが力
一杯握られていた。

 少女は引き締まった可憐な顔を何とも言えない表情を貼り付け、その口は半開きでひ
くついている。
 そして、背には妖しげな気配すら漂わせていた。

「ふっふっふっ...
 ここんとこ、訪ねたら生返事ばっかりで相手してくんないと思ったら...
 こんなフダで誤魔化して...
 ワタシを置いて一人で行くなんて...
 覚っ悟して待ってなさいよ、マサキ!!

 少女は、どこまでも闘志満々であった。
 力一杯手紙とフダを握り締めながら、騒々しい足音を引き連れて部屋を出ていった。

 ...ところで一体何の覚悟しろというんだ、おまいさん?



<機動巡航艦【アーガマ】EVA整備格納庫ブロック内リツコ研究室>      


《ふっ、来たわね》

 割り当てられて幾らも立たないその部屋に燦然と君臨するのは誰であろうリツコだ。

 聞き慣れたリズムの足音を入り口周辺に仕掛けたセンサーが関知し、リツコに報告す
る。

 その報告によって、足音の主が部屋に訪れるまでの間に何かを行うには充分の時間が
確保された。

 リツコは、迷わず机の冷蔵機能が備わった引き出しから、アルミ製の円筒形容器を取
り出し、後方にあるステンレス鍋が置かれた台の鍋の周辺へソレを配置した。
 そのアルミ製円筒形容器の置かれた位置は、鍋から付かず離れずの絶妙な位置取りで
あった。

《仕掛けは上々。
 後は獲物が掛かるのを待つだけね》

 そして、リツコは何事も無かったかのようにしてその台に背を向けて、ノート端末が
置かれた机に向かい、座った。

 全ての準備は終わった。

 果たしてリツコの部屋へ、くだんの人物が入ってきた。
 いつものように品のない大きな声と共に。

        :

「リツコー、居る〜!?」

 そう云って、彼女 -ネルフ作戦部々長・葛城ミサト- は、その部屋へ入った。

 部屋の奥には、10年来の旧友兼頼りになるがどこか怪しい同僚がいた。

 ミサトは、振り向くどころか返事すらしない部屋の主に抗議の声を掛けながら近付い
ていった。

「リツコ、居るなら返事ぐらいしなさいよ」

 そうするとようやく応じるリツコ。
 だが、その態度はぞんざいである。
 振り向きすらしないまま、答えただけだ。

「なあに、ミサト?
 こう見えてもワタシ忙しいのよ」

「まあまあ、そう言わないで。
 アスカの様子を聞きに来たのよ。
 こっちに運ばれたんでしょう?」

「えぇ、奥の部屋で寝てるわ。
 生命・身体に異常なし。
 あの【スパッド】とか云う武器で無力化されただけだから、寝かせていればじき回復
 するわ」

「そう、それは良かった」

 それを聞いて安堵するミサト。
 余裕が出たミサトは、辺りを見回した。

 そうすると非常に重大な発見があった。

 何故かステンレスの鍋にしか見えない物体が置かれた台に、程良く冷えていることを
示す汗が滴る缶ビールが鎮座していたのだ。

 半ば衝動的に、だが可能な限り密やかにその台へ近付き、缶に手を伸ばすミサト。
 だが、その手は缶を取らなかった。

 別に勤務時間中の飲酒に気が引けたわけではない。
 隣の鍋から、それはもう酒飲みには堪らない、えも云えぬ香りが漂ってきたのだ。

 ミサトは鍋の蓋をこそりと開け、驚喜した。

 ビールの友に食べてくれと云わんばかりに煮込まれた肉と大根が、手招きしていたか
らだ。

 ミサトは、リツコに一瞬目をやり、気付いた様子がないことを確認すると神速の技で
横にあった竹串を、味がよく浸みていることが一目瞭然な肉に突き刺し、頬張った。

 それとほぼ同時に、馴染みある人生をこの上なく幸せにしてしまう百薬の長に手を掛
け、戒めを解いた。

 そして、よく咀嚼された口の中のモノと一緒に、その黄金のきらめきを飲み干した。

「ぷっはぁ〜〜〜〜〜ぁ!!
 やっぱり一仕事後の一杯は堪えられないわねぇ〜〜〜〜!!
 くぅ〜〜〜〜〜〜ぅ!」

 今更気付いたように、リツコが振り返ってミサトを咎める。

「あら、ミサト。
 何をしているの?」

 得意げな顔をして答えるミサト。

「何をしているって...見てわかんない?
 人生を潤わせているのよん♪」

 そう言って、また鍋の中身に竹串を突き刺し口へ運ぶミサト。
 口をモゴモゴとさせながら、リツコへ問い掛ける。

「(モゴモゴ)...それにしても...(モゴ)...いけるわねぇ...(モゴ、
 ゴキュ)...これ何の肉なの...(モゴ)...牛にしちゃ...(モゴ、ゴク
 ゴク)...ワイルドな味がするし(パク、モゴモゴ)」

 ミサトのその問いを尋ね返すリツコ。

「その肉?」

「(モゴ)...そうよ、この肉よ。
 (モゴ、ゴッキュン)...もう、リツコ勿体ぶらずに教えなさいよ。(パク、モゴ
 モゴ)」

 ミサトのその問いに平然と答えるリツコ。

「あの【オーラバトラー】とか云う機動兵器を動かすのに使われていた駆動組織よ」

「ぶっ!!!」

 それを聞いて、思いっきり吹き出すミサト。

「なっ、なんてモン食べさせるのよ、アンタは!」

 ミサトの抗議が聞こえなかったかのように、のどかな感想を述べるリツコ

「あら、はしたないわね」

「そんなことはどうでもいいでしょ!!
 今はこんなモノをワタシに食べさせた事が問題なんだからっ!」

「食べさせた訳じゃないわ。
 これで何回目かしら、ミサトが勝手に断りもなく、手を付けたのは。
 学生時分から全然進歩無いわね。
 おまけに、就業時間中だというのにアルコールにまで口にしちゃって...」

「うっ...」

 痛いところを突かれ、やり込まれるミサト。

「まあ、勝手にワタシの研究物品に手を付けたのだから、諦めていつものようにキリキ
 リ喋って貰いましょうか...」

 そう云ってリツコはその顔に掛けられた眼鏡を妖しく光らせながら、ミサトに迫った。

 その光景に目に涙を浮かべてフルフルと頭を振って、尻餅をついて後ずさるミサト。

「イ...イッヤァ〜〜〜〜〜〜ァ!」

        :

 ミサトは、その後実に3時間12分37秒に渡って、それはもう事細かな所見をリツ
コから聴取され、様々なデータを提供したそうである。

 いとあはれ。



<ウラル山脈西側>      


「報告します!」

 機敏な動きで通信兵が報告を行わんと、駆け込んできた。

 それを見咎める、ナの国宿将カワッセ。

「何事か!
 シーラ様の御前であるぞ!」

「申し訳有りません!」

 兵の不作法を咎めるよりも報告が聞きたいらしいシーラは、通信兵に報告を促す。

「よい、申してみよ」

「はっ。
 西北斥候隊がクの国オーラバトラー隊と接触っ!
 更に別隊がクの国基幹部隊を発見したとの報告の後、通信途絶っ!」

「シーラ様、如何致しましょう?」

 それを聞き、暫し無言となるシーラ。

 彼女には判っていた。
 それはシーラの血族ラパーナ王家を王家たらしめている力の一つである予知能力が教
えていたのだ。
 このまま、聖戦士たるショウがいないまま戦えばどうなるかを。

 その運命は、王者の器たるシーラを持ってしても逡巡させずにはいられなかった。

《ショウ、私はどうすればよいのです...》

 そこへ新たなる通信兵が報告に入る。

「報告します!
 クの国の斥候隊と思われるオーラバトラーを発見!」

 それを聞いて、カワッセの怒号が飛ぶ。

「何をしている!
 すぐに落とさんか!」

「既に白の七将、ユーマ殿が出陣しております!」

 ちなみにこの『白の〜』とは、『ナの国の白い戦鬼』として周辺各国で恐れられる、
近衛騎士団所属で有ることを示している。

「よし!
 後続がいるとも限らん!
 周辺部隊に警戒を厳にせいと伝えぃ!」

 兵に指示を飛ばした後、カワッセはシーラに耳打ちした。

「シーラ様...間違いなくこちらも発見されました。
 ご決断を」

《これも定めか...》

 シーラは目を閉じてその様なことを思い浮かべた後、決断を下した。

「【グランガラン】発進!
 我らは総力を挙げて、クの国の軍勢を討つ!」



<機動巡航艦【アーガマ】ブリーフィングルーム>      


「ブライトさん、何か判ったんですか!?」

 そう言って、バイストンウェルから地上の帰還を果たした【ビルバイン】パイロット、
ショウ・ザマは、そこへ入ってきた。

 ブリーフィングルームにはブライトの他、アムロ・ミサト・兜甲児・流竜馬などの主
要なメンバーが集まっていた。

「あぁ。
 良いニュースと悪いニュースの両方だがな」

「?
 どういうことです」

「これを見てくれ」

 そういって、プリントアウトされた画像数枚をショウに渡す。

「あっ...」

「チャム、お前は黙ってろ!
 【ゴラオン】と【ゼラーナ】...
 これは【ウィル・ウィプス】!?
 こっちは【グランガラン】と【ゲアガリング】!
 これらは、どこにいたのです!?」

「その【ゴラオン】とか云うのは中南米だ。
 そして【ウィル・ウィプス】はネバダ。
 そして、【グランガラン】と【ゲアガリング】はロシア・ウラル山脈の西側で確認さ
 れた。
 これが良いニュースだ...」

 その奥歯に物の挟まったような物言いに突っかかる甲児。

「で、悪いニュースは何なんだい!?」

「最後に見せた、それぞれの巨大戦艦を中核とする2つの部隊の戦闘が始まっているら
 しい」

 それを聞いて、無言で拳を握り締めるショウ。

 更に続けるブライト。

「...ここで我々に取れるオプションは二つだ。
 この【グラン・ガラン】とか云う連中の加勢に行くか、【ゴラオン】と合流するかだ。
 ここは、各部隊の内情に詳しいショウ君の意見を聞きたいと思うのだが?」

「いくつか質問をいいですか?」

「構わない」

「この【ウィル・ウィプス】はどうしています?」

「現在の所、目立った動きはない。
 【ゴラオン】の方もだ」

「こちらの【ゴラオン】に直接人を送れますか?」

「...アムロ、ハヤトは動けたな?」

「ああ、戦争が始まって【カラバ】も準備を整え始めたと聞いている」

 この【カラバ】とは地球の民間軍事組織で【ロンド・ベル】とは深い協力関係を持っ
ている。
 ただ、前大戦終結後その活動は殆ど停止していた。

「そうか...ショウ君その件は問題無さそうだ」

「そうですか...では、【グランガラン】の方へ行くべきだと思います」

「【ゴラオン】の方はどうするのかね?」

「【ゴラオン】の方には、人を出して貰えますか?
 エレ様は、よく判ってくれるお人です。
 【ゼラーナ】も一緒にいるようですし、大丈夫でしょう」

「【ゼラーナ】...君が一緒に戦っている仲間のフネだね?」

「そうです」

「では、向こうに頼んで置こう」

「お願いします。
 接触する際に、緑・蒼・赤の順に信号弾を上げて下さい。
 それで話は聞いて貰えると思います」

「判った。
 では、我々はロシアに向かう。
 いいなっ!」

 そういって、ブライトは一同を見渡した。

 素早く、ソレに応える甲児。

「ようし、決まった!!
 行くぜ、みんな!
 俺達も!!」

 甲児のその発言はそこにいる皆の意見を表していた。


<第伍話Dパート・了>



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ver.-1.01 1998/07/19 公開
ver.-1.00 1998/06/30 公開
感想・質問・誤字情報などは こちら まで!

<作者の...はお休みです>      





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