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必要最小限の明かりしか存在しないその部屋に、相応しくないけたたましい警音が響
く。
「誰だ...」
部屋唯一の調度、机に一人向かっていたゲンドウは、台脇に備えられたモニターへ向
かい、誰何した。
「南極以来ですね...3年ぶりですか...」
モニターへ品の良さそうな、だがそれだけでは無い引き締まった美丈夫の顔が映され
る。ホンの一瞬、ゲンドウの瞼が動いたような気がするがそれ以上の表情の変化はなか
った。
「何の用だ...」
「ご挨拶ですね...
折角の好意を無にするおつもりですか...碇司令?
いや、スケジュール執行官と呼ぶべきですか?」
「何の事だ...シュウ・シラカワ」
暫く無言の時間が過ぎる。
その間にも、お互いの腹を探り合う視線がその部屋の大きさからすれば取るに足らな
い僅かな空間を猛烈な勢いで蹂躙する。
先に折れたのは、シュウだった。
「...おとぼけですね。
まあ、いいでしょう。
ご存じですね?
【ゲスト】が地球に対して宣戦布告を行ったことは」
「それがどうかしたかね」
「その【ゲスト】の司令官が...3年前のあの男だとしたら」
「...ほぅ」
「3年前の借りを返すいいチャンスだと思いますよ。
アレが手に入った以上、もうスケジュールに従う必要など無い訳でしょう」
「...了解した」
「では、私はこれで。こちらも準備が必要ですからね」
ゲンドウは、相手から一方的に通信を切断した事など、全く構っていなかった。
手元の機器を操作して、ホットライン回線を開く。
「冬月...」
スーパー鉄人大戦F 第四話〔浮上:Disinheritance than the mother articles〕
Aパート
陸と海、そして天の海に挟まれた世界【バイストンウェル】は魂の安息の地であると
いう。
だが、人はこの地上に生まれたときから、バイストンウェルの記憶を思い出せない性
を持たされているといわれる。
しかし、生命はそれを欲し、時として人の夢の中にバイストンウェルを思い描くので
ある。
だからこそ、その性(に気付いた者は言う。
『バイストンウェルの物語を知る者は、幸せである』と。
:
:
:
ここ、バイストンウェルは今、戦乱の嵐が吹き荒れていた。
全ては、アの国の一地方【ラースワウ】へ地上(現実世界)よりある一人の男が降り
立ったことから始まった。
その男の名はショット・ウェポン。
ショットは、それまでのせいぜい中世程度の技術レベルで停滞していたバイストンウ
ェルの地に、地上科学を持ち込んだ。
ショットは機械を作り、その機械で銃を量産し、その銃で蛮族討伐に苦慮していたド
レイク・ルフトを助け、一地方領主でしかなかったドレイクを有力領主へと変貌させた。
そして、その力で専門のロボット工学知識を生かして兵器研究を進め、とうとう戦闘マ
シン”オーラマシン”を作り出した。
ショットの援助者であり野心家であったドレイクは、その間にも政争を繰り広げなが
ら国内有力者を蹴落とし、十分な戦力を蓄えていた。
そして、満を持して暗愚なアの国・国王フラオン・エルフを討ち、手中に収める。
増大する野心はアの国掌握程度では満足できず、バイストンウェル征服へとドレイク
を駆り立て、戦火はとどまるところを知らなかった。
<第三新東京市・ネルフ付属病院特別病室>
《……やぁ》
気が付くとシンジはあの天井相手に再会の挨拶を心の中で呟いていた。
そして、何故自分がここにいるのか思い返す。
暫くして、【使徒】に殺されかけた恐怖が甦ってしまい思わず身体がすくむ。
あの奇怪な怪物に目前に迫ってくる光景が頭から離れない。
……だが、次の瞬間そのような事など瞬時にして霧散してしまった。
「んっ、んっぅぅ……」
その悩ましげな声が聞こえた方を見てみると自分が寝ているベットに赤みがかった黄
金のキラめきが眼に写る。
そこには、まごう事なきアスカが小振りの唇を微かに開き穏やかな寝息を立ててベッ
ト脇で椅子に腰掛け寝ていた。この時シンジには、何故アスカがここにいるかは見当が
付かなかったが、そんなことはどうでもよかった。
何故なら、アスカのとても穏やかな寝顔に魅了されていたからだ
シンジが暫く魅入っていると、アスカが身じろぎした。
どうやら、ようやくお目覚めのようだ。
「ううん……」
うっすらと目を開くとアスカへ視線を注ぐシンジにようやく気付く。すると、彼女は
唐突に跳ね起きた。
「…………!
なっ、何、女の寝顔見てんのよっ!」
「ご、ごめん……」
シンジは反射的に謝罪の言葉を発していた。が、その空虚な言葉はアスカを一層苛立
たせる。
「アンタ、そんな形ばっかりの言葉で!
ホントーにわかってんのっ!!
昨日の戦いでも、【使徒】に捕まっていい様にヤられてるし……」
「そっ、それは…………
しょうがないじゃないか、足を地面に縫いつけられちゃって動くことが出来なかった
んだから!
それに……」
「それに!?」
アスカは鋭い眼差しをシンジにくれていた。
その視線にたじろぎながらもシンジは言葉を続けた。
「それに……【使徒】は倒したんだからいいじゃないかっ!」
「よくないわよっ!
アンビリカルケーブル切断されて、内部電源目一杯使い切って
【使徒】が活動停止したのも、初号機の内部電源切れた直後なんでしょうっ!
もう少し、【使徒】が活動停止するのが遅かったら今頃アンタはこんなトコで寝てる
んじゃなくって、潰れたエントリープラグの中でミンチになってのよっ!
だいたい、動きが一番激しい筈の機体末端部を狙われるなんてなってない証拠よ!
だからっ、もう一度言うわっ!!
ホントにわかってんの、自分が戦っているって事を!」
「…………」
シンジはそこまで聞いて押し黙ってしまった。
そこへ横から、ゆっくりとしたテンポで拍手が聞こえてきた。シンジとアスカはこっ
ちを見ると妙齢の看護婦長らしき人物が居た。捲り上げた腕に刻み込まれたイカリマー
クがキュートだ。その顔はにこやかに笑っているが、その額の片隅には見事な青筋が疾っ
ていた。
「はいはいはいはい。
こんなトコで悪かったわねぇ〜〜〜〜〜〜〜
戦場へ行っていたカレシの心配するのよく判るんですけど、ここは病院なの……
さっきの貴方じゃないけれど……」
そこで一旦言葉を区切って、婦長は裂帛の気合いで天地を揺るがす。
「アンタ達!
病院では静かにしなさい!!」
その長年の経験に裏打ちされた婦長の迫力にシンジとアスカは思わす抱き合って、後ろ
一杯まで後ずさっていた。その姿を見て、満足したのか婦長は一転して女神の微笑みを携
えて、にこやかに言った。
「シンジ君」
「はっ、はいっ!」
「検査はもう終了しているわ。
いつ帰っても良いわよ。
それじゃ、お仕事頑張ってね」
するべき事をして、満足した婦長は去っていった。
そして、シンジとアスカは自分たちの状態を省みることがようやく出来たようだ。
ほのかな暖かさに心地良さを感じてそちらを向いてみれば、互いの顔がくっつかんば
かりに近付いていた。
「……わぁ!」
「……きゃぁ!」
お互いにすっとんきょうな声を上げ、真っ赤になって離れる。
しばし、気まずい雰囲気が漂うが珍しくシンジの方から話し始めた。
「そ、そ、そう……じゃなかった、アッ、アスカ。
でも、何でここに居たの?」
顔の紅潮が未だに収まらないことに焦りながらもアスカはそれに応えた。
「何でって……
そっ、そうよ、実はあのマジンガーのパイロットがミサトと賭けをしたらしくって.
..」
「甲児さんが?
賭け?」
「そうよ、賭け。
聞いてよ、あのボケパイロット、ミサトに何要求したと思う?」
「キスでも頼んだの?」
「そんなことなら、ワタシがここにいる訳無いでしょう。
なんと、ミサトの手料理なんか要求したのよ!
信じられないわ、正気の沙汰じゃないわよ!」
「アスカ、そんな大げさな……」
「大げさなモンですかっ!
ドイツに居た頃、一時ミサトがワタシと一緒にいたのは知ってるわね。
一緒に住み始めた時のことかしら……ミサトが同居お祝いだってカレーを作ってく
れてね……」
「へぇー、ミサトさんらしいや」
「まあね……
で、その翌日からキッカリ一週間、ワタシは病院のベッドに突っ伏していたわ」
「どうして?」
「もう、鈍いわね!
ミサトのカレーにやられたのよ!
あの悪魔の料理に!」
「やられた?
ミサトさんのカレーに?
そんな、まさかぁ…………」
「そのまさかよ……
アンタも見たでしょう、あの部屋の惨状を……」
「…………うん」
シンジはアスカと一緒にミサトへ引き取られる事になった日の事を思い出した。
あれは、酷かった……
外でのミサトしか見ていなかったらとてもあの惨状は想像が付かないだろう。
その日は二人掛かりで(と言っても動くのは主にシンジで、アスカは指示を出してい
ただけであったが)深夜遅くまでかかって、人類の生存環境へと還元したのだが……
ようやく、納得しかけたシンジを見てアスカは続けた。
「シンジ、来なさい。
証拠を見せてあげるわ」
そう言って、アスカは病室の出口へと足を向けていた。
<ジオフロント・ネルフ本部司令室>
「なんだと、EVAをパイロット・要員を含めて【ロンド・ベル】へ出向させる!?
そんなこと、私は聞いていないぞ。
どう言うことだ、碇!」
「当然だ……
今、初めて言ったのだからな」
冬月の剣幕にも全く動じる気配のないまま、ゲンドウはそれに応じた。
「『当然だ』、じゃない。
少しは私の苦労も察してくれ。
連邦の連中だけじゃない、委員会の方はどうするんだ、碇……?」
「……ふっ、問題無い。
切り札は全てこちらにある。
老人達には何も出来んよ……気にするな」
「そこまで言うなら何もいわんが……
で、どうするつもりだ」
「まずは、連邦の連中からだ……
折角の手駒だ、余計な手を出せないようにする。
それから、機体の手配だ……
そちらの方は頼めるな」
「承知しなくても押しつけるのだろう?
承知した……で、機体とは何だ?
EVAでは無いのだろう?
もしや、MSのことでは無いだろうな……」
「そのまさかだ。
【ロンド・ベル】は強力な部隊だが、所詮未だに前々大戦時の旧式MSを主戦力とする
テロ対策部隊に過ぎない。
我々のシナリオに組み込むにはいささか力不足だ。
取りあえずは何機かでもマシな機体を回してやらざるを得ないだろう……」
「……わかった。
だが、今度からこの様な事が無いようにしてくれ……
あまり、議会の連中に借りを作るのは好ましくない……判っているな、碇?」
「……ああ、判っている」
そして、退室間際に、
「そうだ、例の【使徒】の視察の件忘れるなよ……」
と、念を押して、冬月は急遽持ち上がった難題を処理すべく司令室を去る。
唯一人そのだだっ広い部屋に佇むゲンドウは誰に言うともなく呟いた。
「……ああ、判っている。
判っているよ、冬月……だが、我々にはもう既に時間がないのだ」
<第三新東京市・ネルフ付属病院202号室>
誰もいないその部屋で彼は目覚めた。
だが、何か周りがよく見えない。
しょうが無く周りを手探りで探してみると左手にどこか馴染みのある手応えがあった。
ようやく目的の品を見つけた彼はソレを掴み、所定の位置へと運んだ。
最早身体の一部と化したメガネを得たことで視界がハッキリした -彼- 日向マコト二
尉は何故自分がこんな所で寝ているのか昨夜の記憶を思い返す。
……が、どうしても思い出せない。
暫く、悩んでいる所へノックが聞こえてきた。
取り敢えず記憶を思い返すのを、一時中止して彼は答えた。
「はい、どうぞ!」
「よっ、大丈夫か?」「日向さん、大丈夫ですか?」
それぞれに日向へ問いかけながら二人は入室してきた。
オペレータ仲間の青葉二尉と伊吹二尉だ。
「どうしたんだ、マコト?
今日出てみたら、お前が昨日こっちへ運び込まれたって、聞いて驚いたぞ……
すぐにこっちへ来たかったんだが、勤務時間だったからなそうも行かなかったんだ。
すまんな、マコト」
「そうですよ、日向さん……
青葉さんたら、日向さん心配して今日一日上の空だったんですから。
いい友達持ちましたね、日向さん」
そう言って伊吹二尉は日向に向かって微笑んだ。
今日の自分の様子を全く好意的な解釈で語る伊吹二尉の言葉に、青葉二尉は小さい胸
の痛みを覚える。
実は彼は知っているのだ、日向が何故此処に居るのかを。
オペレータへ配属されるまで青葉二尉は情報収集及び分析の訓練、そう即ち諜報員と
して養成されていた。その後紆余曲折を経て作戦部連絡部門のトップオペレータとなる
のだが、昔のしがらみからそう簡単に逃れられるわけではない。未だ続くコネクション
から豊富な様々な情報を手にすることが出来た。
その殆どは、酒場でのくだらない酒の肴にする程度のたわいも無い話であったが、そ
の中にくだんの話があったのだ。当初、青葉も《そんなわきゃーねえだろ》と高をくくっ
ていたが、続出する同様の話に不安を抱いた追跡調査をした青葉は一つの確信を得てい
た。
そう、あの話は真実であると……
だが、情報は最後のピースが確実にはまり裏に糊付けするまで断定は出来ない。
だから、青葉は最終確認をする事にした。
「そうだぞ、マコト。
……ところでどうしたんだ?
丈夫なだけが取り柄だって、こないだ言ってたじゃないか。
それが、緊急入院するハメになるなんてお前らしくないじゃないか」
「いやー、そうなんだよ。
自分でもよく覚えて無くってさー、考え込んでたところなんだよ。
ホント、どうしたんだろ。
全然憶えて無いや」
それは爽やかな笑顔でのたまう日向に青葉はある疑問をぶつけて見ることにした。
「一体、どこまで憶えているんだ?」
何を言うんだと言わんばかりの表情で質問に答える日向。
「うーん、食事をしたところまでかな。
なんとあの葛城一尉の手料理だぜ、手料理!
それを食べたときの、もうあの幸せったらなかったよ、人生最良の日だ!」
「あっ、ああ……そいつは良かったな……
で、その……もしかして手料理って、カレーじゃなかったか?」
「なんで、知ってんだ?」
最後のピースをはめ込み、糊付けを終えた青葉は他人には絶対明かさない己自身の評
価表に新たな評価を加えながら、あやふやな答えで日向の質問をかわしていた。
「いっ、いや、何となくだよ。
ほら、葛城一尉ってそんな親しみやすい雰囲気があるじゃないか……
そう、そうだよ、あっはっはっは…………」
「そう、そうだよな、あっはっはっは…………」
青葉の白々しい笑いに合わせるように、だがこちらはどこまでも爽やかに笑う日向。
だが、ふと気付いたように日向が呟いた。
「……そう言えば、葛城一尉に手を出そうする不届きモノが。
ぬ〜〜〜〜、一時の幸せに前後不覚となるは、作戦部は戦術指揮調整班筆頭見習いっ
日向マコト、一生の不覚っ!
葛城一尉、この日向、日向マコトが今お助けに参ります〜〜〜〜」
どこか事実と懸け離れた認識でそのようなことを叫びつつ、ベットを抜けだそうとす
る日向。しばし呆気にとられていた青葉と伊吹であったが、それは数秒のことで流石に
日向を押しとどめた。
「おぃ!!
まっ、待てよマコト!」
「そうです、落ち着いて下さい日向さん!」
「後生だ、シゲル!
俺は葛城一尉を救いに行かなければいけないんだぁ〜〜〜〜〜
はっ離してくれぇ〜〜〜〜〜〜!!」
昨晩ICUに運び込まれ、棺桶に足の小指一本残して入り込んでいたのは何処へやら。
健常人以上に元気な患者を押しとどめるべく、青葉は日向の耳元へ囁いた。
「……安心しろ、ヤツも病院送りだ。
葛城一尉は無事だ……」
それを確かに聞いた日向は、キョトンとした表情になり……そして破顔した。
「そうだよな、葛城一尉があんなヤツにヤられるわけないよな……」
「そうだよ、何言ってんだよマコト……」
そうしてして男達は向き合い、爽やかに微笑み合った。
キラリと光る歯が眩しい。
そして、感極まったのであろうか、ついにアツい抱擁を交わす二人。
「ようし、俺はヤるぞー、俺はヤってやるぅ〜〜〜〜!」
「ようし、ヤれぇ!心行くまでヤってヤれぇ〜〜〜〜!」
なんだか抱き合いながら何処か怪しい台詞を叫ぶ二人をみて、熱病に冒されたように
瞳を潤めながら伊吹二尉は呟いた。
「……素敵」
<第三新東京市・ネルフ付属病院203号室>
「……やかましいわねぇ」
隣の病室では、何やら盛り上がっているようだ。
《病院では静かに》と言うことを躾けられていないのだろうかと至極道徳的な感慨を
持ちながら、弓さやかはベッドの上の住人とそれにちょっかいを出している女性を見や
る。
そうしているところへ病室のドアをノックする音が聞こえた。
《誰かしら》と思いながらも、さやかはそれに応える。
「は〜い、開いています。
どうぞ」
「おじゃまします……」
「ジャマするわ」
それは意外な客であった。
ネルフのパイロット二人組、碇シンジと惣流・アスカ・ラングレーであった。
「あらっ、珍しい人がお見舞いね……
碇君と……惣流さんだったかしら、いらっしゃい」
ようやく二人に気付いたらしいマリアは、白目を剥いて人事不省に陥りベットに横たわ
る甲児に変わって礼を述べる。
が、マジックペン片手では折角の礼儀正しさも色褪せてしまっている。
シンジは目の前のその珍妙な光景に、判ってはいるがどうしても質問せずには居られな
かった。
「フリードさん、何しているんですか……?」
それの質問を聞いて、マリアは悪戯が見つかった子供のようにチロッと舌を出して、
シンジの質問に応えた。
「てへっ、見た?」
「えぇ、見ちゃいましたけど…………」
「あのね、これはお仕置きっ。(はぁと)
聞いてよ、もう甲児ったらこの私に断りもなく葛城って人に逢いに行っていたのよ。
何があったのが知らないけど、病院送りになるなんて罰があたったのよ。
ねぇ、貴方もそう思うでしょう?
甲児ったら、普段から…………………………
:
:
:
:
:」
普段から腹に据えかねることがあったのだろう、マリアは甲児の顔一面にマジックペ
ンで書き込んだ落書きを指し示しながら、その話は留まるところを知らなかった。
果てには3年前のクリーニングへ出したブラウスが駄目になったのは実は甲児の陰謀で
あるとの説にまで及んだ時、永遠に続くかと思ったマリアの話をさやかが遮る。
「はいはい。
マリア、その話はそれぐらいにして……で、碇君?
今日はどうしたの?」
「あっ、はい。
あ、あの……そ、その……え〜と……」
そのシンジの頼りない受け答えにアスカは苛つく。
さやかとマリアの二人に見えないよう、シンジの尻をつねりあげる。
「いたっ!」
「あら、どうしたの?」
目の前の二人にはどうやら見えなかったようだ。マリアが心配して声を掛けてきた。
(さやかには見当が付いていたようだが)
「いいえ、何でもありません。
ほら、シンジ。
アンタがちゃんとしないから弓さん達、心配しているじゃない。
しっかりしなさい」
それを聞いてシンジはアスカと目を合わせたがアスカの『アンタ、判ってるんでしょ
うね』と言わんばかりの視線に諦めを感じつつ、先程のさやかの質問に応える。
「わっ判ってるよ……あの……弓さん、実は僕たちの保護者ってミサトさんなんです。
で、甲児さんが入院したのって、もしかしてミサトさんが何か御迷惑をかけたんじゃな
いかと思って……」
「そっ、そうなのよ。
ほら、親の不始末は子の不始末って言うじゃない……」
「アスカ、それ違うよ……」
「何よ、モンクある?」
目の前の微笑ましいやり取りを見ながら、さやかが疑問に応えた。
「そうなの、ありがとう。
でも、原因がよく判らないのよ。
当人はこの通りだし、ノされて此処にいるなら兎も角お医者さんが言うには『かなり
症状は酷いが食あたりだろう』って言うけれど……
こう見えても甲児君って、丈夫で少々痛んでるぐらいじゃペロリと平らげて平気な顔
しているのよ」
それを引き継いで、頷きながらマリアが言う。
「そう、そう。
『肉は腐りかけが旨い!』って言ってたし、この間なんかも2ヶ月経った牛乳飲もう
として『喉ごしがおかしい』って、確かめるまでは良かったけど半固形化してるのを
見て安心して改めて飲み干すようなことしているのに……」
そこで声を揃えて、
「「一体何があったのかしら……」」
……よく、息のあう二人だ。
この二人の話で先程のアスカの話は裏付けられた。
シンジ・アスカ共、大きな汗がひとしずく滴るような錯覚さえ覚え、改めてミサトの
手料理の『威力』を再認識した。
「あの、それじゃ、僕たちこれで……
起きたら、甲児さんによろしく……」
「それじゃ〜ね」
それぞれに謝辞の言葉を述べながら去っていった。
<ナの国々境近く・ギンの岬>
場面は変わって、ここはバイストンウェル。
「偵察隊ごときに何を手こずっている!
手柄を立ててみせい!」
砦より討って出た、ナの国指揮官ラゾットは全長70mの特大如雨露に砲塔・銃座・
艦橋その他の艤装を貼り付けたような浮揚戦闘艦の艦橋で苛立たしげに怒鳴る。
彼の視線の先では、緑を基調とするナの国オーラバトラー隊と、赤と青を基調とする
クの国オーラバトラー隊が戦いを繰り広げていた。
:
ここは、ナの国の国境海岸線近く。
ここまでショットの作り出した”オーラマシン”を従来の思想に囚われず最大限活用
するドレイク軍の前に、大部分の国は既にオーラマシンを手に入れていたにも関わらず
旧来の戦術に固執し次々と膝を屈していた。
だがフォイゾン王率いる北方の大国ラウの国は隣国・東方の大国ナの国と協力し、侵
攻してくるドレイク軍に対して驚くほど短期間で戦力を整え、”オーラマシン”と乗員
そしてそれらを活用する術を整えていた。
が、その聡明なフォイゾン王もラウの国・王城【タータラ城】を巡る戦いで命を落と
す。
王を失ったラウの軍勢は新たに王の孫娘エレ・ハンムを新たに王に迎え、同盟国のナ
の国の国境まで下がり、軍勢を立て直し同盟軍であるナの国の軍勢と合流しようとして
いた。
この時ドレイクは、無理な追撃は行わず占領したタータラ城で戦力の整備に努めてい
た。
オーラマシン生産設備の拡張は勿論、地方領主であった頃から密約を結んでいるが戦
力の出し惜しみをしているクの国の軍勢を数々の政治的駆け引きの結果、ようやく戦場
へ引っ張り込むことにようやく成功していた。
そのクの国の軍勢先鋒が、ここナの国々境へ到達したため、先述の戦いが始まったの
だ。
:
「えぇい、何をしている!
三番隊を下がらせよ!
深追いしてくる敵に五番隊をぶつける!」
武人らしい、野太い声で精力的に指示を出すナの国指揮官ラゾット。
その彼が空を見上げ、呟いた。
「しかし、何だというのだこの光は……」
その彼が見上げた先には、夜の闇に包まれている天のそこかしこに光の渦が見えてい
た。
<第三新東京市外郭防衛線付近・【第四使徒】解体作業場>
あの後、ミサトより呼び出しを受け、シンジはあの場所へ再び舞い戻っていた。
連絡を受けたとき、アスカが横にいなかったら逃げ出していたであろう。
彼は未だあの恐怖の呪縛から逃れずにいた。
そんな彼とアスカをようやくミサトは見つけたようだ。
「あら、シンちゃん・アスカ、こっちこっち」
ミサトの呼びかけにシンジは気乗りしない様子でそちらに向かった。
あまりのトロさにアスカに尻を蹴飛ばされたようだが、取り敢えず大丈夫のようだ。
その様子をチラリと見て、リツコは呟いた。
「やっぱり、シンジ君怖じ気づいているようね……」
「リツコ……」
「通過儀礼よ、これは……
戦いに征く人間のね……
これを克服しないと……」
「……克服しないと?」
「遠からず、死ぬわ。
敵に倒されるのでは無くて、自分に負けてね……」
「…………」
「まぁ、そうならないようにしてあげるのが保護者であるアナタの役目。
頑張ってね、ミサト」
「ありがとう、リツコ」
取り敢えず、礼を言うミサトであるがその次の言葉の口調はガラッと変わっていた。
「でも、アンタってヤな女だと思わない?
何もかも、お見通しって感じで」
「あら、ワタシは統計学的に言ったまでよ」
「あっ、そっ。
……で、その統計学的に見て敵さんのサンプルから何か判ったのかしら?」
「見ての通りよ……」
そのリツコの視線に先のCRTには『601』が大きく表示されていた。
「……何これ?」
「解析不能を示すエラーコードよ」
「つまり、訳分かんないってこと?」
「そう。
でも一つだけ判ったことがあるわ。
【使徒】の固有波形パターンが構成素材の違いがあっても人間の遺伝子と酷似してい
ること……99.89%ね……」
「それって……」
「そう、エヴァと同じなのよ……どうしてかしらね……」
「どうしてって、アンタの作ったモノでしょう!」
「違うわ。
作ったのは母さん……ワタシはシステムアップしただけよ」
リツコがそこまで言ったところで、シンジ達が入ってきた。
「ミサトさん、リツコさん、おはようございます」
「おはよう、シンちゃん、アスカ」
「あら、おはよう。
シンジ君、アスカ」
シンジの挨拶に応える二人。
そして、席を立ち近付きながらリツコが話し掛けてきた。
「シンジ君、ありがとう。
理想的なサンプルをくれて…………でもね……」
リツコはそこで一旦言葉を区切る。
シンジはその間に何やら危険なモノを感じていたが身がすくんで動けなかった。
そして、シンジの頬をその両手で夾んだところでその口調が一転した。
「……でもね、チョットは修理する私たちの身にもなってっ!
出撃する度にあっちこっち壊してきてっ!!
いい、今度出撃するときはもうチョット大事に乗って頂戴っ!
いいわねっ!!」
掛けた眼鏡を何故か光らせて迫り来るリツコのその剣幕に、全く為すがままだったシ
ンジであるがリツコの念押しに壊れた玩具の様に首を縦に振る。
それを見て満足したのか、リツコは鮮やかな微笑みを浮かべてシンジの頭を自分の胸
に抱いた。
「……シンジ君、御免なさいね。
アナタも一生懸命なのは判っているわ……
唯、もう少し頑張って欲しいだけ……
期待してるわよ……」
見た目より豊満なリツコの胸に抱かれながら、シンジは何故か母に抱かれているよう
な錯覚を憶えた。
暫く、そのままでいたがリツコが再び言葉を発した。
「それと……シンジ君一つ頼みがあるの……」
それを聞いて、リツコの胸の谷間でシンジはポーとした表情のままで顔を見上げる。
「コレをレイに届けて欲しいの……」
そう言って、白衣のポケットから一枚のカードを取り出しシンジに見せた。
「……?」
「レイの新しいセキュリティカードよ。
今日、午後から零号機再起動試験があるんだけどドタバタして更新時期過ぎても渡せ
てなかったの……頼めるわね」
シンジは、ようやく弛んだリツコの腕から逃れそのカードを受け取った。
シンジがカードを受け取ったことで用事が無くなったのか、リツコは再び端末へ向か
っていた。
:
:
「リツコ……アンタもしかして……ショタ?」
「まさか……
私の好みは人になんと言われようと自分を貫き通すような下手な生き方しかできない
渋いオジサマよ」
「じゃあ、あのシンジくんへの態度は何よ」
「そうねぇ、やっぱりいい男の子が増えた方が人生に潤いがあって、いいじゃない」
「アンタの口から潤いっていう単語聞くとは思わなかったわ……」
「そうかしら、原因不明の方法で男二人を病院送りにするほどじゃないと思うわ……」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「「……チョット今夜あたりじぃぃくり、話し合う必要がありそうね」」
:
:
リツコが端末へ向かっても、シンジはレイの更新カードを持ったまま暫くポッーとし
ていた。
リツコとシンジのコミュニケーションを珍しく傍観していたアスカだが(下手に口出
しして改造されるのがイヤだったのだろう)、シンジのその様子に秋期山岳地域の天候
よりも急激に機嫌を悪化させた。
腹立ち紛れにシンジの足を思いっきり踏みつける。
「なに、デレデレしてんのよっ!
バカシンジのくせにっ!!」
「いっ、痛いじゃないかアスカ!」
「もぉ、アンタなんか知らないっ!!
レイのところでも、どこでも一人で言ったらいいのよ!!」
そう言って、アスカは足踏み高らかにどっかへ行ってしまった。
「……アスカ」
唐突に怒り始めたアスカの気持が理解できず、ただアスカの名を呟くシンジ。
その様子を黙って見ていたミサトであるがようやく自分の出番であることを確信した
ようだ。
「あら、追いかけないのシンジ君?」
「何でですか?」
「なんでって?
……もしかして、シンジ君レイちゃんの方が好みだったのかな〜?
そーなの?
よかったじゃないシンちゃ〜〜〜〜〜ん。
レイを訪ねるオフィシャルな理由が出来て……」
「そっ、そんなミサトさんっ!
そんなんじゃなくって……」
「あらやだっ。
ホントにそうだったの?
もぅ、シンちゃんたら!
おマセなんだからぁっ!」
「ミサトさんっ!」
碇シンジ、何処まで行っても振り回され続ける男の子。
がんばれ、頑張るのだ!
キミだけが。君だけが彷徨える心を救えるのだ!
<バイストンウェル/天の海>
バイストンウェルの天に広がる海に、数多の霊力を持つフェラリオという種族がいる。
天の海・フェラリオ宮殿内で、ジャコバ・アオンは両手を掲げ天を仰いでいた。
その周囲では数え切れぬ程のエ・フェラリオが、ジャコバ・アオンを中心にして唄の
ような、祝詞(のりと)のようなものを口ずさんでいる。
彼らは、全て女性である。
皆一様に若く美しい。
彼女達エ・フェラリオの容姿は、我々の成人女性と変わらない。
その神秘的な雰囲気と力を別にすればの話であるが……
その彼女達の幼生体が、ミ・フェラリオである。
彼女たちは、我々に言い伝えられる小妖精そのままの容姿を持ち、その姿に違わない
天真爛漫ぶりでバイストンウェルを駆け回っている。
だが何やら厳めしい空気を嫌って、この場には見あたらない。
:
ジャコバ・アオンは厳かに宣告した。
「オーラを発せし悪しき機械どもよ。
汝達は、魂の安息地であるバイストンウェルを汚し、やがては死に至らしめるであろ
う。
だが。そうはさせぬ…………
これより我らがフェラリオの行いは、バイストンウェルの裁きと知れ……
……悪しき機械どもよ、我は命ずる。
己の力によりこの世界より排除せよ。
この世の混沌をなくし、再び魂の安息の場たるバイストンウェルを手に入れるが為に
……」
掲げた腕の先の虚空に燐光が徐々に集まり始め、暫くすると拳大の光球が現れいでた。
一層、強まるフェラリオ達の唱和。
合わせるように、ますます大きさを増す光球。
その光球の元で光球の大きさに比例するように干涸らびていくジャコバ・アオン。
瑞々しさ溢れる頬はこけ、たおやかな指は節くれ立ち、髪の艶は失われていった。
だが、その瞳に灯る光だけは、全てを射抜かんばかりに鋭さを増していた。
貴婦人が急激に痩せ細って行く異様な光景にも関わらず、フェラリオ達の宴は終わら
ない。
再び厳かに宣告するジャコバ・アオン。
「バイストンウェルを支えるオーラの力よ……
排除せよ!!
悪しき源たる、機械のことごとくを!!」
世界が光に満ちる
その時バイストンウェルの各所では、次々とオーラマシンが光の奔流に弄ばれていた。
三度、厳かに宣告するジャコバ・アオン。
「消えよ、このバイストンウェルより!!!」
そして、光球は充ち満ちたその光を世界に解放した。
:
:
:
膨大な光の奔流が過ぎ去ると、そこには既に骨に皮が張り付いているようにしか見え
なくなったジャコバ・アオンがいた。
彼女は小さく呟いた。
「私一人の命でバイストンウェルを救えるものならば……」
これが、悠久の時を生きバイストンウェルを見守り続けたジャコバ・アオンの最後の
言葉であった。
砕け散る水晶球。
それと同時に、偉大なるエ・フェラリオの長・戒律の護り手ジャコバ・アオンは、息
を引き取った。
<ジオフロント外殻 地下ドック>
ジオフロント外郭に建設された地下ドックに依然として機動巡航艦【アーガマ】は収
容されていた。
その威容に気圧されながらもシンジは、ミサトの頼み事を果たすこととした。
あの後、ミサトはさんざんシンジをからかった後、シンジへ頼み事をしていたのだ。
その用事とは、ブライトキャプテンに伝言を伝えること。
電話一本すればいいじゃないですかといったシンジであったが、ミサトの
「人が直接行って、言った方が誠意が伝わるでしょう?」
と、あっさり一蹴されてしまった。
なら、自分が行けば良いんだと思いつつも引き受けてしまうのは人の良さか?
そんなことを考えながら、シンジはアーガマの格納庫直通ランディングベイを登りな
がら、歩みを続ける。
格納庫へ入ったところで誰かにブライト艦長の居場所を聞こうと左右をせわしなく見
渡していると声を掛けられた。
「よっ、どうしたんだい?」
赤いジャケットが印象的なラテン系の顔立ちに躍動感溢れるトビ色の瞳を持た少年が
そこにいた。
「アーシタさん……」
シンジが呼びかけに答えのを聞いて、苦笑しながら -少年- ジュドー・アーシタは応
えた。彼は宇宙コロニー・サイド1でビーチャ達と共にジャンク屋を営む民間人だ。
前大戦時のある経緯から【ロンド・ベル】と係わり合いになり、今又【ロンド・ベル
】へ仲間と共に参加しているニュータイプと言われている少年である。
シンジとは、印度洋までの旅で数度挨拶をした程度であるが彼にはそれで十分である
ようだ。気軽に話しかけてきた。
「ジュドーでいいってたろ。
で、どうしたんだなんか用があるんだろシンジ?」
「うん、ミサトさんから伝言を頼まれて……
ブライトさんはどこですか」
「ブライトさんねぇ……
多分、艦長室だと思うけど。
何だったら、呼び出してやろ……」
ジュドーがそこまで言ったときだった。
「お兄ちゃんっ!!」
けたたましい喧噪の中でもよく通る怒声が響いてきた。
声の主はジュドーの妹、リィナ・アーシタだった。
「もう、お兄ちゃんたらっ!
また、仕事ほったらかしてっ!
そんなことばかりして、みんなにいっつもいっつも謝る私の身にもなってよ!
ホントに……」
いつ果てるとも無い、バルカン砲の様なお小言にげんなりした表情でジュドーは、
「……誤解だよ。
ほら、このシンジがさ、何か困っていたみたいだから聞いてやってただけさっ。
なっ、シンジ?」
急に話を振られたシンジは、慌てつつも
「そっ、そうだよ。
用事で来たけど、アーガマの事よく分かんないトコを助けて貰ってたんだ」
疑わしげに兄を見ていたリィナであるがシンジの話を聞いて、取り敢えず満足したようだ。
一転して、礼儀正しくシンジに挨拶してきた。
「こんにちは!
たしか……碇……シンジさんでしたね?
いつもいつも至らぬ兄がお世話になっています」
……よく出来た妹である。
挨拶を受けてシンジもそれに応えた。
「そんな、お世話だなんて……
助けて貰っているのは、僕の方です」
「そうなんですか……気を使って貰わなくても良いんですから。
では、まだお仕事がありますから私たちはこれで失礼します」
「じゃ、じゃあな」
そういって、どこかに行こうとするジュドーだがしっかりジャケットの裾をリィナに
捕まえられていた。
「何処行くつもりなの……お兄ぃちゃん」
最後の方では地獄の底から響いてくるような迫力があった。
ジュドーはリィナに引きずって行かれながら、シンジに手を振っていた。
その時だった。
ジュドーとリィナが、二人ともうずくまった。
シンジは慌てて二人に近付く。
「どうしたんですかっ!?」
「きっ、気持ちわりぃ……」
「…………」
近くで見るとジュドーの顔色は真っ青だった。
他の所でも騒ぎになっているので見てみると、向こうではジュドーの仲間やカツ・コ
バヤシが同様にうずくまっていた。
ジュドーは弱々しく呟いた。
「なんだってんだ、このむかつきは……」
<ラウの国・タータラ城付近>
「なんだ、この光はっ!」
地上人ショウ・ザマは、空一面に広がっている光の渦を見やって叫ぶ。
彼は、ドレイクによってバイストンウェルに呼び出された地上の人間だ。
故あってドレイク軍を抜け、ドレイクに滅ぼされたギブン家郎党と行動を共にし、今
では反ドレイクの急先鋒となっていた。
その彼が、ここにいる訳は簡単だ。
制圧したラウの国・タータラ城に腰を据えたドレイクの座乗する超大型浮揚戦艦【ウ
ィル・ウィプス】を急襲し、争いの元凶ドレイクを討とうとしたためだ。
出陣前の虚を衝かれ、右往左往するドレイク軍。
だが、ショウ達がドレイクを討つ前に体勢を立て直したドレイク軍の反撃を受け、未
だドレイクと【ウィル・ウィプス】は健在だった。
そうしてに手間取っていると、ドレイクの元へ派遣されたナの国の部隊も出撃してきた。
その中に、ヤツはいた。
『待っていたぜぇ、ショウっォォォォ』
そういってヤツの乗るオーラバトラー【ビアレス】は機体に内蔵されたバルカンを乱
射しながら、両手に持った斧らしき得物で斬りかかってきた。
ヤツの名は、トッド・ギネス。
ショウ・ザマと同じく地上人だ。
ショウと同じ時期にバイストンウェルへ呼び出され、一時は共に戦った仲だ。
しかし、ショウがドレイク軍を抜けた後は、何かと戦う宿命のライバルとなっていた。
【ビアレス】の斬撃を自らの乗るオーラバトラー【ビルバイン】の持つ剣で切り結び
ながら、相手に向かってショウは怒鳴り返していた。
「やめろっ、トッド!
この戦いに何の意味がある!?
考えてみないかぁ!!」
それを受けて、トッドも怒鳴り返す。
だが、攻撃の手は緩めない。
『何の意味もないさっ!
俺がお前を倒すって事以外はなぁ!!』
手に持ったライフルで、牽制の射撃を行いながらまたショウは怒鳴った。
「まだ目が覚めないのか、トッドぉ!!」
『他人に説教できるほど、年を取ったのかよっ!!
ショウ!!』
次の瞬間、トッドが打ち込んできたその時だった。
男達が己の矜持を掛けて死闘を繰り広げている、辺り一面で巻き起こる光の奔流。
光の渦が視界を埋め尽くさんばかりに急速に拡大してホワイトアウトした時、彼と彼
らのオーラマシンはバイストンウェルより姿を消した。
<第四話Aパート・了>
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ver.-1.02 2003/01/23 公開
ver.-1.01 1998/07/19 公開
ver.-1.00 1998/05/18 公開
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<作者の言い訳>
作者 「賃貸映像記録媒体でカト○の狂気にあてられ、シ○ラ様の浄化に巻き込ま
れ、イデの発○を喰らってチョーット精神汚染されてしまい、今回デキが
悪いです。
すいませんっ!!」
(_O_)
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