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スーパー鉄人大戦F    
第弐話〔降臨:Asuka Strike!〕


<ある一室>      

 その一室には、悲壮な決意を胸に秘めた男達がいた。
 いずれの面々も、豊富な経験に裏打ちされた不敵な面構えしている。
 その百戦錬磨の猛者達が、充分に練り上げられた作戦プランを用意されているにも関
わらず、抗いがたい言いしれぬ恐怖に顔を歪めている。
 男達は、あの難攻不落・地獄への直通区画等と呼ばれ、とにかくまともな人間が近づ
くべき場所ではない魔境へ侵入し、そこへ連れ込まれたターゲットを運びだそうとして
いたからだ。
 しかし、往かねばならない。
 それが、彼らの立てた誓いなのだから。

 やがて、一人の男が、くゆらせていたタバコをおもむろにつまみ、床に落とし踏み消
し、手早く指示を下した。

「……捕虜は、取るな!
 ターゲットの確保の後、即座に離脱!
 二度目はない、遅れるな!
 行くぞ!!」

 それを合図に、男達は整然と動き始めた。



<ネルフ付属病院内特別病室>      

 そのころ、我らが主人公碇シンジくんは、病室で見慣れない天井相手に無言で親睦を
深めていた。



<ネルフ本部・第参会議室>      

 その男と向き合ったとき、ブライトはろくな用件では無いことを確信した。

        :
        :
        :

 あの戦いのあと、各所へ報告を送り、そろそろ基地司令へ(実際は一大組織の長であ
ったが)挨拶をしようかと思っていたところ、相手から今回の礼が言いたいと会談を申
し込んできた。

 ブライトがアムロを引き連れ訪れたところ、ある一室へ案内された。その部屋には、
既に2人待っていた。

        :
        :
        :

 机に陣取っている人物は40才前後であろうか。趣味の悪い赤い眼鏡をかけ、机に肘
を着いて鼻先で手を組んでいる。 その後ろには、品の良さそうな老紳士が直立不動で
控えていた。

 話しを切り出してきたのは、老紳士の方だった。

「昨日は世話になった、特務機関【ネルフ】副司令の冬月だ」

「いえ、最緊急の応援要請がありましたので、当然のことです」

 その紳士然とした話し方に幾分かの好感を抱きながら、ブライトが返答していた。

「遅れました、自分が【ロンド・ベル】司令、ブライト・ノア大佐です。
 こちらは、部下のアムロ少佐です」

 ブライトの右斜め後方にいたアムロへ促す。

「同【ロンド・ベル】機動戦闘団隊長のアムロ・レイ少佐です」

 アムロは、静かに通る声で自己紹介した。それを聞いて、紅い眼鏡の男の眉が微かに
反応した。

「ご足労だ……
 連邦軍非公開特務機関【ネルフ】司令、碇だ。
 時間が惜しい、本題に入ろう」

 ぶっきらぼうに言い放つ。それを受け、冬月が誠実さ7割に申し訳無ささ3割の口調
で用件を話し始めた。

「今日、君たちを呼んだのは他でもない。
 昨日の礼もあるが、実は頼み事があるのだ」

 ブライトが困惑して応える。

「頼み事と申されましたが、我々の独断で動くわけには……」

「そのことについては、問題ない。
 連邦軍の方にも、話は通してある。
 これは、その指揮権委任状だ」

 冬月は懐から何かの書類を取り出した。そこには、【ロンド・ベル】の一時的な指揮
権を与えるとあった。これでは、ブライトも首を縦に振るしかない。

「そう、堅くならんでくれたまえ。
 別に取って喰おうと言うのではない。
 実は、ヨーロッパより送られ物があってな。
 本来なら、もう日本近海に来ているはずなのだが、知っての通り現在異星人相手に戦
 争中だ。
 荷が、インド洋上で止まってしまっているのだよ。
 それには、十分な護衛が着いているが、異星人相手では何分不安がある。
 そこで君たちに、荷物の受け取りと護衛を頼みたいのだ。
 無論、こちらからも人は出すが、基本的に現場での行動権は君たちにある。
 どうかね、受けて貰えるだろうか」

 冬月は、何か講義を行うように静かに話した。だが、軍では丁寧な口調は実質的な命
令に等しい。従って、ブライトは以下のように、答えるしかなかった。

「了解です」

「そうか、それは素晴らしい。通達はしてある、詳細は事務局へ問い合わせてほしい」

 丁寧な言葉で実質的な用件の終了と行動開始を言い渡されたブライトであるが、【ネ
ルフ】の2人が引き上げようとしたとき、切り出した。

「一つよろしいでしょうか?」

「なんだね?」

「先日、強力な正体不明機がこの近域で消息を絶ちました。何か、ご存じならお教え願
 えませんか?
 これは所属不明機の写真です」

 ブライトは、その正体不明機――先日、第三東京市に現れた【使徒】――の写真を何
枚か取り出す。

「ほぉ、【使徒】かね」

 冬月は、自宅の庭で土筆を見かけたような口調で呟いた。

「【使徒】!?
 我々には初耳なのですが、あなた方は、これについて何か知っていると言う事ですな。
 知っているならば、お教え願いたい」

 ブライトは、あの強力な敵についての情報の手がかりを掴み、少し興奮しているよう
だ。しかし、冬月はにべもない返答だった。

「知っているのは俗称だけだ。詳しいことは我々にも、わからんよ。いや、詳しい者な
 ど誰もおらんよ」

 なおもブライトが食い下がろうとすると、今まで殆ど発言していなかったゲンドウが
朴訥と言うには印象の悪すぎる口調で語った。

「【使徒】に関しては、我々【ネルフ】に一任されている。
 諸君らには関係のないことだ。
 これにて、失礼する。
 いくぞ、冬月」

 と、とりつくしまも与えず立ち去っていった。ブライト達は、後を追おうとしたがど
こからともなく現れた複数のM.I.B.に

「お帰り、ご案内いたします」

 と、慇懃無礼にこられてはどうしようも無かった。



<ネルフ本部技術部管理・廃棄処理場 通称”R”区画>      

 ……ブライト達が不愉快極まる会談していたその頃、【ネルフ】保安部弐課所属・相
田マサル二尉は、人生最大の危機を迎えていた。

 今まで初戦で撃破され、いきなりサバイバルしたこともあった。敵部隊に包囲され、
次々と僚機が討たれていき、もう少しで部隊ごと敵の捕虜になってしまいそうなことも
あった。

 だが、今回のような人間としての尊厳と存在に対する極めつけの危機は、ベテランの
相田二尉も遭遇したことは無かった。

 いま相田二尉は昆虫採集の虫のように、何故か丸い手術台らしき所へ四肢を広げて仰
向けに固定されていた。そしての傍らでは、あの赤木リツコ博士が薄暗い部屋の中で不
気味に眼鏡を光らせている。もちろん愛を語らっているわけではない。一方的に特殊な
愛で満たそうとしているだけだ。
「覚悟はいいわね」

 リツコは厳然と言い放つ。

「……何が、でしょうか」

 相田二尉は、怖じ気付く自らの心を奮い立たせつつ、辛うじて応えた。

「私のかわいい作品の落とし前よ」

 どうやら、作品とは先の戦いで壊してしまった試作型パレットガンのことらしい。

「あれを壊したのは、自分ではありません、て、敵・異星人です!
 自分は、無実であります!」

 必死に弁明する相田二尉。だが、理性的な風貌の奥底に狂気を潜ませつつ、クスクス
笑いながらリツコは、言う。

「……いまさら、そんなこと、どうでもいいわ……
 私は、科学への情熱と怒りのぶつけどころが欲しいだけ……
 大丈夫、貴方は強く生まれ変わるのだから……
 痛くない……、痛くないわよ〜
 おホホホホホッ〜〜〜」

 今日も赤木”マッド”リツコは、元気に”科学”していた。



<第三新東京市・ネルフ付属病院301号室>      

 シンジは、意識が戻ったあと綾波レイのいる病室を見舞っていた。だだ広い病室に、
一つだけ設けられたベットへ横たえられているレイの傍らで、何をするでもなくシンジ
は佇んでいた。

 暫くして、レイは気がついたらしく、戸籍上の親戚よりは幾分人間的に話しかけてき
た。

「……あなた、だれ?」

 シンジは腫れ物に触るように応える。

「僕は、碇……、碇シンジ。
 よくわかんないけど、ここでは、みんなにサードチルドレンって、呼ばれている」

「……そう」

 レイの反応は極めて淡泊であった。もっとも、彼女にしてみれば反応するだけマシで
無視されなかった僥倖に少年は喜ぶべきであろう。
 しかしながら、幸運は長く続かなかった。元々、人と話すことが得意では無い少年と
必要最小限の話しかしない少女の間で、円滑な会話など望むべくもない。

 ごく自然に会話が消滅し、それが永続するはずであった。しかし、少年は本日二度目
幸運を無自覚のまま享受した。珍しくレイが、自ら話を始めたのである。

「……どうして、私をかまうの」

 レイは変わらず感情のこもらない声で、シンジへ問いかける。普段のシンジであれば、
そこで押し黙ってしまったであろう。しかし、その時シンジは必死で語るべき言葉を探し
陳腐ではあるがある種の真実を添えて、訴えた。

「だって、僕たちはなんて言うか……その……仲間じゃないか。
 『どうして』なんて、悲しいこと言うなよ」

「……」

「あ、綾波?」

「……ごめんなさい。
 ……こうゆう時、どんな顔をすればいいか、分からないの」

 レイは、感情の感じられないが、何故か悲しげな聞こえのある声で、答えた。
 それを聞いてシンジは、言う。

「……笑えばいいと思うよ」

 レイは、俯き数瞬の間を置いて、意を決したようだ。顔を上げ、確かに微笑んだ。静
寂な湖面に映る月の様に澄み切った表情で、確かに彼女は微笑んでいた。

 シンジは自分の行った偉業に気付かず、その微笑みに魅了され瞬きすら忘れていた。




 その後、

 レイのお見舞いに来てレイの微笑みを見て惚けているシンジを見つけたミサトが、そ
れをサカナに大騒ぎして、強面のベテラン婦長に病院を叩き出されたりしたとか。

 冒頭の怪しい男達(作戦・保安・技術・諜報の各部有志)による相田二尉救出作戦が
多大な犠牲(使用した私物のスタングレネード等の弾薬・一時的な情報攪乱に使用し攻
性防壁に焼かれた端末、参加人員への慰労の飲み代で消費された相田二尉のヘソクリ等
々)を払いつつ成功したとか。

 サイド1より【ロンド・ベル】と共に行動していたジャンク屋が商魂逞しく廃棄物を
漁っていたら、一つ目玉の巨大生物らしき骨を見つけ泡喰って逃げだし、ネルフ内で2、
3日行方不明になっていたとか。

 獲物に逃げられ御立腹のリツコによって、新人技術部員が怪しげな薬の臨床実験の犠
牲になったとか。(何故か、その部員の彼女から、感謝のメールがリツコに届いたそう
だ)

 等々、いくつかの出来事があったが、おおよそは順調に出発準備が進む穏やかな日々
であった。



<インド洋 ステーション・ガルシア近海>      

 数日をかけ、【ロンド・ベル】所属機動巡航艦【アーガマ】は、出発準備とEVA搭
載用艤装を終えた。彼らは作業を終えるが早いか、直ちに日本を出発し、輸送艦隊が足
止めされているインド洋上の【ステーション・ガルシア】へ向かう。

 もちろんネルフ・スタッフも参加しており、シンジと葛城ミサト一尉、そして伊吹マ
ヤを筆頭とする技術部の面々がこの航海に同行していた。


        :

 【アーガマ】より一機のヘリが飛び立つ。

 その乗員の構成は、パイロットは意外にもヘリのライセンスを持っていた兜甲児(と
てもそうには見えないがNASAの研究員であった時期もあるような優秀な人物だ)、
浮かぶ骨董品と言われる【オーバー・ザ・レインボー】に行くと聞いてコ・パイロット
に無理を言って割り込んだ旧式兵器マニアのチャック・キースと、お馴染みのミサトに
マヤ・シンジの5名である。

 5人の内4人は、荷の受領に伴う雑務を事前に済ますべく先行して輸送艦隊へ向かっ
ていた。

「シンちゃぁん……
 ちょーち、おねーさんと良いとこ行かな〜い?」

 まるで夜の歓楽街で聞くような文句であるが、実際も大差はない。シンジが、ミサト
にヘリへ強制収容された、呼びかけである。本人はリップサーヴィスのつもりであるら
しいが、シンジにとってはありがた迷惑である。ヘリのキャビンでは、伊吹マヤまで一
緒になって、挟み込まれて赤くなるシンジを見て悦に浸っていた。

 だがシンジは、堅いシート、狭いキャビン、レシーバーをしていないと難聴になって
しまいそうな爆音等、ヘリに対して悪印象しか持てない環境に、早くも後悔を深めるの
は当然といえば当然すぎる。

 そして、何をするでもなく外を眺めていたとき、それは現れた。

 いきなり、雲を突き破るように鏃状の物体が飛び出してきたかと思うと、その正確な
姿をシンジに知覚させないまま、一気に視界から消え失せ、その数瞬後に凄まじい轟音
と衝撃でヘリを弄んだ。

「【オーバー・ザ・レインボー】の連中だな!!
 無茶な接近しやがって!!
 ブチ当たったら、どぉ〜するつもりだい!」

 ヘリの操縦を行っていた甲児が操縦桿から手を離し、頭上で振り回して抗議する。当
然、そんな抗議はヘリを揺さぶり通り過ぎた亜音速の鏃達に届くはずもない。

「大丈夫だよ。
 【レディ・レイ】(オーバー・ザ・レインボーの愛称)所属の連中は、旧式機だらけ
 だけど、ベテラン揃いだから腕は確かだよ。
 しかし、今のは旧かったなぁ〜。
 連邦成立前の機体じゃないか……
 よく飛んでるなぁ……」

 横に座っているキースがそれに応えた。

 そして、雲の切れ間から眼下へ拡がった海面へその光景はあった。

 ここからでは、いびつなマッチ箱のように見える攻撃型空母の向こうには、その数倍
の大きさを持つタンカーらしき船がおり、その周りには、小型の空母の様に見える船が
数隻、そのまた外周には、小型の戦闘艦が見えるだけでも20隻はいた。

 再びシンジのレシーバーに、キースの声が聞こえてきた。

「おぉ〜〜いるいる、こりゃあ凄いや。
 あの中心にいる空母は浮かぶ骨董品、建造後八〇年経った今でも現役バリバリの【オ
 ーバー・ザ・レインボー】!
 その周りにいるのは、水陸両用MS母艦に改装された【ワスプ】級が二隻に、改【ワ
 スプ】級が三隻も!!
 その他のフネも、タイコンデロガ級にスプルーアンス級にウダロイ、タイプ203バ
 ッチ3。
 他にもいるいる、退役寸前の旧式水上艦艇博覧会じゃないか。
 コウもくれば良かったのに、こんな機会そうあるもんじゃないぜ」

 キースは、心底そう思っていた。
 たとえ、コウが旧式水上艦艇など何の興味を持っていない、ニンジン嫌いのガンダム
マニアであろうともだ。

 その横で、キースの興奮ぶりを(いつもの自分の立場を忘れ)呆れ兜甲児は、全くコ
ウがこのフライトに付き合わなくて正解だと納得しつつ、無線へ怒鳴っていた。

「【オーバー・ザ・レインボー】コントロール。
 こちら、【うわばみスウィートハート】。
 着艦許可を願う」

 このコールネームを聞いて、ミサトのこめかみが一瞬引きつったのはまた別の話であ
る。



<連邦軍攻撃型航空母艦【オーバー・ザ・レインボー】ヘリ発着区画>      

 【オーバー・ザ・レインボー】よりの誘導に従って、兜甲児の操るヘリが【オーバー
・ザ・レインボー】飛行甲板上へ着艦した。着艦作業を終え、ヘリの昇降用ハッチを開
くと、その先には空母甲板の先に見渡す限りの水平線と入道雲、そしてと抜けるような
青い空があった。

 要領の良いキースは、既にヘリを抜けだしヘリ発着管制士官の制止を振り切って、駐
機区画へ直行、自分の趣味を満足させる。

 ミサト達は、というと、着艦したヘリポートの側にいた、この艦の艦長と副長らしき
50絡みと40絡みのがっしりした男達の出迎えを受けていた。

 敬礼と共にミサトは修辞を述べた。
「特務機関【ネルフ】所属、葛城ミサト一尉です。
 乗艦の許可を願います」

 それを受け、年輩の艦長らしき男が、答礼を返す。

「当艦への乗艦を許可する。
 【オーバー・ザ・レインボー】へようこそ!
 艦長のハワード・ヒュイゼン大佐だ」

 その声に心地よさを感じつつミサトは、2,3言会話を交わすと、用件を切り出す。

「早速ですが、艦隊司令へ会わせて頂けないでしょうか?
 私は仕事をしたいと思います」

「よろしい、案内しよう」

 ハワード艦長がそう言いつつ、ミサトへ小さく耳打ちした。

「……司令に何を言われても、余り気にせんでくれ」

 この忠告を聞いて、ミサトは波乱を予感した。

        :

 ミサトの後ろでは、ヘリを甲板要員へ任した兜甲児がフライトジャケットを脱ぎ、肩
へ引っかけて話が終わるのを待っていた。何の気まぐれか、一陣の突風がそのジャケッ
トを兜甲児の肩より剥ぎ取り、飛行甲板上へと連れ出す。兜甲児は、無様な追い駆けっ
こを始めた。

「待ちやがれ、コンチクチョウ!」

 シンジは、その兜甲児らしい一声を聞き、そちらへ向いたとき、一人の空母甲板上に
は全くそぐわない格好をした人物を視界に捉えた。

 その人物はファッションショーでのモデルのように優雅な足取りで、発着艦作業で賑
わう飛行甲板クルーの間をスリ抜けて、こちらへ向かってくる。そして、兜甲児のジャ
ケットを何の躊躇いも無く、その健康美溢れる滑らかな脚で踏み締めると、ミサトへ向
かって話しかけてきた。

「ヘロゥ、ミサト」

 ミサトは、その一声を聞いて初めて彼女に気付いたらしく、一寸驚いた顔をする。

「あら、アスカじゃない!
 元気してた?
 貴女背ぇ、伸びたんじゃない?!」

 アスカと呼ばれた、今まさに少女と女の端境の儚げな美しさを持ちこのインド洋の様
に深い紺碧の瞳へ知性を滲ませた彼女は、クリームイエローのワンピースドレスに身を
包み、その美しい栗色の長い髪を風になびかせ、左手を腰に当て、弾けるように活発さ
が溢れんばかりに返事した。

「そ!
 他のとこも、ちゃーんと女らしくなったわよ!!」

 その足下では、兜甲児がフライトジャケットを美しい蹂躙者より救出しようと躍起に
なっていた

「テメッ、このヤロ!
 俺のジャケットから脚ぃ、除けやがれってんだ!!」

 再び、空母甲板上を風が吹き抜ける。インド洋の風は、性差別撤廃主義者のようだ。
先程甲児のジャケットを連れ出したと思ったら、今度はあろう事か、彼女のスカートを
捲り上げていった。

「ウヒョウ〜、こりゃぁいい物見せて貰った!!」
「し、白ぉ……!?」


 その瞬間を間近で見ることが出来た、幸運な(と言って良いのだろうか?)兜甲児と
シンジ。星系を越える女たらしと純朴な少年、それぞれの反応はそのまま素直にその性
格を表していた。

 だが、次の瞬間に二人は稲妻のような衝撃を頬に感じた。
 小気味良い音が2つ、見渡す限りの水平線へ向かって駆け抜ける。

「なっ、何すんだ!
 このヤロウ!」

 何が起きたか把握できていないシンジを後目に、兜甲児がアスカへ喰ってかかる。

「見物料よ、安いもんでしょ!」

 アスカは、全く悪びれず、即座に言い返した。

「そんな発育不良なもん、見たって面白くっとも何ともねえ!」

 先ほどの発言を棚上げして、甲児も言い返した。もちろん、彼女は盛大に燃え上がっ
た。

「なんですってぇ〜!
 このアタシのどこが発育不良ですってぇ!」

 胸に手を当て、劇場で真ん中でスポットライトを浴びたのオペラ女優の様なポーズを
取って激しく抗議するアスカ。確かに、扇情的なまでに正確に映し出すワンピースドレ
スを通して見える体のラインは、見事な隆起を描いているが、ボリュームに少し欠ける
かもしれない。少なくとも豊満ではない。

 だが、それを横で聞いていたミサトは少し不思議そうな顔をして、兜甲児に尋ねた。

「甲児君?
 あなた、あの子何歳だと思っているの?」

 甲児は怪訝な顔をして応えた。

「えっ、ちょっと童顔に見えますけど一八,九でしょう?」

「アタシは、もうちょっとしたら一四だけど……
 一八、九なんて、アンタ目ぇ腐ってんじゃないの!?」

「アスカ!!
 もう気は済んだでしょう!?
 その辺にしときなさいよ」

「……判ってるわよ。
 こぉ〜んなバカ相手にしている程、あたしも暇じゃないもの」

 ミサトのフォローを受け、一旦は大人しくなった甲児だが、その一言に即発され再度
アスカに喰ってかかるが既に興味が無くなったのか、アスカは全く取り合わない。

「それよりも、ミサト!
 早くサードチルドレンを紹介してよ」

 ミサトは、頬に紅く手形をつけたシンジ頭を胸元に引き寄せ抱きかかえて、アスカに
紹介した。

「アスカ、この子がマルドゥック機関が選出した【サードチルドレン】、碇シンジくん。
 EVA初号機専属パイロットよ」

 続けて、ジタバタ暴れるシンジの顔をその豊満な胸越しに覗き込んで、アスカをシン
ジへ紹介する

「シンジくん、こちらがこの艦隊が運んでいるEVA弐号機専属パイロット、【セカン
 ドチルドレン】惣流・アスカ・ラングレーよ、仲良くしてね」

 ミサトは、アスカへのシンジ紹介ついでに、シンジへ対してアスカの紹介もする。
 アスカは殆ど女の本能で、サードチルドレンの品定めをする。

『顔は…….まあまあね。
 背は私より少し低いかな……
 でも、なよなよっとして、なぁんか頼りないわね〜』

 自分と同じ年頃の美少女に注目され落ち着かないシンジの頬へ、アスカが視線を向け
たところで、クスッと笑う。自分が貼り付けたにも関わらず、鮮やかな手形をつけたシ
ンジの顔が笑いを誘ったようだ。

「フフッ、初めまして!
 私、惣流・アスカ・ラングレー。
 特務機関【ネルフ】ドイツ支部より派遣された、貴方と同じチルドレン。
 汎用人型決戦兵器【エヴァンゲリオン】弐号機専属パイロットよ。
 よろしくね!!」

 と、この澄み渡った海と抜けるような青い空に相応しい太陽のような鮮やかな笑顔を
こちらに向け、手を差し出してきた。

「……うん。
 僕、碇シンジ……
 よっ、よろしくっ!」

 その笑顔に魂が抜かれたようにシンジは、ぎこちない動きでその白魚のようにたおや
かな手を取り、握手していた。



<連邦軍攻撃型航空母艦【オーバー・ザ・レインボー】士官食堂>      

 あのあと、ミサトは空母艦橋で艦隊司令とひとしきり嫌みの応酬をした後、一息付く
べく【アーガマ】の一行とアスカをつれ、士官食堂へと向かった。

「何でも、好きな物頼んでねー。
 ここじゃ、大した物無いけど……」

「……って、仕事中にビールなんて飲んでいいんですか?
 ミサトさん」

 ミサトの持つトレイの上には、はどこから持ってきたか、一本の缶ビールが鎮座して
いる。

「しーーーーっ!
 1本ぐらい、飲んだ内入んないよ」

 それを、シンジが咎めるがミサトは、全く取り合わなかった。

 一同が、席へ着き談笑を交わしながら、過ごしているところでミサトは後ろから抱き
しめられ、狼狽えていると、聞き覚えのある声を久方ぶりに耳にした。

「やっ、なっ、誰よ!
 やめて!!」

「相変わらず、昼間っからビールか……
 腹、出っぱるぜ」

 その声の主をみて、アスカは全身で歓迎の意を表す。

「加持さん(はぁと)」

 ミサトは、自分の記憶するその声の主とアスカが呼んだ名が全く一致することに驚き
つつ、それが何かの間違いであって欲しい、と願いつつ、声の主を肉眼で確認する。
 ……やはり、間違いなかったようだ。

「なななっなんで、あんたがここにいんのョっ!」

「ご挨拶だな。
 久しぶりに逢ったのに。
 アスカの随伴でね、ドイツ支部から出張さ」

 伸ばした髪を無造作に後ろで一つに括り、無精髭を生やしたどこか軽い感じのする優
男にアスカはじゃれつく。その光景を無視して、ミサトは猛然とその男に噛み付いた。

「そりゃ、ご苦労様だったわね。
 用が済んだら、さっさとドイツ支部へ帰りなさいよ!!」

「おいおい、無理言うなよ……
 異星人と戦争してんだぜ、DC残党も活発化してんのにどうやってドイツに戻れって
 んだい!?
 当分、帰る予定はないよ」

「あっそ……」

 それを聞いて、ミサトは不機嫌そうに呟いた。

 ミサトの視線など感じないかのように、加持は辺りを見渡しシンジへ視線を向ける。

「君が、碇シンジ君かい?」

 いきなり、話を振られ慌てるシンジ。

「どっ、どうして僕の名前を!?」

「そりゃ、知ってるさ。
 この世界じゃ、君は有名だからね。
 何の訓練も無しにEVAを実戦で動かしたサードチルドレンってね。
 しかも、単独で使徒を一体撃退している」

「そんな……、偶然です。
 ……ただの」

「偶然も実力の内さ
 才能なんだよ、君の」

 その会話に甲児は割り込む。

「何だって、シンジ!
 お前が【使徒】を撃退したんだって!?
 そいつは、どんなヤツだ!!?」

 その質問に、シンジは甲児に襟元を捕まれて揺さぶられながらミサトをチラッとみて、
無反応なのを了承と受け取ったのか、先日の使徒の話を甲児にする。どうも甲児は【使
徒】と交戦して攫座した一件を、根に持っているようだ。この男には珍しく食事を後回
しにして、シンジに矢継ぎ早に質問するのであった。

        :
        :
        :
        :

 皆が食事を終えた後、ミサトは宣言した。

「それじゃ、私たち弐号機の受け取りの手続きしてくるから。
 シンジくんは、アスカと居て。
 アスカっ!
 シンジ君をよろしくね」

 そう言って、マヤを連れ食堂を後にしていた。ミサト達が完全に立ち去ったのを確認
すると、アスカはシンジへ下命した。間違えても、頼むだとか、ねだるだとかではない。

「サード、チョット付き合って」

「えっ、どこへ行くの?」

「どこだって、いいでしょ。
 さっさと、ついて来る!」

 と、返事を聞かない内にイスから立ち上がり、シンジを引き連れていった。



<連邦軍特設輸送艦【オセロー】特設保管庫内>      

 強引に連絡機を徴発して、特設輸送艦【オセロー】へと乗り込んだアスカは、その内
部保管庫のLCLプールへ俯せにされていたEVAの背中へ登った。そのしなやかな肢
体を紅い背部装甲の上に踏ん張らせて、子供が自慢の玩具を見せびらかすように誇らし
げに演説を始めた。

「ご覧なさい!
 これが世界初、本当のエヴァンゲリオン!!
 動作検証機であるEVA零号機や量産試作機であるアンタの初号機なんかじゃなくっ
 て、正式量産型の純粋な戦闘用エヴァンゲリオンよ!
 何の訓練も無しに、アンタなんかにシンクロしてしまう初号機なんかとは根本から違
 うんだから!」

 シンジは、この高らかな口上を聞き、それを尤もだと同意しながらも、『惣流さん、
そんなトコでそんなカッコしてるからパンツ見えてるよ』と言うべきかどうか、複雑な
表情をして迷う。

 アスカはシンジの様子に満足したのか、更に畳みかけようとしたその時、船体が衝撃
で揺さぶられた。

「水中衝撃波?
 敵!?」

 アスカの極めて明晰な知性は、素早くその衝撃の正体を把握していた。
 そして自分の手元に、その美麗な顔を意地悪く歪めて一言呟いた。

「チャーンス」



<ステーション・ガルシア近海>      

 それは、どう見ても機械には見えなかった。

 しかし、それまで知られている如何なる生物でもあり得なかった。

 そのエイのような躰には、目のあるべき所には目は見あたらず、くちばしのような大
きな口が突き出していた。その巨大な口には、どう見てもプランクトンや海草を食する
ようには見えない鋭い歯が乱立していた。その奥には、何か紅く光る光球が見え隠れし
ている。
 加えて、深度1500mの下で180ノット(約330km/h)以上で泳ぎ、全長
300mを越える生物など、既知の生物にはいようハズも無い。

 だが、第六使徒【ガギエル】と後に呼ばれることになるそれは、一般常識を完全に無
視して【ステーション・ガルシア】へ突き進んでいた。



<連邦軍攻撃型航空母艦【オーバー・ザ・レインボー】ブリッジ>      

 全く予期していなかった正体不明の敵襲来にブリッジは大騒ぎになっていた。

「何事だ、ポセイダル軍か!?
 現状知らせ!!」

 艦隊司令が、現状を把握しようと叫ぶ。

「海中を150ノット以上で航行する正体不明の敵による襲来です。
 既に艦隊外周で警戒していた攻撃型潜水艦の【スキップジャック】【シーライオン】
 が撃沈されました!
 現在、艦隊護衛部隊を迎撃に向かわせています。
 あと、5分で両用MS隊も出撃します」

「3分で済ませろ!
 急げ!!」

 そこへミサトが、入ってくる。

「ちわー、ネルフっす。
 正体不明の敵の迎撃作戦はいかがっすか〜?
 いわゆる【使徒】だと、おもわれるんですけど〜」

 まるで野球場での売り子か、出前の配達のような口調で艦隊司令へ話しかけるミサト。
 当然、艦隊司令は全く取り合わない。

「まだ確認されたわけではない!
 我々に任して貰おうか!」

 そう言うやり取りが行われている間にも攻撃は続く。

「【ブロードソード】、沈黙!
 【キッド】、総員退艦命令を発しました!
 敵は依然として、こちらへ向かってきます!!」

「MS隊をまだか!!
 航空隊の対潜攻撃はどうなった!?」

「哨戒中だった【ゴールデンドーン】隊が行ってますが、『命中弾多数モ、効果無シ』
 を報告しています」

「えぇい、何をしている!
 何故、対潜魚雷をあれだけ喰らっていながら、行き足が落ちん!!
 くそう、何がどうなっている!」

 潜水艦としては異常な速度と耐久力を持つ敵に、護衛艦隊は全く対応できていない。
しかし、この戦場での指揮権は、相手方にある。そんなもどかしさに、ミサトは何もか
も投げ出したくなる自分を押さえて、先ほどとは打って変わって、事務的に述べた。

「司令、これは間違いなく【使徒】による攻撃と思われます。
 指揮権をお渡し下さい。
 弐号機を出して迎撃を行います!」

 再度、ミサトが指揮権委譲要求をしているときに、そのEVA弐号機を輸送している
【オセロー】の近くに盛大な水柱が上がった。



<連邦軍特設輸送艦【オセロー】特設保管庫内>      

 ……話は、ミサトが【オーバー・ザ・レインボー】艦橋に上がる少し前に遡る。
 アスカは、EVA弐号機に乗り込むべく準備を始めようとしていた。その前に、何を
思ったかシンジへ向かって宣言する。

「これから、EVA弐号機を出すわ!」

「そ、っそう。
 がんばってね」

 シンジは完全に他人事のように応えていた。

「何言っての!!
 あ・ん・た・もっ!!
 一緒に来るのよ!」

 アスカは、シンジに力強く詰め寄る。
 シンジは、少女が詰め寄ってくる姿をみて『やっぱり綺麗な娘は怒っていてもカワイ
イんだな』などと暢気なことを考えていた。

 そんな余計なことに気を回していたせいか、シンジはアスカに保管庫脇の階段へ連れ
られプラグスーツへ着替えることになる。

「あんたは、上の方へ行って着替えて!!
 私も着替えるけど、覗いたりしたら承知しないわよ!!
 いいわね!!」

 その剣幕に全く逆らえないシンジ。

「わっ、判ったよ。
 でも、ほんとにこれに着替えるの?」

 シンジは、アスカ用の真っ赤なプラグスーツを手に、情けない顔をしてアスカに聞い
た。

「男なんでしょう!?
 ウダウダ言わずにサッサと着替える!」

 アスカの気持ちいいくらい強引な決定に、シンジはシブシブ、彼女の指示に従うので
あった。

「……それじゃ、着替えてくるから。
 着替え終わったら呼んでね」

 シンジが階段を昇り、見えなくなったことを確認して、アスカはワンピースドレスを
脱ぎ始めた。手早くワンピースドレスを脱いだあと、ブラもショーツも脱ぐ。プラグスー
ツを着用する場合は、下着を含めて何も身に着けないからだ。そして、アスカがプラグ
スーツに足を通したところで、それは起こった。

 一人の少年の未来は、この時点で豪快に歪んだのである。

 まず、最初の衝撃とは比べ物にならない揺さぶりが、【オセロー】を襲った。
 その原因は、【使徒】が【オセロー】近辺で小煩い護衛艦を軽く弾いたことにより、
呆気なく爆沈してしまったためだ。その結果として、衝撃波が発生し、一瞬の間をおい
て周囲へと波及、爆沈艦の近くにいた【オセロー】を水面に浮かべた木の葉の如く揺さ
ぶった。

 もちろん、アスカは生来のバランス感覚と訓練の成果を生かし、不安定になりながら
もその衝撃に対応できた。

 しかし、その上の階段で着替えていた少年は、そうではなかった。
 見事なぐらい、綺麗にバランスを崩し階段手摺りを越えて、その下へ転げ落ちていた
のだ。

「うわっ〜!」
「きゃぁ!!!」

 シンジは、手摺りなどに引っかかって、全く無制御に放り出され訳ではなかったが、
一瞬混乱して、状況が把握できていなかった。

 ここで運命の女神に幸運と悪運を箱詰めのセットで贈られたシンジ君の反応と心の中
を見てみよう。

 ――なぜだか、自分の身体の下に暖かい感触がする。

 唐突であったため、無事にとは言わないまでも、何とか最悪の事態は避けたと少年は
確信していた。しかし、疑問もある。顔には鋼鉄製の床では、絶対にあり得ない弾力が
あった。ついでに、左手はマシュマロのような柔らかなモノを掴んでいる。思わず、確
かめるように何度か手を開け閉めしてみるほどに。

「んっ!」

 ―なにか、くぐもった声がする。
 ―恐る恐る目を開くと目の前には一面の雪原が広がり、視界の右端には、何やら最近
  見たような気がする色合いの栗色の茂みが見える。
  だが、記憶よりかなりその色をしている範囲が小さい気がする。

 厭な予感に囚われつつもシンジは顔を上げ、声がした左方向を確認するとそこには、
床に拡げられた長い栗色を生き物の様にうねらせ、顔を真っ赤にし口元が引き攣ったア
スカの顔があった。

 ―えーと、ここに惣流さんの顔があるということは……
 ―この手にしたものは!?
 ―ヤバイッ!!!!

 どこか、理論を超越した三段論法をシンジが終えるより速く、アスカはシンジの紅く
手形の付いた方とは反対側の頬へビンタを叩き込み、、とても無理のある体勢からはな
った平手とは思えない威力を発揮して、シンジを力一杯張り飛ばした。

「信じられない!!
 男って、どうして皆こうもヤらしいのかしら!!!」

 アスカはシンジにとっては理不尽な怒りでその珠のような白肌を朱に染めつつ、立ち
上がって、プラグスーツを着込む。そして、隅の方で暢気にノビているシンジを蹴り起
こして、EVA弐号機へと乗り込んでいった。



<EVA弐号機エントリープラグ内>      

 アスカがエントリープラグ内パイロットシートへ就くと、シンジはその脇に捕まった。

「もっー、アンタ邪魔なのよ!
 ちょっと、どきなさいよ!」

 と、アスカはシンジに毒づく。

「しょうがないじゃないか!
 プラグは2人乗るように出来ていたいないんだから!」

 シンジは、もっともなことを言うが、アスカはシンジの返事など、どうでも良かった
のか、適当に流した。

「あぁー、もういいわ。
 私の戦いの邪魔だけはしないでよ!」

 アスカは、シンジの聞き慣れない言葉で起動シーケンスを進めている。EVA弐号機
の起動シーケンスは順調に進み、神経接続に入った。だが、エントリープラグ壁面が外
部映像に変わる直前で起動シーケンスは止まり、アスカはシンジにキツい口調で言い放
つ。

「アンタ、共通語でモノ考えているでしょう!
 ドイツ語で考えなさい!
 シンクロにノイズがのって、EVAが起動できないじゃない!!」

 シンジは、目を白黒させ目の前の少女の無理難題に応える。

「……日本語だよ……わかった。
 ……うーーーーーーん、バァムクゥヘンッ」

「もぅーいい!!
 思考言語を日本語へ変更!」

 アスカは、無用に上昇する血圧を自覚しつつ、再び起動シーケンスを進め始めた。



<連邦軍攻撃型航空母艦【オーバー・ザ・レインボー】ブリッジ>      

 戦況は悪化する一方だ。既に艦隊の1/5が何らかの被害を被っている。

「司令、早く決断していただけませんか?
 私は、また死にたくないんです」

「だまれ!
 余所者の手は借りずとも、敵は撃退する!」

 と、返したのは、艦隊司令だ。しかし、そこに感じられるのは知性ではなく、単なる
蛮性だ。

 ミサトもあくまで言葉はそれなりに丁寧であるが、態度はとても上級階級を持つ者に
対するソレではなかった。ミサトは爪を研ぎながら、艦隊司令に話しかけていた。もっ
とも、それはあくまでポーズであり、実際には、先程甲児に要請させた【ロンド・ベル】
の応援部隊が後何分で到着するか計算しつつ、対応策を練っている。

 そこへ、新たな報告が入る。

「敵、【オセロー】へ進路を変更します!」

 それまで、小煩い攻撃を行う護衛艦へ攻撃を加えんと突き進んでいた【使徒】は何か
に気取られるように、急ターンをかまして【オセロー】へ向かっていた。

「いかん!
 ヤツを【オセロー】へ近づけるな!」

 己に課せられた任務を思い出した艦隊司令は、阻止命令を発した。
 当然、言われるまでもなく阻止に向かう護衛部隊。一機の水陸両用MSが、【使徒】
を阻止しようと立ち塞がるが、その巨大な口に挟まれてしまう。水面に飛び上がりざま、
噛み千切られるMS。

 上下に泣き別れたMSであったモノが水面に落ち、うず高い水柱を上げた。

 だが、それは無駄ではなかった。【オセロー】の防水シートが突如として盛り上がり、
【オセロー】からEVA弐号機が、付近を航行していた、強襲揚陸艦改修のMS母艦へ
と跳ぶ。直後、【オセロー】横腹を【使徒】がブチ抜いた。

「EVA弐号機起動しました!」
「何だと!
 誰が乗っている!!」

 オペレータと艦隊司令が、怒鳴りあっている様子を尻目に、ミサトは別のオペレータ
のヘッドセットを取り上げ、EVA弐号機へ呼び掛けた。

「アスカ!
 アスカでしょ!!」

 EVA弐号機から返事はミサトの予想を完全に肯定する。

『そーよ、ミサト。
 サードもここに居るわ!
 戦況は!?』

「【使徒】が、そっちに向かっているわ。
 いい、アスカ!?
 一旦【オーバー・ザ・レインボー】まで後退!
 外部電源を接続して!!」

 横で何やら、艦隊司令が喚いているような気がするが、ミサトは全く気にしていなか
った。

『りょぉかーぃ!』

 答えるが早いか、EVA弐号機は元強襲揚陸艦から軽やかに跳ぶ。着地地点は、どう
見ても海面だがアスカは全く慌てる様子はない。

『うわー、落ちる〜
 溺れる〜
 沈む〜』
 泳げないため水に対して苦手意識が強いシンジが、騒ぐ。

『煩い!』

 アスカは一言で切って捨て、EVA弐号機は海面に軽やかに着地し、再び跳躍した。
それを何回か繰り返し、EVA弐号機は【オーバー・ザ・レインボー】飛行甲板上へ降
り立つのであった。


        ;

「なんで、沈まなかったんだ……?」

 シンジがキャッチバーで財布の中身を全て持って行かれたサラリーマンのように独白
する。外部電源を繋ぐ作業をしつつアスカは、その疑問の種明かしをする。

「ATフィールドよ。
 着水寸前にごく薄いATフィールドを海面に展開して、沈まないようにしたの!
 おわかり!?
 サード・チルドレン?」

 自分を完全に見下したような最後の一言は気に入らなかったが、シンジは咄嗟にその
ような芸当が出来るセカンドチルドレンの力量に心底感心していた。

「くるわよ」

 アスカは、凛とした声で断言した。
 当然、同時にEVA弐号機へ戦闘準備行動も行わせており、左肩のウェポンベイから
取り出したカッターナイフの特大版のようなプログナイフを構えさせている。

 その彼女の視線先は、猛然とこちらへ向かってくる【使徒】がいた。
 【使徒】は速度を落とす様子も見せずに、突撃。海面が盛り上がったかと思うと、
【使徒】の巨体が水面より跳ね飛んできた。

 アスカの弐号機は直撃を避けながらも、空母上から叩き落とされていたが、ただでは
やられない。【使徒】へプログナイフで一撃を浴びせる。しかし、海面へ叩き込まれ、
EVA弐号機は海の中へと沈んでゆく。

「【使徒】はどこ!」
「こっちから、向かってくる〜」

 シンジが警告を発したときには、もう避けようのない距離まで、【使徒】はその強大
な口を開いて迫ってきていた。

「くっちぃ〜!?」

 とても13歳で大学を卒業した才女とは思えない、歳相応の反応だった。いうが早い
か、【使徒】はEVA弐号機をくわえ込み、その巨大な口に乱立する鋭い牙をEVA弐
号機に突き立てる。

「くっ!」

 リミッターが効くまでの一瞬の間に伝わった痛みのフィードバッグで、意識を失いか
けるアスカ。シンジ自身はその時の行動を覚えていなかったが、咄嗟にイントロダクショ
ンレバーを取り、EVA弐号機にシンクロする。

 まだ腹部から背中に突き通される痛みが抜けていないアスカが、急に伝えられなくな
ったフィードバックを疑問に思い、息も絶え絶えに目の前を確かめると、痛みを堪えつ
つ真剣な眼差しをして操縦するシンジの横顔があった。

「このっ!、このっ!」

 シンジは、【使徒】から逃れるため必死になってEVA弐号機を貫いている牙をプロ
グナイフで削っている。一瞬闘いを忘れ、なぜか頬が赤らむのを自覚しながら、アスカ
は疼痛を振り払いつつ打開策を考えていた。



<連邦軍攻撃型航空母艦【オーバー・ザ・レインボー】ブリッジ>      

 ようやく、センサー検知圏内へ到着した【アーガマ】からパターン青の知らせを受け
取ると、ミサトは艦隊司令から(半ば強奪して)指揮権の委譲を受け、使徒対応に追わ
れていた。

《メンツだけで、戦争してんじゃないわよ!》

 ミサトは戦場では死活的に重要な初期段階を台無しにしてくれた艦隊司令に殺意に近
いモノを感じたが、取り敢えずそのようなことは意識の片隅に追いやる。【アーガマ】
より、飛行能力を持っていることから緊急発進した【ゲシュペンスト】と【ゲットマシ
ン】が、戦域に到着しようしていたからだ。伊吹マヤが気を回してくれたのだろう。ゲ
シュペンストが、EVA用の薙刀・ソニックグレイブを運んでいることは報告を受けて
いる。 ≪さすがはリツコの仕込みね≫  ミサトは、自分に意外な心理的余裕があることに満足して、更に確認した。

 後には、【Gディフェンサー】と合体した【ガンダムMk.II】(パイロットはエマと
カツ)が続いている。報告では【ガンダムMk.II】も、水中戦になることから光学兵器
であるロングライフルは装備せず、ロケット弾を使用するハイパーバズーカを両手に二
門抱えて出撃していた。

 ミサトは、艦隊司令部へ全く効果の上がらない攻撃を行う護衛部隊を下げるよう指示
し、アスカを呼び出す

「アスカ!!
 聞こえる!?
 EVA弐号機は直ちに【使徒】より離脱、ゲシュペンストからソニックグレイブを受
 け取って!
 いいわね!?」

『っ……、いいわよ。
 見てなさい、アタシの弐号機傷つけた代償は、十倍にして返してやるんだから!!』

 先程、ようやく回復しシンジからEVA弐号機の操縦を奪回したアスカが答えるが、
その声はいつもより弱々しい。そう感じながらアスカの返答を聞いたミサトは、接近す
る応援にも指示を下す。

「EVA弐号機が【使徒】から離脱後、ゲッターはモード3へ再合体後、【使徒】を牽制。
 ゲシュペンストはそれを援護しつつ、EVA弐号機へソニックグレイブを渡して!」

『『『了解!』』』
『分かってるゼ!』

 ゲッターチームの三人と【ゲシュペンスト】のパイロット【テスラ・ライヒ研】所員
のシドルー・リグ・マイヤーが、それぞれ応える。

 その時、甲板上から甲高い排気音が聞こえてきた。何かと思い、そちらを見ると年代
物のコア・ファイターが甲板から垂直に上昇しているところで、そのコックピットには
あの加持が座っていた。機体があの赤を基調としたカラーリングではなく、青味がかっ
た黒色をしているところを見ると、連絡用に極少数生産されたステルス仕様機【コア・
ストーカー】か?

「加持ぃ!
 やっぱり、アンタは頼りンなる!」

 ミサトは、それをみて加持が何かやってくれると思い、気色満面といった様子で叫ぶ。
しかし、加持から入った通信は彼女の予想を超えていた。

『葛城ぃ〜。
 俺、用事思い出したから先行ってるわ。』

 その風貌通りの軽い口調で自らの行動を宣告すると、機体を反転させ【アーガマ】の
居る方向へ飛び去っていった。余りに自分の予想したそれとのギャップに暫し呆然とす
るミサト。

 そのミサトを尻目に【ゲシュペンスト】と【ガンダムMk.II】は戦闘区域に入ると同
時に、躊躇無く海面に突入していた。ゲットマシンの3機も、どこをどうすればそのよ
うなことが出来るか判らない、実際にその光景を目撃していなければ一笑に付してしま
う合体を行い、【ゲッター3】へとモードをチェンジして、その後を追った。



<インド洋【ステーション・ガルシア】近海・海面下>      

 一方、EVA弐号機は【使徒】の顎から逃れるべくアスカは、奮闘していた。が、
【使徒】に与えられた損傷が影響しているのか出力が上がらない。それまで『アンタは
ジッとしてりゃいいのよ!』とクギを刺されて、ジッとしていたシンジだが、焦るアス
カを見かねたのかそのアスカが握っているイントロダクションレバーに手を添えた。思
わぬ、シンジの行動にアスカは怒鳴ろうとするが、それより早くシンジはアスカに言い
放つ。

「惣流さん、今はこいつの口をこじ開けることだけに集中して!」

 シンジに真剣な眼差しで見つめられ、アスカは動転した。

「……流さん?。惣流さん!?」

 突然、こちらを見つめて動かなくなったアスカを心配して、シンジが呼びかけつつア
スカの顔を覗き込んだ。

「わかってるわよ!
 いいっ!?
 いくわよっ!!」

 アスカはビックリしたように仰け反ったが、文句一つで自分を取り戻して、集中を始
めた。それをみてシンジも更に集中をする。

《《開け、開け、開け、開け……》》


<連邦軍攻撃型航空母艦【オーバー・ザ・レインボー】ブリッジ>      

 マヤは、戦闘が始まり、ミサトに続いて【オーバー・ザ・レインボー】ブリッジでE
VA弐号機のモニターをしていた。

 先ほど、海面下に突入した各機の攻撃も全く効果を上げていないようだ。何せ、AT
フィールドという盾を破れる矛はEVAしか存在しない。だが、その矛は今のところ、
その真価を発揮しているとは、とても言えない。従って、残った彼らに盾は破れない。
盾を破れない矛に出来ることは限られている。
 それでもミサトはねばり強く、流竜馬達に、【使途】を振り回して体力の消耗――眠っ
ている間も泳ぎまくるようなのもいる水棲生物の親玉相手に効果があるとは思えなかっ
たが――を、狙って指示を出しつづけていた。

 その指示をBGMのように聞き流しながら、マヤは一時機能不全を起こし低下してい
たシンクロ率が突然上昇し始めた事に気付き、ミサトに報告する。

「低下していた弐号機のシンクロ率が、どんどん上昇しています!」

 それを聞いてミサトは、祈るような気持ちで【使徒】からの離脱を願っていた。



<インド洋【ステーション・ガルシア】近海・海面下>      

 いままで、力無く【使徒】の口腔を押していたEVA弐号機の出力が上がり始める。
慌てるような知性など感じられない【使徒】が、弐号機を逃すまいと一層噛む力を増し
てきた。手応えを感じたのか、2人のチルドレンは更に集中する。

《《開け、開け、開け、開けぇ、開けぇ〜》》

 その強い意志に触発されたのか、EVA弐号機のフェイスガード前面の継ぎ目が開き
、素体の目が剥き出しになる。それは、2人の意志を受け爛々と煌めき、溢れんばかり
に湧き出る力でとうとう【使徒】の口蓋を押し開くことに成功した。

 ベテランのゲッターチームは、この好機を逃さず攻撃を行う。

『弁慶っ、シドっ、エマっ!』
『おぅ!ゲッターミサイル!!』
『まかせなっ!スプリットミサーイル』
『このっ!』

 弁慶操る【ゲッター3】は、唯一の飛び道具であるゲッターミサイルを、シドルー操
る【ゲシュペンスト】はマイクロミサイルの束を、そして【ガンダムMk.II】はその手
にしたバズーカとGディフェンサーに搭載されているマイクロミサイルを乱射して、そ
れぞれ【使徒】の口中へ叩き込んだ。【使徒】はEVA弐号機によってATフィールド
を中和されていたため、まともに攻撃を喰らう。明らかにダメージを受けた様子が見て
取れる。

 続けざま、ゲッター3は必殺技を繰り出していた。

『うぉぉ〜、大雪山颪ぃ〜』

 【ゲッター3】のその攻撃は、再度展開されたATフィールドごと【使徒】に海中で
の不格好な舞を強制する。その隙に、EVA弐号機は【使徒】より離れ、【ゲシュペン
スト】よりソニックグレイブを受け取り、【使徒】に向かって構えた。

 その時確かに、EVA弐号機エントリープラグ内のシンジは、アスカの背後に燃えさ
かる紅蓮の炎を見た。

「……このぉ〜、観念しなさいよっ!
 いっけぇ〜!!!」

 アスカは、気合いと共に開かれた使徒の口蓋奥にあるコアに必殺の一撃を叩き込む。
 激しい火花を上げて、ソニックグレイブが【使徒】のコアを突き通した。

「ふぅ〜、ようやく終わったわねぇ……」

 これで、【使徒】は沈黙するかに思えた、
 だが、アスカが一息ついたその時、シンジは先の第三新東京市戦で経験した【使徒】
と相対した時に感じた、プレッシャーで神経の先が焼かれるような感覚を知覚した。

《【使徒】はまだ死んじゃあいない!!》

 シンジは、咄嗟にイントロダクションレバーを握りEVA弐号機を操り【使徒】から
飛び退いかせていた。EVA弐号機が飛び退くが早いか、沈黙したかに思われた【使徒】
のコアが輝いたかと思うと、次の瞬間激しい衝撃を伴って大爆発を起こした。


 こうして、インド洋使徒迎撃戦は、唐突に始まり唐突に終わりを告げた。



<インド洋海面・EVA弐号機エントリープラグ>      

 【使徒】が自爆した後にアスカは自分の手ごと、イントロダクションレバーを握って
いたシンジの手に、身体が上気するのを感じながら、

「……ぁあ、あんた、勝手に私の弐号機動かすじゃない!
 ぃ、痛いじゃないの、さっさと手ぇのけなさい!
 ……そ、その……アリガトウ……

 アスカは最後に何か非常に小さい声で呟いたが、それはシンジに聞こえていなかった。

        :

 その後、アスカはEVA弐号機を波間に漂わせていた。
 何度かイントロダクションレバーを操作してみるが、全く反応しない。
 建造後、稼働試験もそこそこに輸送船に放り込み、ろくな調整無しで過酷な実戦へ投
入をしたツケが今頃回ってきたためだ。
 アスカは、憮然とした表情で回収を待っていた。

『サードのせいで、今日はロクな目に遭わなかったわ。
 どうしてくれようかしら。
 【使徒】を初めて殲滅したのは良いとしても、弐号機は動かなくなるし……
 ……でも、自爆する【使徒】から助けてくれた……
 【使徒】に噛み込まれたときのサードは、チョットカッコ良かったかな……

 ……何考えてんのよ、私は!
 アイツは私の着替えを覗くような女の敵よ!
 事もあろうに、私を押し倒して乙女の胸を揉みしだくような外道よ!

 ……っ!ボフッ
 ……私、裸見られちゃったんだ……』

 ……所々、事実と相違するアスカの主観で何やら考え込んでいるようだ。
 最後には何やら、柔らかい破裂音を立てて頭の天辺から湯気を上げている。

 シンジは、自分の頭上で目まぐるしく変わるアスカの表情と顔色を不思議に思ってい
た。が、出会いから現在までの極短い期間で得られた経験から、今はヘタな事は言わな
い方が良いことを確信していたので、黙ってシート脇に体を落ち着かせ動かないでいた。

 ……ようやく、【アーガマ】が見えてきた頃、アスカは何か良いことを思いついた
ようだ。
 何やら、些か険は取れてはいたがあの特設輸送艦で見せたような意地の悪い笑みを浮
かべていた。
 シンジは、幸か不幸かその笑みを、見ることはなかった。

<第弐話・了>



NEXT
ver.-1.10 2003/01/19 一部修正
ver.-1.02 1998/10/09 誤字・脱字修正
ver.-1.01 1998/07/19 誤字・脱字修正
ver.-1.00 1998/04/19 公開
感想・質問・誤字情報などは こちらまで!


<あとがき>

 その時、作者は神 -一般的な日本人同様どこの神であるか、本人すら判っていない-
にお伺いを立てていた。

作者  「神よ、私はどうすれば良いのでしょうか。
     お答え下さい……。
     おぉ、神よ」

 既に最後の辺りでは、かなり妖しくなっている気がしないでもない。
 その作者の方をポンッと叩く人物が居た。

?   「こんにちは〜!」

 その声を聞いたとたん、稲妻に打たれた様に座ったまま飛び跳ねる作者。
 恐る恐る後ろを振り向くが、視界の隅に紅毛が映ったとたん、混乱しつつ恥も外聞も
投げ捨てて作者は逃げ出した。
 作者は全力で逃げつつも、背後から全く振り切れない1人の追跡者あることに、焦っ
ていた。

作者  《むっ、背後からは一人か。
     もう一人は、どこだ!
     迂回して、先回りしているのか!?
     ならばっ!!》

 作者は、いずれ追いつめられてしまうと思い、全力で逃げつつ辺りを伺う。
 都合の良い場所を見つけ、そこへ作者が飛び込むとほぼ同時に閃光、そして壮絶な爆
音を伴って爆炎が舞い上がる。

        :
        :
        :
        :

 少し離れた場所で、作者は辺りの様子を伺っていた。

作者  「あれで誤魔化せたとは、思えんが……」

?   「とぉーぜんっ!!」

 作者の呟きへ、即座に突っ込む追跡者。
 作者は、最早これまでと観念して、その人物へ向き直る。

作者  「へっ!?
     たっ、助かったぁ〜」

 頭から空気の抜けるような音を立てつつ、ヘタり込む作者。
 作者の向き直ったところに居たのは、紅毛碧眼セミショートの某国防少女だった。

国防少女「プンプンッ!!
     なんでっ私が声かけたとたん、逃げたりしたんですかっ!?」

作者  「いっいやっ、君だと解っていたら逃げ出すような失礼なマネはしなかったよ
。
     ほら、ちょっと2人ほど抗議しに来そうな人がいたんでね……」

国防少女「それが、私から逃げるのに何の関係があるってんですかぁ!?」

作者  「声をかけられた時、その2人の内片方と聞き違えたんだよ。
     みょーに声が似ていたんでね。
     オマケに振り返るともう一人の方に似た見覚えのある髪が見えたような気が
     して……
     抗議に来るとしても、1人ずつだと思っていたから慌てちゃって……
     ホントーにごめん!!」

国防少女「もぅ、いいですけどっ!!
     ところで、その2人って何で抗議しに来ると思ったんですか?」

作者  「……うーん、なんと言えばいいか。
     1人は、おそらくサービスが余りに少なかったせいで……
     ……しょうが無いじゃないか。
     原作世界では、7話もかけて関係を深めているのに、ここからちょっと外れ
     た辺りの世界じゃ、もう一人の方が先に実戦参加しているんだから」

国防少女「なら、いっそサービスしなきゃよかったのに」

作者  「それも考えたよ。
     でも、そうしたらあの瞳が発する絶対零度の炎で焼かれるような気がして、
     出来なかったんだ。そもそも、当初のプロットではインド洋到着以前の冒頭
     の部分なんか2〜3行程度でサラッと流す予定だったんだ。
     けど、そうした場合その子との関係は、顔も知らない只の同職者。
     そうしたらもう一人の方が、もうそっちを向かす訳無いだろう?
     現時点では、君も含めてどうするか決めていないんだから、そんなこと出来
     なかったんだよ」

国防少女「何かものすごぉーく気に入らない事言われたような気がしたんですけど、苦
     労しているんですね……。
     あと、もう一人の方はどうしたんですか?」

作者  「……ちょっと、サービスしすぎた。
     灼熱のわだつみに滅ぼされるのもヤなのと、話が原作世界と余りに相違ない
     のも芸が無いと思って、ちょっと味付けしたら分量、間違えたらしくて……
     なんせ、その娘は放っといたら減殺されそうだし、望みを叶えると照れ隠し
     に暴れまくっちゃう娘だから、こっちとしても大変なんだ」

国防少女「自業自得のような気がしますけどぉ。
     最後に、私はどうなるんですか?」

作者  「……全く決まっていない」

国防少女「えっ!?」

作者  「このSS本編に登場するか、どうかすら決まっていない。
     ただ、基本的な事(バックボーン)は考えているけどね」

国防少女「なんで、何でなんですかぁ!?
     私は、あの人に逢えすらしないんですかぁ!?
     そんなのぉイヤぁー!!」

作者  「そう、言われても……
     もし、登場するとなったら君の古馴染みは登場後即座に退場して貰うことに
     なるよ。少なくとも出身世界の出来事を活かすつもりだから、1人は重体で
     病院行き、もう一人は君を庇って最低でも病院送り、ヘタするとそいつの血
     を浴びた君の腕の中で戦死って事になると思う。
     【ロンド・ベル】に参加することになるんだから、原隊も基地ごと全滅って
     ことになるかな、そうしないと参加する理由が今イチ薄いからね。
     少なくとも、僕は表層的には善人だからそんな事書くの気が咎めちゃって、
     困ってるんだ。
     本当のトコ」

国防少女「私はどぅすればいいのぉ……」

作者  「やっぱり、みんなの中の君に聞くのが良いかなと思っている。
     それで、決まらなかったら運命の女神に聞いてみる」

 目に溜めた涙を指で拭いながら少女は訪ねる。

国防少女「(グスッ)……それって、どうするんです?」

作者  「このSSの公開後の感想・意見に運命が委ねられる。
     それがこなかったら、運命の六面体に世話になるかな。
     いや、エヴァSSだし、久しぶりに八面体の世話になるか..」

国防少女「……意気地無し..」

作者  「……なんか耳障りなことが聞こえたような気がする……」

国防少女「意気地無し、っていったのよ!!
     何よ、深刻ぶっちゃって!
     私を登場させて、誰もいなくさせずに2人を出し抜いて、私があの人と一緒
     になるのを書き切れば、良いだけじゃない!!
     自分の構成力の無さのツケを、こっちに廻しているだけじゃない!!
     もう、バカバカバカバカバカっ〜!!
     あっち、行っちゃぇ〜」

作者  「あたたたた。
     『あっち、行っちゃぇ〜』とか言って、自分でどっか行っちゃったよ。
     まあ、あの娘の言うことも一理あるかな。
     登場可能な限界話数まで、少し間があることだ。
     もう少し考えてみるか……」

 黄昏て、どこか遠い目をする作者。
 次の話の構成でも考えているのだろうか。
 どことも無く、歩み始める作者だった。

 ふと、思い出した様に振り返る作者

作者  「やっと、この台詞が言える。
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     この次もサービス、サービスぅ!」






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