クロスエターナル
present by ゲバチエル
第二章 〜開戦の鐘〜

「レナ・・・右足だけでもなんとか歩けるだろ・・・?学校に行かないとな」 フォルはルシファーの呪いの強まるレナへ低めのトーンでそう言った。 「うん・・判ってるよ・・・でも肩は貸してよね?」 二人はあまり口数がなかった。この先レナがどうなるのか・・・それを考えているだけで心苦しいからだろう。 「レナーーーフォルーー」 下から二人を呼ぶリリーの声が響いていた。彼女も昨日レナの足へふりかかった事実は知っていた。 だがそれをどうこうというのではなく、今までどおりの親友としてレナを見ていた。 その声に反応するように二人は外へと出る。 三人が互いに顏を見て、そして頷く。レナの事を口に出さずともわかっていたようであった。 そして三人は学校へと歩みを進めていく。 「うちの学校はもう1000年以上歴史があるから、図書館になにかあるかもしれないね。」 三人は大陸全体で有名な自分の学校を思い出して、手がかりに思いをはせていた。 しかし三人がみたのはいつもの学校とは違う学校だった。 「何!これはどういうことだ?」 三人が学校へ到着すると、まるで内部から魔物に襲われていた。 漆黒の羽を羽ばたくものもいれば、動物のような姿の魔物も学校を徘徊していた。 みると、学校の外へ生徒は退避していた。さすがに無理やりシールドを突き破ったらしく、逆に中から出るのは不可能なようだ。 「どうなってるのよ・・・。フォル、レナ、よくみて」 リリーが何かを理解したかのようにその魔物たちを指差していた。 するとその魔物はひとつの場所へ全員が向かっていることが判った。 「あっちの方向は図書室!?図書室に何かあるというの!?」 魔物の群れはすべて図書室へと向かっていた。ゆっくりと、しかし確実に。 「図書室を狙ってる・・・・ということはあそこには何かがあるんだな・・・  それにあの魔物はそのへんにいる奴等と同じみたいだし・・・ここにいても埒あかない。行こう!」 フォルが学校内に踏み込もうとすると教師達はそれを止めた。 「君達!!何処へ行くつもりだ。そっちは危険だ。おとなしくしてなさい!」 だが教師の静止も振り切ってフォルは口をはさんだ。 「・・・校長先生。図書室には何があるんですか?あいつらは図書室を目指しています・・・教えてください」 フォルがすさまじい剣幕で校長に詰め寄っていた。するとゆっくりと校長は口を開いていた。 「・・・うちの図書室には・・・古代の文献などが数多く保管されているんだ。だが奴等の狙いはそれじゃない。  図書室の奥に隠し通路があってね・・・その奥は風の精霊の統治場所なんだ。  もともと精霊は天界の使者・・・さっきの悪魔のような奴等がそれを滅ぼそうとしても不自然じゃないだろう」 校長が言い終わると、三人は図書室のほうを見て武器を構えていた。 「・・・だったらなおさら行かなくちゃいけない。レナ・・・そして世界の破壊を防ぐ為に・・・」 フォルの言葉に反応するかのように、指輪とペンダントはまばゆい光を放っていた。 「・・・その指輪とペンダント・・・・・。伝説は実在したのか。  近頃魔物の様子がおかしいと思ったら・・・・・・。お前たちがカギを握っているのかもしれないな・・・。  判った。だがくれぐれも無理はしないでくれよ。それと・・・これを持っていけ。」 そういって校長はフォルにありったけの回復道具を渡した。 「それは、お前たちの無事を祈っての物だ。くれぐれも気をつけてな」 しかしフォルはレナとリリーを見ると剣を置いて、二人に言った。 「レナがその様子じゃあ戦闘は危ない。はっきりいってあの魔物のカズじゃ守れるとも限らない。  だから、リリー。レナを連れて家で待機していてくれないか・・・?ネットゲームを探ってくれると助かるよ」 「で・・・でもフォルだけじゃ危ないよ!!」 フォルを止めようとするレナだったが、その肩にリリーが手を置いた。 「フォルなら大丈夫よ。それにレナ、フォルの気持ちもわかってあげなよ。」 「うん・・・判った。でもフォル、気をつけてよ・・・?」 「大丈夫だって。それより何か判ったら連絡をくれよ?じゃあ俺は行くよ」 フォルは一人学校内へと進入していった・・・。リリーとレナもそれを見送るとそこを立ち去っていった。 「図書室は・・・職員玄関から行くのが一番速いか。管理棟の四階だからな・・・。それも廊下の一番奥。  それに・・・あいつを待たせるわけにはいかないな」 フォルは剣を構えると校舎内部へと走っていった・・・。 『管理棟1F』 フォルが学校内へ入るとすぐに、魔物が襲い掛かってきていた。 通称、ハウンドドッグと呼ばれる犬と、ゴブリンと呼ばれるこん棒を所持する魔物。 大陸中何処にでも存在するひ弱な魔物であった。 「はぁーー本来なら土足禁止なんだよなぁ・・・まあ非常時だし仕方ないけどなぁ。  こいつらは俺が三歳ぐらいから相手にしてるからたいしたことはねーし」 フォルは魔法を使うまでもなく一振りで敵をなぎ払っていった。 そのまま階段へと駆け込んでいく。そのまま四階へと駆け上がっていく。 ※『管理棟2Fと3F』はシナリオ上では行く必要なし。 『管理棟4F』 図書室を目指して進んでいると、突然隣の教室からガラスを突き破り一匹の魔物が飛び出してきた。 姿こそハウンドドッグに似ているものの、あきらかにそれより強そうであった。 「・・・あいつは一体・・・・・?そうだ。これを使えば弱点と魔物名が判るはずだな。  えーっとサーチオーブを使って・・・と。」 オーブが敵を白い光で包み、その能力や環境からくまなく調べつくす。 「馬鹿な・・・。ハウンドウルフだと!?狼系の魔物・・・こいつは強敵だな。心してかからないと」 ハウンドウルフは素早い動きでフォルの攻撃をかわして、的確に爪や体当たりの攻撃を入れてくる。 剣で勝てないと思ったフォルは、魔法攻撃を何度か織り交ぜた。 何度か魔法を敵に命中させると、ウルフは悲鳴をあげてその場に消滅した。 「ふうーなんとか勝てたか・・・。図書室へ急がないとな・・・・」 雑魚を蹴散らしながら、図書室へと走っていった。するとまもなくその入口のドアは目の前にあった。 「・・・回復の薬を飲んでおこう。何が起こるか判らないからな・・・。」 フォルはドアをゆっくりと空けていった。 「っく・・・・なんだこの気配は」 図書室に入ると、おぞましいばかりの気が感じられていた。本棚で隠れて見えないが正体はそこにあるようだった。 「・・・・誰だ!答えろ!」 フォルは戦闘態勢のままにその気配の元へ呼びかけた。 「ククク・・・おや貴方はルシファー様にとって邪魔な存在ではないか。  わがなはデーモン。ここから先は貴様を通すわけには行かないのでね。死んでもらおう!!」 デーモンの後ろには通路らしき者が口をあけていた。そこが精霊の間への入口のようであった。 「ハウンドドッグ!!」 デーモンがそう叫ぶと、その前にハウンドドッグが現われていた。 「まさか・・・ここの魔物は全てお前が呼んでいたのか?」 「死にゆくものへ教えても無駄なんだがな。正解とだけ言っておこう」 デーモンはその言葉を引き金にフォルへと襲い掛かっていていた。 圧倒的な力でフォルへ攻撃をいれてゆく。反撃の隙も与えず絶えずくりだされていく。 「っく・・・・」 フォルはその力の前に倒れてしまう。 「お前はよくやったよ・・・だがそれもこれで終わりだ。死ね!」 とその瞬間フォルの指輪が激しく輝いていた。光がフォルを包み傷を癒していく。 デーモンを包み、禍々しい外見を塗装をはがすかのように変えていく。 弱体化したデーモンをフォルは懇親の一撃倒していた・・・。 「ふーーーなんとか倒せたぞ・・・」 デーモンが消えると学校の邪気は消え、魔物も消えたようであった。 ふと自分の手に目をやると、指輪が光っていることに気がついていた。同じようにペンダントも。 あたりを見回すと、一冊の本が反応するように光を発していた。 フォルはその本へと手をかける。その本を開こうとするものの、張り付いたように本が開かない。 その本にペンダントが触れると、本の光が止まった。すると無地の本にタイトルが浮かび上がった。 そのタイトルは確かに 神精霊 と書かれていた。 「これは・・・?とにかく読んでみよう」 そこには精霊という存在がかき尽くされていた。 この世には炎・水・氷・地・雷・風の六つに加えて闇と光と言う要素で成り立っていると。 精霊は天界からの使者であり、人や動物に助言を与えると言う。 特にこの六つの属性の影響が強い場所を長い冒険の末に書きとめた。 恐らく精霊の力を受けているからなのだろう。 精霊に力と助言を授かる勇者がいつか現われる時のためにこれを残す。 「精霊・・・助言か・・・一度行ってみる価値はありそうだな・・・。ん?」 フォルがその本をカバンにしまうとすぐにパソコンの起動音が聞こえていた。 そのパソコンに反応するように指輪から光が発せられる。 パソコンの前には自分のパスワードをすでに入力された、エターナルアースのログイン画面が広がっていた。 「俺を呼んでいるのか・・・?よし行くぞ!」 だがフォルが転送されたのはログアウトした場所ではなかった。 そこはネットゲームとしては不自然な巨大な石碑が置かれた部屋。 『風が吹き始める時、風は吹き止む。風は絶えずまわり続ける』 「なんだこれ。何かの暗号みたいだな・・・図書館が風の精霊の所へ続いてるならヒントかもな。  メモしておかなきゃな。よしオッケーだ」 フォルがそれをメモし終わるのを合図にしたのか、突如ログアウトして電源はぷつりと切れてしまった。 「・・あれを見せるために・・・?・・・・考えても仕方がない・・・風の精霊の元へ行こう」 フォルは長い通路を渡って行った。しかし行き着く先は風が吹き続ける不思議な空間だった。 フォルが部屋の中央まで入ると目の前の扉は閉まっていった。まるで侵入者を遠ざけるように。 「ん・・・あの目の前の扉の横の龍の像から風が出てるのか。」 フォルは辺りを調べていった。何か扉を開けるすべはないのだろうか、と。 すると部屋には十字を結ぶように像が置かれている。 「まるで二重丸の形だな。この部屋は。それに風を出す像・・・・そうか、風はまわりつづけるって  この事なのか!よしやってみよう」 フォルが石像を動かして、扉の石像から石像へ戻るように配置した。すると。 まわる風が吹き上げて、風で押したかのように扉は開かれていった。 「ふう・・・開いたか。行くか・・・」 扉の先で待つ世界へとフォルは足を踏み出していった。 扉をくぐり、階段を駆け上がるとそこは風の吹き荒れる谷であった。 そして見える目の前の空洞。そしてそこへ続く釣り橋。 「精霊がいそうって感じがするな。あの洞窟の中にいるんだな・・・よし行くぞ」 フォルは頑丈でゆれることすらないつり橋を一人進んでいく。 だが真ん中辺りまでくると、なにか羽ばたきのような音が聞こえてきていた。 「何だ・・・?」 羽ばたきの音が聞こえたので後ろを見るとそこにも巨大な鳥が一体待ち受けていた。 「野生の・・・コカトリス!?あのくちばしにあの翼・・・こんな場所じゃ分が悪すぎる。」 フォルは襲い掛かってくるコカトリスをなんとか相手にするも、つり橋と言う不自由な足場と相手が制空権を持っているので 攻撃が当らなかった。相手の動きが素早いのでなかなか魔法を唱えるスキもなかった。 「翼を狙えばいいんだな。まずはそれからだ。魔人斬で遠距離から翼を狙えばなんとかなるかもな・・・」 ※魔人斬とは敵に向かって魔法力を投げつける魔法剣技 フォルは剣を構えてなんども翼へとわざを叩き込む。そしてコカトリスが翼を弱らせ地に立つと、コカトリスは逃げ出していった。 「つり橋は危ない。一気にあそこまで行こう・・・」 フォルは洞窟内部へと入っていった。 「なんだこれ。外より風が激しいぞ!?てことは風の精霊は近いってわけか」 あちこち風が吹き荒れていたが、その風の行き先は一つであった。 「風が集まるところに・・・風の大精霊はいるのか・・・?とにかく行ってみるか」 しかし精霊の場所のはずなのだが、中の魔物は牙をむいてフォルへと襲い掛かってきていた。 それにひるむ事もなくフォルは先へと急いでいった。風の導くままに。 螺旋にうねる風の空洞をつきすすむと、螺旋の真ん中へと続くかのような階段のようなものが見えてきた。 フォルはそこへと下っていった。そして彼は精霊を探した。 「こんな所へ来客ですか・・・・・」 目の前に突然巨大な翼をもつ者が現われ話し掛けてきた。フォルは一目で精霊なんだ、と納得した。 「私は風の大精霊と呼ばれるエアウイング。風の翼・・・という意味を持ちます。  ・・・貴方はどんな用件でこちらまで来たのですか?」 だがフォルが答えるより早く精霊は見抜いていた。 「!!その指輪とペンダント。やはりそうでしたか」 「どういうことなんです?」 エアウイングは一人で納得をしていた。だがフォルはそれを追求した。 「私達精霊などに影響が出ていてね。負の力が強まっているのよ。  恐らくは魔界の力が地表に影響してるんだと思うのです。  貴方も来る途中魔物に襲われたはずよ。もはや精霊の力じゃ打ち勝てないほどよ。  天界からの言い伝えでは、世界が闇に傾く時光と闇の力を持つ勇者が現われるって言われているの。  光と闇。それは貴方の持つその二つの装飾品にこめられているはずよ。多分・・・貴方がその勇者なのね」 突然の事にフォルはわけがわからなくなっていた。 「・・・俺は、俺はどうすればいいんです!?」 「光と闇の力・・・それを引き出す為には精霊の力が必要なの。長い間その力は封印されていたはずだからね・  光の力は、氷・炎・雷 闇の力は水・地・風 を元素としているから。そうね・・・次は雷の精霊に会うといいわ。  闇と光は反発しあうことで互いを増す・・・風と雷は相対の関係にあるからなおさらね。」 エアウイングは言い終わると手に力を集めてペンダントへと送り込んでいった。するとペンダントの三つある黒い宝石 の一つが黄緑色に点灯しだした。風を表す色のようでもあった。 「それとこれを貴方に渡すわ」 エアウイングはそう言って、フォルに一足の靴を渡した。 「この・・・靴は一体?」 「それはスターダストブーツと言って、履いた者の飛翔力・歩行速度・敏捷性などを引き出す特殊な靴よ。  風の加護を受けた靴だから・・・しなやかに歩けると思うわ。  ・・・貴方は地上の未来を握る勇者だと信じてこれを渡します。  またお会いしましょう。それでは貴方を学校の前へとこの風で送ってあげましょう」 フォルは導かれるままに風に包まれていった。そして着いたのも一瞬であった。 「・・・レナとリリーを随分と待たせたなあ・・・。電話をしてみるか」 フォルはレナに電話をかけるも相手は出ない。リリーにもかけるのだが電話には出なかった。 不審に思い二人に精神波での呼びかけをするがそれすらも失敗。 「おい、何やってんだよフォル。」 ふと後ろから呼びかけられてビックリするとそこには親友のクルト・シャロンの姿があった。 「あ、クルトじゃないか。どうしたんだ?」 「どうしたも何もないだろう。フォルを待ってたんだよ。フォル、 お前怪我とか大丈夫なのか?ほらルシファーがどうとかって・・・」 どうやらフォルとレナの事はリリーをとおして知っているらしかった。 「リリーに聞いたのか。でも巻き込まれたのは俺たち二人だ。できるならリリーだって巻き込みたくないんだ」 クルトはフォルの肩へ手を置いてフォルの言葉を否定するように言った。 フォルはクルトがリリーと同じように手伝ってくれようとするんじゃないかと思って今まで知らずのうちにクルトを避けてきていた。 「フォルは何でも一人で背負おうとしすぎだよ。俺、フォル、レナ、リリー・・・この四人は  家もほとんど隣に等しいし、昔からの親友なんだからさ、遠慮はいらないぜ。  気持ちはわからないくもない。だが俺もお前やレナ、リリーの力になりたいんだ。  お前がレナを助けたい気持ちと一緒だよ。まったく俺に黙ってるんじゃないっての。」 フォルはそう言うクルトの腕をゆっくりと掴んで納得したように言葉をはいた。 「そうか・・・ありがとう。そう言ってくれるなら・・・助かるよ。だけど今日はリリーの家に寄って帰るだけなんだ」 「リリーの家行くの?じゃ俺も一緒に行くぞ。あいつに話したい事があるんだ」 二人の行き先が決まるとリリーの家へと歩みだしていた。そしてすぐにその目的地へとたどり着いた。 「おーいリリー。レナ――」 しかし電話の時と同じく返事がない。 「居ないのか・・?ん、カギが開いてる・・・・・・・・しょうがない。入るぞーー」 だが入っていったリリーの家は音一つなく、不気味なほどにしんとしていた。 「・・・リリー・・・レナ?返事をしてくれ!!」 だがフォルの声が響くだけで何も音は返っては来なかった。 「おい、フォル。リリーの部屋に行ってみよう。何か判るんじゃないか・・・?いくらなんでも不自然だ。  お前がリリーに電話したのは二時間前。メールも入れた。それに精神波で呼んでも反応がない。  いくらなんでも精神波ぐらいは届くはずだろ?・・・俺だって信じたくはないが何かあった可能性が高い」 フォルはそれに対して何も答えずに、ゆっくりとリリーの部屋のドアを開いていった・・・・。 「リリー!!?」 そこには一人リリーが倒れていた。レナの姿は部屋にはなかった。 窓ガラスは砕け散り、部屋に二つあるベッドはぐしゃぐしゃになっていた。 そしてそのリリーは紫の炎に包まれたままその炎に焼かれていた・・・。 フォルがそれをかえりみずにリリーをその炎から遠ざけると、その身体を抱き寄せて必死に呼んだ・ 「リリー!リリー!大丈夫か!返事をしろ!リリー!!」 フォルは目を閉じたままのリリーの身体を揺さぶり必死に呼びかけていた。なおも激しく。 「・・・・・・・・う・・う・・フォル・・・?どうしてここに・・・」 リリーはゆっくりと目を開き、上体をゆっくりと起こしていった。 「リリー無事だったか。無事で何よりだぜ・・・。」 「クルト・・・クルトも来てくれたんだ・・・でも私は無事でも・・・」 リリーは下を向いたままただ泣くばかりであった。 「ゆっくりでいいからさ、何が起こったか教えてくれないか?あと・・これ飲んで。  傷けっこう酷いからさ、回復の水飲むといいよ。気休め程度には良くなるはず」 「リリー、無理はするなよ?フォルの言うとおりゆっくりでいいんだからな」 二人がリリーを気遣って言葉を投げかける。リリーはすこし表情を明るくしていた。 「ありがと・・・。でも大丈夫だから。なにがおきたか・・・覚えている範囲で話すね」 リリーのそのときの出来事をしっかりと再現するように語っていった。 「ふーフォルも一人で大丈夫かな?」 「レナは心配しすぎだよ。自分の彼氏でしょ?少しは信じてあげなさいって」 リリーの部屋につくなりレナはフォルの心配ばかりして落ち着いた様子がなかった。 「私達には出来る仕事がある。だからフォルに負けないぐらい頑張ろう!  んーーそれで、レナ。そのペンダントと指輪、私には扱えないのかな?」 闇のペンダントと光の指輪。リリーはそれを指差していっていた。 「うーんどうだろ。これをつけてると闇と光が使えるようになるんだよね・・・自然と頭に閃くというか。  じゃ、リリーもしばらくつけてみなよ。もしかしたらその感覚が判るかもしれないし」 そう言ってレナは指輪とペンダントをリリーに手渡していた。 「まだよくわかんない。でもしばらく借りてるよ?」 「うん。一緒に居る限りはすぐに返してももらえるしさ、大丈夫だよ。さーてネットゲームの謎でも暴きますか(笑)」 レナはいつのまにかノリノリでパソコンを操作していた。 「そうね・・・。じゃ情報収集でもしよっか。まずはゲーム内掲示板から・・・」 二人はパソコンと椅子を並べ隣同士で調べ作業を開始していた。 「転送不能な謎のゲート・・・・・・これこの間の私達が乗ったやつと同じじゃない?」 「全部メモしておかないと。あとで役立ちそうだしね」 そう言って二人は三時間ほどパソコンの作業に専念していた。 そして昼時になったので昼食を部屋ではじめようとした時・・・それは起こった。 ガッシャン・・・・ 不意に部屋の窓が割れたので反射的にそっちを見るとそこには巨大な羽を持つ蝿のようなヒトのような存在と 牛と人のような顔の悪魔、そして翼を広げる完全人型の金塊をあちこちに見える魔物が三体そこに現われていた。 「お前がレナか。使いこなせてはいないようだが強力な魔力を持っている・・・力の媒介にぴったりだな」 蝿の姿をした魔物はレナに対してそう言った。 「力・・・?なんの事!?」 レナは武器を構えてそれに対し質問をする。 「我々魔界の計画には、多大な力が必要なのだよ。それだけの力があれば我々に貢献できるはずだ」 「ルシファー様がおっしゃったのだよ。魔を導く力が必要だ、とね。そのためにはお前の力が必要なんだ」 蝿と牛はレナを材料という目で見ていた。それに怒った二人は武器を構える。 そしてレナは蝿に向かって攻撃を入れようとするが、レナの背後に周りレナを捉えていた。 「う・・く・・・放して!」 だがその蝿はレナの腕を手でつかみ、尾で足を掴み完全に逃げられないようにした。 そして蝿はレナへと漆黒の色をした息を吹き付ける。 「あ・・きゃぁあああああ!!」 息を喰らい、悲鳴を上げるとすぐにレナをそのまま意識を失ってしまった。 「く・・・レナァァ!!よくも!!」 リリーは拳を構えて殴りかかろうとするが、蝿は難なく攻撃を回避してしまう。 「フフフ・・・もしこの女を助けたいならば、海底神殿に来るといい。もし生きてたらの話だがな。  その時はお前らも一緒に力としてやろう。ククク・・・」 まるでリリーをあざ笑うかのように言うとその蝿はレナを連れたまま外へと飛び立ってしまった。 「レナ!!レナ!!お前らさえ来なければ!!」 リリーは怒りに任せて二対の魔物へと打撃をふるう。しかしことごとく回避されてしまう。 「俺がやろう。充分だ。・・・闇の炎に飲まれよ!!」 牛の頭をしたまものが言葉を言うと同時にリリーの足元にロクボウセイの魔方陣が描かれていた。 「あう・・・うああああ・・・・きゃぁあああああ・・・あああああああ」 その魔方陣からは紫の炎が飛び出し、リリーを包んでいった。 リリーにはどうすることもできずにただただ火の中で悶え苦しむことしか出来なかった。 「きゃぁあああああぁううあああぁああうあああああ」 だが消えることのない炎で絶えず苦しむ声を聞いて頭に着たのか牛は再び手をかざした 「キーキーうるせえよ。火力を高めてやる。さあて俺たちも行こう」 リリーは牛と人が飛んでいくのを確認したと同時にさらに日が強くなるのがわかった。 「いやぁああああああああ・・・う・・・・ああ・・・あ・・・ わた・・し・・・うあ・こんな・・・とこ・・・ろ・・・で・・・しぬ・・のかな・・・」 リリーが死を覚悟したのに反応したようにさらに火が強くなっていった。所々うねるように・ 「きゃああああああああああああ!!う・・・うあ・・・うあああああああああ・・・・・・・」 そしてその声に反応するかのように火は強くなっていた。だがその火力が増したことにリリーが気づくことなかった。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 リリーは炎に包まれたまま、意識を失ってしまっていた・・・・。 「・・・俺今日は帰るぜ・・・じゃあな」 話しを一通り聞き終えるとクルトはそれ以上何も言わずに出て行った。それも彼の思いやりの一つでもあった。 「リリー・・・今も熱くないか・・・?痛くないか?・・・大丈夫なのか・・・?」 フォルはリリーの手を握って必死そのものでそう言った。 「でも・・・私・・・フォルの彼女を・・・親友を・・・レナを・・・守れなかった・・・・」 リリーはフォルにすがるように泣き尽くしていた。 「俺が居ても同じさ。リリーが無事だっただけでもまだ良かったほうだ。それにレナだってさらわれてはしまったけど  まだ生きてるんだ。だったら助けに行けばいいだろ?」 「だけど・・・私・・・・」 なおもリリーは自分の罪の意識を拡大させいてる。 「リリーは悪くない。攻めてきたあいつらが悪いんだ。リリーだって辛い思いしているんだから、攻めることなんて出来ない。  だからこそ、レナを傷付け、奪い、リリーを傷つけたあいつ等を許すわけには行かない。  ・・・一緒に来てくれるよな?レナを助けに」 フォルはリリーの肩の上に手をおき、優しくしっかりとした口調で説得していた。 「・・・うん。ありがとう。レナは絶対・・・・助けよう・・・!!」 フォルとリリーは友情も新たにし、手を合わせて怒りを胸に旅立ちを決意した。 ただただレナの無事を信じて・・・・

第三章〜闇に傾く現実と光の仮想空間と〜 に踏み込む

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