意 見 陳 述 書
陳 述 人 川 崎 悦 子
1.私は笠間市福田に計画されている、産業廃棄物最終処分場とNKK社の高温溶融炉(シャフト炉)建設に反対している福田の住民として、また、『ふじみ湖裁判』の原告団長として、意見を述べさせていただきます。
2.清らかな水、澄んだ空気、豊かな緑は私たち人類にとって、子孫からの預かり物であり、決して犯してはならない大切な物として、先祖もまた私たちも、今日まで大切に守る努力をしてきました。ここ福田の地も、涸沼川の清流、田畑の広がる里山の自然によって人々は、心豊かで安定した生活を代々続けてきました。
私も、この自然豊かな福田の地で生まれ育ちました。一度他の地へ出て行き、また、結婚と言うことでこの地を離れましたが、15年前、自然豊かなこの福田の地で、子育てをしたいと考えて戻ってきました。このような穏やかな時は、いつまでも続くものと思っていました。
ところが、平成11年9月17日の茨城新聞を見て大変驚きました。そして、私のささやかな幸せと希望が崩れてゆくのを感じました。
それは笠間市福田の採石場跡地に、茨城県が公共関与の産業廃棄物の最終処分場を造る、というものでした。さらに、中間管理施設(いわゆるガス化溶融炉)も併設されることがわかり、私たちは大変驚きました。その後、私たちは産廃施設を知るための学習会を重ねていきましたが、知れば知るほど、「産廃施設は安全だ。」という県の言い分が間違っていることが分かるようになったのです。
3.私たちは、これまで茨城県と笠間市に対し、この処分場の建設を中止するように申し入れをし、また、文書を持って要望をしてきましたが、初めに「建設ありき」の県は、私たちの声を聞こうとはしませんでした。
逆に、建設を押し進めている県と笠間市は住民の安全を守る使命を託された行政庁とは思えぬ、矛盾と悪意に満ちた言動をしてきました。
例えば、平成11年6月に採石場跡地所有者から、この場所に産廃処分場を造るための「計画概要書」の提出があったのを期に、「業者から処分場を造りたいと言ってきた。」「業者に任せると危険なものも捨てるが、県が造れば絶対安全なものを造るから認めてくれ。」と各家を訪問する一方で、策定委員会や生活環境委員会などの会議で、建設反対を求める住民がほとんどだったのに、市報や広報誌(エコフロンティアかさま)などでは、その事実を隠して報道しました。
広報の面でいうならば、今回、提出した写真は私たちの仲間が写したものですが、行政側が住民に向けた資料や広報には、誰もがその美しさをたたえる湖の様子を写したものはなく、意図的にその素晴らしさを住民から隠して来たと言わざるを得ません。
また、湖の水についても、廃棄物対策課課長の替地氏は平成13年10月の県議会で、「あそこから非常に深い湧水がございまして、オ−バ−フロ−しているわけで」と答弁しているのに、地元との話し合いやマスコミの取材などにはその同じ替地氏は、「あれは湧水ではない。単に雨水が溜まっているのだ。」との発言をし続けてきたのです。
しかも県や事業団は、工事が始まる直前になると、「湧水があっても工事は進める」というように前言を翻してきたのです。平成14年6月28日に行われた、住民との話し合いの際には、替地課長は「湧水は完全に止める」と、これまでの発言と極めて矛盾したことを言うようになりました。
別紙1につけた2枚の写真を見比べてください。チの写真は今年の1月9日に湖の様子を撮影したもので、かなり水位が下がっているのが分かります。ツの写真は1月19日に写したものですが、排水ポンプがなくなってからは、かなりの勢いで水位が上がっています。このことと、昨年12月27日に行われた証拠保全の現地調査で、岩肌からも水が滲みだしていることが確認されたことから、私たちはふじみ湖は豊富な湧水で出来たものと確信しました。
そのように湧水が豊富な場所に危険な産業廃棄物最終処分場を造ることは極めて危険なことは火を見るよりも明らかです。
4.住民同意についても、県の産廃処分場についての要綱によりますと、処分場を造ろうとする業者は、「周囲3百メ−トル以内の住民の同意を得ること」が、許可条件の重要な基準になっています。ここ福田でいうと、52戸が対象になります。
当初、県は「地元住民の了解が得られれば、業者と交渉して公共処分場として整備したい」と発言し、市長も「最終的に決めるのは、地域の人たち」と強調していましたが、地元の反対の姿勢が強いことが分かると、県はこれまでの態度を一変させ「法的には地元合意はいらない」と公言し、昨年10月に『工事着工』をしてしまいました。
一方では最近になって、県及び事業団は、別紙2の「覚書」を福田地区の一部に配布し、ほぼ100パ−セント近い建設反対の住民意思を、切り崩そうとしています。まさにあめとむちを使って、しゃにむに工事を進めようとしているのです。
これまでの3年間、私たちは、県や事業団と話し合いをしてきましたが、私たちから見れば、県や事業団は嘘に嘘を重ねて住民をだましているとしか考えられません。民間の事業者だったらとっくに工事中止に追い込まれていることが、公共事業という名目ならば許されるのでしょうか。私には理解できません。
5.環境破壊の時限爆弾といわれる産業廃棄物最終処分場と、まだまだ未完成な高温溶融炉を、多くの住民の反対する声を無視して造ることが本当に許されるのでしょうか。今ここに処分場を造ろうとしている事業者に求められているのは、自分たちの計画の全てを公開し、メリット・デメリットを住民に明らかにして、住民の判断を仰ぐことではないでしょうか。それを実行しないで、ただただ「安全な施設」を造ると強弁している茨城県と事業団の態度を私は信用できません。
どうか裁判官の皆様。ぜひ一度福田の地においでいただいて、もう水がほとんど抜かれてしまいましたが、かつて通称「ふじみ湖」と呼ばれ、多くの人々に、その美しさをたたえられた採石場跡地の湖が、身を振り絞って湧き出してくる水のすばらしさを実感してください。
そして、大量の湧き水のある、この採石場跡地は、処分場としては不適地であることをご理解いただき、住民の求めている建設差し止めの仮処分の趣旨に沿った、判決をお出しいただけることを、心から切望いたします。
以上