意見陳述書(第1回審尋へもどる)
債権者ら代理人
                     弁護士 廣田次男
 
1 福島県いわき市から参りました広田と申します。本件仮処分申立にあたり 代理人席の末席より、一市民としての思いも織り交ぜながら意見を述べさせてい ただきます。
2 今から7年前、いわき市の最大の水源である夏井川の上流に日本でも最大級の 管理型最終処分場、小野町処分場が完成し、操業を開始しました。
  (1) 建設計画は着工の直前まで、いわき市民には全く知らされませんでした。  着工後も市民に対して公開された情報はわずかなもので、事業主体は、埼玉県  に本社のあるウィズウェイストジャパンという会社で、搬入されるゴミの99,8%が関東からのゴミで、建設されるのは最新式の管理型処分場で、建設場所は田村郡小野町といわき市との境から2キロ程小野町に入った山間地といった程度でした。私は、建設反対の住民団体と一緒に小野町を訪れ、町長に面会を求め、「なぜ、いわき市民の水源地が関東のゴミ捨場にされなければならないのか」と、質問しました。当時の小野町町長は、仏教的教養を持つ文化人町長として名を馳せる人物でした。開口一番「さもしい話だが、金が欲しいからだ」との答えでした。「都会には金はあるが、土地はない。田舎には土地はあるが、金がない。相互に足らないものを補いあう。ゴミを通しての地域交流だ」とも言われました。「人が死んで焼けば仏になるように、ゴミも焼けば汚いものではない」とも言われました。私共が「ゴミは焼くから化学反応により危険になるのではないか」との質問をすると、「ウィズウェイスト社という関東の一流会社が、危険ではないといっている。なぜ信じない。人は信じることから始まる。疑ってばかりいては何も始まらない」と言われました。
 (2) 操業開始した年の秋から、小野町処分場貯留堤の内側に水が満々と湛まるなり、サンドイッチ式埋立に使用する予定であった覆土の山が水中に取り残されまるで湖に浮かぶ島のような景観を呈するようになりました。推定推量およそ
2万5000立方メートル、水の色は時により赤・青・茶・緑と変化しました。最新の管理型処分場にあっては、貯留場内側に水は存在してはならないはずでした。
 
反対住民は、小野町処分場の構造的欠陥の象徴として、大量貯留水を「ウィズ湖」、覆土の島を「ターナー島」と命名しました。

 
「なぜウィズ湖が存在し続けるのか」は福島地裁いわき支部における心理の最大の争点の一つでした。処分場の所長も、技術顧問もウィズ湖の発生理由については、マトモな回答が全くできず、ただ「もうじき消滅するはずだ」との証言を繰り返すのみでした。
 しかし、ウィズ湖は、これらの証言を嘲笑する如く、今日に到るも依然として、その水量を減らしていないのです。
(3) 小野町処分場の構造的欠陥はダイオキシンを頂点とする有害物質の検出によっても明らかでした。
 
平成11年7月5日、処分場場内から、 4万2695ピコという当時の日本で記録されたことのあるダイオキシン濃度としては、 2番目という超高濃度のダイオキシンが検出されました。ウィズ社は「このような危険物を外に漏らさないために、小野町処分場のような最新式の処分場が必要なのだ」と、胸を張って説明しました。
 
ところが、その後、続々と小野町処分場場外の周辺地域から高濃度ダイオキシン・重金属などが検出され続けているのです。
 
検出は、反対住民の実施した調査のみならず、福島県などにより実施された調査によっても、周辺地域からダイオキシンが検出され続けているのです。
(4) 平成13年8月10日、福島地裁いわき支部は、原告住民全面敗訴の判決を言い渡しました。浄水享受権が裁判により保護されるべきであり、小野町処分場には、危険物が搬入されているとの原告主張を認めたうえで、現在、小野町処分場外で発見されているダイオキシンなどは、偶々場外に飛び散ったものと認められ、且つ、遮水シートは50年以上の耐久性を有すると認められるとしての原告敗訴でした。
 
「50年後では俺も生きているかもしれない。仮に俺が死んでいるとしても俺の息子や孫は、いわき市に住んで夏井川の水を飲んでいる事は間違いない。裁判官は転勤すれば、もう2度とこの町に帰ってくる事はないだろうが、この町で生活を続ける人々の事を裁判官は考えていないのだろうか」「偶々、飛び散ったものだろうと、ダイオキシンに変わりはない。飛び散ったダイオキシンが混入した水を毎日飲んでいる人人々の事は頭にないのだろうか」
 
判決を聞いた多くの市民から寄せられた声でした。
(5) 第1審判決後も、ウィズ湖の水位に変化はなく、ダイオキシンの検出も続きました。平成14年8月1日、再度の現場調査を行った第1審の鑑定人であった摂南大学の宮田秀明教授は、第1審に於ける「小野町処分場周辺のダイオキシン汚染は、構造的、継続的なものとは認められない」とする見解を、全面的に改め「構造的、継続的な汚染」とする意見書を仙台高裁に提出しました。
 
私共は、仙台高裁に於ける住民側逆転勝訴を目指して、頑張っているところです。
3 今から5年前、ゴミ弁連(斗う住民と共にゴミ問題の解決をめざす弁護士連絡 会)が結成され、私もその一員として参加しました。
 ゴミ弁連の会員は、現在、約110名に達し、我国の廃棄物訴訟の殆どに関与し、その大半に於いて、住民側代理人として主力をなしており、従って、我国廃棄物訴訟の全体な潮流を把握しているつもりです。
(1) 現在の我国のゴミ政策は「焼いて、人目につかない、田舎に埋める」という事に尽きます。従って、これを廻る裁判も焼却炉と管理型処分場の設置についてのものが大半を占めています。
 
最終処分場としての安定型処分場は既に過去のものとなり、現在は、重装備の管理型処分場が殆どであり、本件も含め、住民との紛争、訴訟の対象になっているのです。そして、その訴訟に至る経過、紛争の内容も、全国的に類似点が極めて共通しているのです。
(2) 第1に、小野町処分場を例にして紹介しましたが、着工以前には付近住民には、殆どその情報が知らされないのです。わずかな情報しか知らせずに、行政と業者が一体となって「悪いようにはしない」となだめる一方、それでも理詰めで計画の曖昧さを指摘する住民などに対しては、「アカだ。共産党だ」といった決めつけを行って、孤立化をはかるのです。
(3) 第2に、仮に説明があったとしても、小野町町長の言葉を紹介しましたように、その説明は全く納得のいかないものが大半です。全国のゴミ裁判に於いて管理型処分場についてゴミ企業が展開する論理は、一言で言えば「搬入ゴミは有害だから、外に漏らさないようにする」というものです。
現在、ダイオキシンを無害化する方法は全くありません。従って、搬入されたゴミの無害化に要する時間は、計り知れません。
計り知れない期間、耐久性を有する遮水シートは存在しません。
このような住民の素朴な疑問に答える文献も判例も、現時点では全く存在しません。
(4) 第3に、最新式管理型処分場の全てに不具合が発生しています。
 
小野町処分場は、ウィズ湖と周辺地ダイオキシンという形で不具合を暴け出しました。
 
形こそ違え、不具合が露見しない最新式重装備を備えた管理型処分場は、存在しないと断言していいと思います。仮に、不具合はないと見栄を張る処分場があったとすれば、それは審査が甘いからに外なりません。重装備管理型処分場は、精々10年位前に登場した者であり、正に最新式の技術なのです。
 
しかし、管理型処分場は、周辺住民の生命と健康に関る存在なのです。その技術は最新のものであっては決してならないはずです。安全性が何十年に亘り確認された、古い試され済みの技術でなければならないはずです。
4 本件処分場は「焼いて埋める」という、現在のゴミ行政に沿って設置されるものです。いわば国策の一環であり、その意味では本件訴訟は「お上」の政策に弓を引くものに外なりません。「お上」の意向に逆らった判決を書いた裁判官に出世はないという伝説は私共も良く承知しております。
  しかし、「焼いて埋める」というお上の政策は、近々20年程度の歴史しか持たないものです。
 
他方、本件処分場により、破壊されるのは我々が先祖から受け継ぎ、子孫に譲り渡さねばならない悠々の大自然であります。
 
昨今の国策などに惑わされることなく、視点を高く、目線を遠くに向け、我々の子孫を前にしても恥じ入る事のない、住民勝訴の決定をいただきたく切望して意見陳述といたします。
                                           以上