「狐狸狐狸ばなし」 赤坂歌舞伎 2008.9.16 W227

9日、赤坂ACTシアターで行われている赤坂大歌舞伎夜の部を見てきました。

主な配役
伊之助 勘三郎
おきわ 扇雀
又市 彌十郎
重善 段治郎
寺男甚平 井之上隆志
おそめ 亀蔵

「狐狸狐狸ばなし」のあらすじはこちらです。

 

今年3月元のTBSの後にできた複合施設赤坂サカス内ACTシアターで、初めての歌舞伎ということで、だれにでも楽しめる北条秀司作の「狐狸狐狸ばなし」と舞踊劇「棒しばり」が上演されました。

ここは多目的なホールなのでコクーン歌舞伎と同じように花道は作らず、上手と下手、それと真ん中を横切っている通路を縦横無尽に利用していました。

伊之助の勘三郎は役にぴったりとはまり、大阪弁を駆使して自由自在に演じていました。おきわがふぐ鍋に入れた毒にあたったふりをして、もだえ苦しむところでは、いかにも勘三郎らしくバラの花を口に咥えてフラメンコを踊るサービスに、客席は大爆笑。

おきわの扇雀は声が低く太いので、伊之助が殺されそうになっても手離せないほど良い女という雰囲気が薄かったですが、お芝居のテンポはとてもよかったと思います。

ちょっと変わっていたのはおきわの前身で、前回はたしか三味線弾きだったと思いますが、今回は千住の宿場女郎となっていたことです。最後の場面で、気の狂った体のおきわが庭先で三味線をひいて唄を歌いますが、その伏線としては三味線弾きの方が良かったような気がしました。

重善の段治郎は、声がおきわよりむしろ高い感じだったためもあってか、最初のうちは役になじまない感じがしましたが、後半は余裕もでてきて、楽しげに演じていました。しかし「どうして俺はこんなにもてるのかなぁ」というようなセリフは、自信をもって、もっとずうずうしく言ったほうがよかったのに!と思います。

又市の彌十郎は勘三郎といきを合わせ頭のちょっと弱い体の又市を好演しましたが、最後に正体をあらわし伊之助の友人の戯作者として出てきたところは貫録がありすぎて、大店の主人のようでした。牛娘おそめの亀蔵は出こそしとやかでしたが、重善の身体をなめまくるところは大変な迫力の怪演でした。今回歌舞伎に初参加の井之上は、発声にもとくに違和感がなく溶け込んでいました。

最後は七之助、勘太郎兄弟と亀蔵の「棒しばり」。特に勘太郎の軽妙な味わいの踊りは素晴らしく、お父さんにそっくりだなぁと思いました。

この日の大向こう

満員の観客が入っていたのにもかかわらず勘三郎さんが登場するまでは、拍手も少なく反応が鈍くて心配になるくらいでした。

この日は一人だけ若手の大向こうさんがいらしていました。一人で声をかけるのは、やりにくいということをうかがったことがありますが、この方はごく自然体で声を掛けておられたように思います。

一番良いなぁと思ったのは、「棒しばり」で勘太郎さんが七之助さんに「連れ舞しよ」と言ったときで、舞台の高揚感に呼応するような心が浮き立つようなお声で「まってました」「中村屋」と掛けられ、それに誘われるように一般の方も何人か掛けられました。

それがいかにも感じが良かったので、以前弥生会の会長さんが「若い役者には若い大向こうが似合うと思う」とおっしゃったのは、こういうことかと思いました。

歌舞伎に初めて参加された井之上隆志さんにも屋号の掛け声がかかったのですが、よく聞き取れなかったのは残念でした。伺ったところでは勘三郎さんが宮崎出身の井之上さんのために「日向屋」(ひゅうがや)という屋号を作られたそうです。

赤坂大歌舞伎演目メモ
「狐狸狐狸ばなし」―勘三郎、扇雀、段治郎、彌十郎、亀蔵、井之上隆志
「棒しばり」―勘太郎、七之助、亀蔵

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