『  永遠 ( とわ ) に ・・・!  ― (1) ―  』

 

 

 

 

 

 

 

§  教授のむすめ (1)

 

 

 

   ハア ・・・ ハア ・・・ ハア ・・・・!

 

息があがる・・・足がもつれる・・・ でもここで転んだら ― お終いだわ・・・!

額を、 頬を 伝い落ちるのが汗なのか涙なのか わからない。

ただ ただ 彼女は闇雲に走った。

 

   ・・・ あの角を曲がれば ・・・ 隠れ場所がある・・・かもしれないわ・・・!

 

足が もう限界だった。 感覚は痺れ、目は眩み ― 胸が苦しい。

しかし 少しでも速度を緩めればたちまちヤツラの手に落ちる。

 

   ・・・ お父様  お母様・・・!  助けて・・・!

 

   ―  あ・・・・ッ!!!!

 

足 が すべった。  手が宙をつかみ、身体は一瞬浮き上がり次の瞬間、地にたたきつけられ。

・・・ ああ ・・・・! もうダメだわ ・・・・

次に瞬間 周囲は真っ暗になり彼女はなにもわからなくなった。

 

 

 

「 ・・・ 君?  しっかりしろ!  君!? 」

ぴたぴたと ・・・ 誰かが頬を叩いている。  

「 ・・・ う ・・・・ううう ・・・・? 」

身体が ・・・動かない?   いや なにかで拘束されているのだ。 でも怪我はしていない・・・らしい。

ぼんやりとした視界に セピアの瞳が見えた。  ― 温かい色だ ・・・

「 大丈夫かい?  ・・・ ああ こんなもの、今、解いてあげるよ。  ほら・・・ 

「 あ ・・・ ありがとう ・・・ あの  あなたは? 」

セピアの瞳の若者は巧みに彼女の手脚から戒めを外し、そっと抱き起こしてくれた。

「 怪我はありませんか? 酷いことをする・・・・可哀想に・・・  」

「 ・・・ はい ・・・ ちょっと身体が痛いけど・・・なんともありませんわ。 」

「 よかった・・・ いったいどうしたのです? こんなところで・・・こんな拘束を・・・

 あなたはどなたですか。 」

「 あ・・・私はヘレン、ヘレン・ウィッシュボン といいます。 あなたは・・・? 」

「 ぼくは ゼ・・・いや、 島村 ジョー。  ヘレンさん、か。

 いや・・・ぼくは君をこんな酷い目に遭わせたヤツラを追っているモノです。 」

「 ええ・・・?! 」

「 ご安心なさい。 あなたを監禁していた者たちは ― 消えました。 」

「 まあ ・・・ 」

「 彼らは・・・ 操られていたのです。身体に爆発物を仕掛けられ逆らうことはできなかったんだ・・・

 元凶はとんでもない組織で 金儲けのためならなんでもやるのです。 」

「 ・・・ やっぱり。 私も知っています。 」

「 え??  ・・・ ヘレンさん、あなたは ・・・ なぜこんな所に捕まっていたのですか? 」

「 ・・・ 父が。  ヤツラの ― ブラック・ゴーストの要求を呑まないからですわ。 」

少女は 顔をあげるとはっきりと言った。

「 ・・・・!? 」

若者、いや 島村ジョーは 一瞬息を飲み、まじまじと少女の顔をみつめた。

彼女もまた ・・・ 今、はじめて彼の顔を見た。

「 どうして君は その名前をしっているのかい。 」

「 ・・・ あなたは・・・あなたも ・・・ ブラック・ゴーストと関係があるの? 」

「 ちがう!  ぼくたちは・・・ ブラック・ゴーストと戦っているんだ。

 ぼくたちはブラック・ゴーストを壊滅させるために闘っている! 」

「 ・・・ そうなんですか。  その服・・・? 」

ヘレン という少女は怯えた瞳でジョーの服装を見つめている。

確かに普通の服とは言い難い。

夜の闇の中でも その赤い服は異様な艶を発し、背に流れるマフラーの黄色は鮮烈だった。

「 ああ ・・・ これかい? ぼく達の防護服さ。 

 ぼく達はこれをまとってずっと闘ってきたんだ。 そう・・・たった9人でね。 」

「 ・・・ そうだったの・・・ 」

「 ああ。  君は、ヘレン? 誰に捉えられどうしてあの小屋に監禁されていたのかい? 」

「 二人の少年と 女の子がひとり・・・。 私は 囮 なんだ・・・って言ってたわ。 

 囮って・・・アナタを誘い出すだめだったのかしら。 」

「 ・・・ うむ ・・・ その少年と少女は・・・僕の旧友たちだったんだ・・・

 彼らは・・・ ブラック・ゴーストに仕掛けられた爆弾で ・・・ 爆死してしまった。 」

「 ・・・ええ?? 」

「 ブラック・ゴーストのヤツラはいつだって利用できるものはなんだって利用する。

 そして・・・ 情け容赦なく使い捨てるんだ・・・ 」

「 そうだったのですか・・・ 」

「 君の父上は?  ヤツラの要求を突っぱねたんだろう? 」

「 はい、 父は優秀な科学者なんですけど ガンコで ・・・ 

 父が捕まる寸前に 私を国外に逃がしてくれたのですけど・・・ とうとうこの日本で捕まってしまいました。

 それで・・・ あの小屋に・・・ 」

「 ふうん ・・・ 君もいろいろと大変だったんだね。 

 すぐに家に帰してあげる。  ぼく達はこのまま闘いに行くけれど その前に君を家まで送ってゆくよ。

 そのくらいの余裕は ・・・ある 」

「 ・・・ 一緒に・・・ 連れて行ってくださいませんか。 

「 ええ??  ・・・ しかし ・・・ 君はご家族が ・・・ 」

「 ・・・ いないんです。 」

「 ・・・ え? 」

「 母は ・・・ もうずっと昔、私が小さな頃に亡くなりました。

 父は母を熱愛していたので・・・ ずっと男手ひとつで私を育ててくれました。

 私も・・・ 父を尊敬し 愛していました・・・ 」

「 ・・・ そうか ・・・ 」

「 父はおそらく ・・・ もう生きてはいないでしょう・・・

 父は ・・・ ヤツラの言うなりになるくらいなら ・・・ 喜んで死を選ぶでしょうから・・・ 」

「 ・・・ ヘレン ・・・ 」

「 だから・・・ 私。 もう行くところがないんです。 

 お願いです、決して足手纏いにはなりません・・・! 私も一緒に連れていってください! 」

「 ・・・ それは・・・ぼくの一存ではなんとも・・・ 

 しかし君をひとりで放り出すこともできないしなあ・・・ 」

「 私 ・・・ 父を手伝っていましたから少しはお手伝いできます。 

 レーダーやソナーの扱いも父から習っています。 お願い・・・! 」

「 ええ?? 

「 父は 空軍の技術仕官でした。 軍人といっても研究開発の方が主でしたけれど。

 いろいろな妨害やスパイ工作に対抗できるように・・・って 私にも訓練をしてくれました。」

「 そうなんだ? 頼もしいね。 」

「 ほんの手ほどきだけですけど。 でももっと覚えます、だから・・・! 」

「 う〜ん ・・・ ぼくとしては是非 君を一緒に連れてゆきたいんだが・・・

 ぼくも仲間達と早く合流しなければならないしなあ。 

 とりあえず ぼくの家に行きましょう。 多少 壊されたけどとりあえず今晩だけでも。 」

「 ありがとうございます・・・! 」

ジョーは彼女を隠しておいた車へと案内した。

 

「 父上は 科学者だったのですね。 

「 ええ ・・・ お父様は研究が優先してしまうことが多かったけど・・・

 でも 亡くなったお母様をそれは愛していらして私のことも可愛がってくれて・・・幸せでした。 」

「 ・・・ そうか・・・いい父上だったんだね。 ブラック・ゴーストめ! 酷いことをしやがる! 」

「 ・・・ でも ・・・ 」

「 え? 」

「 でも ・・・ こうして 貴方と、お目にかかれました。  私 ・・・ 」

「 ・・・? ヘレンさん・・・?  ああ 家はもうすこしですよ。 

 とりあえず今夜は泊まって行ってください。 傷の応急手当もしましょう。 」

「 ありがとうございます ・・・ あの ・・・ ジョーさん。 」

「 ジョー でいいですよ。  ゆっくり休んでください。 」

ジョーは車で茅ヶ崎の海岸近くに自宅へと向かった。

深夜に近い道路は ほとんど交通量もない。

ジョーの派手なコスチュームもさして人目をひくことはなかった。

20分ほど行くと国道から逸れて海岸にちかい迂回道路に抜ける。  

 ・・・ 波の音とともに磯の香りがただよってきた。

「 ・・・あ  海が近いのですね? 」

「 うん、  ぼくの家は海に近い場所にあるんだ。 」

「 海 ・・・ お好きですか。 」

「 どうかなあ・・・  以前、いた研究所が崖っぷちにあったから ・・・無意識に海の近くを選んだのかな。

 今回久し振りに仲間たちに会うんだけれど ・・・ 皆 元気かなあ・・・ 」

「 仲間たち・・・ いいですね。 」

「 君は? 兄弟はいないの。 

「 ええ、 私、一人娘なんです。 」

「 そうだなあ・・・ ん? ・・・ あれは・・・ あの音は・・・? 」

ジョーは速度を落とすと じっと耳を澄ませ上空をみつめた。

「 ・・・・ なにか 飛行音がしますね。 」

「 君・・・わかるのか!?  ・・・・ 君 もしや・・・ サイボーグ・・・? 」

「 え? ・・・ ああ、私 父の研究や実験を手伝っていて。 エンジン音とか聞き分けられます。

 レーダーやソナーの扱い方も教わっています。

 あ ・・・近づいて来ましたね。 あれは・・・ 小型機? 」

ヘレンは夜空を睨んだままだ。

「 すごいな、 君。  ・・・ プイトールだ。 ずっとついてくるな。 」

「 そうみたいですね。 高度も下げているんじゃありませんか?

  エンジンの音が変わってきました。 」

「 むう・・・!  ヘレンさん、しっかり掴まっていてくれ! それから車から離れないように! 」

「 はい! ・・・あ ああ?? 」

ジョーは巧みに右・左に急ハンドルを切ったあと、急停車した。

 

     ダァ〜〜〜〜!!!

 

彼は愛車を足篝に 宙へ飛び上がった ―  !

 

「 チックショウ! 誰だ?! ・・・・ ヤロウ〜〜〜 !? 」

ジョーは操縦席のドアまでたどり着き操縦管を握る人物に狙いをつけ ―

 

「 ・・・!??   004!?  004じゃないか! 」

「 やあ。 」

 

そのオトコ ― 004は にやり、と笑った。

 

 

「 もう〜〜 脅かすなよ。 ヤツらの手先かと思った。 」

「 ははは すまんな〜 」

「 いったいいつ日本へ? 君はドイツへ・・・母国に帰ったのだろう? 」

「 ふふふ ・・・ ついさっきさ。  君の家に行ったのだが蛻の殻だった。 

 仕方ないのでこの辺りを飛んでいたのだがな。 」

「 そうか・・・ ちょっとごたごたがあってさ。

「 ふん?  俺が飛んでいたら君の車が見えた。 近づいてみれば ははは・・・

 可愛い女の子とドライブしてた。  それで ちょっとからかってみたのさ。 」

「 バ、バカ・・・!  このひとはヘレンさんと言って・・・まあともかく家に入ってくれ。 」

「 おうよ。 」

ジョーはアルベルトとヘレンを家に招じいれた。

「 居間のガラスに気をつけて・・・ ちょっと派手にやりあっちゃったからね。 」

「 ほう? ・・・ ヤツらがちょっかい出してきたのか。 」

「 うん ・・・まあね。 」

「 ジョーさん? キッチンを拝借していいですか?

 私、お茶を入れてきますわ。 」

「 あ ・・・ ヘレンさん・・・ 気を使わないで・・・ 」

「 うふ・・・私も飲みたいの。  なにか軽いものでも作ってきますね。 」

「 すみません・・・ ああ でも助かるなあ〜 ありがとう! 」

ヘレンは微笑んでキッチンに消えた。

「 おい・・・ 誰なんだ?  ただの女友達・・・じゃないんだな? 」

アルベルトは ヘレンが消えて後をじっと見つめている。

「 だから・・・ そんなんじゃなくて。  実は・・・ 」

ジョーは彼女を救出した経緯を話した。

「 ・・・ ふうん? 」

「 うん ・・・ 彼女もいわばブラック・ゴーストの被害者だ。 」

「 ・・・ だといいがな。 」

「 アルベルト?! 」

「 ジョー。 お前、忘れたのか?  ヤツらの遣り方は狡猾で汚いってことを・・・

 お前自身、今晩味わったばかりなんだろう?  ・・・ 旧友を ・・・ 」

「 ・・・ ・・・・・ 」

「 簡単に信用するのは考えものだ。 」

「 ・・・ しかし! 彼女は・・! 

 

「 お待たせしました。  簡単な夜食も作ってみましたわ。ホット・サンドイッチですけど。 」

ヘレンがトレイを捧げ キッチンから戻ってきた。

温かい料理の香りが リビングに満ちる。

「 あ ・・・ ヘレン・・・ ありがとう!  わあ・・・ 美味しそうだなあ。 」

「 お口に合うかしら?  あの ・・・ そちらのお友達もどうぞ。 」

「 あ・・・ 彼はアルベルト。 僕らの仲間なんだ。 」

「 初めまして。  ヘレン・ウィッシュボンといいます。 

 ジョーさんに助けていただきました。 」

「 ・・・ アルベルト・ハインリヒ。  004ともいうがな、お嬢さん 」

「 あの ・・・ 小型機を操縦していらっしゃったのですよね? 凄いわ。 」

「 ・・・そうですかね。  ああ さっきは脅かしてすまんでした。 」

「 いいえ 私 スリルのあること、好きですから・・・ 

 さあ どうぞ? 冷めないうちに召し上がってくださいな。 」

ヘレンは明るい顔で 彼らを食卓に誘った。

 

 

「 やあ・・・ 美味しいなあ・・・ ヘレンさん、料理上手ですね! 」

「 ・・・ うむ ・・・旨いコーヒーだな。 

「 ありがとう! お口に合ってうれしいです。  ・・・ 私も頂きます。 」

「 やっぱ・・・ 腹へったよ! 

 そころで アルベルト?  君、どうして日本に来たのかい? 」

「 ああ ・・・ 博士の伝言でね。

 集合を急げ とさ。  それでジョー、お前を迎えに来たのさ。 」

「 ・・・ ブラック・ゴーストのことか。 」

「 ああ。  詳しいことは合流してからだ。  できれば今夜のうちに出発したい。 」

「 ・・・ そうか。  あ 少しだけ寄道してくれないか。 」

「 寄道? 」

「 うん。 彼女を、 ヘレンさんを母国まで送って行かないと・・・ 」

  ―  カチン ・・・

フォークが皿に当たった。

「 あの ・・・ やっぱり 私も一緒に連れて行ってください。 」

「 え?? 」

「 先程もいいましたけれど・・・ 私、かえる所はもうないのです。 

 それに・・・ 一人になるのは ・・・ 」

「 ダメですよ。  女の子の来るところじゃない。  遊びじゃないんだ。 」

「 アルベルト!  彼女を危険に追いやることはできないよ。  

 また父上の関係で ヤツらがちょっかい出してくるかもしれないし・・・ 」

「 ・・・ 仕方ないな。  お前が言い出したら聞かないからな。 」

「 ふふふ サンキュ。 」

「 ・・・ ありがとうございます。 私 ・・・足手纏いにはなりませんから。 」

「 そう願いたいよ。  ほら 出発するぜ。  俺は準備してくる。 急げよ。 」

アルベルトはコーヒーのカップを置くと ぷい、と出ていってしまった。

 

「 ・・・アイツ ・・・ 根はいいヤツなんだ。  ごめん・・・ 」

「 いえ・・・ ご一緒させてくださるなら・・・私。 ジョー・・・貴方の会えてよかった・・・ 」

ヘレンはぴったりとジョーの側に寄り添った。

ジョーも ・・・ そのほっそりとした身体をそっと抱き寄せた。 彼女は小刻みに震えていた・・・

「 安心したまえ。 もう怖い思いはさせないよ。 」

「 ・・・・・ 」

 

     今は・・・! この女性 ( ひと ) を守ることが最優先なんだ・・・!

 

ジョーの腕に力がこもった。

 

「 ― おい!  早くしろ。 出発するぞ! 」

「 今 行く・・・!  さあ 行きましょう。 」

「 ・・・ はい! 」

 

夜明け前、 ジョーはひっそりと母国を後にした。

 

 

 

 

  グワーーーーーンン ・・・・・!!

 

恐竜型ロボットは 派手な音を立てると動きを止め、ずぶずぶと更なる深みへと沈んでいった。

ドルフィン号のコクピットで ギルモア博士、004 009 そして ヘレンはほっと胸をなでおろした。

「 ・・・ふう 〜〜 ・・・ なんとか・・・ 」

「 凄いな 009・・・ まだ操縦法も教えていないのに・・・ 」

「 ああ ・・・ お前がいなかったら完全に遣られていたな。 」

「 004。 いや 君のフォローがあったから助かったよ。 

 しかし・・・ ヤツラ・・・完全にぼく達を狙ってきているな。 

 004、これで証明できたよね。 」

「 なんだ? 」

「 ヘレンさんのことさ。  彼女もヤツラのターゲットなんだ。 」

「 ・・・だと いいがな。 」

「 アルベルト! 」

「 おいおい・・・止めたまえ。 」

「 ギルモア博士・・・ 」

「 ま、とりあえず安全を確保できる所まで このお嬢さんをお連れしよう。 いいな、004。 」

004は黙って肩を竦めただけだった。

「 ともあかく 現在世界各地で起きている異変はヤツらの仕業に違いない。 」

「 ・・・ また 闘いが始まるのですね。 」

「 うむ・・・ 皆を呼び集めねばな。  009 ・・・しかし無理に、とは言わん。

 選択は皆の自由じゃ。  勿論君もじゃが。 」

「 博士。 ぼくは 行きます。 」

「 ― ありがとう ・・・ 」

博士は ぎゅ・・・っと009の、いや ジョーの手を握った。

「 皆に集合をかけます。  手分けして迎えに行きすよ。 」

「 そうしてくれるか ・・・ 」

「 はい。 アルベルト、大人を頼む。 」

「 了解。 」

「 ぼくはこれからイギリスからフランスに周る。 」

「 ふん ・・・ 彼女、来るか? 」

「 ・・・わからない。 でも声だけはかけておこうと思うんだ。 」

「 ・・・ ・・・・ 」

アルベルトは何も言わすに ぽん・・・とジョーの肩を叩いた。

「 ・・・ うん ・・・ 」

ジョーも ほんのひと言、応えただけだった。

前髪に陰でセピアの瞳が優しい光を湛えている・・・そんな彼をヘレンは黙って見つめていた。   

 

 

 

 

 

§  踊り子 (1)

 

 

 

「 だ〜からね、 ファンじゃないのォ〜 」

「 ・・・ファン?? 」

「 そうよ ねえ? 」

「 え なあに、 なあに〜〜 」

群舞のダンサー達の楽屋が 一段と賑わった。

今日も なんとか上手くいった ― 終演後の華やいだ空気が彼女らを盛り上げている。

 

「 え、だからねえ・・・ フランソワーズのこと、ず〜〜っと見ているヒトがいるんだって! 」

「 ええ? ずっと?? 」

「 ・・・ そうなの。 今度の公演が始まってから なんだけど。

 始めは気のせいかな、と思っていたの・・・   でも・・・ 」

隅っこで着替えていた亜麻色の髪の少女が当惑している。

「 それじゃ〜明日くらいにはさあ 豪華な花束が届くのじゃなあい? 」

「 Non Non!  きっとねえ 貧しい学生かなんかなのよ。 

 だから♪ 毎日一本づつ薔薇の花がとどく・・・なんてのは どう? 」

「 きゃ〜〜〜 いいわね♪ そっちの方がいいわァ〜〜 」

「 うんうん・・・ ソルボンヌかなんかの 舞台美術専攻の彼、とか〜 」

「 ソレって ルル、あんたの趣味でしょう? 」

「 いいじゃん、素敵なら〜〜 」

きゃあ〜・・・ 甲高い笑い声が楽屋に満ちたけれど 文句を言うものはなかった。

 

    ・・・ そんなんじゃ・・・ ないのよね・・・・

 

フランソワーズは、 当の本人は浮かない顔をしている。

「 ・・・ でも ・・・ 」

「 でも? 」

「 うん ・・・ そんな・・・ステキなハナシ・・・じゃないかも・・・ 」

「 え?  どういうこと? 」

「 あの ・・・ね。  その・・・視線っていってもあんまりカンジがいいモノじゃないの・・・

  じっと見えるのよ じ〜・・・・っと。 」

「 ふうん?  でも それだけアンタに熱心ってことじゃないのォ・・・ 」

「 ・・・ さあ ・・・ でも・・ちょっと怖い・・・ 」

「 カレシにしっかり守ってもらったら〜 ロベールといいカンジじゃん♪ 」

「 ・・・ え ・・・ か 彼は ・・・ただのパートナーよ・・・ 」

「 あ〜ら? 彼が聞いたらがっかりするのじゃなあい〜 」

「 ルル〜〜 無理無理〜 ちっちゃなファンションはお兄ちゃんがいればいいのよ〜 」

「 ・・・ カトリーヌ! 

 

「 いつまで騒いでいるの〜 明日の朝のコールに遅れないこと! 」

楽屋のドアが開いて ミストレスの一人が声をかけていった。

「 は〜〜い 」

 ふふふ・・・ 彼女たちは首を竦め着替えやら化粧落としを急ぎ始めた。

「 フランソワーズ? あんまり気にしない方がいいのじゃない? 」

「 ・・・ カトリーヌ ・・・」

「 明日は小品集で グラン ( グラン・パ・ド・ドウ )・・・踊るんでしょ。 」

「 え  ええ ・・・ 」

「 今夜はさあ 早く帰って。 お兄ちゃんとゆっくりしなって。 」

「 そうそう。 いい子は早くネンネしなくちゃね。  ・・・明日、頑張って! 」

「 カトリーヌ・・・ありがと・・・ 」

フランソワーズは少しだけ笑顔をみせると 荷物を片付け始めた。

 

     でも・・・お兄ちゃん ・・・ 今、いないのよね・・・・

     明日のわたしの出番までには 帰る!って言ってくれたけど

 

ぶる・・・っと身震いし。 彼女はコートの襟を立て足早に楽屋口から出ていった。

 

  コツ ・・・。   劇場の角から誰かがじっと ― 見つめていた。

 

 

 

 

  あと・・・ちょっと!  ・・・ お願い、上手く行きますように  ・・・ リフト・・!

 

フランソワーズは 軽やかにジャンプするとパートナーの腕に飛び込んだ。

  −−−− ジャン ・・・!!

華やかな音楽と共に パートナーは高々と彼女とリフトした。

 

     ・・・ やったわ・・・! 

 

わァ〜〜〜〜 拍手の波がどっと降り注いできた。 

その心地好い、小さな痛みにも似た飛沫を全身に浴びつつ、彼女はパートナーと微笑み合い。

 

     お兄ちゃん・・・!  見ていてくれた?

     ・・・わたし、 やったわ・・・!

 

高く両腕を上げ、そして深々と頭を下げ・・・ 万雷の拍手に応えた。

  ―  そんな 中 ・・・

 

     あ・・・・ 誰かが見てる・・・ 

     ・・・ お兄ちゃん?!  ・・・・ちがう・・かしら・・・

     でも とっても温かくて 優しいわ ・・・ 

 

彼女はなにかを感じていた。 

それはここ数日、不躾に・そしてしつこく付き纏ってくる視線とは ちがっていた。

舐めるような食い尽くすみたいな 粘っこさはない。

今 注いでくる視線はどこか心配そうで それでいて 温かい。

 

     ・・・ ・だ ・・・れ ・・・?

 

 

「 フランソワーズ! ロベール! なかなかよかったよ! 

「 先生 ・・・! 」

舞台袖に引っ込むと 芸術監督のムッシュウが満面に笑みで迎えてくれた。

「 うん、君たち、いいコンビになってきたな。 次も期待してるぞ。 」

「「 ありがとうございます! 」」

彼女はパートナーの男子と喜びを弾けさせた。

「 わお〜〜 やったな! 」

「 ええ!  メルシ、ロベール! 」

「 僕こそ フランソワーズ!   ・・・ 次も 貰おうぜ! 」

「 勿論よ! 宜しく〜〜 」

ウィンクとキスを交わし ニッ・・・と笑いあう。

「 やってやろうな〜   な、帰りに打ち上げ・・・どう? 」

「 いいわね!  じゃ・・・ 終演後に 楽屋口で! 」

「 オッケ♪ 」

パン・・・と手を打ちあい、もう一度頬にキスをし二人はそれぞれの楽屋に戻った。

 

 

 

「 お疲れさま〜〜 」

「 お疲れ! よかったよ〜〜 」

「 じゃあね〜 お疲れっ! 」

大きなバッグを抱え ダンサー達が帰ってゆく。 

終演後の華やかさと舞台の疲労が交じり合った不思議な空気が流れている。

「 遅くなっちゃった・・・!  ロベール・・・ごめんなさい〜〜 」

フランソワーズは 大慌てで楽屋口を駆け出した。

「 え・・・と・・・? 」

外はすでにとっぷりと暮れていて、劇場の周辺の灯りも少なくなっていた。

 

     ・・・ あら? ここで待っている約束なのに・・・・

 

彼女はきょろきょろ・・・周囲を見回した。

 

 

    「 ・・・ フランソワーズ ・・・  」

 

「 ・・・・え? 」

闇の中から不意に ― とても懐かしい声が聞こえてきた・・・ とても とても懐かしい声が・・・

   ―  だが。

 

「 ・・・ 誰??  」

「 ぼくだよ。 ・・・ 元気そうだね。 」

「 ??? 」

外灯の陰から 一人の青年が姿を現した。

「 ・・・ あなたは ・・・・ だ 誰・・・? 」

「 フランソワーズ? ぼくだよ、 ジョーだ・・・ 」

「 ・・・ ジョー ・・・? 」

「 そうさ。 ・・・  ? ま  まさか・・・ 」

微笑みすら浮かべていた青年の 足が止まった。

彼は 彼の笑顔は一瞬にして凍りつき まじまじとフランソワーズを見つめている。

「 ・・・ あなた ・・・ だ れ・・・ 」

「 ・・・ わからないのかい?? 」

青い瞳には 怯えた影しか映っていない。

 

       ・・・ 誰?? 誰なの・・・?

       ずっと ・・・ 張り付いていたあの視線のヒト? 

       ううん ・・・違うわ。  このヒト・・・ 知らないヒトだけど・・・温かい・・・

       イヤなカンジじゃない・・・ 

 

       ・・・ あ ・・・なんか・・悲しそう・・・ 

       でも でも ・・・ 本当にわたし・・・あなたのこと・・・知らないのよ!

 

青年のセピアの瞳が すう・・・っと曇った。

「 きみ ・・・ 覚えて・・・ないのか? 」

「 覚えているって・・・ なにを・・・  あなた 誰なの。 どうしてわたしの名前、知っているの。 」

「 ・・・・!? 」

「 失礼ですが。 人違いじゃありません? 」

「 ・・・ 島村ジョー といいますが。 本当に覚えて ・・・ ない? 」

「 わたし、知りません!  失礼します! 」

「 ・・・あ ・・・! 」

彼女はぱ・・・っと駆け出した。  

青年は後を追おうとしたが すぐに足を止めた。

前方から駆け寄ってくる男性に気がついたからだ。

「 誰かいるのなら安心だけど・・・ でも・・・ 」

彼は建物の陰に身を寄せ、 彼女の姿を見守った。

 

      フランソワーズ・・・ !  なぜだ・・・なぜなんだ・・・?

      誰かに聞かれることを恐れたのか??

      ・・・ いや ・・・ 芝居とはとても思えない・・・

 

      彼女は ・・・ なんらかの事情で記憶を失っているのか?

 

じっと目を凝らせば ― 彼女は駆けてきた男性と抱き合っているのが見えた。

 

      そう・・・か。  うん ・・・ そのほうがいい・・・

      忘れているなら・・・その方が幸せだよ。

 

      なにもかも忘れて 普通の、当たり前の女性として生きくれ・・・

      ・・・ きみの幸せを祈っているよ

 

      さよなら ・・・ フランソワーズ ・・・

 

もぅ一度、ほんの少しだけ  ―  彼は遠くの人影に視線を当てていたが くるりと踵を返した。

もう思い残すことはない ・・・! あとは全てを掛けて闘うだけだ。

彼は ― ジョーは二度と振り向くまい、と足を踏み出した。   と ・・・・

 

   ―   きゃあ ・・・・!!  だれ  か・・・・ たすけて・・・・!

 

「 ?? なんだ??  フランソワーズ?? 」

次の瞬間 ジョーは声の響いてきた方へ疾走した。

 

 

「 やめろ!!  彼女を放すんだ!!! 」

ジョーが駆けつけたとき、 暗闇で数人のオトコたちが揉み合っていた。

「 助けて !!  ロベール !!  ロベール〜〜 大丈夫?! 」

「 ・・・ この野郎!! 」

ジョーの鉄拳が唸り、黒服のオトコたちをことごとく殴り飛ばした。

ヤツラはジョーを見ると そのまま闇に紛れて逃走していった。

「 ふん・・・! なんだ アイツら・・・ あ 大丈夫かい、フランソワーズ?! 」

「 あ!!? アナタは・・・さっきの・・・・? 」

「 あ  うん ・・・ あの・・・このヒトは友達かい。 」

ジョーは 彼女を必死で庇い滅茶苦茶に殴られ気絶していた男性を助け起こした。

「 ええ! ヘンなオトコたちがわたしを無理矢理に車に引きこもうとして・・・ 

 彼が 必死に応戦してくれたのですけど 人数も多くて ・・・袋叩きに ・・・  」

「 ・・・ すぐに救急車を呼ぼう。  あ すみません? 」

何事か・・・と劇場の警備員や通行人が寄ってきた。

ジョーは彼らに怪我人の搬送を頼んだ。 幸い命に別状はなさそうだ。すぐに救急車がやってきた。

 

「 ・・・ ロベール・・・! わたしを庇ってくれて・・・  」

「 さあ きみを家まで送って行くよ。  ・・・ ちょっと表ざたにはなりたくないんでね・・・ 」

「 ・・・・ ありがとう ・・・ 」

遠くから、パトカーのサイレンが響いてきた。 ぴくり、と彼女の身体が揺れた。

「 やましいトコがあるわけじゃないよ。  きみの家は・・・ 」

「 ・・・ こっち・・・ アパルトマンなんですけど・・・ 兄と住んでいます。 

「 ああ それなら安心だ。  お兄さんのところまでぼくが送ってゆく。 」

「 ・・・ あの。 兄は ・・・ 軍人なのですけど・・・ 」

「 それじゃますます安心だね。 」

「 ・・・ ・・・ 」

「 じゃ 行こうか。 」

「 あの・・!  ありがとうございました・・・ 」

ジョーが先に立つと、彼女は素直についてきた。

 

     フラン ・・・!  フランソワーズ ・・・

     ほんのしばらくの間でも こうしてきみと歩けるなんて・・・

     ・・・ ああ ・・・ パリの灯が滲んでみえるよ

 

  カツカツカツ ・・・   コツコツコツ ・・・・

石畳の道に ふた色の足音がひびく。  影がふたつ・・・影だけは寄り添ってみえる。

「 あの・・・? 」

「 うん なに? 」

「 あの ・・・ あなたは・・・どうして道を知っているのですか。 」

「 ― 道 ? 」

「 ええ。  わたしの家までの道 ・・・ 」

「 あ・・・ あ そ、そうかい、偶然だよ。  多分こっちかな〜なんて思って 」

「 ああ そうですか。  あの ・・・ ジョーさん でしたっけ? 」

「 そうだよ。  島村 ジョー です。 」

「 あの ・・・ 本当にありがとうございました。 ロベール・・・大丈夫かしら・・・ 」

「 うん、多分打撲、くらいだと思うよ。 骨折はないと思う。 」

「 そう・・・! よかった・・・ あの、わたし達 バレエ・ダンサーなんです。

 今 公演中で・・・ 今晩も二人で踊って。 打ち上げに行こう・・・っていってたら・・・ 」

「 そうか。 それは・・・災難だったね。 」

「 でもアナタが助けてくださったから・・・ さっきはごめんなさい。

 ジョー・・・さんはちっともアヤシイ人、なんかじゃないんですね。 」

大きな青い瞳がまっすぐにジョーを見上げてくる。

その煌きは ・・・ 以前と少しも変わっていないのに・・・

 

     フラン・・・!  きみの記憶は ・・・なぜ消えてしまったのかい

     きみは ・・・ きみは ・・・

 

「 ジョーさん? 」

「 あ ・・・ ごめん・・・ あの・・・ 公演 ・・・上手く踊れたかい。 

「 ええ!  今晩 初めて・・・本公演でGP ( グラン・パ・ド・ドウ ) を踊れたんです。

 先生からも よかった・・・って褒めてもらえて 次の舞台も・・・ 」

「 そりゃ・・・ よかったなあ・・・ 」

「 ええ。 だから・・・ ロベール・・・ 早く治ってほしい・・・ 」

「 彼・・・ その ロベールは  君の こ・・・ こいび と ・・・なのかい・・・ 」

「 え? うふふふ・・・ いや〜だァ・・・ そんなんじゃない、です。 まだ・・・ 

 でも ・・・ カレシになる かもしれないわ。 」

「 ・・・ そっか・・・ 」

「 ええ でも、それも舞台が上手くいったら・・・ 」

「 それじゃ ・・・ ますます頑張らなくちゃね。  ・・・ 今、しあわせ ・・・かい? 」

「 え? なあに。  あ、あのアパルトマンなんですけど・・・  お兄ちゃん、帰っているかなあ・・・ 

 あ、ジョーさん ちょっと待っていてくださいますか。 」

「 え・・・ あの・・・ あ! フランソワーズ・・・ 」

古びたアパルトマンの前まで来た時、 彼女はぱ・・・っとドアを開けて階段を駆け登っていった。

 

「 ・・・フラン ・・・ よかったな・・・ 夢に向かって邁進しているんだね・・・

 よかった・・・ よかったね・・ 」

ジョーは舗道に佇んだまま じっと・・・ アパルトマンを見上げていた。

 

     踊りたい ・・・ !  まだ踊っていたかったのに・・・

 

彼女の悲しい呟きが ジョーの脳裏に甦る。

あれは ・・・ クリスマスの夜だったか・・・  やはりこの街で彼女と ・・・過した。

「 フランソワーズ ・・・  ぼくはこのまま 行くよ。

 きみは ・・・ きみ自身の夢にむかって フランソワーズ・アルヌール として生きろ。 

 ・・・ 003 は もう ・・・ いない。 

 

 さよなら ・・・ フランソワーズ。  きみと会えて・・・よかった・・・ 」

ジョーはそっとアパルトマンに背を向け、歩きだした。

 

「 ― ジョーさん!  まって!  あの・・・! 」

後ろから軽やかな足音が追いかけてきた。

「 ・・・・? 」

振りかえれば、真剣な瞳がもうすぐ側まできていた。

「 黙って帰っちゃうなんてひどいわ!  ねえ ・・・ お茶くらい飲んでいってください。 」

「 ・・・ お兄さんは なんて・・? 」

「 お兄ちゃ・・・いえ  兄は ・・・ まだ帰ってなかったんです・・・

 今日のわたしの舞台には間に合うように戻る・・・って言ってっくれていたのですけど・・・ 」

「 そうか ・・・ それは残念だったね。 」

「 ・・・ ええ ・・・ でも 仕方ないわ。 仕事なんですもの・・・ 」

「 それじゃ・・・ますますお邪魔はできないよ。 」

「 ・・・え? 」

「 女の子一人の部屋に入れるかい。 さあ、今晩はしっかりと鍵をかけてお休みなさい。 」

「 はい ・・・ あの・・・ 」

「 うん?  」

「 島村・・・さん? あの あなたは・・・ これからどこへ? 」

「 え ・・・ あ ああ・・・ 仲間が待っているから。 」

「 そう ・・・ 」

「 うん。  それじゃ・・・ あの ・・・きみが立派なバレリーナになれることを・・・祈ってるよ。 」

「 あ ・・・ありがとう・・・ 」

「 ・・・ それじゃ。   ・・・さようなら。 

「 Au revoir ・・・Monsieur Shimamura ・・・  」

 

ジョーは右手を少しだけあげると そのまま去っていった。

 

      コツコツコツ  ・・・・・

 

夜も更けた石畳の街に 彼の靴音が ・・・ だんだん小さくなってゆく。

もうあのセピアの髪も夜の闇に溶け込んでしまった。

 

    行っちゃった ・・・・  

    ・・・ なんで ・・・ こんなに 淋しいの・・・?

 

    ううん ・・・淋しい のともちがうわ。 悲しいのともちがう・・・

    なんだか ・・・ こころが千切れる みたい ・・・

 

  カツン ・・・   カツ     カツ  カツ カツ カツカツ・・・!

彼女の足が いつの間にか駆け出していた・・・

 

「 ・・・ まって・・・!  まって ・・・   ジョー ・・・・!! 

 

二つの影法師が 外灯のぼんやりとした光の下でひとつになった。

 

 

 

 

 

§ 教授のむすめ (2)

 

 

 

「 ・・・ そうアル そうアル・・・あんさん、なかなかええ手つきしてはるなあ〜 」

「 え・・・そうですか?  嬉しい!  でも こんな大きな包丁、初めて・・・ 」

「 だんないて。 美味しいモン、皆にたべさせたろ〜おもたら、包丁も味方してくれますがな。 」

「 そうですね・・・ よ〜し・・・ 張り切っちゃう♪ 」

「 ええ子ォやなあ〜 あんさん ・・・ 」

 

キッチンから 賑やかな声と美味しそうな匂いが一緒くたになり流れてきた。

サイボーグ達はリビングでデータ・チェックをしていたが、 皆 表情を和ませている。

「 ほほう・・・ なかなか期待できそうだな、晩飯は・・・ 」

「 ひっさびさにマトモなもんが食えるぜ〜〜 」

「 ・・・ へ。  あまり気を許さんほうが得策だ。 」

「 アルベルト。 お主、まだの令嬢を疑っているのか。 」

「 令嬢もなにも・・・全て本人の申告だけだぞ? 

 覚えているだろうな? ヤツらの遣り方は巧妙で ・・・ 汚い。 」

「 そりゃ そうだが・・・ 」

「 で〜〜〜 オレはど〜でもいい、腹減ったァ〜〜! 」

「 おっつけジョーが戻る。 マドモアゼルも一緒だろうよ。  

 ・・・ ピュンマの容態はどうだね。 」

「 大丈夫だ。  安定している。 俺が看ている。 」

「 そうか。 しかし ・・・ まだ 動けないな。 俺たちにはデータも持ち駒もなさ過ぎる。 」

「 ふむ・・・・左様・・・  」

オトコたちの深い溜息が リビングに澱んでゆく・・・

 

「 みなさ〜ん!  晩御飯、そろそろできますので! 」

キッチンから 元気のよい声が響いてきた。

「 おう〜〜 待ってました、レディ!  ・・・ ま、ともかく今は胃の腑を喜ばせてやろうじゃないか。 」

「 ・・・ だな。 」

「 イェ〜〜〜イ!!  オレ、いっちば〜〜ん! 」

「 ・・・ ジョー。 戻ってきた。 」

 

   ―  ポ −−−− ン ・・・・

 

ジェロニモの言葉が終らないうちに 低くアラーム音が鳴った。

玄関のセキュリティ・システムがグリーンになった証拠なのだ。

  ほどなくしてリビングのドアが開き、ジョーが入ってきた。

 

「 ― やあ 皆。  ただいま ・・・ 」

 

「 おう、お帰り。 ああ 〜〜 マドモアゼル!! 」

「 フランソワーズ!! 」

 

    ―  亜麻色の髪の女性が ジョーの背後に怯えた顔でしがみ付いていた。

 

 

 

Last updated : 02,01,2011.                  index        /       next

 

 

 

 

**********  途中ですが

はい、誰でもみ〜んな知っている・あのお話です♪

いちおう原作設定・・・のつもりだったのですが ちらちら平ゼロ、入ってます。

( 原作・あの話 をやったのは平ジョーだけだし〜 )

視点をちょいと変えてみました。  <そうだったらいいのにな♪>シリーズかも・・・

ラストまで書く・・・かどうかわかりませ〜〜ん・・・