『 メリー・メリークリスマス ― (1)― 』 

 

 

 

 

  ひゅう〜〜〜〜〜 ・・・・

 

「 うひゃあ ・・・ さむ ! 」

ジョーは フリース・ジャケットのファスナーを 首のところまで引き上げた。

「 ・・・ やっぱ ウルトラ・ライト・ダウン にしとけば

 よかったかなあ・・・ マフラーもってくれば・・・ あ 手袋も! 

 ・・・ う〜〜 はやく帰ろ! 」

荷物を持ち直し、ちょっと背中を丸め ― ジョーは足を速めた。

 

この辺りは関東の海に近くで、比較的温暖な地域であるが

師走の声を聞くと さすがに北風に身を縮める日もでてきた。

 

「 えっと ・・・ あと 卵! 卵 買わなくちゃな〜 」

 

彼は足早に駅に近いスーパーに向かった。

「 ・・・ う〜〜ん  この時間だとぉ コッコ屋さん の

美味しい卵 は 完売だな〜  スーパー だな〜 」

駅の近所は さすがに人出がある。

 

  ざわざわざわ ・・・ コート姿の人々が行き交っている。

 

「 うひゃあ  この辺はまた寒いなあ〜〜 」

広い駐車場を吹き抜けてくる風に ますます身を縮め

彼はますます足を速めた。

 

   シュン ―  ドアが開くと どっと暖気が溢れてきた。

 

「 うはあああ・・・  あったまるぅ〜〜

 えっと 卵 卵〜〜〜 っと  ・・ あ?  

 

  じんぐるべ〜〜る♪  じんぐるべ〜〜〜る♪

 

店内には 陽気な音楽が流れていた。

思わず見回せば 出来合いのクリスマス・リース やら ベルにヒイラギ

などの 赤・緑 の 定番オーナメント が飾ってある。

「 へ え ・・・  もうクリスマス ・・? 

 ついこの間まで ハロウィーンのカボチャとかだったのになあ 」

特別な理由はないのだが ジョーの足取りはなんとな〜く

ウキウキしてきた。

「 ふんふんふ〜〜〜ん♪  あ   っと 卵 ゲット〜〜 

 あとは ・・・ あ 帰りに商店街でじゃがいもだな

 きたあかり あるといいな〜〜  」

卵を丁寧に リュックに仕舞った。

「 帰ろ・・・ 今日は晩御飯当番だし ・・・ 

 あ〜 クリスマス かあ  へえ キレイなツリーだなア 」

そいえばスーパーの出入り口には 小ぶりのツリーが飾られている。

もちろん フェイク・ツリー、 そこにめったやたらと

きらきらのモールやら銀紙の星がくっつけられていた。

「 へえ ・・・ ツリーまでツクリモノなのかあ ・・・

 教会にいた頃 贅沢はできなかったけどクリスマス・ツリーだけは

 ホンモノの樹だったよなあ 

不意に あの樅の樹独特の香り ― 青くさいみたいな しゅ・・・っと

冷たいような香りを ジョーは懐かしく思い出した。

「 やっぱ クリスマスにはあの匂いがなくちゃなあ・・・

 この地域では ホワイト・クリスマス なんてとても無理だけど

 せめてツリーだけでも・・・ う〜〜ん ・・・ 」

 

   カツ カツ カツ 

 

リュックを背負い駅前のロータリーを抜け バス停まで少し歩く。

ジョーは なんとなくずっと樅の樹のイメージを追っていた。

 

「 待降節 ってあったよなあ ・・・ 神父様を手伝って

 いろいろ準備したっけ   ああ すっかり忘れちゃってる。

 クリスマスは ちゃんと準備したいな 」

島村ジョーは 教会付属の養護施設で育てられた。

彼はごく自然に教会の行事に馴染んで成長し暮らしてきたのだ。

その後 ―

運命の激変に巻き込まれ 思いもよらぬ身体になったけれど

彼の心の中 ― 真実のジョー は 変わってはいない。

いまだに 食事の前には自然に十字を切ってしまう。

加えて、 仲間達には欧米人が複数いて

彼らは殊の外 クリスマスを大切に考えていた。

 

  何日ごろに来るの?   何を持ってゆけばいいか?

  なんとかチケットが取れた! 吾輩を待っていてくれえ〜〜

  帰る!  コークとポップコーン 頼む。

( あのジェットでさえ! クリスマスには割と律儀に

 ギルモア邸に戻ってくるのだ )

 

そんな彼らを 毎年ジョーは大喜びで迎えている。

「 わ〜〜〜 なんかさ 大家族〜〜って感じで いいね! 

 ねえねえ フラン、買い物は任せてくれる? 」

「 あらあ 一緒にマーケットとか行きたいわ!

 この国のお野菜って すご〜〜〜くいっぱいあってステキ!

 それにね〜〜 フルーツはアートだと思うのよ 」

「 えへ ・・・ そう?

 あ それで ケーキはどうする? カタログ もらってくるけど 」

「 カタログ? 」

「 そ。 いろ〜〜んな有名シェフのとか 高級ホテルのとか。

 ちょっと高いけど ・・・ 」

「 ジョー。 クリスマスのケーキは 家で焼くものよ?

 フランス式でよければ わたし、作るつもりなんだけど 」

「 わああああ〜〜〜〜〜〜〜〜  ホント??? 」

「 え ・・・ええ  」

彼のあまりの喜びように パリジェンヌは面喰っていた。

「 やた〜〜〜〜〜〜!!!  おねがいします!!!

 材料、 買い出し 行きます! トウキョウにも行くよ!  」

「 あら そんなに特別なものは必要ないのよ。

 商店街のお店で間に合うと思うわ・・・

 あのね ブッシュ・ド・ノエル っていうの。

 フランスのクリスマス・ケーキよ 」

「 ぶっしゅど・・・? へえ〜〜〜 楽しみだなあ〜〜 」

「 わりとシンプルなんだけど・・・

 あ でも 皆いるから二つ、作りましょう。

 ねえ ジョー 粉を計ったりフルイにかけたりするの、手伝ってくださる? 」

「 もっちろ〜〜〜ん♪

 わ ・・・・は・・・ 手作りのケーキ〜〜〜〜!!! 

 あ あと・・・・ チキン・・・ 注文する? 」

「 それはねえ ・・・ 」

「 ワテがやりまっせえ〜〜 美味しいチキン、焼いてきまっせ! 」

仲間の料理人が どん! と丸い胸を叩いて保証してくれた。

「 う ・・・・わあ ・・・

 ぼく  楽しみすぎてため息しか でない ・・・」                                    

「 ほっほ・・・ 楽しみにしぃや〜

 中華料理やないで、伝統的な スタッフド・チキン、作ったるで 」

「 ?? すたっふど ちきん? 」

「 そうや!  グレートはん、 アルベルトはん

 フランソワーズはんも! ワテのチキン、楽しみにしててなあ 

その言葉通り クリスマスには見事なチキンが二羽 焼き上げられ

ギルモア邸の届いた。

 

「 うわ?? ぼ ぼく ふらいど・ちきん 以外のチキンって

 初めてだあ〜〜〜〜〜 

 

ジョーは < 本格的な・ようろっぱ仕様の・クリスマス > を知るコトができた。

そして その日には各地から仲間たちが < 帰って > きて

多少の口げんかなども交えつつ わいわい賑わって過ごすことになった。

 

  ― そんな風に クリスマスは皆が集う大切な日 なのだ。

 

だから ジョーは その日を毎年すご〜〜く楽しみにしている。

今年だって例外ではない。

 

「 ふんふんふ〜〜〜(^^

 今年も! 皆 あつまるよね〜〜〜  皆に会えるなあ 

 

赤い特殊な服を着るため ― でなければ

仲間たちが集まるのは 楽しいし心弾むことだ。

自分の知らない国の話を聞いたり ちょっとしたプレゼントのやり取りも

楽しい。

 

「 うん。 やっぱツリー、 用意したいな。

 でっかい樅の樹みつけて 星とかあのまるっこいタマ、飾ってさ。

 プレゼントとか 樹の下に置くんだ〜〜 いいな いいなあ 

 やっぱ ホンモノの樅の樹、みつけてこよう!

 そうさ クリスマスが終わったらウチの庭に植えればいいんだし。

 あ・・・ 駅の向うの花屋さんに聞いてみよう! 」

 

彼は買い物袋を下げて 駅の反対側まで脚を伸ばした。

「 え? クリスマス・ツリー?  ああ それならネットで注文しますよ〜

 え??? 根があるヤツ? ・・・ う〜〜ん

 最近 そ〜いうのは扱ってないんですよぉ すいませんねえ 」

花屋のオヤジには 丁寧に断られてしまった。

「 う〜〜ん ・・・ どうしよう ・・・

 あ それじゃ 自分で探してこようかな。

 北海道とか行けば 天然樅の樹、あるかも  」

加速装置で行けばすぐじゃん・・・と 大いにやる気になった  が。

「 ・・・! ど〜やって持って帰ってくんだよ??

 野菜や海産物を買いにゆくのとは違うし〜〜〜

 いくら山に自然に生えてたって ・・・ 誰かの所有物だろうし ・・・

 う〜〜〜ん ・・・ 」

帰り道、 バスを待ちつつジョーは考え込んでしまった。

「 ウチの裏山に ・・・ 樅の樹、生えてないかなあ・・・

 似てる樹でもいいや  探しに行こう! 」

 

  ぷわ〜〜ん  ・・・ 周回バスがやっと帰ってきた。

 

「 ああ やっときたよ〜 歩いた方が速かったかも・・・

 花屋に寄ってた分 遅くなっちゃったなあ〜〜 」

ガサリ。 買い物袋を持ち直し彼はバスに乗った。

「 え〜っと・・・ 今晩のメニュウは ひき肉いりおむれつ。

 カレーとシチュウ以外 唯一 作れる < ちゃんとした料理 >

 だもんね ・・・ 」

今日は 博士もフランソワーズも 帰りが遅いのだ。

帰宅すれば 洗濯モノを取り入れ畳み、晩御飯を作る。

それが 彼の < 仕事 > である。

「 やば〜〜 洗濯モノ、冷えちゃってるなあ〜〜〜

 あ! バス・ルームの掃除〜〜 ! 早めに帰って 掃除って

 思ってたのに〜 すっかり忘れてた・・・

 やば やば やば〜〜〜  わ〜〜〜 速く動いてくれえ〜〜 」

 

   ガッタン ゴゴゴ〜〜〜  ぷわん。

 

田舎のバスは のんびりと動き始めた。

 

 

 

 カチャ カチャ ・・・

 

「 ・・・っと、これでおっけ〜〜。

 あとは焼くだけ、か。 ひき肉もちゃんと調理したし〜〜

 卵 室温だもんな〜〜 」

キッチンでジョーは やっと一息ついて居た。

かなりマジに走って帰宅 ・・・ それから後はまさに

 

    加速そ〜〜ち!  の状態だった。

 

「 う〜〜〜 とにかく洗濯モノ 取り込んで〜〜〜

 加速そ〜〜ち・・・ できたらなあ〜〜〜 くそ〜〜〜 」

彼は 実際に < 加速そ〜ち カチッ! > と呟きつつ

家中を駆けまわっていた・・・ バス・ルームの掃除もこなした。

 

「 はあ〜〜 ・・・ なんとか ここまでこぎつけたァ〜〜

 博士は まずお茶淹れて  フランはきっとシャワー浴びたいっていうよな。

 で 晩ご飯は〜〜 ばっちり さ♪

 サラダは冷蔵庫だし〜〜  具沢山の味噌汁も温めればおっけ〜〜

 で <昭和風>おむれつ を焼く。  へへへ〜〜ん 

 

カタン。  彼はキッチンのスツールに腰を落とした。

 

「 クリスマス かあ ・・・

 そろそろ皆からメール くるよな〜〜〜 

 あ 部屋の窓 あけて空気通しておかなくちゃ!

 リネン類は ・・・ 大丈夫。 布団! 冬用の布団 いるなあ 

 

   ひゅうう 〜〜〜  カタカタカタ ・・・・

 

北風にキッチンの窓が 鳴っている。

いかに温暖な地域とはいえ 師走の半ばともなれば

夜は冷たい風が吹き抜けるのだ。

 

「 さむ ・・・ 熱々の晩御飯っていいよなあ

 そうだ〜 ワインとかも用意しなくちゃ。

 博士に選んでもらおうっと。 

 ・・・ ! クリスマス・リース! 準備しなくちゃ!

 うん 作る! 裏山で枯れ枝 拾ってこよっと 」

 

  カッチン  コッチン  カッチン  コッチン

 

リビングの鳩時計が 大きな音で時を刻む。

キッチンにいるジョーは ちょっと耳を疑った。

普段は少しも気にならないはずなのに ・・・

 

「 ?? ネジとか緩んでるのかなあ ・・・

 あ ドア 開いてる・・・こともないのに なんで ?

 ・・・ そっか  音が他にないから か ・・・ 」

 

   ふう〜〜〜〜〜 ・・・

 

自分自身のため息が やたらと大きく聞こえる。

「 ・・・ なんか こんな静かなのって滅多にないよなあ〜

 なんか ・・・ ちょっと ・・・ さみしい  ・・・ かも 」

こっとん。 彼は食卓に頬杖をついた。

 

  ジョー。 それはお行儀が悪いわ

 

普段ならすぐにそんな言葉が飛んでくる。

うっせ〜な〜・・・ みたいな顔をしてみせるけど・・・

 

   えへへ ・・・ 神父様にもよく注意されたっけ

   ・・・ ウチにはウルサイ姉貴がいるんです〜〜って  

 

彼は 本当はとっても嬉しいのだ。 

 

「 ふう・・・ あ そろそろ帰ってくるかなあ・・・

 博士は予定通りなら クルマでって言ってたけど・・・

 ぼくが駅まで迎えにゆくのに〜〜

 フラン 23分の電車に乗れたのかなあ 

 

ちら・・・っと布巾の下の食卓を眺める。

もちろん 熱々がオイシイものは仕上げしてないし

サラダ類は 野菜室に収めてある。

「 味噌汁って〜〜 沸かし直しってあんまし美味しくないよなあ

 ・・・ ま 熱々が一番だけどさあ 」

普段 この家で暮らす人数分の食器しか出していない。

でも クリスマスには ―

「 あ そうだよね! お皿にスープ皿 ・・・

 マグカップや 茶碗も出しておかなくちゃな〜〜〜

 そだ! お箸とスプーン  ナイフ・フォークもいるな 

 ・・・ 多分 大きな方の食器棚の引き出しに

 仕舞ってある  はず・・・ チェックしとくかあ 」

 

 ごそごそごそ〜〜〜 ガタン ガチャ ガチャ ガチャ

 

彼はキッチンの隅にある食器棚の中身を調べた。

「 あれ・・・ こんなスプーン あったんだあ?

 これ! ぼくが歳末セールの福引で当てたやつだよなあ 

 使おっかな〜〜 」

アニメ・キャラがついたスプーンを 食卓にもってきた。

「 何に使うか・・・って ・・・?

 スープには小さいしぃ〜〜  あ 茶碗蒸し!

 ・・・ 食べたいなあ〜〜  フラン〜〜 作ってくれえ 」

 

   ポッポウ  ポッポウ ・・・・

 

鳩時計から鳩が時を教えてくれた。

 

「 あれ もうこんな時間 ・・・ 博士 遅いなあ

 フラン 電車 逃したか 」

ジョーは 窓際に出てカーテンの隙間からちょこっと外を覗いた。

 

    中天には 細い三日月が昇っていた。

 

「 うひゃあ〜〜〜 寒そう・・・

 あ 皆 メール こないよ? ご予定は って一斉メールするかなあ

 う〜〜 でも みんな 忙しいよなあ・・・

 でも 帰ってきてくれるんだもん。 ありがとう〜〜〜 

 

  ぴんぽ〜〜〜ん   ガチャ ガチャ 

 

ただいま帰りましたああ〜  帰ったよ ジョー

玄関から 賑やかな声が響いてきた。

 

「 わ!!  おっかえりなさ〜〜〜い 」

ジョーは全てを放りだし 玄関に駆けていった。

 

 

  カチン ・・・・ カタン。

 

ゆっくりと 箸やらフォークが定位置に置かれた。

「 ん〜〜〜〜〜  ・・・ 美味しかった わあ〜〜〜

 ジョー すごい♪ 」

「 ほんになあ ・・・ ジョー 料理のウデを上げたなあ 

 もう身体の芯から温まったよ ・・・ 」

フランソワーズも 博士も 満足の吐息を漏らしている。

「 えへ・・・ 嬉しいなあ〜〜〜 

あのう・・・ 具だくさんの味噌汁はお好みに合いましたか 博士 」

「 食べやすくて熱々で 最高じゃよ・・・

 ごぼう とは大層美味いものなのだなあ 豆腐も良い味じゃ

 うむ これはワシの好物になったな 」

博士は けんちん汁風の味噌汁が 気に入ったようだ。

「 そうですか!  よかったあ〜〜〜

 あのね これに豚コマとかいれると 豚汁になるんですよ〜

 今度 また作りマス! 」

「 おお おお 楽しみにしているぞ  美味かった・・・ 」

のんびりお茶を啜り 博士はご機嫌だ。

「 お味噌汁、わたしも好き! たくさん野菜がとれるし

 多分 カロリーも低いわよね? 」

「 あ うん・・・ 油とか使ってないからね〜〜

 フラン こういうオムレツ・・・ 嫌じゃない? 」

「 え〜〜〜〜 なんで イヤ なのぉ?

 素敵だわあ〜 オムレツの中にひき肉と玉ねぎが入ってて♪

 ねえ 卵ってどんな食材にも合うのねえ 」

「 そうだね〜〜  あ でもさ ぼく・・・

 やっぱ フランのチーズ・オムレツ 食べたいんだ

 ・・・ ふわふわのあれ、またつくってくれる? 」

「 もっちろん! ねえ ジョー。 今晩のあの卵料理は

 なんていう名前なの? 日本ではポピュラーな献立なの? 

「 あ〜〜 名前・・・ ぼくは 昭和のおむれつ なんて

 呼んでるけど・・・ 

 多分 日本人は皆 馴染んだ味だと思うけど 」

「 そうなの? こんどまたリクエスト するわね〜

 しょうわのおむれつ ね♪ あ〜〜 お腹 いっぱい♪ 」

 晩御飯後の食卓は ほわ〜〜〜〜ん ・・・・と

のんびり 温かい雰囲気で満ちている。

 

  カチャ カチャ  カチン カチン

 

「 ねえ フラン  もうすぐクリスマスだよねえ 

「 そうね うふふ 皆が帰ってくるわね〜〜  」

後片付けしつつ 二人はのんびりおしゃべりをしていた。

「 うん・・・ だけどさ〜 まだ 皆からメールこないんだあ

 ほら 何日ころ来る とかの ・・・ 」

「 そう? 皆 忙しいのじゃない? 

「 そうかあ ・・・ 」

「 皆 いろいろ仕事あるでしょう?

 クリスマス前って 皆 仕事片さなくちゃ〜〜 って

 忙しいのよ  張大人はお店の準備もあるでしょうしね 

「 そっか〜 あ フランは?

 今度はクリスマス公演なんだろ 」

「 そ! あのね バレエ界ではね〜 クリスマスっていったら

 『 くるみ〜〜 』 なの。 ウチのバレエ団も上演しまあす♪ 

「 へえ・・・ くるみ割り人形 だっけ?

 フラン 何の役?  お姫サマ? 」

「 あはは ・・・ 馴染ないとわからないわよね

 今回 ワタシはメインは   芦笛の踊り   なの♪

 あとね〜 一幕では 客人 もやります 

「  あしぶえのおどり??  どんなの? 

「 まあ ピルエット勝負! ってとこかしら。

 三人で踊るけどね 最後はならんでグラン・フェッテするのよ

 ・・・ 一人だけミスるわけには行かないわ 

「 ぐるぐる〜〜〜 回るやつ? 」

「 ぴんぽん☆ あ でもね イブの夜は マチネ だけだから

 ちゃんと晩御飯には帰ってきます〜〜 」

「 ホント?? わ〜〜 あのさ えっと・・・ なんとかブッシュ、

 また作ってくれる?   

「 はい♪ アレがないと クリスマスになりませ〜〜ん 」

ジョーはもう 嬉しくて息が詰まりそうだ。

「 ワシも手伝うぞ 今年も オーナメントに凝るかい 」

 イルミネーションを飾ってもいい 

「 うわ うれし〜〜 ありがとうございます〜 」

「 そろそろ 皆が到着する日がわかるだろうよ

 それぞれ忙しくしておるようだよ。 

 どれ ワシは先に休むよ  おやすみ ・・・」

博士は のんびり自室へ引き上げていった。

 

「「 おやすみなさ〜〜い 」」

「 そっか・・・ 皆 ・・・ 大変だよねえ 」

「 でもクリスマスには 皆 集まるわ!

 あのね フランスやイギリス、ドイツ ・・・そう ヨーロッパでは

 クリスマスはね 家族で祝うものなの。 」

「 そっか  家庭内行事 なんだ? 」

「 そうねえ  家族が皆あつまって美味しい晩御飯を頂いて

 それから ごミサに教会にゆくの。 

「 あ〜 そうだったよね うん・・・ 」 

「 ね だからわたし達も。 皆でクリスマスを祝いましょうよ 

 ジョーはそういう習慣がないかもしれないけど ・・・ 

「 あっは〜〜  大丈夫! こう見えても教会育ち なんだぜ?

 クリスマスの準備は 任せてよ  」

「 あ そうだったわねえ ・・・ 頼もしいわ 」

「 う〜ん でもね ケーキとかチキンは ・・・ 」

「 うふふ それは任せて。 っていっても今年もいつもの

 ブッシュ・ド・ノエル のつもりだけど ・・・ いい? 」

「 いい いい!! あのチョコの樹 大好きさ〜 

「 ありがと♪  チキンは大人が引き受けまっせ〜〜 って。

 この前 電話があったの。 だから安心して 」

「 わっはは〜〜〜ん♪  やた〜〜〜〜 

 は〜やくこいこい くりすます〜〜♪ 

「 なあに その歌 ? 」

「 へへへ〜〜 これは日本の伝統的な唱歌デス。 」

「 ?? ま いいわ。  あ〜〜 美味しい晩御飯でした♪ 

 ふぁ〜〜〜〜 」

「 フラン 後はぼくがやるから。 

 お風呂入って。 明日も早いんだろ 」

「 ん・・・  ありがとう ジョー 

「 また 明日♪ 

彼は ハナウタ混じりにキッチンの後片付けを始めた。

 

    も〜〜〜 い〜くつねると〜〜〜

    くりすます〜〜〜♪ っとぉ

 

    皆 いつ来るのかな。

    忙しいんだよなぁ きっと ・・・

 

    あ。 そだ!  

    ぼくがばっちりクリスマス を

    準備すれば いいじゃんか。 

    チキンとケーキ以外は さ! 

 

    ようし・・・! やるぞ〜〜

 

    皆〜〜〜 楽しみにしててくれよぉ〜〜〜

 

ずんずんずん。 ジョーは勢いよく廊下を歩き始めた。

身体中に 楽しみ・えねるぎー が満タンって感じなのだ。

 

「 よし。 まずは ツリー だな。

 やっぱど〜〜してもホントの樅の樹 が欲しいよなあ ・・・

 ・・・裏山 にないかな うん 明日 博士に聞いて見よう 」

 

翌日から ジョーの < クリスマス > に浸りきった日々 が始まった。

 

「 ああ?  裏山の持ち主?? ・・それは地主 ということかね 」

博士は 呆れた面持ちでジョーを見た。

「 はい。 あのう〜〜 裏山に生えてる樹を 持ってきてもいいかな〜〜って。

 一応 許可とかいりますよねえ? 」

「 樹??  あそこは雑木林だらけじゃ、値打ちのある樹はないよ 」

「 いえ あのう ウチに持ってきたいだけで・・・ 」

「 ウチに? ああ 好きにしてよいよ。

 裏山もウチの所有じゃからなあ 」

「 え!?  そ そうなんですか?? 」

「 ああ。 この土地を買ったときに 地主さんがなあ

 ほとんど価値がないが オマケです、と譲ってくれたのじゃよ 」

「 うわあ〜〜 そうなんですか! よかった! 」

「 ?? 」

「 見つけたら報告します 博士! 」

「 あ ああ・・・ 」

ジョーは 喜び勇んで裏山に飛んでゆき ・・・

 

「 ・・・ ちょっと違うけど。 チクチクした葉っぱだし。

 これでいっか〜〜〜 

子供の背丈ほどの樹を引っこ抜いてきて 植木鉢に植えた。

「 ・・・・ん〜〜〜 クリスマス・ツリー にみえる!

 いいじゃん〜〜 あとは 飾り だな。

 へへへ これは慣れてるもんね。 折り紙とモールがあれば♪ 」

彼は バイトやら家事の合い間に 

コツコツ・・・ 折りとモールで 風船 やら 靴下 やら 星 などを

作り 空き箱に溜めていた。

 

「 さあ〜〜てと ・・・ そろそろ飾るかなあ〜〜

 キャンディの包み紙なんかも取っておいたのさ 

 これを繋げると〜〜  ほら キレイだなあ 」

 

市販の煌びやかな飾りには程遠いけれど なんとも温か味のある

オーナメント が 樅の樹 とはちょっと違う木 を飾る。

 

「 ・・・ うん いいじゃん? なんか懐かしい気分・・・

 施設にいた時もこんな飾り、作ってたもんなあ 

彼がちょいと思い出に浸っていると ―

 

   zzzz ・・・  スマホが光った。

 

「 ??? メール?? 珍しいなあ〜 フラン・・・じゃないよね 」

部屋の隅にほっちゃっていスマホを取り上げる。

 

「 あ〜〜〜 アメリカからだあ〜〜〜  ジェットだ!   

 

         え ・・・??

 

    クリスマス 無理★  ごめん ・・・!!

 

                     ・・・ ウソだろう〜〜 」

 

  それが  残念の始まり  だった ―

 

Last updated : 12,15,2020.                index      /    next

 

 

**********  途中ですが

・・・ 一日も早く  こんな普通の日々  が 戻りますように!

ジョーくん奮闘記 続きます〜〜〜 <m(__)m>