『 メリー・メリークリスマス ― (1)― 』
ひゅう〜〜〜〜〜 ・・・・
「 うひゃあ ・・・ さむ ! 」
ジョーは フリース・ジャケットのファスナーを 首のところまで引き上げた。
「 ・・・ やっぱ ウルトラ・ライト・ダウン にしとけば
よかったかなあ・・・ マフラーもってくれば・・・ あ 手袋も!
・・・ う〜〜 はやく帰ろ! 」
荷物を持ち直し、ちょっと背中を丸め ― ジョーは足を速めた。
この辺りは関東の海に近くで、比較的温暖な地域であるが
師走の声を聞くと さすがに北風に身を縮める日もでてきた。
「 えっと ・・・ あと 卵! 卵 買わなくちゃな〜 」
彼は足早に駅に近いスーパーに向かった。
「 ・・・ う〜〜ん この時間だとぉ コッコ屋さん の
美味しい卵 は 完売だな〜 スーパー だな〜 」
駅の近所は さすがに人出がある。
ざわざわざわ ・・・ コート姿の人々が行き交っている。
「 うひゃあ この辺はまた寒いなあ〜〜 」
広い駐車場を吹き抜けてくる風に ますます身を縮め
彼はますます足を速めた。
シュン ― ドアが開くと どっと暖気が溢れてきた。
「 うはあああ・・・ あったまるぅ〜〜
えっと 卵 卵〜〜〜 っと ・・ あ?
」
じんぐるべ〜〜る♪ じんぐるべ〜〜〜る♪
店内には 陽気な音楽が流れていた。
思わず見回せば 出来合いのクリスマス・リース やら ベルにヒイラギ
などの 赤・緑 の 定番オーナメント が飾ってある。
「 へ え ・・・ もうクリスマス ・・?
ついこの間まで ハロウィーンのカボチャとかだったのになあ 」
特別な理由はないのだが ジョーの足取りはなんとな〜く
ウキウキしてきた。
「 ふんふんふ〜〜〜ん♪ あ っと 卵 ゲット〜〜
あとは ・・・ あ 帰りに商店街でじゃがいもだな
きたあかり あるといいな〜〜 」
卵を丁寧に リュックに仕舞った。
「 帰ろ・・・ 今日は晩御飯当番だし ・・・
あ〜 クリスマス かあ へえ キレイなツリーだなア 」
そいえばスーパーの出入り口には 小ぶりのツリーが飾られている。
もちろん フェイク・ツリー、 そこにめったやたらと
きらきらのモールやら銀紙の星がくっつけられていた。
「 へえ ・・・ ツリーまでツクリモノなのかあ ・・・
教会にいた頃 贅沢はできなかったけどクリスマス・ツリーだけは
ホンモノの樹だったよなあ 」
不意に あの樅の樹独特の香り ― 青くさいみたいな しゅ・・・っと
冷たいような香りを ジョーは懐かしく思い出した。
「 やっぱ クリスマスにはあの匂いがなくちゃなあ・・・
この地域では ホワイト・クリスマス なんてとても無理だけど
せめてツリーだけでも・・・ う〜〜ん ・・・ 」
カツ カツ カツ
リュックを背負い駅前のロータリーを抜け バス停まで少し歩く。
ジョーは なんとなくずっと樅の樹のイメージを追っていた。
「 待降節 ってあったよなあ ・・・ 神父様を手伝って
いろいろ準備したっけ ああ すっかり忘れちゃってる。
クリスマスは ちゃんと準備したいな 」
島村ジョーは 教会付属の養護施設で育てられた。
彼はごく自然に教会の行事に馴染んで成長し暮らしてきたのだ。
その後 ―
運命の激変に巻き込まれ 思いもよらぬ身体になったけれど
彼の心の中 ― 真実のジョー は 変わってはいない。
いまだに 食事の前には自然に十字を切ってしまう。
加えて、 仲間達には欧米人が複数いて
彼らは殊の外 クリスマスを大切に考えていた。
何日ごろに来るの? 何を持ってゆけばいいか?
なんとかチケットが取れた! 吾輩を待っていてくれえ〜〜
帰る! コークとポップコーン 頼む。
( あのジェットでさえ! クリスマスには割と律儀に
ギルモア邸に戻ってくるのだ )
そんな彼らを 毎年ジョーは大喜びで迎えている。
「 わ〜〜〜 なんかさ 大家族〜〜って感じで いいね!
ねえねえ フラン、買い物は任せてくれる? 」
「 あらあ 一緒にマーケットとか行きたいわ!
この国のお野菜って すご〜〜〜くいっぱいあってステキ!
それにね〜〜 フルーツはアートだと思うのよ 」
「 えへ ・・・ そう?
あ それで ケーキはどうする? カタログ もらってくるけど 」
「 カタログ? 」
「 そ。 いろ〜〜んな有名シェフのとか 高級ホテルのとか。
ちょっと高いけど ・・・ 」
「 ジョー。 クリスマスのケーキは 家で焼くものよ?
フランス式でよければ わたし、作るつもりなんだけど 」
「 わああああ〜〜〜〜〜〜〜〜 ホント??? 」
「 え ・・・ええ 」
彼のあまりの喜びように パリジェンヌは面喰っていた。
「 やた〜〜〜〜〜〜!!! おねがいします!!!
材料、 買い出し 行きます! トウキョウにも行くよ! 」
「 あら そんなに特別なものは必要ないのよ。
商店街のお店で間に合うと思うわ・・・
あのね ブッシュ・ド・ノエル っていうの。
フランスのクリスマス・ケーキよ 」
「 ぶっしゅど・・・? へえ〜〜〜 楽しみだなあ〜〜 」
「 わりとシンプルなんだけど・・・
あ でも 皆いるから二つ、作りましょう。
ねえ ジョー 粉を計ったりフルイにかけたりするの、手伝ってくださる? 」
「 もっちろ〜〜〜ん♪
わ ・・・・は・・・ 手作りのケーキ〜〜〜〜!!!
あ あと・・・・ チキン・・・ 注文する? 」
「 それはねえ ・・・ 」
「 ワテがやりまっせえ〜〜 美味しいチキン、焼いてきまっせ! 」
仲間の料理人が どん! と丸い胸を叩いて保証してくれた。
「 う ・・・・わあ ・・・
ぼく 楽しみすぎてため息しか でない ・・・」
「 ほっほ・・・ 楽しみにしぃや〜
中華料理やないで、伝統的な スタッフド・チキン、作ったるで 」
「 ?? すたっふど ちきん? 」
「 そうや! グレートはん、 アルベルトはん
フランソワーズはんも! ワテのチキン、楽しみにしててなあ 」
その言葉通り クリスマスには見事なチキンが二羽 焼き上げられ
ギルモア邸の届いた。
「 うわ?? ぼ ぼく ふらいど・ちきん 以外のチキンって
初めてだあ〜〜〜〜〜 」
ジョーは < 本格的な・ようろっぱ仕様の・クリスマス > を知るコトができた。
そして その日には各地から仲間たちが < 帰って > きて
多少の口げんかなども交えつつ わいわい賑わって過ごすことになった。
― そんな風に クリスマスは皆が集う大切な日 なのだ。
だから ジョーは その日を毎年すご〜〜く楽しみにしている。
今年だって例外ではない。
「 ふんふんふ〜〜〜(^^♪
今年も! 皆 あつまるよね〜〜〜 皆に会えるなあ 」
赤い特殊な服を着るため ― でなければ
仲間たちが集まるのは 楽しいし心弾むことだ。
自分の知らない国の話を聞いたり ちょっとしたプレゼントのやり取りも
楽しい。
「 うん。 やっぱツリー、 用意したいな。
でっかい樅の樹みつけて 星とかあのまるっこいタマ、飾ってさ。
プレゼントとか 樹の下に置くんだ〜〜 いいな いいなあ
やっぱ ホンモノの樅の樹、みつけてこよう!
そうさ クリスマスが終わったらウチの庭に植えればいいんだし。
あ・・・ 駅の向うの花屋さんに聞いてみよう! 」
彼は買い物袋を下げて 駅の反対側まで脚を伸ばした。
「 え? クリスマス・ツリー? ああ それならネットで注文しますよ〜
え??? 根があるヤツ? ・・・ う〜〜ん
最近 そ〜いうのは扱ってないんですよぉ すいませんねえ 」
花屋のオヤジには 丁寧に断られてしまった。
「 う〜〜ん ・・・ どうしよう ・・・
あ それじゃ 自分で探してこようかな。
北海道とか行けば 天然樅の樹、あるかも 」
加速装置で行けばすぐじゃん・・・と 大いにやる気になった が。
「 ・・・! ど〜やって持って帰ってくんだよ??
野菜や海産物を買いにゆくのとは違うし〜〜〜
いくら山に自然に生えてたって ・・・ 誰かの所有物だろうし ・・・
う〜〜〜ん ・・・ 」
帰り道、 バスを待ちつつジョーは考え込んでしまった。
「 ウチの裏山に ・・・ 樅の樹、生えてないかなあ・・・
似てる樹でもいいや 探しに行こう! 」
ぷわ〜〜ん ・・・ 周回バスがやっと帰ってきた。
「 ああ やっときたよ〜 歩いた方が速かったかも・・・
花屋に寄ってた分 遅くなっちゃったなあ〜〜 」
ガサリ。 買い物袋を持ち直し彼はバスに乗った。
「 え〜っと・・・ 今晩のメニュウは ひき肉いりおむれつ。
カレーとシチュウ以外 唯一 作れる < ちゃんとした料理 >
だもんね ・・・ 」
今日は 博士もフランソワーズも 帰りが遅いのだ。
帰宅すれば 洗濯モノを取り入れ畳み、晩御飯を作る。
それが 彼の < 仕事 > である。
「 やば〜〜 洗濯モノ、冷えちゃってるなあ〜〜〜
あ! バス・ルームの掃除〜〜 ! 早めに帰って 掃除って
思ってたのに〜 すっかり忘れてた・・・
やば やば やば〜〜〜 わ〜〜〜 速く動いてくれえ〜〜 」
ガッタン ゴゴゴ〜〜〜 ぷわん。
田舎のバスは のんびりと動き始めた。
カチャ カチャ ・・・
「 ・・・っと、これでおっけ〜〜。
あとは焼くだけ、か。 ひき肉もちゃんと調理したし〜〜
卵 室温だもんな〜〜 」
キッチンでジョーは やっと一息ついて居た。
かなりマジに走って帰宅 ・・・ それから後はまさに
加速そ〜〜ち! の状態だった。
「 う〜〜〜 とにかく洗濯モノ 取り込んで〜〜〜
加速そ〜〜ち・・・ できたらなあ〜〜〜 くそ〜〜〜 」
彼は 実際に < 加速そ〜ち カチッ! > と呟きつつ
家中を駆けまわっていた・・・ バス・ルームの掃除もこなした。
「 はあ〜〜 ・・・ なんとか ここまでこぎつけたァ〜〜
博士は まずお茶淹れて フランはきっとシャワー浴びたいっていうよな。
で 晩ご飯は〜〜 ばっちり さ♪
サラダは冷蔵庫だし〜〜 具沢山の味噌汁も温めればおっけ〜〜
で <昭和風>おむれつ を焼く。 へへへ〜〜ん 」
カタン。 彼はキッチンのスツールに腰を落とした。
「 クリスマス かあ ・・・
そろそろ皆からメール くるよな〜〜〜
あ 部屋の窓 あけて空気通しておかなくちゃ!
リネン類は ・・・ 大丈夫。 布団! 冬用の布団 いるなあ 」
ひゅうう 〜〜〜 カタカタカタ ・・・・
北風にキッチンの窓が 鳴っている。
いかに温暖な地域とはいえ 師走の半ばともなれば
夜は冷たい風が吹き抜けるのだ。
「 さむ ・・・ 熱々の晩御飯っていいよなあ
そうだ〜 ワインとかも用意しなくちゃ。
博士に選んでもらおうっと。
・・・ ! クリスマス・リース! 準備しなくちゃ!
うん 作る! 裏山で枯れ枝 拾ってこよっと 」
カッチン コッチン カッチン コッチン
リビングの鳩時計が 大きな音で時を刻む。
キッチンにいるジョーは ちょっと耳を疑った。
普段は少しも気にならないはずなのに ・・・
「 ?? ネジとか緩んでるのかなあ ・・・
あ ドア 開いてる・・・こともないのに なんで ?
・・・ そっか 音が他にないから か ・・・ 」
ふう〜〜〜〜〜 ・・・
自分自身のため息が やたらと大きく聞こえる。
「 ・・・ なんか こんな静かなのって滅多にないよなあ〜
なんか ・・・ ちょっと ・・・ さみしい ・・・ かも 」
こっとん。 彼は食卓に頬杖をついた。
ジョー。 それはお行儀が悪いわ
普段ならすぐにそんな言葉が飛んでくる。
うっせ〜な〜・・・ みたいな顔をしてみせるけど・・・
えへへ ・・・ 神父様にもよく注意されたっけ
・・・ ウチにはウルサイ姉貴がいるんです〜〜って
彼は 本当はとっても嬉しいのだ。
「 ふう・・・ あ そろそろ帰ってくるかなあ・・・
博士は予定通りなら クルマでって言ってたけど・・・
ぼくが駅まで迎えにゆくのに〜〜
フラン 23分の電車に乗れたのかなあ 」
ちら・・・っと布巾の下の食卓を眺める。
もちろん 熱々がオイシイものは仕上げしてないし
サラダ類は 野菜室に収めてある。
「 味噌汁って〜〜 沸かし直しってあんまし美味しくないよなあ
・・・ ま 熱々が一番だけどさあ 」
普段 この家で暮らす人数分の食器しか出していない。
でも クリスマスには ―
「 あ そうだよね! お皿にスープ皿 ・・・
マグカップや 茶碗も出しておかなくちゃな〜〜〜
そだ! お箸とスプーン ナイフ・フォークもいるな
・・・ 多分 大きな方の食器棚の引き出しに
仕舞ってある はず・・・ チェックしとくかあ 」
ごそごそごそ〜〜〜 ガタン ガチャ ガチャ ガチャ
彼はキッチンの隅にある食器棚の中身を調べた。
「 あれ・・・ こんなスプーン あったんだあ?
これ! ぼくが歳末セールの福引で当てたやつだよなあ
使おっかな〜〜 」
アニメ・キャラがついたスプーンを 食卓にもってきた。
「 何に使うか・・・って ・・・?
スープには小さいしぃ〜〜 あ 茶碗蒸し!
・・・ 食べたいなあ〜〜 フラン〜〜 作ってくれえ 」
ポッポウ ポッポウ ・・・・
鳩時計から鳩が時を教えてくれた。
「 あれ もうこんな時間 ・・・ 博士 遅いなあ
フラン 電車 逃したか 」
ジョーは 窓際に出てカーテンの隙間からちょこっと外を覗いた。
中天には 細い三日月が昇っていた。
「 うひゃあ〜〜〜 寒そう・・・
あ 皆 メール こないよ? ご予定は って一斉メールするかなあ
う〜〜 でも みんな 忙しいよなあ・・・
でも 帰ってきてくれるんだもん。 ありがとう〜〜〜 」
ぴんぽ〜〜〜ん ガチャ ガチャ
ただいま帰りましたああ〜 帰ったよ ジョー
玄関から 賑やかな声が響いてきた。
「 わ!! おっかえりなさ〜〜〜い 」
ジョーは全てを放りだし 玄関に駆けていった。
カチン ・・・・ カタン。
ゆっくりと 箸やらフォークが定位置に置かれた。
「 ん〜〜〜〜〜 ・・・ 美味しかった わあ〜〜〜
ジョー すごい♪ 」
「 ほんになあ ・・・ ジョー 料理のウデを上げたなあ
もう身体の芯から温まったよ ・・・ 」
フランソワーズも 博士も 満足の吐息を漏らしている。
「 えへ・・・ 嬉しいなあ〜〜〜
あのう・・・ 具だくさんの味噌汁はお好みに合いましたか 博士 」
「 食べやすくて熱々で 最高じゃよ・・・
ごぼう とは大層美味いものなのだなあ 豆腐も良い味じゃ
うむ これはワシの好物になったな 」
博士は けんちん汁風の味噌汁が 気に入ったようだ。
「 そうですか! よかったあ〜〜〜
あのね これに豚コマとかいれると 豚汁になるんですよ〜
今度 また作りマス! 」
「 おお おお 楽しみにしているぞ 美味かった・・・ 」
のんびりお茶を啜り 博士はご機嫌だ。
「 お味噌汁、わたしも好き! たくさん野菜がとれるし
多分 カロリーも低いわよね? 」
「 あ うん・・・ 油とか使ってないからね〜〜
フラン こういうオムレツ・・・ 嫌じゃない? 」
「 え〜〜〜〜 なんで イヤ なのぉ?
素敵だわあ〜 オムレツの中にひき肉と玉ねぎが入ってて♪
ねえ 卵ってどんな食材にも合うのねえ 」
「 そうだね〜〜 あ でもさ ぼく・・・
やっぱ フランのチーズ・オムレツ 食べたいんだ
・・・ ふわふわのあれ、またつくってくれる? 」
「 もっちろん! ねえ ジョー。 今晩のあの卵料理は
なんていう名前なの? 日本ではポピュラーな献立なの? 」
「 あ〜〜 名前・・・ ぼくは 昭和のおむれつ なんて
呼んでるけど・・・
多分 日本人は皆 馴染んだ味だと思うけど 」
「 そうなの? こんどまたリクエスト するわね〜
しょうわのおむれつ ね♪ あ〜〜 お腹 いっぱい♪ 」
晩御飯後の食卓は ほわ〜〜〜〜ん ・・・・と
のんびり 温かい雰囲気で満ちている。
カチャ カチャ カチン カチン
「 ねえ フラン もうすぐクリスマスだよねえ 」
「 そうね うふふ 皆が帰ってくるわね〜〜 」
後片付けしつつ 二人はのんびりおしゃべりをしていた。
「 うん・・・ だけどさ〜 まだ 皆からメールこないんだあ
ほら 何日ころ来る とかの ・・・ 」
「 そう? 皆 忙しいのじゃない? 」
「 そうかあ ・・・ 」
「 皆 いろいろ仕事あるでしょう?
クリスマス前って 皆 仕事片さなくちゃ〜〜 って
忙しいのよ 張大人はお店の準備もあるでしょうしね 」
「 そっか〜 あ フランは?
今度はクリスマス公演なんだろ 」
「 そ! あのね バレエ界ではね〜 クリスマスっていったら
『 くるみ〜〜 』 なの。 ウチのバレエ団も上演しまあす♪ 」
「 へえ・・・ くるみ割り人形 だっけ?
フラン 何の役? お姫サマ? 」
「 あはは ・・・ 馴染ないとわからないわよね
今回 ワタシはメインは 芦笛の踊り なの♪
あとね〜 一幕では 客人 もやります 」
「 あしぶえのおどり?? どんなの? 」
「 まあ ピルエット勝負! ってとこかしら。
三人で踊るけどね 最後はならんでグラン・フェッテするのよ
・・・ 一人だけミスるわけには行かないわ 」
「 ぐるぐる〜〜〜 回るやつ? 」
「 ぴんぽん☆ あ でもね イブの夜は マチネ だけだから
ちゃんと晩御飯には帰ってきます〜〜 」
「 ホント?? わ〜〜 あのさ えっと・・・ なんとかブッシュ、
また作ってくれる?
」
「 はい♪ アレがないと クリスマスになりませ〜〜ん 」
ジョーはもう 嬉しくて息が詰まりそうだ。
「 ワシも手伝うぞ 今年も オーナメントに凝るかい 」
イルミネーションを飾ってもいい 」
「 うわ うれし〜〜 ありがとうございます〜 」
「 そろそろ 皆が到着する日がわかるだろうよ
それぞれ忙しくしておるようだよ。
どれ ワシは先に休むよ おやすみ ・・・」
博士は のんびり自室へ引き上げていった。
「「 おやすみなさ〜〜い 」」
「 そっか・・・ 皆 ・・・ 大変だよねえ 」
「 でもクリスマスには 皆 集まるわ!
あのね フランスやイギリス、ドイツ ・・・そう ヨーロッパでは
クリスマスはね 家族で祝うものなの。 」
「 そっか 家庭内行事 なんだ? 」
「 そうねえ 家族が皆あつまって美味しい晩御飯を頂いて
それから ごミサに教会にゆくの。 」
「 あ〜 そうだったよね うん・・・ 」
「 ね だからわたし達も。 皆でクリスマスを祝いましょうよ
ジョーはそういう習慣がないかもしれないけど ・・・ 」
「 あっは〜〜 大丈夫! こう見えても教会育ち なんだぜ?
クリスマスの準備は 任せてよ 」
「 あ そうだったわねえ ・・・ 頼もしいわ 」
「 う〜ん でもね ケーキとかチキンは ・・・ 」
「 うふふ それは任せて。 っていっても今年もいつもの
ブッシュ・ド・ノエル のつもりだけど ・・・ いい? 」
「 いい いい!! あのチョコの樹 大好きさ〜 」
「 ありがと♪ チキンは大人が引き受けまっせ〜〜 って。
この前 電話があったの。 だから安心して 」
「 わっはは〜〜〜ん♪ やた〜〜〜〜
は〜やくこいこい くりすます〜〜♪ 」
「 なあに その歌 ? 」
「 へへへ〜〜 これは日本の伝統的な唱歌デス。 」
「 ?? ま いいわ。 あ〜〜 美味しい晩御飯でした♪
ふぁ〜〜〜〜 」
「 フラン 後はぼくがやるから。
お風呂入って。 明日も早いんだろ 」
「 ん・・・ ありがとう ジョー 」
「 また 明日♪ 」
彼は ハナウタ混じりにキッチンの後片付けを始めた。
も〜〜〜 い〜くつねると〜〜〜
くりすます〜〜〜♪ っとぉ
皆 いつ来るのかな。
忙しいんだよなぁ きっと ・・・
あ。 そだ!
ぼくがばっちりクリスマス を
準備すれば いいじゃんか。
チキンとケーキ以外は さ!
ようし・・・! やるぞ〜〜
皆〜〜〜 楽しみにしててくれよぉ〜〜〜
ずんずんずん。 ジョーは勢いよく廊下を歩き始めた。
身体中に 楽しみ・えねるぎー が満タンって感じなのだ。
「 よし。 まずは ツリー だな。
やっぱど〜〜してもホントの樅の樹 が欲しいよなあ ・・・
・・・裏山 にないかな うん 明日 博士に聞いて見よう 」
翌日から ジョーの < クリスマス > に浸りきった日々 が始まった。
「 ああ? 裏山の持ち主?? ・・それは地主 ということかね 」
博士は 呆れた面持ちでジョーを見た。
「 はい。 あのう〜〜 裏山に生えてる樹を 持ってきてもいいかな〜〜って。
一応 許可とかいりますよねえ? 」
「 樹?? あそこは雑木林だらけじゃ、値打ちのある樹はないよ 」
「 いえ あのう ウチに持ってきたいだけで・・・ 」
「 ウチに? ああ 好きにしてよいよ。
裏山もウチの所有じゃからなあ 」
「 え!? そ そうなんですか?? 」
「 ああ。 この土地を買ったときに 地主さんがなあ
ほとんど価値がないが オマケです、と譲ってくれたのじゃよ 」
「 うわあ〜〜 そうなんですか! よかった! 」
「 ?? 」
「 見つけたら報告します 博士! 」
「 あ ああ・・・ 」
ジョーは 喜び勇んで裏山に飛んでゆき ・・・
「 ・・・ ちょっと違うけど。 チクチクした葉っぱだし。
これでいっか〜〜〜 」
子供の背丈ほどの樹を引っこ抜いてきて 植木鉢に植えた。
「 ・・・・ん〜〜〜 クリスマス・ツリー にみえる!
いいじゃん〜〜 あとは 飾り だな。
へへへ これは慣れてるもんね。 折り紙とモールがあれば♪ 」
彼は バイトやら家事の合い間に
コツコツ・・・ 折りとモールで 風船 やら 靴下 やら 星 などを
作り 空き箱に溜めていた。
「 さあ〜〜てと ・・・ そろそろ飾るかなあ〜〜
キャンディの包み紙なんかも取っておいたのさ
これを繋げると〜〜 ほら キレイだなあ 」
市販の煌びやかな飾りには程遠いけれど なんとも温か味のある
オーナメント が 樅の樹 とはちょっと違う木 を飾る。
「 ・・・ うん いいじゃん? なんか懐かしい気分・・・
施設にいた時もこんな飾り、作ってたもんなあ 」
彼がちょいと思い出に浸っていると ―
zzzz ・・・ スマホが光った。
「 ??? メール?? 珍しいなあ〜 フラン・・・じゃないよね 」
部屋の隅にほっちゃっていスマホを取り上げる。
「 あ〜〜〜 アメリカからだあ〜〜〜 ジェットだ!
え ・・・??
クリスマス 無理★ ごめん ・・・!!
・・・ ウソだろう〜〜 」
それが 残念の始まり だった ―
Last updated : 12,15,2020.
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********** 途中ですが
・・・ 一日も早く こんな普通の日々 が 戻りますように!
ジョーくん奮闘記 続きます〜〜〜 <m(__)m>