『 お気に召すまま ― (2) ― 』
シュ −−−−
最新設備を施したポートに これまた最新設計型と見受けられる潜水艇が滑らかに到着した。
音もなくエア・ロックが開き、なにやらどたどたと足音が聞こえてくる。
やがて護衛官とおもわれる男が姿を現し、周囲に鋭い視線を飛ばした。
そして 内部にむかい恭しく会釈をし、なにか小声で呟いているようだ。
すぐに彼は居を正し、ドアの脇に直立不動の姿勢をとった。
その様子を確認したのか、港のデッキで待ち受けていた女性がしずかに進み出た。
足元までとどくギリシア風のローブが揺れ、むき出しの白い腕には黄金の腕輪が幾重にも輝く。
しかし そんな無機質の輝きも褪せてみえるのは ― 彼女の亜麻色の髪の素晴しさだった。
ゆったりと結い上げた髪は彼女が歩くたびに揺らめき 黄金の飾りよりも遥かに華麗だ。
そして その髪が縁取る白皙の頬 ・・・ 引き締まったそのラインは魅惑的な唇へと続く。
決して肉感的ではないのだが、濡れ濡れとした薄紅色の唇は 蝶を誘う花弁のごとく、
かすかに動いていた。
はあ ・・・・
周囲を固めている警備兵の間からも無意識の内に感嘆の吐息が漏れ聞こえてくる。
好色な視線が一斉に彼女に集まり、舐めるようにしつこく絡みつく。
一種異様な雰囲気が 彼女の周辺には自然と醸しだされてゆく・・・
もっとも 当のご本人はまったく意に介せず、しずかに客人の前に進み出た。
「 ・・・ ようこそ。 我がアフロディーテ島へ。 遠来のお客人。 」
「 ここが・・・ そのなんたらいう島か? しかし普通の島では・・・ ほう?! 」
「 随分と遠回りをさせたな! ふん、島など我輩はとっくに所有しているぞ。 どうせ・・・ お。 」
丁重な会釈と厳重な警戒の中、どたどたと <客人>が二人、現れた。
軍服オヤジとターバンを纏ったチビ・タンクは尊大ぶって周囲を見回し ― デッキの前で足を止めてしまった。
そして
目の前に現れた女性を しげしげと、いやじろじろ・・・穴のあくほど見つめている。
「 長旅、お疲れ様でした。 え・・・っと、ムッシュウ? 」
女性は満面の笑みをたたえ、二人の客人の双方に手さしのべつつ近寄ってきた。
「 あ 〜 ・・・ ワシがイーライ将軍だ。 」
「 ワシが! ファラド王子〜〜王子殿下だ! 」
・・・<客人>達が がばっと白い手を握ろうとした瞬間、彼女はす・・・っと身をかわした。
踏鞴を踏みそうになった二人は互いに牽制しあうどころか、しゃしゃり出合い競って
彼女の側に寄ってきた。
「 ジェネラル・イーライ、 プリンス・ファラド ・・・ とおっしゃいますのね。
ようこそいらっしゃいました。 わたくしがこの島 ― アフロディーテ島の女司祭・・・
ダイアナと申します。 どうぞお見知りおきを・・・・ 」
女性は優雅に会釈をすると かっきりと客人を見つめた。
「 お・・・ほ。 ほう・・・なかなか美しい・・・いや、面白そうな島、と聞いたが。」
「 さようさよう! 全ての美、快楽を集めたと自慢しておったようだな。 」
「 はい、ここは我らがNBG団の 美と快楽の宮殿 でございます。
ただいまよりご案内いたしますので どうぞご存分にお楽しみください。
美酒、美食、美女 ・・・ そしてとっておきのご商談もご用意させて頂いております。」
「 ほ〜う・・・ まずはアンタを <楽しむ> こともできるのか。 」
「 さようさよう! ワタシはアンタを専属にするぞ! 」
軍服オヤジとチビタンクは、ずい・・・と女司祭のそばに足を勧めた。
まさに手を握らんばかり、二人の視線は彼女に釘付けである。
チャ ・・・・ カタ ・・・・
周囲からかすかに 機械音が漏れてきた。 警護兵たちが銃のセイフティを解除しているのだ。
女司祭はそんな部下どもに ちらり、と視線を投げ制御する。
そして ヨダレを垂らさんばかりのお客人に嫣然と微笑みかけた。
「わたくしの主は ・・・ NBG団の総統だけでございます。 お戯れはおやめください。」
彼女は 半歩身を引いて、二人に周囲の警戒振りの一端を見せた。
「 ・・・ ふん・・・! ま・・・焦ることはあるまい。 ワシは 商談 が目的だからな。 」
「 さようさよう! ワタシは高級な悦楽を求めているからして! おっほん・・・ 」
一応母国では VIP 扱いの彼らは周囲の様子がすぐにピンと来た様子だ。
女司祭から微妙に離れ 懸命に虚勢を張っている。
「 はい、よく存じております。 それではお二方・・・・どうぞ こちらへ。 」
軽く会釈をすると、彼女は客人たちを案内の女性達に委ねた。
肌も露わな肉感的な美女たちが 身体をくねらせ二人を案内していった。
客人達を見送り 頭をあげた時、女司祭のほほから笑みはすっかり消えうせていた。
ふう・・・
深い溜息が 彼女の口から漏れる。
周囲の警備兵たちの視線が 再びねちっこく絡みついて来始めた。
「 あの。 お疲れのところ申し訳ありませんが・・・ 」
「 ・・・ なんですか。 警備隊長。 」
「 ダイアナ様。 ダイアナ様も商談の間にいらっしゃいますか。 」
「 はい。 芸術の間を見回ってから参ります。 お客人たちにご説明お願いします。 」
「 は。 了解いたしました! 」
警護隊長は 3秒だけ余分に彼の上司を眺めると大急ぎで敬礼し踵を返した。
「 ・・・ふ ・・・ どれもこれも・・・ 」
女司祭は吐き捨てるように呟くと 足早にポートのデッキから去っていった。
「 ダイアナ。 」
女司祭は絨毯をしきつめた廊下の角で 名を呼ばれ振り返った。
突き当たりの重厚なドアの前に黒づくめのオトコが立っていた。 その顔は髑髏のマスクで覆われている。
「 ・・・ 閣下? 商談の間にいらしたのではなかったのですか。 」
「 ふん・・・ あのような輩相手は私の仕事ではない。
どうだ? 共に美術品を愛でようではないか。 いや・・・一番の芸術品はそなただがな・・・ 」
「 閣下 ・・・ 身に余るお言葉でございますわ。 」
「 ふふん・・・ こっちに来るのだ。 そして共に極上の美を鑑賞しよう。 」
「 はい、閣下・・・ 」
髑髏マスクのオトコは女司祭の肩を引き寄せると、ゆっくりとドアを開けた。
ギ ・・・・
微かな音とともに彫刻を施したドアが左右にひらき、二人を迎えいれた。
「 ・・・ 美こそ生命 美こそチカラ。 世界中の美を集めてこそ我々は真の支配者となるのだ。
どうかな。 このヴィーナスの間は。 うん? 」
「 ・・・ はい ・・・ 閣下。 あまりの感動にこころが震えて声が ・・・うまくでませんでしたわ。
本当に・・・すばらしい ・・・ 」
「 ああ。 ホンモノの美とは そのオーラからして違うものだ。 」
二人はほれぼれと 台座上のヴィーナス像を見つめている。
「 美を鑑賞しつつ 美を愛でるのは ・・・ また格別・・・ 」
「 ・・・ あ ・・・ 閣下・・・ このようなところで・・・ 」
「 ふふふ・・・かまわぬ。 ここには 私とお前、そして ヴィーナスしかいないのだから・・・ 」
オトコは女司祭をぐっと抱き締め、その頬に手とかけた。
「 ・・・美しい・・・この生き生きとした美には どのヴィーナス像も敵わぬ・・・・
この二枚の桜貝の魅惑に勝てるオトコはどこにもおらぬな。 ・・・ どれ一口・・・ 」
「 ・・・ 閣下・・・ 」
カラ −−−− ン ・・・・・!
突如 彼らの後ろでなにか硬いものが転がる音がした。
「 ? なんだ?! 」
「 ・・・ なにかの欠片 ・・・ ああ、石灰岩の欠片のようですわ。 」
「 ふん? どこから落ちてきたのだ? ・・・ まさか ヴィーナスから落ちたのではないだろうな。 」
髑髏面のオトコは女司祭の身体を離すと 中央の台座に近づいた。
そして 三体のヴィーナス像をそれぞれしげしげと見つめ始めた。
「 如何ですか。 なにか ・・・ どこかに異状がございましたか。 」
「 ・・・ いや。 思わず引きこまれてしまったよ。 ふふふ・・・しかし、はやりお前の身体の方が 」
「 閣下 ・・・ 」
オトコは再びヴィーナス像の下で女の身体を抱き寄せた。
・・・ !! この〜〜〜 てめェ〜〜
あろうことか ヴィーナス像の、失われたはずの腕がにょきり、と伸びオトコの頭上に振上げられた。
そして
ぴぴぴぴ・・・・・・
微かな電子音が聞こえ、オトコの襟についたピンがさかんに点滅を始めた。
「 ・・・ !? クソ・・・! これから、という時に。
― なんだ!? ・・・ああ、わかった。 すぐに行く! 」
オトコはピンの頭に向かい 吐き捨てんばかりに答えた。
「 ダイアナ。 続きは今夜だ。 さきほどの客人達に会わねばならん。
お前はここをもう一度点検してから、商談の間にくるのだ、 いいな。 」
「 はい、 閣下。 」
女司祭は会釈をしオトコを送り出すと、乱れていた襟元を調えた。
マドモアゼル!! おい・・・ 003!!
聞こえないのかい、通信回路を開け。 ・・・ おい!
「 ・・・ ふうう ・・・ 」
深く溜息を吐き、女司祭はゆっくりとヴィーナス像の周りを巡り始めた。
ときおりじっと・・・ その蒼い瞳をそそぐ。
「 ・・・ あら? このヴィーナス・・・ なんだかちょっと違うみたい・・・ 気のせいかしら。 」
青い瞳が石像を一心に見つめている。
おい! 007だよ、わかるかい?
ヴィーナスに化けたまま、この島まで来ちまったんだ。
誰もいないようなら 変身を解くぞ、ちょっと<見て> くれよ、003!おい 〜〜
「 ・・・ ちょっと疲れているのかしら。 ヴィーナスに変わりはないわよね。
さっきの欠片はきっとネズミのイタズラね。 」
彼女はもう一度溜息を吐くと 裳裾を翻し<美術の間> を出て行った。
ヴィーナス像の通信に応えはかえってこなかった。
「 ・・・ あのう ・・・ ダイアナさま・・・ 」
「 ・・・ はい? なんの用ですか。 」
廊下の手前で 黒スーツ姿のぎすぎすした女性が彼女を呼び止めた。
「 あのう・・・ 接待係りの採用の件なのですが・・・ 」
「 接待係? ・・・ ああ、それは閣下直属のチームの管轄です。 わたしとは無関係よ。 」
「 いえ・・・ その、アチラの接待係りではなくて。 下働きのアルバイトの件で・・・
応募者が来たのですが、どなたに採用についての裁量をお願いしたらよいのかと・・・ 」
「 ・・・アルバイト? 誰か・・・人事担当とかいるでしょう? わたくしはVIPの方々のおもてなしに
忙しいのよ。 」
「 はい、それはよく存じておりますが。 あのう〜 最終面接はやはり・・・
このセクションのトップの方にお願いしたいと・・・ 」
メガネのぎすぎす女は大汗をかいている。
どうもこの島には適当な裁量を下す人間が不在らしい。
― いや。 誰もかれもが決定するという責任から逃れまわっているのかもしれない。
「 ・・・ わかりました、会いましょう。 でも5分だけよ? それでよくって? 」
「 はい! ありがとうございます。 下の面談室に通してあります。 」
「 ・・・ すぐに行きます。 」
「 はい! 」
ぎすぎす女は 飛び上がらんばかりの勢いで立ち去った。
「 ・・・ダメだな! どうやってもこの島周辺の空間ではメカは効かないぞ。 」
「 う〜ん ・・・ レーダーは相変わらず滅茶苦茶だし。 コンパスはどうだい、ジョー。 」
アルベルトがコンソール盤の前で お手上げ・・・と天を仰いでいる。
ずっとモニターに張り付いていたピュンマも どさり、と背もたれに身を投げた。
「 ・・・ 全然だめだ。 さっきこの島を通過したろ? あの時にはちゃんと正常に戻ったんだけど。
ここに着水してからは ・・・ まったく機能しないよ。 」
ジョーも操縦桿を握りつつ、嘆息している。
「 ・・・ってことは。 メカに頼っての上陸はとても無理、ということだな。
強引に着水できただけでも めっけもの、という訳だ。 」
「 あれはさ。 着水、なんてもんじゃなかったと思うな。 海に突っ込んでなんとか沈まなかった、
ってだけのコトでさ。 」
「 ・・・ ごめん。 イチかバチかで・・・強引に海に飛び込んじゃった・・・
ともかく少しでも早くフランを助けなくちゃ! フラン〜〜 すぐに行くからね・・・! 」
ジョーは窓から島を睨みつけ、ぐっと拳を握りしめている。
「 おいおい・・・? 今からそんなにテンションをあげるな。 」
「 わかってる・・・ わかってるけど。 ぼくがみすみすあの時に気がつかなかったばっかりに・・・
フランソワーズ・・・! ごめんよ・・・ どんなことをしても助けだすからね! 」
「 ああ、よ〜くわかったから。 こうメカが全滅だとどうしようもないな。
仕方ない、しばらくは可視範囲を徹底的にマークだ。 集中しろよ! 」
「 ハイな。 ワテはな〜 こげなちっこい目ェやけど、目ン玉のデキは皆はんには負けまへんで。 」
「 ああ、張大人、宜しくたのむ。 ピュンマ、どうだ、付近の海中になにか動きは見えるか。 」
「 う〜ん ・・・ 僕の視力はソコソコだからね。 フランソワーズみたいに海中の広い範囲までは・・・ 」
「 ・・・ フランソワーズ ・・・ ぼくが必ず ・・・ どんなコトをしても・・・ 」
「 え? なんだって、ジョー。 なにか言ったかい? 」
「 放っておけ。 恋する乙女、いや 少年は多感なんだそうだ。」
「 多感、ねえ・・・ オメデタイっていうか。 ん??? なにか魚たちが逃げてゆくよ? 」
「 ・・・ 来まっせ! な〜んやデカイもんが。 海の中からや! 」
大人は舷側の窓から じ〜〜っと海原を見つめていたが、突如声を上げた。
「 張大人!? 見えるのか? 」
「 うんにゃ。 コレはワテの釣り師としてのカンや。 この海の感触・・・水面の様子やと、
えろうデカいもんが来よるで。 」
「 よし、退避しよう。 移動して少なくともレーダーの利く地域まで撤退だ。 」
「 了解。 ・・・ しばらくは目視でゆくから、 皆たのむね。 」
「 了解。 ジョー、ゆっくり行こう。 今、攻撃されたらひとたまりもないからね。 」
「 ・・・ 了解。 」
ドルフィン号は半分波間に身を沈め 静かに航行していった。
「 ・・・ なんだァ ・・・ この船は。 一応潜水艦らしいが。 」
「 うん。 単なる輸送艦だね、これは。 一応武装しているけど・・最近な全然使用していないらしい。 」
「 ふん、 随分とええ加減なヤツでんな、この艦のコック長。 包丁がよう切れへん。 」
「 ・・・ 随分、大勢が乗っていたらしいね。 なんだか忘れ物やゴミが散乱しているよ。」
サイボーグ達は ざっと見て回った艦内の様子を報告しあった。
彼らが退避してやりすごした潜水艇は ドルフィン号に気がつくこともなく、
目に前に浮かぶ島付近にするすると着浮上した。
そして ・・・ 乗組員、NBGの団員と思われる男達が大勢ランチに乗換え、上陸すると・・・
潜水艇はひっそりと そのまま − 停泊しているだけだった。
「 目立たないように泳いできたけど。 こりゃ、モヌケの空だね。 ドルフィンで接近しても
全然大丈夫だったかもしれない。 」
「 用心に越したことはない。 ・・・ どうも あの島はヤツらの 休暇用施設 らしいぞ。 」
「 ― 休暇用施設 〜〜??? なんだい、それ。 」
ピュンマは目を白黒させている。
「 あの・・・さ。 よく日本の企業なんかもやっているけど。 会社が保養所とか娯楽施設を持っていて
休暇の時に社員たちが格安で利用するんだよ。 」
「 ふうん・・・ じゃ・・・ あの島はNBGの保養所ってわけかい?? 」
「 ああ。 コレを読んでみろ。 あっちの部屋に落ちていたが。 」
アルベルトは数枚のパンフレットを差し出した。
「 え・・・ <美と快楽の館> ?? なんだい、コレ。 なんだか・・・新宿・カブキチョウ辺りで配って
いそうなビラだねえ・・・ 」
「 ・・・ 隊員諸君に英気を養う・・・って。 コレ・・・ やっぱ、この島ってそのテの場所だったのか! 」
「 は〜ん・・・? ま、どちらさんにもおますわなあ。 歌舞伎町たら、アムステルダムの飾り窓たら、
レーパーバーン街たら。 人間社会の常、とちゃいまっか。 」
「 ふん、それはそうだが。 問題はグレートとフランソワーズだ。
二人ともおそらくこの島にいるだろうな。 ヴィーナス像に化けたグレートはともかく・・・ フランは 」
「 !!! なんだって!!! そ、そんな! ふ、風俗関係のトコでフランソワーズが・・・
ぼくのフランソワーズが働いてるっていうのかい!? 」
ジョーは 手にしていたビラを握り潰し、突然声を荒げた。
「 ? な・・・・ おどかすな。 お前・・・ 大丈夫か。 」
「 ・・・ あ・・・ う、うん ・・・ごめん。 だって そんな ・・・フランが・・・そんなトコで
身売り同然に働かされているなんて・・・ ううう ・・・ 」
「 おいおい、ジョー? なにを一人で想像しているんだ?
お前・・・・ ほっんとうにフランのコトになると すべて吹っ飛んじまうんだなあ。 」
「 う・・・ご、ごめん ・・・ 」
「 えっと。 ちょっと整理しようよ。 まずはこの島に侵入することが第一だろ。
どうやらアチラさんもわりとユルめの警備らしいけど。 」
「 そやな。 保養所やから・・・・ けど、まともにいってもあかんな。 警戒されんようにせな・・・
このゆるゆるもーどのまんまやと、探るのも楽チンやで。 」
「 うん、僕もそう思う。 ・・・ それでさ、 これ。 これも、向こうの部屋に落ちてたんだけどね。 」
今度はピュンマが数枚のチラシを広げてみせた。
「 なんや? ・・・ アルバイト募集 接待要員! 未経験可 ??? なんやね、コレ。 」
張大人が横から覗き込む。
「 ふん。 ピュンマ、その手でゆくか。 」
アルベルトが パン・・・っとチラシを弾き、ピュンマはちょっとだけ肩をすくめた。
「 そういうこと。 アチラさんが必要としているのなら、それに乗るのが一番自然だよね。
募集中ってことはヨソモノが来ても過度の警戒もしないだろうし。 」
「 は〜ん・・・ ワテにも読めたで。 ええんやないか。 トロイの木馬っちゅうわけやな。」
「 そういうコト。 ・・・ なあ、ジョー? 」
「 ・・・ え?? な、なんのことかい?! 」
仲間達みんなの視線を一身に受け、 ジョーはやっと我に帰った。
「 ・・・ 何をぼけっとしているんだ! いいな、お前に決定だ。 」
「 ああ、勿論。 一番の適役だよね。 フリーターか引き篭もりオタク青年って設定でさ。 」
「 ほっほ ぴったしやおまへんか。 この艇の中、捜してな〜んか服をめっけまひょ。
ち〜とばかしこの真っ赤っかな服やとあかんさかいな。 」
「 そうだな。 キャビンの方を見てこよう。 ピュンマ、コイツの履歴書を適当に・・・頼む。 」
「 O.K. え〜と・・・? こういうトコには使い放題なPCが絶対どこかに・・・・ああ、あった あった。。
よ〜し。 それじゃ・・・ 島村ジョー ・・・と。 あ、本名じゃマズいか。 村松ジョーでいいか。 」
「 そやそや。 そやな〜 ジョーはん。 髪形も変えたほうがええで。 」
「 そうだね。 ハサミ、あるかな。 張大人、ジョーの前髪をさ、ちょっと・・・ 」
「 そやな。 ・・・ なんちゅうたかな? そや! 就活風にせなあかんな。 どれ・・・ じゃきん!と・・・」
ピュンマはPCの前から 大人とどんどん話を進めてゆく。
大人は見つけ出したキッチンハサミを片手に ジョーにずい!と迫った。
「 わ!!! な、なにするんだよ〜〜 」
「 ・・・ 危ないで、ジョーはん! こっちゃ刃物、持ってるさかい・・・・ 」
「 あ・・・ ごめん。 ってそうじゃなくて! なんだっていきなりぼくの髪を切ろうとするんだよ! 」
「 ・・・ ジョー。 また聞いてなかったのかい。
きみはね、<村松ジョー> として NBGのバイトに応募するのさ。
・・・あ、ちゃんとWebページもあるや。 こっちからエントリーしておくから・・・ よし。
え〜〜 と。 コレが君のエントリー・ナンバーだからね。 」
「 ・・・おい、 適当な服が見つかったぞ。 一応スーツだからいいだろう。 」
アルベルトが 紺っぽい地のスーツを持って戻ってきた。
「 ほっほ。 こないな雑多な目的の艦はなんでもある、ちゅうこっちゃ。
ほんならちょいと外を見てきますワ。 ジョーはん?支度しといてんか。 」
「 オッケー。 僕に任せてくれよ。 さ、ジョー。 はやくソレ、脱いで・・・ 」
「 ・・・わ〜〜〜!!! な、なんだ、なんだ なんなんだ〜〜 なんだってぼくが・・・ 」
「 ミッションだ、ジョー。 お前・・・フランソワーズとグレートを救出したくないのか??!」
「 う・・・ し、したい・・・ 」
「 よし。 それじゃ 黙って言うとおりにしろ。 ― いいな。 」
アルベルトはこれ見よがしに 右手をずい・・・っとジョーの目に前に伸ばした。
いかに009とはいえ、004のマシンガンをまともに至近距離で喰らえば ・・・
「 ・・・ う ・・・わ、わかった・・・よ ・・・ 」
ジョーはごくり、と唾を呑みこみ、そそくさと着替えを始めた。
10分後。
ひとりのワカモノが おずおずとデッキ入口の警備兵に声をかけた。
「 ・・・ あンのう〜・・・ 」
「?! な、なんだ?? 貴様!! どこから侵入した!? そこを動くな! 」
こっそり煙草を吹かしていた警備兵は大慌てで そのワカモノに銃口を向けた。
「 わ・・・!! う、撃たないでくれ〜〜 ボクゥ〜〜 バイトの面接に・・・ 」
「 動くと撃つ・・・ あん? なんだァ?? 面接ゥ? 」
「 は、はい・・・ あの船で・・・・ 他のヒトたち、どんどん降りちゃって・・・
係りのヒトに聞いたら 管轄外だからちょっと待ってろって言われて・・・
そんでず〜っと待ってたんですけど 誰も来てくれなくて・・・ それで・・・ 」
「 ・・・ なんだ、バイト希望者か。 なんだって休暇組に紛れてきたんだ? 」
「 え・・・ ボクゥ ネットから応募したら、メールが来て。 あの船に乗れって・・・ 」
「 ふん? ま・・・ 俺の管轄じゃないからな。 一応採用担当に連絡してやるから
そこで待ってろ。 ・・・・ あ。 ゲート・キーパー1818ですが。 バイトの面接生が・・ハイ。
・・・ はい? はあ ・・・ おい、お前名前は? 」
警備兵はわりと親切で さっそく構内電話を取り上げてくれた。
「 あ・・・ ボクゥ ・・・ しま・・・いえ、村松じょー です。 あ・・・エントリー・ナンバーが・・・
あ・・・えっと ・・・どこに入れたかな・・・? ・・・ あ・・・あった! え〜と ・・・ 5963! 」
「 ・・・ はい、ムラマツジョー 5963番 ・・・はい、承知しましたッ! 」
「 あンのうゥ〜〜 」
「 ああ、採用担当に話、つけたから。 そのエレベータで3階まで上がれ。
そこにまた受付があるから、そこのね〜ちゃんに聞け。 」
「 ・・・あ、 ど〜も〜・・・ 」
ワカモノはぴょこり、とお辞儀をした。 後ろに撫で付けてあった髪が ばさり、と垂れてしまった。
「 いいってコトよ。 ・・・ まあ、頑張りな。 」
「 ど〜も〜・・・・ 」
・・・ 今ドキの若いヤツってのは ど〜も〜 しか言えねえのかい!?
ふん、なかなかイケメンなヤツだな。 ・・・ アッチの風俗バイトなら即採用かもな・・・
ひょこひょこエレベーター・ホールに向かうワカモノを見送ると、警備兵はまた煙草を取り出した。
あ〜あ・・・ こんなトコの警備なんてよ〜 やっちゃらんね〜な・・・
やめちまおうかな・・・ ふうーーーーー
ぼ・・・っと煙草をふかしている警備兵は 彼の後ろを通りすぎた赤い影たちには
とんと気づく様子もなかった。
「 お待たせしました。 」
決して大きくはないが よく透る声がきこえ、小部屋のドアが開いた。
「 ・・・ あ・・・ あのっ! 」
部屋の椅子にもじもじしつつ座っていた茶髪のワカモノは 一瞬本当に飛び上がった。
バタ・ーーン ・・・!
みかけ倒しの軽い椅子は 見事にひっくり返ってしまった。
「 あ! あ・・・す、すみません〜〜 」
ワカモノは大慌てで椅子を起こし・・・ その拍子に髪がばらり、と垂れ下がった。
「 ・・・ あ・・・す、すみません〜〜 」
彼はますます焦りまくり、髪を必死に撫でつけ・・・ やっと顔を上げた。
「 バイトの・・・ 面接にきた し・・・ いえ、むらまつ じょー です! 」
「 ご苦労さま。 どうぞ・・・ おかけになって・・・ ムッシュウ・ムラマツ?
わたくしは ダイアナ。 この島の司祭を務めるものです。 」
「 は・・・ はい・・・−−〜〜〜 !!!! 」
「 あら、 どうかなさいまして? 」
「 ・・・ い、いえ ・・・ べつに その・・・ 」
「 まあ、そんなに緊張なさらないで? ちょっとお話を伺いたいだけですから・・・
えっと ・・・? ムッシュウ・ムラマツ。 」
「 ・・・ あ、は、はい。 」
ワカモノ、いや ムラマツ君は じ〜〜〜〜っと目の前の女性を見つめている。
「 ? あの。 なにか? わたくしの顔になにかついています? 」
「 ?! あ・・・い、いえ・・・ べつに その・・・ 」
「 そう? それなら・・・面接はこれでお終いです。 」
「 え!? あ・・・あンのう〜 ぼく、不採用ですか・・・ あの・・・ 」
「 あら、どうして? 」
「 え・・・で、でも。 なにも話とかしてないし。 それに あの・・・ 」
「 ふふふ・・・ もっと自信をお持ちなさい。 採用します、頑張ってくださいね。 」
「 ・・・ え?? 」
「 あら・・・ そんなに驚くこと、ないでしょう? それじゃこれで・・・ 」
女司祭は立ち上がると テンパっている若者に微笑みかけた。
「 あ! ・・・ ありがとうございます! ・・・て ・・・! 」
彼は慌てて立ち上がると その場で深々と頭を下げた。
ごち。
「 ・・・ってェ! 」
「 ・・・ま。 大丈夫? まあ、本当にそそっかしいヒトねえ・・・ え? 」
ムラマツと名乗る青年は 机に見事に額をぶち当ててしまった。
「 す、すいません ・・・ いて・・・・・ 」
ふぁさ・・・と髪が、後ろになでつけてあった髪が 額から前に垂れる。
「 ・・・ あなた ・・・ だれ。 」
「 ・・・ え? 」
突然、女司祭の顔から笑みが消え ― 彼女はじっと、ひどく真剣な顔で青年を見つめている。
「 ・・・ わたし ・・・ へんだわ? アナタの・・・ その顔。 セピアの髪に半分隠れたソノ顔・・・
ずっと前から知っている・・・みたい。 」
「 ・・・ 髪? 」
「 そう・・・ その髪の間からみえる瞳 ・・・優しくて でも とっても淋しい瞳 ・・・
セピアの瞳 ・・・ ああ、なぜこんなに胸が きゅん・・・っとするのかしら。 」
「 ・・・ この眼を ・・・ 気に入ってくれるのかな。 友達とは違う、色の薄い瞳を。」
「 わからない・・・ どうしてかわからないけれど。 アナタの瞳、セピアの瞳を見ていると
なんだか・・・ 温かい気持ちになってくるの。 」
「 ・・・ きみの髪は・・・ 今もお日様みたいに光っているのに。 きみの瞳の中には
きみの生まれた街の空があるのに。 きみのこころはどこへ行ってしまったんだ? 」
「 なにを ・・・なんのことを言っているの? わたしには少しもわからない・・・ 」
「 ねえ、ぼくを見て。 もう一度、しっかりぼくの目をみて・・・ 」
「 ・・・ アナタの瞳に ・・・ わたしが映っているわ。 ・・・ 前にも、見たことが ・・・ある???
ああ・・・でも! でも ・・・ こんな わたし じゃなかった・・・? 」
「 そうだよ! きみは そんな服じゃなかった。 そんな結い髪じゃなかった・・・
・・・ そんな笑顔じゃなかった・・・! もっと もっと 温かい笑顔だった・・・ 」
「 ・・・ アナタ ・・・ わたし を知っているのね? ・・・あ! な、なにをするの! 」
青年はぱっと髪を払うと 彼女の肩をしっかりと捕えた。 そして青い瞳をじっと見つめ ・・・
「 ・・・ フランソワーズ ・・・ ぼく だよ。 」
「 やめて! ・・・ アナタの言葉は ・・・ その名前は ・・・ わたしをとても不安にするの!
アナタ ・・・ 誰なの! 」
青年の腕を振り解くと、彼女もまたまっすぐにセピアの瞳を見つめた。
「 ぼくかい。 ぼくは 」
ヴィ −−−−− ヴィ −−−− ヴィ −−−−−
突然けたたましい警戒音が鳴り響いた。
「 ?! 何事? 」
女司祭は はっと我にかえると、小部屋のドアを開け放った。
侵入者アリ。 全員 警戒態勢に入れ ! 侵入者アリ!
騒々しい音に混じって館内放送が急を告げている。
「 ! 大変だわ! 閣下を・・・そしてこの美の宮殿を護らなければ。
ああ・・・え〜と・・・ ムッシュウ・ムラマツ? ちょっととりこみ事が起きたので・・・
今日はもうお帰りになって結構です。 結果は追ってお知らせしますから。 それじゃ! 」
彼女は小部屋のワカモノに声をかけると、振り返りもせずに走っていってしまった。
「 ・・・ え〜と。 おい〜〜 ヒトの話は最後までちゃんと聞けよな・・・
ま、いいか。 それじゃ ・・・ 仲間達と連絡を執って ― 始めるかな。 」
― バサ ・・・!
就活スタイルの薄っぺらなジャケットが宙に舞った ・・・ そして。
ファサ −−−−
長いマフラーが靡き、 赤い特殊な服に身を包んだ青年が立ち上がった。
《 ― みんな、 聞こえるな! 》
《 おう! 》
《 ハイな! 》
《 海側は任せてくれ。》
《 ・・・お〜〜 待ちかねたぞ〜〜 ホンモノの石になるかと思ったぜ! 》
《 よし。 戦闘開始! 》
《 了解! 》
「 ダイアナさま〜〜〜 大変ですゥ〜〜 侵入者どもが・・・・ 」
「 大変です! 美術の間 に侵入したモノが〜〜 規則違反です〜〜 」
「 わ〜〜 泥棒だ、火事だ、不審者だ! 警察を呼べ〜〜 」
警備兵たちが右往左往し、女司祭を見ると口々に訴えてきた。
「 皆! 落ち着くのです。 チカラを合わせて、敵を撃退するのです! 」
「 ・・・ し、しかし・・・ ここは休暇用の施設で・・・ 」
「 ええ、NBGの団員は沢山いるはず。 さあ、ヤツらを駆逐しなさい!
わたくしは閣下をお守りして 闘います! 」
― バサ ・・・!
女司祭は裾を引いていたギリシア風の長いローブをかなぐり捨てた。
「 さあ! たった今から。 わたくしは 闘いの女神・ダイアナです! 」
亜麻色の髪をきりりとまとめ、肌も露わに短い薄絹を纏い。
すんなりと伸びた脚にはなめし革のサンダルを履いている。
白い肢体が ・・・ オトコドモの眼前に現れた。
・・・ うは ・・・・
周囲から声にならない・熱い吐息とどよめきが生まれた。
警備兵達は 放心の態で彼らの女ボスに視線をくぎづけにしている。
「 なにをぼ〜っとしているの! いざ、戦闘開始!! 」
闘いの女神は高らかに宣言すると ひゅん・・・! とボウガンから光の矢を放った。
「 さ、みなはん! こっちゃへ。 ワテの仲間が潜水艦を分捕ってますよって・・・
ソレでそれぞれのお国へ帰したげます。 さ・・・ こけんように、気ィつけなはれや。 」
張大人は接待要員に拉致されていた女性達を誘導し始めた。
変身したグレートに上手く唆され 警備兵達が盗まれた美術品の数々を運びだしてゆく。
わ〜わ〜 ぎゃあぎゃあ ・・・ 大騒ぎも次第に収まってきていた。
「 ジョー。 あとは例の親玉と ・・・ <女司祭>サンだ。 」
「 うん ・・・ アルベルト。 多分 あの美術品を展示していたホールだと思う。 」
「 よし。 お前・・・・ 大丈夫か。 」
「 うん。 彼女は多分 ・・・ 強烈な暗示か催眠電波の類でコントロールされているんだ。 」
「 ふん、あの美女たちを同じ手口だろうな。 」
「 ・・・ うん。 どんなコトしても・・・彼女を連れて帰るんだ! ぼくの フランソワーズ!! 」
「 ・・・ よく言った! 出来る限り援護するから。 行こう。 」
「 ああ。 」
004と009は 大理石の回廊を駆け抜け豪華な一室に飛び込んだ。
「 ・・・! 何者! お前達が侵入者ですね! 」
二人の目の前に、 ボウガンを構えたダイアナが立っていた。
「 ああ、そうだ。 アンタ達が分捕っていったお宝は 返してもらったぞ! 」
「 な、なに?? キサマら〜〜 ゼロゼロ・ナンバーどもだな!? 」
「 閣下?? それは・・・? 」
ダイアナの後ろから ずい・・・と髑髏マスクのオトコが現れた。
「 お前は!! 」
「 009! 気をつけろ! 」
「 004! 彼女を ・・・ 引き離すんだ! 」
アルベルトとジョーは油断なく構え じりじりとダイアナに寄ってゆく。
バ −−−− !!!
ダイアナがボウ・ガンを構え ― ジョーに向けた。
「 ・・・く・・! 」
ジョーの肩、すれすれにレーザーが走る。
彼女の狙いは実に的確で、アルベルトもジョーも内心ひやりとしつつ、身をかわしていた。
「 ちょうこまかとよく逃げること。 さあ、堂々と対決したらどうなの! 」
青い瞳が 真正面からジョーを見据える。
ジョー達はギリギリ安全なところしか狙いえない分、部が悪いのだ。
ドドドドド −−−− ズズズズ −−−−−−− !!!!
地響きがし、大理石の床が揺れ始めた。
ピュンマ達が仕掛けた爆弾が炸裂したらしい。
「 いけない! この島が ・・・沈むわ。 閣下! 脱出してください。 ここはわたくしが! 」
「 ダイアナよ! ・・・ お前も一緒にゆくのだ。 」
「 ・・・ 閣下・・・ 」
「 くそ〜〜 !! 離れろ! ぼくのフランソワーズに手を出すな −−−−−! 」
「 おい、ジョー! お前・・・! 」
アルベルトが慌てて止める ・・・・ ヒマもなく、ジョーのスーパーガンが二人を狙った。
バシュ −−−−−−!!
「 危ないッ! 閣下・・・! 」
「 ダイアナ! 」
瞬間 ・・・・ ダイアナの細身な身体が床に突き飛ばされた。
「 ・・・ ウ ・・・・ッ ・・・・ 」
「 ダイアナ! ・・・大丈夫か? 」
髑髏マスクのオトコが自分を庇い飛び出してきた彼女を、跳ね飛ばして守ったのだ。
「 フランソワーズ!!! 」
ジョーは彼女の元に駆け寄り慌てて抱き起こした。
「 ・・・ ジョー ・・・? わたし ・・・どうしたの・・・ 頭が痛い ・・・ なにか・・・?」
ダイアナ ― いや、フランソワーズは頭を抑え軽く呻いている。
「 フランソワーズ!? ぼくが ・・・わかるんだね!? 」
「 ・・・ え ・・・ええ。 ここは ・・・ どこなの。 あら・・・わたし、こんな恰好・・・ 」
「 くそう〜〜〜 視床下部に埋め込んだチップが ・・・ 壊れたな!
うううう〜〜〜 せっかくあのオンナを手にいれることが出来るはずだったのに!
・・・ おぼえてろ !!! 」
髑髏マスクのオトコは身を翻し、部屋の奥に駆け込んでいった。
「 ジョー! アイツが逃げるぞ! 」
ズズズズ −−−−−−− !!
足元の揺れがどんどん激しくなってゆく。
「 ダメだ、 ぼく達も脱出しよう! ここにいては爆発に巻き込まれてしまう! 」
「 そうだな。 おい、フランソワーズは大丈夫か! 」
「 うん、怪我もほとんどしていないし ・・・ ちゃんと <フランソワーズ> にもどったよ。 ね? 」
「 ・・・ ジョー・・・ きゃ・・・ 」
ジョーは腕の中の大切な人に熱いキスを贈った。
「 あのなァ。 個人的なコトは 後でやってくれ。 行くぞ! 」
「 オッケー♪ さらば・・・アフロディーテの島・・・ 」
ジョーは しっかりとフランソワーズを抱き締めると大揺れの回廊を駆け抜けていった。
・・・ある日の 総統の食事風景 ・・・
「 閣下・・・? お好みのモノはいつも最後、と承っていましたが・・・? 」
コック長は困惑の態で おそるおそる尋ねた。
「 ・・・ いや。 私はこれからは気に入りのものを一番最初に ・・・食べるのだ。 いいな。 」
「 ・・・ はは。 なにごとも お気にめすまま・・・! 」
コック長は丁重に頭をさげ、オーダーの変更を告げに厨房へそそくさと戻っていった。
「 くそう・・・ オイシイものを最後にしておいたばっかりに・・・
・・・ダイアナ ・・・ お前を ・・・ 味見し損ねてしまった・・・! 」
チャリン・・・!
ナイフとフォークが力なくテーブルに落ちた。
髑髏マスクを脱いだ、美形青年は憂愁の溜息を吐いたのだった。
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Last updated:
07,21,2009. back / index
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ひと言 **********
あは・・・・ やっと終わりました・・・・
あんまし美形の閣下とフランちゃんの絡みが書けなくて・・・ ごめんなさい〜〜<(_
_)>
この後で、二人は心ゆくまで らぶらぶな時をすごしたでありましょう♪
しかし・・・原作のジョー君ってば あんな恰好の彼女を隣にしていて・・・
ムラムラこなかったのですかね??(^_^;)
かる〜くお読み流しくださいませ。 なにか一言でも頂戴できれば幸せでございます<(_
_)>