『 永遠に ― (3) ― 』
§ 星と
ポッポウ ポッポウ ポッポウ ・・・・
リビングの鳩時計が のんびりと時を告げた。
「 ・・・ あら。 もうこんな時間なの? いっけない、オヤツを出しておかなくちゃ・・・ 」
フランソワーズはアイロン台から顔をあげた。
文字通り山になっている取り込んだ洗濯モノの中から 片っ端からアイロンをかけていた。
主にはジョーの、そして数は少ないが博士のYシャツ、 ちっちゃな丸襟のブラウス多数、
ハンカチこちらも多数 ・・・ あとは自分自身のブラウスだけ ・・・というところまで来ていた。
やれやれ ・・・・ アイロン掛けって ホントに・・・
洗濯は楽になったけど これだけはまだまだ難行よねえ・・・
サイボーグの腕力を駆使しても、あまり楽しい作業ではない。
彼女はとんとん・・・と右肩を叩いた。
「 うん? チビ達は・・・・ ああ お外に遊びに行ったんだったわね・・・ 」
気がつけば リビングだけでなく、家中が しん・・・としていた。
現在、この家では幼稚園に通う元気すぎる双子の姉弟が <主役> である。
であるからして ― 朝から晩まで ( 彼らが幼稚園に行っているほんの僅かな時間を除き )
この家は にぎやかな声と笑い声と泣き声と < おか〜〜さん!>な声に満ち溢れている はずなのだ。
それが ・・・ 今は静寂が支配している。
「 ふう・・・ ああ ウチでもこんなに静かな時間ってあったのねえ・・・ 」
フランソワーズは ほう・・・っと溜息をついた。
「 あら ・・・ 波の音が聞こえるわ。 う〜ん ・・・ いい音・・・・
そうだわ 初めてここに来た夜 ・・・ わたし、波の音が耳について眠れなかったのよねえ・・・・
ふふふ ・・・ 今じゃ信じられないわ ・・・ 」
二児の母は 娘時代の自分に微笑みを送る。
「 ずっと・・・ 一晩中寝返りを打ち続けて ― それでも全然眠れなくて。
とうとう諦めて起き出して ・・・ テラスでぼんやり海を眺めていたっけ・・・
そのうち東の空と海が明るくなってきて ― 日の出が涙でよく見えなかったわ・・・ 」
懐かしい思い出には 勿論ジョーの笑顔も混じっている。
「 そうそう ・・・ そのままテラスで眠ってしまって。
ジョーが心配して起こしに来てくれたのよねえ・・・ 」
どうにも眠れなかった夜が明けた朝。 気がつくと ― ゆらゆら ・・・ 彼の腕の中だった。
「 ・・・・ !? きゃ・・・ は 離して・・!! 」
やっと焦点の合った目に前に セピアの瞳が優しく微笑んでいた。
どき・・・っとして思わずかなり本気でもがいてしまった・・・
「 ごめん ごめん ・・・ なかなか起きてこないから見に来たんだ。
そしたら ベッドにきみはいなくて・・・びっくりして捜したらテラスの隅っこで寝てるんだもの。 」
「 ・・・ あ わ わたし ・・・ 」
「 あ! ごめん、 勝手に部屋に入って・・・ でもあの・・心配だったし・・・ 」
「 ・・・ ううん いいの。 < 家族 > なら当然ですもの。 」
「 ありがと・・・ ああ 日の出でも見ていたのかい。 」
「 ・・・え あ ・・・う ううん・・・ あの 昨夜ね、なんだか眠れなくて。
その ・・・波の音が気になって一晩中 ・・・ 」
「 え。 徹夜しちゃったんだ? 波の音 ・・・そうかあ 気になるかもしれないよねえ・・・ 」
ジョーは 彼女をベッドに降ろすとまたテラスに出て海を眺めている。
フランソワーズは慌ててガウンを羽織った。
「 ・・・ ジョーは ・・・ そんなこと、ないの? 」
「 ぼく? ああ ぼくは海に近いところで育ったから。
きみとは反対に波の音が聞こえないと かえって落ち着かないかも。 」
「 あら ・・・ そうなの。 いいわねえ・・・ 」
「 すぐに慣れるさ。 ・・・あ もしどうしても眠れない時にはさ
遠慮なく起こしてよ。 無駄話相手くらいできる・・・かも・・・一緒にゲームやってもいいし さ。 」
「 まあ ・・・ふふふ・・・ありがとう、ジョー。 」
「 え い いや ・・・ あ そうだ〜 今朝はね、ぼくが朝御飯、作ったから。
ゆっくり降りておいでよ。 」
「 ・・・ ありがとう・・・! 」
いや・・・となにか口の中でむにゃむにゃ言うと 彼は彼女の部屋から出ていった。
「 ― ジョー ・・・・ なんだか可笑しな ・・・ 人・・・ 」
フランソワーズは一人、くすくす笑いだしていた。
「 うふふふ・・・ もしかしたら。 わたしったらあの頃から好きだったかも・・・
ああ〜〜 なんか懐かしいわねえ ・・・ ふふふ 」
娘時代のその思い出は ほんのりと甘酸っぱく ― 過酷な日々の中で輝いていた。
今は ― この平穏な日々に感謝しなくちゃ・・・ そんな思いも湧き上がる。
「 ・・・ あ。 チビ達!! ・・・どこへ行ったのかしら。 まさ・・か ・・・海?
いえ 門からは出られないわ。 じゃ 裏?? まさか・・・! 」
突然 母はとんでもない・現実を思い出した。
― そう・・・! 子供達の声がしない ・・・まだ帰ってないのだ。
ジョーとフランソワーズの子供たち、 すぴかとすばるは今、幼稚園の年中さん。
いつもなら リビングで犬っころみたいにじゃれあっているか ( 仲良く遊んでいても
半ベソでケンカしていても ) 母に纏わりついているか・・・のどちらかなのだが。
「 ちょ・・・ちょっと <見て> みましょう。 ・・・いいわよね、これは非常事態なんですから・・・ 」
フランソワーズは小走りテラスに出ると じっと海辺を <見た>。
「 ・・・・・・・ 異常なし。 ああ ・・・ よかった・・・! 」
003はレーダー・アイのスイッチをオフにして ほっと安堵の息をついた。
「 そ・・・そうよね。 あの子達はご門からは出られないもの。 下の海岸にゆくはずないわ。
でも それじゃ どこへ・・・・・ 裏・・・かしら。 」
冷たい汗が す −−−− っと彼女の背を転がり落ちた。
邸の広い裏庭は 低い柵を越えればそのまま雑木林に入ってゆける。
なんの変哲もない雑木林だが 奥の方には池があるのだ。
「 ! た 大変! あのコたち まさか・・! 」
― ガタン ・・・!
母はキッチンに引き返すと勝手口からつっかけをひっかけて裏庭に飛び出した。
「 すぴか! すばる! ・・・いま 行くわ! 」
なぜか 彼女のアタマの中には幼い我が子たちが池にはまっているとんでもない情景が広がっている。
思い込んだらまっしぐら ― 003の <眼> を使うこともすっかり忘れ
双子の母はエプロン姿のまま走りだした。
すぐに助けに行くから!
ああ〜〜 どうしてわたしにも加速装置が搭載されてないの!?
こんどのメンテで博士にお願いするわ、絶対よ!
えい 面倒! と裏庭の柵を跨いだその時 ―
「 おかあさん おかあさん〜〜〜 みて みて〜〜 」
ちっちゃな姿が仲良く手を繋ぎ 雑木林からとことこ出てきた。
「 !?! す すぴか 〜〜〜!! すばる ッ!! 」
「 おか〜さ〜ん。 ねえ みてみて〜〜 ? きゃい♪ 」
「 みて〜 おかあさん〜 ・・・・? うわ〜い♪」
双子の姉弟は いきなり母に抱き締められびっくりしつつも大喜びだ。
「 ふ ふたりとも! 無事だったのね! 」
「 ぶじ〜 ってなあに。 」
「 ぶじ〜〜ぶじぶじぶじ〜〜♪ 」
二人とも母の腕の中でけらけら笑いだしている。
「 ・・・ あなた達! どこに行ってたの? 勝手にお庭から出ちゃだめ!って言ったでしょう。 」
「 ちょうちょさんがね ひらひら〜〜・・・ってとんでたの。 」
「 つかまえる〜〜って。 それでね それでね ・・・ 」
「 それでね! みて〜〜 これ、いただいた。 」
「 僕も〜〜 いただいた。 」
「 ・・・・・? なあに? 」
子供たちは小さな手にぎっちり握ってきた袋を母に差し出した。
「 いただいた? だれに? どこで? ・・・ これ・・・・ マドレーヌじゃない?! 」
小さな袋には 薔薇の花型をした小さなマドレーヌが 二つづつ入っていた。
「 うん。 まどれ〜む。 お兄さんからいただいたの。 」
「 まどれ〜〜む〜〜 お兄さんのお母さんが おうちでめしあがれって! 」
「 ?? お兄さん? お兄さんのお母さん? 」
「 きれいなおうちがあったの。 ちっちゃな・まどもあぜる ってなあに? 」
「 じょーっておとうさんのことだよね? 僕はじょーじゃないもん。 」
子供たちは母に纏わりつき てんでにしゃべり捲くる。
「 それでね それでね〜〜 おうちでね〜 」
「 おうちでね〜 くり〜むのくっき〜があってね〜 」
「 はいはい ・・・ わかりましたから。 ほら あなた達、お手々を洗っていらっしゃい。
それからオヤツにしましょうね。 今日はミルク・ゼリーがあるわ。
はい、じゃ・・・これはお母さんがお預かりしておくから。 」
「 わあ〜〜い アタシ いっちばん! 」
「 僕も〜〜〜 僕も いちばん〜〜 」
すぴかがまずぱたぱた駆け出し その後をすばるがちょこちょこ追ってゆく。
・・・ ちっちゃなマドモアゼル ・・・?
ま ・・・ まさか ・・・・?
子供たちがちゃんと勝手口に飛び込むのを確かめつつ フランソワーズは手の中の袋を見る。
「 ・・・ これ・・・ 知ってるわ。 薔薇の花形の焼き菓子 ・・・ 今はもう流行ってない型で
そうよ・・・シトロンの香りがして ・・・ 美味しいお茶と一緒に ・・・ 」
― そ そんなことって ・・・? ・・・ ムッシュウ・アラン??
ぞくり、と冷たい悪寒が背筋を這い登る。
晴天の明るい午後なのに 裏の雑木林から ふ・・・と 暗い影が ―
そう、白い霧が忍び寄ってきた 気がした。
「 ・・・ ウソよ! そんな ・・・ この現代に そんな ・・・ 」
こ 子供たちを護らなくちゃ・・・!
フランソワーズは震える脚を抑え ぎくしゃくしつつ家にもどっていった。
「 ・・・マドモアゼル・フランソワーズ。 いや 今はマダム・フランソワーズ だね。
やっと逢えた ね。 」
「 ・・・ なんでもお見通しってこと? 」
「 とんでもない! うふふふ・・・ 偶然チビちゃんたちと会いました。
そう ・・・ 森の中で かつてのちっちゃなマドモアゼル に逢いました。 」
「 !! ・・・ すぴかに なにかしたの!? 」
フランソワーズは全身の血が凍りつく思いだった。
「 すぴか? ほう 星の名ですね、 なんてステキな名前なのだろう・・・
貴女のお嬢さんにはぴったりな名前ですね。 ああ どうしてそんな怖い顔を ・・・ 」
りゅうとしたスーツを着た ・・・ あの人がフランソワーズに微笑みかける。
「 ・・・ あの子達の母ですから。
ムッシュ・アラン。 あの子達になにかしたら・・・ 許しません。 」
フランソワーズは真正面から その青年を見据えた。
あの日、双子の子供たちはご機嫌で帰ってきた。
わいわい二つの可愛いお口が報告してくれたことによると ―
子供たちは蝶々をおいかけて いつの間にか裏庭に柵を越えてしまった。
雑木林には おじいちゃまやお父さんとちょくちょく来ることがあり、二人とも平気だった ・・・
― そして
「 あ〜れ? ちょうちょさん ・・・ どっかいっちゃった・・・ 」
「 うん・・・ちょうちょさ〜ん? あ! すぴか〜 あそこにとんぼさんがいる! 」
「 え! どこどこ〜〜 ? 」
「 あっち! あのおっきな木のとこ! 」
「 わ〜〜〜 とんぼさんだ とんぼさんだ〜〜 すばる、いこ! 」
「 うん! ・・・わ ・・・ まって・・・ 」
― そんな具合に二人はどんどん林の奥に進んでいった。
「 ― あれ? ここ どこ? 」
すぴかのあんよが止まった。 びくん、とすばるも立ち止まる。
「 ・・・ あ れ。 」
「 ここ ・・・ どこ?? おうちのおにわ どっち ・・・ 」
「 ちょうちょさんがいて とんぼさんがいて。 カエルさんのいるとこがあって ・・・ 」
「 ここから みえない ・・・よ? おうちのおにわ・・・ 」
「 ・・・うっく ・・・ すぴか〜〜・・・・ ど うしよ・・・ うっく ・・・ 」
「 すばる! ・・・う・・・ 」
二人はぎっちり手を繋いだまま とうとうそこにぺったり座りこんでしまった。
側には いい匂いのするちっちゃな花がついた茂みがあった。
なんだか急に寒くなってきた。 さっきまでお日さまの光がぼんやり射していたのだけれど、
今は ひんやり冷たい空気がひろがってきた。
「 ・・・ お おかあさ〜〜ん ・・・ お とうさ〜ん ・・・ 」
「 うっく うっく うっく ・・・・うぇ〜〜 」
― ガサリ ・・・!
二人の目のまえの茂みが揺れた!
「「 ・・・ ひ ・・・ッ ! 」」
すぴかとすばるは抱き合って固まっている。
「 おや。 どうしたのかな? 」
知らないお兄さんが出てきて にこにこ・・・双子たちに微笑みかけた。
「 ・・・ あ ・・・・ 」
「 ・・・・ こわい〜〜 」
「 怖くなんかないよ。 ・・・ 道に迷ったのかな? お嬢ちゃんとボク・・・姉弟かい。 」
「 アタシたち ・・・ ふたごなの。 」
「 ふたご? ふうん ・・・ !? お嬢ちゃん・・・きみは ・・・! 」
「 ?? 」
今度は青年の方が すぴかを見つめたまま棒立ちになっている。
「 ・・・まさか・・・! そんなわけ ない・・・・ でも・・・ 」
「 ・・・なあに? 」
「 あ い いや・・・! なんでもないよ、 ちっちゃな・マドモアゼル・・・ 」
「 あのね。 アタシたち、お家にかえりたいの。 お家のおにわ、どっちだかわかる? お兄さん 」
「 おにわ! じてんしゃ、のれるんだ〜 」
「 ・・・ おや。 ボクは ― ジョー君? 」
「 ? ちがうよ〜 ぼく すばる。 」
「 あ ああ そうだよな。 あれから・・・ うん ・・・ そんなはずはない・・・ 」
青年は双子の脇にしゃがみ込み、二人の顔をじっとみつめた。
「 ・・・・あの〜〜 」
「 やあ ごめんごめん。 二人ともお腹 空いてないかな?
お家に帰るまえに ちょっとお茶を飲んでゆかないかい。 」
「 ― おちゃ? ・・・ むぎちゃ? 」
「 ああ 麦茶じゃないよ、 ミルク・ティーなんか好きじゃないのかな。 」
「 みるく・てぃ〜? 大好き! 」
「 僕も大好き! おさとう、い〜〜〜〜〜っぱい入れて〜 」
「 よし、それじゃ一緒においで。 美味しいお菓子もあるよ。 」
「 ・・・ おかし? 」
「 うん。 チョコもあるよ。 さあ おいで ? 」
「 ・・・ う うん・・・ じゃ ちょっと・・・だけ・・・ 」
「 ちょっと だけ・・・ 」
「 よぉし! それじゃ 一緒においで。 こっちだよ。 」
青年は双子の手を引いて ゆっくりと歩きだした。
サンザシの茂みをまわり込むと ― 眼の前にきれいなおうちがあった。
「 ― あ ・・・? ここ・・・ お兄さんのおうち? 」
「 ああ そうだよ。 さあ おいで。 」
「「 う うん ・・・ 」」
二人はお兄さんに手を引かれ そのお家に入っていった。
― カチン ・・・・
フランソワーズは紅茶をかき混ぜ スプーンを置いた。
迷子になった子供たちが 古風な焼き菓子を手に戻ってきた、数日後。
フランソワーズは 港街の古いカフェであの青年と会っていた。
連絡をつけるのは簡単だった。
― 裏の雑木林でみつけたサンザシの茂みに 結び文をしておいた。
果たして <約束> の場所に、時間に、 彼は現れた。
「 ・・・・・・・・ 」
彼女はしずかに顔をあげると 向かい側に座る青年をまっすぐに見つめた。
「 取り乱してしまって・・・失礼しました、ムッシュウ・アラン。 」
「 マドモアゼル・・・いやいや マダム・フランソワーズ。
大切なお子さんのことですから ・・・ナーヴァスになるのは当たり前でしょう。 」
「 ・・・・・・・・ 」
「 ああ そんな眼で見ないでください。 僕はなにもしていませんよ?
あのチビちゃん達を 我が家のお茶タイムにご招待しただけです。 」
青年は微笑んだまま カップを静かに取り上げた。
「 ・・・ 我が家? だってあの子達は・・・ ウチの裏山に迷い込んでいたのよ?
あそこには ・・・ 誰も、いえ 人家はないはず ・・・ 」
「 さあ? 僕は我が家の庭からずっと・・・散歩していたら子供の泣き声をきいたのです。
そう ・・・ サンザシの茂みの向こうでね。
驚いて捜したら ― ちっちゃな・マドモアゼルが いた・・・ 」
「 ― サンザシの茂み、ですって? 」
「 そうですよ。 貴女そっくりのチビちゃん・・・ただし 側にはちっちゃな坊やもいましたが。 」
「 わたしの、わたしとジョーの子供達です。 」
「 ああ やっぱり。 おめでとう、君は・・・幸せになったんだね。 」
「 ・・・ はい。 」
「 僕は ― 君に謝らなければならない。 あの時 ― 君を・・・護れなかった。 」
「 ・・・ え? あの 時・・・? 」
「 そう。 君があの組織に拉致された時。 一番近くにいたのは 僕 だったのに。
あと少しでヤツラの手から 君を奪い返すことができた ・・・ のに ・・・ 」
― カチャン ・・・・
ティー・カップが 音をたててソーサーの上に落ちた。
「 ・・・ ま さか あれは 本当にあなた だったの? アラン ・・・ 」
「 覚えているのか ・・・ いや、あの時に・・・わかったのか。 」
「 ― ずっと 夢だと思っていたわ。 わたしが生身の人間として最後に見たヒト ・・・
それは あなただった・・・ アラン。 そう思いたいたけなんだ、って。 妄想なんだって。 」
「 ・・・フランソワーズ! 」
「 最後に 兄が必死で追いかけてくれた と ・・・ 後から知ったわ。 」
「 ・・・ そうか ・・・ 」
「 でも もう ― そのことで気に病むのはやめてください。
わたしが ・・・ この身体になったのはあなたや兄のせいではありません。 」
彼女は はっきりと言い切り、おだやかに微笑んだ。
先ほどまでのキツく強張った表情は消えていた。
ああ ・・・ これが本当のフランソワーズなんだ ・・・
そうだね、 きみは今 − 幸せなんだもの。
今はアランのほうが 笑みをうかべることができなくなっている。
「 ― きみは、いや きみとジョーは <歳をとらないもの> になったのだね。 」
「 ・・・ そういうことになるわ。 」
「 では あの子供たちは ― 君たちを追い抜いてゆく、のだね? 」
「 ・・・ ええ。 」
彼女の顔から笑みが消えた。 きゅっと唇を噛み − 耐えている。
「 僕たちは― 我々一族は 君達皆をつれてゆく ことができる。
君達は あの子たちといつまでも笑って暮らしてゆける ― いつまでも今の姿のまま、だ。 」
「 ― アラン? ・・・ それって ・・・? 」
カタン ・・・ 静かに彼は立ち上がった。
「 あの子たちも 一緒 に連れてゆこう。 ずっと一緒にいられる。 」
「 ・・・ そ そんなこと ・・・!
アラン ・・・ あなた ・・・いえ あなた方は ・・・ なに? 」
「 ・・・・・・ 」
彼はつ・・・っと手を伸ばし 卓上に飾られた花瓶から薔薇を一本手折った。
「 あの時 ― 君を救えなかったのは 銀の十字架 に阻まれたから。 」
「 ・・・ え? ・・・ あ あれは ・・・ マリーおばあちゃんが くれた・・・ 」
「 そう。 そして ― 」
「 ・・・・ !? 」
彼女の眼の前で 彼が手にした薔薇の花は はらはらと枯れ花びらを散らした ―
「 ・・・・ あ あなたは ・・・ あなた方一族は ・・・ 」
「 ― わが一族は 永遠に時の間に生きる者。 星の時間を生きる者。
よい返事を待っているよ ― ちっちゃな・マドモアゼル ・・・ 」
すい、と彼女の手を持ち上げ口付けをすると 青年は踵を返した。
カラン −−−−−−
カフェのドアが鳴ったとき、 ようやくフランソワーズは我にかえった。
ジョーはずっと黙って細君の話を聞いていた。
子供たちが迷子になった ― その話は先日聞いた。
自分がぼんやりしていたから・・・と泣いて謝る妻を責めることはできなかった。
双子の、それも悪戯ざかりを相手にするのは大変なのだ。
ジョー自身がもっと協力しなければいけいない、と反省の気持ちの方が大きい。
遊びざかりの子供達も一応は叱っておいたが、 きつく怒る気にはなれかった。
ただ もうこれっきりだよ、とクギを指してはおいたけれど。
それで一応 ・・・ 双子の脱走?は終結しはず、だった。
― それが とんでもない続きがあった・・・
「 ・・・ 本当なのよ、見間違いじゃないわ。 」
「 ・・・ うん 疑ってなんかいないよ。 」
「 ねえ ・・・ あなたも覚えていない? あの ・・・ サンザシの茂みの奥にあったコテージ・・・
あなたと初めて出会った・・・ でしょ? 」
「 あれは ・・・ 夢だったのか、と何回も思ってた。
けど。 実際にぼくはきみと巡り合った ― あんな状況であれ ね。 」
「 ・・・ ええ。 それじゃ アランは ・・・ あのコテージの人たちはなんなの? 」
「 彼はきみに教えたのだろう? 」
「 ・・・ でも そんなことって まさか ・・・ 」
「 しかし 現実にあの人は <変わらない>。 ぼくが初めて会った時から。 」
「 ・・・ そう、そうなのよね。 まさかわたし達のように? 」
「 わからない。 きみは覚えているのかい、 その ・・・ あの日、彼が居たことを ・・・ 」
ジョーは辛そうに彼の細君から顔を背けた。
彼にとって 愛する人の痛み・哀しみは彼自身のものより痛手なのだ。
ジョー ・・・ あなた、いつも優しいのね・・・
「 あまりはっきり覚えていないの。 銀の十字架がどうこう・・・は特にね。
でも ・・・ あれは近所のおばあさんが 神様の御加護がありますように、ってくれたのね。
それで ずっと何気なく持っていた・・・と思うわ。 」
「 そうか ― なんにせよ、チビ達の外出には気をつけなくちゃな。
彼が その・・・無理強いをするとは思えないけど ・・・ 」
「 はい、わかったわ。 」
「 きみばかりに押し付けて ごめん。 ぼくもなるべく早く帰宅するよ。 」
「 ありがとう ・・・ ジョー ・・・ 」
夫婦は軽くキスを交わし、 ソファから立ち上がった。
「 ごめんなさい ・・・ お仕事でお疲れなのにぐだぐだ長話して・・・ 」
「 何言ってるんだ。 ぼく達の子供のことじゃないか。 」
「 ・・・ そう よね。 ジョー ・・・ あなたがいてくれて本当に心強いわ。 」
フランソワーズは夫の胸に とん・・・と額をつけた。
「 なあ ― フラン? 」
「 はい? 」
「 ・・・ きみは。 子供達、すぴかとすばるに その ・・・ 永遠を望むかい。 」
夫のかなり躊躇った問いに 妻はすぐに爽やかに応えた。
「 わたしは わたし達の子供たちが人間として生きることを望むわ。 」
「 うん ・・・ うん。 そうだね。 うん ・・・ 」
ジョーはしずかに頷くと フランソワーズの両手をしっかりと握り締めた。
「 うん。 きみはぼくの最高の戦友だ。 」
都心も一雨ごとに季節は進み、 その朝、雨上がりの大気に熱気はもうなかった。
「 ・・・ ふうん ・・・ 今年は秋が早いなあ 」
ジョーは空を見上げて すこしぼんやりと透明な空気を味わっていた。
「 ― お久しぶりね。 ミスタ・ジョー・シマムラ。 」
不意に 背後から鈴の音を転がす声が問いかけてきた。
「 ― ・・・・? 」
「 おぼえていてくださったかしら。 」
「 はい。 そろそろお眼にかかれるかな と思っていました マダム。 」
ジョーはゆっくりと振り向いた。
そこには彼の予想どおりに ― 秋色のドレスに薄いコートを羽織った婦人が いた。
「 まあ 嬉しいわ。 ・・・ 立派になったこと。 あの少年が。 」
「 ちっともお変わりありませんね。 」
ジョーは 差し出された白い手を軽く握った。
「 あら まあ ・・・ お世辞? それでも嬉しいわ。 」
「 ・・・ どこか入りましょう。 こんなところで立ち話などできませんから。 」
「 そう ね。 ― お話のことはもうお判りのようですけど。 」
「 さあ ・・・ ぼくはカンが鈍くて。 いつも妻に呆れられているんです。 」
「 まあ・・・ふふふ どうですかしら。 」
「 すこし歩きますよ。 落ち着いた場所がお好みでしょう? 」
「 あら ・・・ あなたの御案内ならどちらでも。 参りましょう。 」
「 あ ・・・ は はい・・・ 」
ぎくしゃく・・・ジョーはその背の高い婦人をカフェに案内していった。
やっぱりな。 おいでなすった、ってことか。
ジョーは満更でもない気分もしていた。
子供時代の楽しい思い出が少ない彼にとって、この婦人とその家族との邂逅は懐かしさすら
感じる貴重なものだった。
「 すぴかちゃんとすばるくん ですわね? 」
「 え .・・・ ええ。 よくご存知ですね。 」
表通から一本うらに入ったところにある古風なカフェで 二人は静かに向かい会った。
木作りの古風な内装、 低く流れるピアノ・ソロ、 ほどよい暗さにお茶の芳香・・・
ぽつぽつ入っている客も皆静かな時を楽しんでいる。
婦人の白い指が 瀟洒なカップを持ち上げる。
「 聞いていらっしゃるでしょう、奥様から。
わたくし、あなた方のお子さんに会いましたわ。
― 本当に可愛らしい ・・・ <ちっちゃな・マドモアゼル>そっくり・・・ 」
「 あは・・・娘は見た目は妻にそっくりですけどね、中身はどうかなあ〜
アイツ、今からかなりの跳ねっ返りですから。 」
「 ほほほ ・・・・ そうなの? でもとってもお行儀よかったわ。
ちゃんと イタダキマス っていって大人しくお菓子を頂いていたわ。
そして あの坊やも。 あなたそっくりね。 」
「 お世話になりました。 ようく叱っておきましたから。 もう二度と遠征することはないでしょう。 」
ジョーは笑顔のまま きっぱりと言った。
「 あら。 ・・・ あなた、顔に似合わずキツイことを仰るのね。 」
「 そうですか? ぼくは本当のことを言っているだけです。 」
「 本当のこと? 」
― ええ。 ジョーは頷いて姿勢を正した。
「 ぼくは ぼくの子供達を護る。
あの子たちはごく普通に生きて歳を重ねて ・・・ 老いて やがて・・・死んでゆくんだ。 」
「 そんな短い時間でいいの? あなたの子供達は成長し沢山の困難に遭い ―
苦しんだり悩んだりしてゆくのよ。 そして いつか貴方達を追い越してゆく。
もう二度と会えないわ。 生きているのに会えないわね。 」
「 ・・・・・・・・ 」
ジョーは両手を握り締め 視線を落とした。
そう ― 双子たちはいずれ彼らの父・母を追い越す。
永遠に歳をとらないツクリモノの身体を持つ両親を越えて歳をとってゆく・・・
ごく普通の・家族ごっこ をやっていられるのはそう長い年月ではないのだ。
いずれ 子供たちとは別れなければならない ・・・・
それは遠い地平線に微かにみえる黒雲なのだが、確実に的確にこちらへ近づいてくる。
そして いつかかならず ― 。
ジョーは静かに顔をあげた。
「 はい。 ぼくは ぼくとフランソワーズはそれを望んでいます。 」
「 ・・・ 本当にそう思っているの。 ああ 頭痛がしてきたわ。 」
マダム・ポーラルは 額に手を当てている。
「 すみません ・・・ 本気ですよ。 もちろん。 」
「 そう ・・・ 」
小さな吐息とともに 彼女はカップをソーサーに戻した。
「 わかりましたわ。 あなた方はそれでいいでしょう。 でも チビちゃんたちは?
お子さん達はどう思っているかしら。 」
「 ― え ・・・・ 」
「 愛する両親とは いずれ別れなければならない。 それを望んでいるの? 」
「 ・・・ そ それは ― 」
さすがにジョーも 言葉を濁してしまった。
子供たちとの別れ。
勿論、今すぐではない。 まだまだ子育ての大任は始まったばかりだ。 けれど ・・・
「 お父様にもわからないのね。 それじゃ ― 直接聞いてみましょうか。 」
「 ― え? 」
「 さあ いらっしゃい。 」
マダム・ポーラルは明るく微笑んだ。
「 ・・・?? うん? これは ― どういうことだ?? 」
いつの間にか周囲は濃い霧に覆われていた。
「 ちょうどいいわ。 アランに手伝ってもらって ― 皆でお茶をしましょう。 」
ジョーは油断なく周囲を見回したが 009のレーダーにはなにも投影されない。
「 あ ・・ あなた達は ― なんなんだ!? 」
「 ― わたくしたちは 永遠の時を生きるもの・・・時の間 ( はざま )に揺れている魂 ・・・
星とおなじ時を生きるのです。 」
「 永遠の時 だって? ・・・ それじゃ 不死者 ・・・? 」
「 さあ どうかしら。 あなた方だって 不死者 でしょう? 」
「 いえ。 機能停止する日、それがぼく達の終末です。
いつか ・・・ 錆び付いてどこかの草むらに放置され 朽ちてゆきます。 」
「 まあ ・・・ 」
「 それで いいんです。 でも あの子たちはちがう! あの子たちは ― 」
「 あ〜〜 おとうさ〜ん !! 」
「 おとうさ〜〜ん〜〜! 」
ジョーの叫びは可愛い二つの声に 中断され消えてしまった。
眼の前に 彼の子供たちがいた。
「 !? す すぴか! すばる 〜〜 」
「 おとうさ〜ん! あのね あのね〜〜 あそびにきたの。 おか〜さんと〜 」
「 おかあさんと! きたんだ〜 僕たち。 」
「 ええ? お前たちが ― ここに? 」
ジョーは 駆け寄ってとん、とぶつかってきた我が子を両脚にくっつけると辺りを見回した。
「 ― ウソだろ ・・・? 」
そこは あのコテージの庭だった。 蔓薔薇の絡む柵のある、優雅なコテージが眼の前にある。
「 そんな ・・・ ぼくは都心のカフェにいたはずなのに ・・・ 」
「 わたしは裏庭から ・・・よ。 」
「 ?! フランソワーズ! 」
子供たちの後ろから 彼の細君が現れた。 エプロンをし 腕まくりをしたままの姿だ。
「 ジョー。 わたしは子供たちに引っ張られて ― 裏庭の柵を越えてほんのちょっとだけ。
雑木林に入ったら霧が出てきて ・・・ 次にはもう ここにいたの。 」
「 なんだって? 」
「 みなさん ようこそ。 久し振りだな、ジョー君。 」
落ち着いた声が響き 背の高い紳士がテラスに姿を現した。
「 ? ・・・・ あ あなたは ・・・ ムッシュウ・ポーラル! 」
「 ・・・ あの時のムッシュウ! 」
「 おお ・・・ちっちゃな・マドモアゼル、あなたも覚えていてくださったのか。 」
「「 おじちゃま 〜〜 こんにちは。 」」
何も判らないすぴかとすばるは にこにことお行儀よく御挨拶をする。
「 こんにちは、 マドモアゼル・すぴか ムッシュウ・すばる 」
紳士はにこやかに子供達に挨拶を返した。
「 ムッシュウ! あなた方は一体・・・? 」
ジョーは背後に妻子を庇い 油断なく身構える。
「 まあ まあ そんなに怖い顔をなさらないで、ジョーさん。 ねえ あなた? 」
「 うむ ・・・ 私たちは何もしない。 安心しなさい。 」
「 でも! ・・・ あなた方は何なんだ?? 」
紳士は 一同を見回すと静かに語りだした。
「 いつの頃か判らないほどの昔 ― 遠い星からやってきた淋しい魂が共に生きる者を求めた。
そしてやはり淋しい者たちが寄り集まってきて われら一族をなした。
われらは この地に生きるものとは 違う時を生きる ・・・ いつまでも・・・ 」
「 ・・・ 不死者 ・・・?! きゅ ・・・ 吸血鬼 ・・・? 」
「 ふん ・・・ 土俗な言い伝えと結びついて猟奇的な存在に仕立てられてしまったこともある。
しかし それは真実の姿ではない。 」
「 で でも・・・! 銀の十字架が苦手だったり薔薇の花を散らせたり ・・・ 」
「 十字架そのものを恐れるのではない。
我々が忌避するのは <異なるもの> を認めない頑なな心だ。
薔薇は ― わからない。 あの花には・・・嫌われているのかもしれぬ。 」
「 ・・・ とても残念ですけどね。 僕は大好きなのに。 淋しいことだ・・・ 」
アランがぽつり、と口を挟むとテラスに巻き付いている花を一輪摘み取った。
・・・ それはたちまち はらはらと散ってゆく。
「 ・・・ 淋しいことです ・・・ 」
つつつ・・・っと ジョーの小さな娘がアランの側に寄っていった。 弟も後を追う。
「 ? お兄さん さみしいの? 」
「 ・・・ すぴかちゃん 」
「 だ〜いじょうぶ〜〜 こうやって〜 ほっぺ〜きゅう〜ってすればさみしくないよ〜 」
「 きゅう〜〜って。 僕もきゅう〜〜って。 」
「 すばるくん ・・・ 」
「 ね お兄さんも 〜 お兄さんのお母さんもお父さんも〜
すぴかのおうちでオヤツ、たべよう〜 おかあさんのみるく・ぜり〜 おいしいよ。 」
「 うん! いっしょ♪ いっしょがいいなあ〜
僕 おかあさんのみるく・ぜり〜 だあいすき! あの ね お父さんもだ〜い好きなんだよ〜 」
「 あのね〜 おとうさんは おかあさんがだ〜い好きなんだよ〜 ね〜 」
「 ね〜〜 すぴか。 」
「 すぴか ・・・すばる ・・・ 」
アランは膝をついて ちいさな姉弟を抱いた。
「 歳を重ねて束の間恋をして そして働いて働いて老いて朽ちてゆく・・・
そんな味気ない人生をこの頑是無い子供たちに望むのか ? 」
「 ― それを 生きる というの。 」
フランソワーズの 低い声がきっぱりと言い切った。
「 ・・・ 生きる? 」
「 ええ そうよ。 この子たちは留まってはいない、どんどん変わってゆく・・・
大きくなってゆくのよ。 」
「 アタシね! おおきくなったら うちゅうひこうし になるの! 」
「 僕は〜〜 僕は〜〜 けいきやさん! 」
「「 お兄さんは? 」」
色ちがいの二組の瞳が じ・・・・っと見上げている。
― は ・・・・ ! アランは大きく吐息をもらした。
「 ― 見守っているよ。 ずっと ずっと ・・・
きみたちの子供たちを そのまた 子供たちも。 星の光が照らすように 」
アランはゆっくりと子供達の手をその両親の手に握らせた。
「 さあ ・・・ お茶,はお開きです。 さようなら ・・・・ 」
「 アラン ・・・! 」
「 さようなら、なの? ばいば〜〜い お兄さ〜ん まったねぇ〜〜 」
「 ばいば〜〜い まったね〜〜 」
ぶんぶん手を振る子供たち ― その小さな手を引いてジョーとフランソワーズは
コテージを後にした。
ほんの少し歩いてサンザシの茂みを曲がると ― 裏庭の柵が見えた。
「 ― ただいま。 」
ジョーがぽつり、 と言った。
「 ただいま ・・・ ただいま。 わたし達のおうち。 」
「 ただいま〜〜〜 アタシ、お手々あらってくるから〜〜 オヤツ! おかあさん 」
「 僕も! ただいま〜〜〜 おやつ〜〜 」
子供たちは ぱ・・・っと勝手口目指して駆けていった。
「「 ・・・ ただいま ・・・ おかえり 」」
ジョーとフランソワーズは しっかりと手を繋いで我が子たちの後を歩いていった。
今でも時々 ジョーとフランソワーズは裏庭の奥を覗いてみることがある。
夜空に輝く星々をながめつつあの一族の面影を思い浮かべることがある。
みんな しあわせに
二人が願うことは いつもいつもそのこと そのことだけなのだ。
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Last updated
: 09.06.2011. back / index
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ひと言 **********
やっと終わりました。 パート3で突然 しまむらさんち になってしまった・・・
フランちゃん一人称で 続けるのは無理でした〜 <(_ _)>
御大の 『 きりと薔薇とほしと 』 機会がありましたら是非是非♪