『  こっち側  ―  under the rainbow ―  (1)  』

 

 

 

 

 

*********  はじめに  ********

お馴染み 【 島村さんち 】 シリーズ でございます♪

 

 

 

 

 

  カッチャ カッチャ カッチャ ・・・ 今朝も島村すぴか嬢は ランドセルを盛大に鳴らして

駆け足で登校してきた。  小学校の正門前にはわりと大きな道が通っている。

すぴかは一旦 止まって。 ちょっとだけ息を整え〜  す〜〜は〜〜〜 ・・・・ そして。

 

「 おっはよ〜ございますぅ 〜〜〜〜 」

 

彼女は横断歩道を渡りながら 四方八方に元気な挨拶を飛ばしつつ校門をくぐる。

「 お〜 おはよう!  すぴかちゃん  」

「 おはよう 島村さん。  元気だね。 」

「 あ〜〜〜 おはよ〜〜〜 すぴかちゃ〜〜ん 」

「 おはよ すぴかちゃん! 」

交通指導員さんや ( 横断歩道のトコにいる )  副校長先生や ( 校門前で皆を待っている )

    ゆみちゃんや ( クラスの仲良しサン )   りりかちゃんや ( バレエ教室でも一緒 ) 

 み〜〜〜んなにこにこ ・・・ すぴかに挨拶を返してくれる。

毎朝 早い時間に元気に登校してくるすぴかは ちょっとした人気モノなのだ。

「 ふんふんふ〜〜ん♪  ゆみちゃあ〜ん  なわとび、 しよ? 」

「 うん! 今年の記録会でさ〜〜 ハヤブサ記録 つくりたいな〜 」

「 アタシも!  アタシも はやぶさ 、がんばる 〜〜 」

「 ね〜〜♪  運動会もないし、 グランド、いっぱい使えるよ〜 」

「 そだね〜〜♪  運動会は一学期にやったもんね。 」

「 うん。  二学期は学芸会だもん。 」

「 あ! そっか〜  すぴか達四年生は今年、なに やるんだろ〜 」

「 う〜〜ん??? 去年は きがくえんそう ( 器楽演奏 ) だったし〜

 二年の時は ・・・ あ  劇  だったね。 」

「 そ〜だったね〜 去年はアタシ、 りこーだー。 」

「 すぴかもだよ〜  ねえねえ 今年はなんだと思う? 」

「 劇だといいなあ。  私、 オヒメサマ やりたいも〜ん 」

「 ふ〜〜〜〜ん ・・・・ アタシは オヒメサマ はいいや。  なんか面白いこと、したい〜 」

「 なわとび とか! 」

「 え〜〜〜 舞台で発表するんだよ? 」

「 だよね〜〜   ま いっか。 ハヤブサの練習 しよ! 」

「 うん!  アタシねえ、お気に入りの縄跳び 持ってきたんだ。 」

「 早く!  いい場所、とろう。 」

「 うん! 」

二人は大急ぎでランドセルを置きに 教室に駆けていった。

  

 

それから20分くらい後 ―

 

  カッチャ     カッチャ      カッチャ ・・・・

 

の〜んびりランドセルを鳴らし、同じくの〜んびりした足取りで 島村すばる君 が登校してくる。

茶色のクセっ毛が ひょん ひょん 〜〜 と一緒に揺れて楽しそうだ。

「 おはよ〜ございます〜〜〜 」

すばるは 出会うヒト、 み〜〜〜んなに朝のゴアイサツをする。

学校以外のヒトにも する。  いつものことなので 皆 にこにこ ・・・ 全然知らないオジサンや

オバサン、 おに〜さんやらおね〜さん達も 「  おはよう! 」 と言ってくれるのだ。

 

    あ  きたきた・・・・ あの可愛いコ ・・・!

 

    おう またいるな。 元気でいいなあ〜

 

    あは  このチビに会うと 癒されるぜ

 

    きゃ〜〜 か〜〜わい〜〜〜

 

多分 皆 ― すばるとの朝のゴアイサツ を楽しみにしている ・・・っぽかった。

勿論 毎朝彼は同じ日に生まれた < 姉 > と 一緒に岬の家を出る。

「 いってきま〜〜〜す!! 」

二人で一緒に門を出て 二人で一緒にお母さんに手を振る。 おじいちゃまにも手を振る。

( お父さんはまだ ぐ〜ぐ〜寝ていることが多い )

それでもって 家の前の急な坂を下りて国道を渡る ―  までは二人一緒なのだが。

「 アタシ、 先にゆくよ〜  ゆみちゃんとなわとび、する約束だから! 」

「 ん〜〜 わかったあ〜 」

「 じゃね! 」

「 ん〜〜 ばいばい 」

ぱぴゅっ!  ・・・  駆け出したすぴかの亜麻色のお下げが羽みたく後ろに靡いている。

彼女の姿は あっという間に遠ざかってゆく。

「 ふんふんふ〜〜ん ・・・ あ ・・・ そろそろJRがくるな〜 」

踏み切りが近づいてくると すばるはわくわくしてしまう。

通学路で線路に沿って歩くところが少しだけあって 彼のお気に入り地点なのだ。

「 え〜と・・・?  ああ もうすぐ来るな〜    あ。  お〜〜はよ〜〜〜〜 ! 」

すばるは道の反対側にむかって ぶんぶん手を振っている。

「 ・・・ おは  よ〜〜〜〜  しまむらく〜〜〜ん 

反対側からも 声が飛んできて ―  一緒にちょいとクセっ毛の男の子が駆けてきた。

「 は っ  はっ  は ・・・  JR 〜〜 もう行っちゃった? 」

「 まだだよ〜〜  おはよう〜〜 わたなべくん。 」

「 あ〜〜〜 よかったぁ〜〜  僕としまむら君、一緒にJR見るって決めてるもんね〜 」

「 うん。  なあ 運転手さん、 あのめがねのオジサンかなあ? 」

「 う〜〜ん??  そのかくりつは高いな。 」

「 手 ぶんぶん振ろうぜェ〜〜 」

「 うん! 」

  やがて ―  プワァ ン ・・・・・ ローカル線だが一応通勤電車が二人の前を通り過ぎてゆく。

「「 わ〜〜〜〜  おはよ〜〜ございますぅ 〜〜〜〜 」」

すばるとわたなべ君は両手をぶんぶん振った。

運転手さんは ちら ・・・っと二人を見て に・・・っと笑顔で頷いてくれた ・・・と思う。

車掌さんは ぴし・・・!っと合図を返してくれた。

「「 うわ〜〜〜〜〜♪ やったァ〜〜〜 」」

小テツな二人はもう大喜び ・・・ ランドセルを背負ったままわいわい跳びはねていた。

「 やったね〜〜〜 すばる君! 」

「 うん やったね〜〜 だいちクン 〜〜 」

「「  わ〜〜お 〜〜〜 」」

二人はもう豆粒みたくちっちゃくなってしまった電車の後ろ姿をじ〜〜っと見送っていた。

「 ―  あ。 学校 ・・・ 」

「 あ。  ちこくする? 」

「「 やっば〜〜   いくぜ〜〜〜〜 」」

  カッチャ  カッチャ カッチャ  ・・・・ 男の子たちはやっと本気で走り始めた。

 

「 ご〜〜る・・・! 」

「 はァ はァ はァ ・・・ 

「 お早う、 わたなべ君  しまむら君。  ほら急ぎなさい。 もうすぐチャイムだよ。

 二人とも もうちょっと早く登校しようね。 」

「「 あ 副校長先生 〜 おはようございます〜 」」

わたなべ君とすばるは 校門の中に滑り込み ― 子供達を出迎えていた副校長先生に

きちんとゴアイサツをした。

「 はい。  きちんと挨拶ができたね。  ― 教室まで ダッシュ!!! 」

「「 うわあ〜〜 は〜〜〜い 」」

 ぽん、とオシリを叩かれて 二人はきゃわきゃわ言いつつ 教室へと駆けて行った。

 

   そんなわけで。  同じ時間に家をでて一緒にお母さんに手を振っても。

島村さんちの双子の 登校時間はかなり差があるのである。

 

 

 

「「  おはよ〜〜ございます   」」

先生と皆でゴアイサツをして。  がたがた着席すると ・・・

「 はい、 今日はお知らせがあります。  二学期には大きな行事がありますね〜 」

  ―   はい  はい  は 〜〜い   学芸会で〜す  はい 

「 そうです。 はい お口閉じて。  学芸会のお知らせ を今から配ります。

 え〜 今年。 四年生は みゅーじかる をやります。 」

「 え〜〜〜〜〜〜〜   」

全員が なぜか大きな声を出してしまった。  もちろん すぴかも だ。

「 静かに!  朝礼中ですよ?  お口は閉じてお手々はおひざ・・・って 幼稚園生に

 戻りたいのですか、 みんなは! 」

「 ・・・ もどりたくないで〜す 」

「 じゃ 静かに聞く!   はい、 このプリント、配って〜〜 」

「 はあい 」

今日の日直さんが 先生の机までプリントを取りにいった。

「 配れましたか?   え〜と。 みゅ〜じかる は オズの魔法使い です。 」

「 わ〜〜〜〜〜〜〜〜〜 」

「 静かに!  ― 皆 幼稚園に戻りたいですか!? 」

「 もどりたくないです〜〜〜  」

「 同じこと、何回も言わせないでね。  それで 配役 はオーディションできめます。 」

「 ???? お〜 ・・? 」

「 あ・・・ あのね。 皆 それぞれやりたい役にりっこうほしてもらって ・・・

 皆の前で歌を歌ってもらって 決めます。 どの役 やってみたいかな〜って考えておいて。 」

 

    わいわいわい がやがやがや 〜〜〜〜

 

教室はまたしても ハチの巣 か アリの巣 を突いたみたいな状態になった。

「 し〜ずかにっ!  皆 そういうの、知っているでしょう? ドラマとか漫画とかで・・・

 あ あとねえ、大道具 とか 小道具 なんかも皆にやってもらいます。 

 これもやりたいヒトの希望をききますよ〜 」

 

    わいわいわい  がやがやがや 〜〜〜〜

 

「 ・・・・ !  」

先生は もう何を言っても聞こえてないわ・・・と特大の溜息をついていた。

 

 

 

  き〜〜ん こ〜〜ん ・・・   チャイムが鳴って しばらくすると小学生たちが

わらわら・・・昇降口から出てきた。

 

「 すぴかちゃ〜〜ん どうする? 」

「 なにが。 」

「 だ〜から  みゅ〜じかる よ! 」

「 あ〜 ・・・ う〜〜ん ・・・ ゆみちゃんは? 」

「 アタシ?  アタシは〜 ドロシー がやりたいんだけど〜  でもさあ・・・

 二組のアユミちゃん いるじゃん? 」

「 アユミちゃん?  」

「 そ。 あのコ、すご〜く歌 上手だし。  じどうげきだん に入っているんだって。 」

「 じどうげきだん? 」

「 そ。 そこでね〜 歌 とか練習してるんだって。 だからたぶん彼女が どろしーだよ。 」

「 ふ〜〜ん ・・・ じゃあ ゆみちゃん どうするの? 」

「 うん ・・・ < 良い魔女 > もいいかなあ〜 」

「 あ いいじゃん? ゆみちゃんも歌、上手じゃん。 

「 う〜〜〜 でもアユミちゃんには負ける ・・・  すぴかちゃんは ? 」

「 アタシ?  う〜ん ・・・ らいおんさん とか面白そう♪ 」

「 え ・・・ それは男子の役じゃないの? 

「 え〜〜〜別に女子がやってもいいじゃん?  がお〜〜〜♪ 」

「 きゃは〜〜 すぴかちゃん、上手〜〜 あはは あはは 」

「 がお〜〜 がお〜〜 食べちゃぞ〜〜 」

「 きゃはははは 〜〜〜♪ 」

二人はきゃいきゃい騒ぎつつ校庭を横切ってゆく。 

今日は二人とも 習い事のない日なのでの〜んびりおしゃべりしていてもいいのだ。

 

「 あ ・・・ いたいた。  島村さ〜〜ん ちょっと待ってえ〜〜 」

「 ?? あれ。 竹山先生だよ・・・ なんだろ。 」

「 え〜〜〜 なに なに? 」

「 わかんない。  せんせ〜〜〜 なに〜〜〜 」

担任の竹山先生が えっほえっほ・・・一生懸命すぴか達のところまで走ってきた。

「 は ・・・ はっ は ・・・ あ〜 追いついた ・・・  

「 せんせ〜〜 なにかごよう? 」

竹山先生は す〜は〜 す〜は〜〜・・・ 必死で息を整えている。

「 はっ  は ・・・ あ あのね  島村さん。  学芸会のことなんだけど。

 今度の劇 ・・・ 脚本 って やってみない? 」

「 ― きゃくほん ・・・って役ですか? 」

「 ううん。 あのね、 台本を書くひとになってみないかな〜 と思って。 

 二組の上田先生とも相談したんだけどね。 」

「 え???  す すぴか  劇  書いたこと ないで〜す 」

「 劇を書く ・・・ って言うのともちょっと違うのよ。  お話は出来ているでしょ。

 それをね〜 劇に書き換える・・・っていうのかな。 」

「 ・・・ え〜 ・・・ 」

「 あ それとも何かやりたい役があるのかな。 」

「 ・・・ う〜ん それはまだ考え中なんだけど。 」

「 そう? それならね  脚本  も考えてみてくれない?

 島村さん、 作文とか感想文、得意でしょう、きっと出来ると先生思うのね。 」

「 ・・・ う〜ん ? 出来る ・・・かな ・・・ 」

「 ね 考えてみて?   新井さんは どの役がやりたいのかしら。 」

「 竹山先生! あたしね、 良い魔女 ! 」

「 あら〜〜 いいわね。 新井さん、歌が上手だからぴったりね。 頑張れ〜〜 」

「 うわあ〜〜い♪ 

「 じゃあね〜 二人とも気をつけて帰るのよ〜 さようなら。 」

「「 さよ〜なら〜 」」

二人は竹山先生にぶんぶん手を振ると、仲良く校門を出ていった。

 

  「「 きゃ〜〜〜  すぴかちゃん・ゆみちゃん 〜  どうするゥ?  」」

 

 

 

  トン トン トン ・・・   ザー ・・・・   ジュジュジュ  ジュ〜〜〜

 

岬の家の夕方のキッチンは大賑わいだ。

「 それでね〜〜 ねえねえ お母さん〜〜〜 」

「 はい 聞いてますよ、すぴかさん。  ほら気をつけて〜〜 」

「 あ・・・  う  うん ・・・ 」

すぴかはキュウリとトマトをボウルの中で洗っている。

「 さ・・・っと洗うだけでいいのよ。 ゴシゴシしなくていいの。 」

「 う  うん ・・・ さ〜〜〜・・・・  これでいい? 」

「 いいわ。  そっちのザルに上げておいて。 」

「 うん。  ・・・ これ。  切るの? 」

「 そうなんだけど。  すばるが 僕やる〜〜〜って言ってたのよね。 すぴか、やってみる? 

「 う〜〜ん ・・・ アタシ 苦手っぽい〜〜 すばるは? 」

「 まだソロバンから帰ってこないの。 」

今日 すばるは < しんゆう > のわたなべ君とソロバン塾の日なのだ。

もっとも 塾が終ってから二人でまた線路の側での〜〜んびりJRを眺めているに違いない。

「 ふ〜〜ん ・・・ 切るのは すばるにゆずる。  」

「 そう? それじゃこっち。 枝豆も洗って。  ざざざ〜〜〜って。 」

「 うん。   ねえねえ〜〜 お母さんってば。 」

「 はい なあに。 」

「 あのさ〜〜  きゃくほん ってむずかしい?  」

「 ・・・ きゃくほん???? 

「 うん。  劇のかきかえ なんだって。  竹山先生が 」

「 ・・・ ああ 脚本 ね。  普通のお話をね、劇にしてゆくの、セリフ書いて

 劇の場面を考えたりして ・・・ 」

「 セリフ? 」

「 そうよ。  たとえば ・・・ 普通のお話なら  すぴか と すばる はお早うと挨拶した。

 って文章がね、脚本だと  すぴか 「 お〜〜〜っはよ! すばる〜〜  」 

 すばる  「 ・・・ ふぁ〜〜〜 ・・・ お  は よ〜〜 ・・・すぴかァ・・・  」  ってなるの。 」

「 ふ〜〜ん ・・・ あの さあ すぴかに出来るかなあ ・・・ 」

「 え。 すぴかが脚本、書くの?  」

「 やってみない〜〜って。  学芸会の劇 」

「 学芸会?  ・・・ ああ 今年は四年生は劇をやるの? 」

「 うん。  『 オズの魔法使い 』。  それでね〜 竹山先生がさ〜 やってみない?って。 」

「 まあ〜〜〜〜 すごいじゃない? すぴかさん〜〜 先生がそうおっしゃったの? 」

「 ウン 」

すぴかはなんてこともない顔で ぷちぷち枝豆を枝から千切っている。

「 まあ〜〜〜 先生から? すごいわあ〜〜 さすがすぴかさんね!

 そうよねえ・・・ すぴかはちっちゃい頃から文章書くの、好きですものねえ〜〜 」

「 ウン 」

作文やら感想文は すぴかにしてみれば アタマに浮かんだことを字にしているだけ・・・なので 

お母さんが感動するほど < すごい > とは思っていない。

 

    う〜〜ん ・・・ アタシにできるかなあ〜〜

 

そのことがイチバンの問題なのだ。

 

「 ただいま〜〜〜  おっなかす〜いた♪ ぺっこぺこだあ〜〜 きょ〜うのばんごはん、

 な〜にっかなァ〜〜〜♪ な〜〜にっかなあ〜〜〜♪ 」

 

バタン・・・っと玄関のドアが閉ると すばるのご機嫌チャンな歌声が聞こえてきた。

「 あ〜〜 やっと帰ってきた!  すばる〜〜 お帰り。 」

「 あは ・・・ また歌ってるよ〜 すばるのデタラメ・ソング 」

「 ふふふ ・・・ すばるってなんでも歌にしちゃうのね。 音楽、好きだものね。 」

「 ウン。  リコーダーとかもけっこう上手だよ。 わたなべ君と一緒でさあ 」

「 あの二人はいっつも一緒だものね。  すばる〜〜〜 手、洗って! 」

「 ふぁ〜〜い りょうか〜〜〜い〜〜♪ りょ りょ りょ〜〜〜か〜〜い〜〜〜〜♪ 」

ボーイ・ソプラノが きんきん響く。

「 うるさいよっ すばる ! 」

「 おっなかがす〜いたァ〜〜♪ オヤツ おやつ おやつゥ〜〜〜♪ 

歌声はバスルームに寄って どたどた・・・キッチンに到着した。

「 たっだいまァ〜〜〜  オヤツ、 お母さん。 」

「 はい お帰り。  ちょっと待ってね、今 ミルク・ティー つくるから。 」

「 ウン♪  み〜〜るく みるく みるく・てぃ〜〜〜♪ 」

「 すばる。  これ ・・・ アンタのしごと。  切るんだって。 」

すぴかはトマトとキュウリの入ったザルを ずい・・・っと弟の前に置いた。

「 あ〜〜 おっけ〜〜  こぐちぎり かな〜〜 」

「 しらない。 」

「 はい すばる。  オヤツ。 」

お母さんがトレイにミルク・ティのマグカップとオヤツのお皿を乗せてきた。

「 うわい♪ 」

「 ねえ すばるは学芸会の劇で 何をやりたいの。 」

「 ・・・・ ( むぐむぐむぐ )  あ?  〜〜 げき ?  あ 僕はね〜小道具係!

 わたなべ君と一緒にさ〜 いろんなモノ、作るんだ〜〜 あ 大道具係でもいいや。 」

「 ふうん すばるはスタッフがいいの?  ねえ キャストは? 」

「 きゃすと ? 」

「 そう。 劇に出るヒトのことよ。 」

「 劇 じゃなくて みゅ〜じかる なんだよ お母さん。 」

「 あ ・・・ そうだったわね。  ねえ ミュージカルならすばるも ・・・ どう?

 だって お歌 好きでしょ?  音楽も 5 だし。 」

「 う〜〜〜ん ・・・ 僕 ・・・ お芝居できないもん。 すたっふ がいい! 」

・・・さすがジョーの息子、というか。 やっぱりジョーの子、というか。 

彼はどうやら裏方で活躍したいらしい。

「 そうなの〜? お歌、上手だから ・・・ 『 オズの魔法使い 』 なら ライオンさん とか

 やってみたらどう?   お話、DVD借りてきてみたことがあるでしょう? 

「 う〜ん  いい。 僕 いろんなもの 作る!  ぶたいはいけい っていうんだって。

 いつかね〜 グレート伯父さんが教えてくれたよ? お城 とか 作ったりもするんだって。 」

「 ああ そうねえ グレート伯父さんなら詳しいわね。 」

「 でしょ。  僕はァ〜〜 わたなべ君と小道具 か 大道具係にりっこうほする! 」

「 そうか ・・・ そうねえ・・・ そういえばジョーも  ぼくは芝居は出来ないよ ・・・なんて

 言ってたっけ ・・・ 」

「 ねえ お母さん 」

「 なあに すぴかさん。 」

「 きゃくほん のことだけど。  グレート伯父さんに聞いてみても いい? 」

「 ええ ええ 勿論よ。 グレートは本職だもの。  あ その前にお父さんに聞いて?

 すぴかさんのお父さんは 編集部のお仕事をしているんだもの、詳しいわよ。

「 ・・・ え〜〜〜 でもさ お父さんのトコで作ってるご本ってさ〜 雑誌とかじゃん?

 車とかキレイな写真、いっぱいだけど ―  劇 はのってないよ? 」

「 ァ ・・・ それはそうだけど ・・・ うん でもね、ほら ・・・ 文章を書くってことは同じでしょ。

 お父さんにも相談してみてよ。 」

「 あ〜 ・・・ うん ・・・ ちょっとだけ ね。 」

「 お母さん!  このきゅうり こぐちぎり?? 」

オヤツを食べ終えた息子が にこにこ・・・包丁とキュウリを持っていた。

「 あ〜 あのねえ 今日はね  ジャバラ切り っていうの、やって。 」

「 じゃばら??  どうやるの〜〜 」

「 あのね ・・・ まず 」

すばるはお母さんのそばにぴた!っと密着取材している。

「 ・・・ ふ〜〜ん   ・・・ だ 」

ぷちん ぷちん  ぷちん ・・・ すぴかは枝豆を軸からすっかり切り取り終った。

 

    きゃくほん ・・・ って。  おもしろいかも・・・

    すぴかがセリフ 作っていいんだよねえ

 

『 オズの魔法使い 』 のお話は知っていた。  ご本でも読んだし、 DVDをお父さんが

借りてきて一緒に見たことも ある。

冒険モノ・・・みたいで結構おもしろいな〜 と思った。

 ― ドロシー。 たしかそんな名前の可愛いオンナノコが主人公だったっけ。

 

    う〜〜〜ん  ・・・ ウチのお母さんがやったらぴったし! だよねえ・・・

    お母さんさ、よくお歌うたってるし〜 ダンスはば〜っちりじゃん? 

    それにお母さん ・・・ カワイイし。

 

「 すぴかさん〜〜  枝豆、洗ったらザルに入れておいてね。 」

「 はあい〜〜〜〜 」

お母さんはガス台の前にいるし すばるは  きゅうりの裁断 に熱中している。

「 ・・・っと。  これでおっけ〜 かな ・・・ おか〜さ〜ん  今晩 なあにィ〜〜 」

「 チキンとお野菜の中華風。  あ トマト味のほうが好きかしら? 」

「 ううん〜〜 アタシ、 中華味がいい〜〜♪ わい♪   アタシ、お皿を並べおくね。 」

「 はい ありがとう〜〜  すばる君 ? 切れた? 」

「 ・・・ も  もうちょっと ぉ ・・・ 」

すばるは 包丁と一緒にキュウリ相手に奮戦をしている。

すぴかは 家族のお箸やらすぷーんを出してテーブルの上に並べた。

「 ・・・  お箸 「 いいにおいがしますな、 楽しみですね。  」  スプーン 「 へ?

 別になんにも楽しみじゃないですが 」  お箸 「 まあ そんなこと仰らずに・・・ 

 チビさん達の美味しい笑顔がみられればそれでいいじゃないですか 」

 スプーン 「 ワタシの笑顔 はどうしてくれるんです? 」  ・・・ なあ〜んて♪ 」

「 お? 『 お箸とスプーン物語 』 は もうお終いかい? 』

すぴかの頭上から いきなり声が降ってきた。

「 わ! ?   ・・・ あ〜〜〜 お父さん 〜〜〜〜 おかえりなさ〜い♪ 」

見上げた先には お父さんの笑顔がすぴかを見詰めていた。

「 わ〜〜〜 お父さん〜〜 どうしたのぉ〜〜 

「 え〜 どうもしないよ。 お仕事が終ったから帰ってきただけなんだけどなあ〜 」

「 え〜〜 だって断然 早いじゃん?  まだ晩御飯 できてないよ〜 」

「 いいよ。 一緒に作ろうかな。  なあ それよりもさ、すぴか。

 さっきの劇の続きは?  お父さんにも聞かせてくれないかな。 」

「 ・・・  お箸さんは 長い旅にでました。  お終い     でお終いなの。 」

「 え ・・・ そ そうなんだ?  」

「 うん そう。 ねえねえ それよりかさ〜〜 お父さん あのねえ〜 」

「 うん? なんだい すぴか姫 」

「 アタシ〜〜 姫 じゃなも〜〜ん  ねえねえ お父さんってば あのさあ 」

  ― パタン。   キッチンのドアが開いて ・・・・ タタタタタ ・・・ お母さんが駆けてきた。

「 ジョー 〜〜〜 お帰りなさい〜〜♪ 」

「 フラン♪ ただ今ァ〜〜〜 」

 

      んんん 〜〜〜〜〜〜〜♪♪♪  

 

すぴかのお父さんとお母さんはしっかり抱き合ってちゅ〜〜〜〜・・・している。

「 ・・・・ふ〜ん  だ ・・・ 」

すぴかは溜息をついて キッチンに戻ろうとした。

この光景は物心ついたときから、 いや 生まれたその日から ず〜〜〜〜っと見ているので

慣れっこであるし  < そういうもの > だと思っている。

「 おか〜さ〜ん ・・・ あ〜 お忙し中 かあ 」

キッチンのドアから すばるがひょい、と顔をだしたが 両親の様子をみるとそのまま引っ込んだ。

邪魔しちゃいけない ってこともよ〜〜くわかっている。

「 すばる〜〜 きゅうり 切れたァ? 」

「 あ すぴか。  うん! みてみて 〜〜 ほら。 」

すばるは得意気に サラダ・ボウルの中身をみせた。

「 ・・・ふ〜〜ん ・・・ なに味? 」

「 レモン・ハーブ・ドレッシング だってさ。  もう混ぜてあるよ。 」

「 味見。 」

「 ・・・ あ〜 

すぴかがぱくん と開けた口の中にすばるはキュウリを一切、放り込んだ。

「 ・・・ むぐ むぐ むぐ ・・・ ん〜〜 まあまあ かな。  すばるも食べれば。 」

「 僕 いい。   僕 作るの専門 だから。 」

「 へ〜〜 ? ただの やさいキライ じゃないのぉ〜〜 」

「 ち ちがわい! 」

「 じゃ〜 食べてみればあ?  それが作ったヒトのせきにんでしょ! 」

「 ・・・ 僕 お手伝いだけだもん。 」

「 え〜〜 でも切ってまぜたの、すばるじゃん。 」

「 ・・・ 味付け 作ったの、お母さんだもん。 」

「 でもさ〜〜 」

姉弟が日常的?口げんかをしている一方 ・・・ リビングではまだお熱い時間が継続している。

 

「 うふん♪  今日は早いのねえ〜〜 嬉しいわ♪ 」

「 うん ・・・ 取材から直帰していいって言われたから。  もう 加速装置 さ。 」

「 うふふ ・・・ だからこんなに熱いのね♪ 」

「 そりゃ 奥さん、きみのことです  ん〜〜〜〜 」

「 きゃ♪ ん〜〜〜 」

オマケのキスまでして二人はやっと離れた。

「 あ さっきね、 すぴかが一人芝居しててさ。 」

「 一人芝居? 」

「 うん。 お箸 と スプーン になってセリフ言ってるんだ。 」

「 セリフ?  ・・・ あ〜〜 そっか ! 」

「 ??? なに なに? 」

「 あのね 実はね。  あのコ ・・・ 

フランソワーズは 学芸会の一件をジョーに解説した。

「 『 オズの魔法使い 』 ?  ああ ああ アレかあ ・・・ ブリキマン とか らいおん とか

 ヘンなのがいっぱい出てくるやつだろ。 」

「 ヘンなの、じゃなくて。 ほら あの歌よ  somewhere over the rainbow〜〜♪ 」

フランソワーズは有名な曲の一節を口ずさんだ。

「 うん うん 思い出したよ。 フラン〜〜 相変わらずいい声だね♪   ちゅ♪ 」

「 やん・・・ もう〜〜♪   で ね。 あなたのお嬢さんは脚本家としてのオファーが

 きたのでした♪  それもねえ 担任の先生からよ? 」

「  へえ 〜〜 脚本?  アイツ、すごいあ〜〜 うふふ さすがぼくのムスメ♪ 」

「 で  ね。  息子さんの方はね 『 僕 おしばいはできないも〜ん 』  ですって。 」

「 ・・・ う ・・・ ああ 間違いなくぼくのムスコだ・・・ 」

「 うふふ ・・・ でしょ でしょ♪ わたし もう可笑しくて〜〜 すばるったらジョーそっくり♪ 」

「 ふ ふん!  まあな〜 父親としては。 ムスメには主役で舞台の中央に華麗に踊り

 歌い演技〜〜 してほしいんだけど。  」

「 う〜〜ん  でもねえ すぴかにはそういうのは 向いてないかもね。 

 歌とかダンスは好きだけど ・・・ ただ <好き> ってだけだし。 」

「 専門家の見地からの発言ですな。 」

「 はい。  すぴかは脚本 とか 演出 とか ― そんなのが向いてるかもね。 」

「 なるほど。  編集人としては ムスメの脚本家デヴュウ大歓迎だ。 」

「 ね? あとでちょこっと ・・・ アドバイスしてやってよ? 

 一応 ジョーだって モノ書き の世界の一員でしょう。 」

「 ・・・一応  かよ。 まあ いいけど ・・・ でもな〜 ぼくはあまり口を出さない方がいいと思う。

 すぴかはすぴかの感性で 書いてゆけばいいんだ。 」

「 そうね ・・・ すばるはグレートにいろいろ聞いてみるって。 あ すばるはねえ

 しんゆう君と 大道具・小道具係志願ですって。 」

「 あ いいじゃないか〜〜 アイツら クリエイティブなこと、好きだろ? 」

 

    アレを  < クリエイティブ > というの??

    単なる ガラクタの寄せ集め じゃない??

 

フランソワーズは内心 激しく否定したが ― 良妻賢母はにっこり笑って ・・・

「 そうね、 楽しみね。 」  と言った。

 

「 おか〜〜〜さ〜〜〜ん!!!   お野菜 全部切ったよ〜〜〜 」

「 さらだ用〜〜〜 完了〜〜〜 」

キッチンから混声二部合唱 が響いてきた。

「 あ ・・・ いっけない  は〜〜い 今行くわよ! 

「 お。 ぼくの手伝うよ。  ・・・ しかしなあ 主役のドロシーに挑む! って言ってほしい・・・

 気もするなあ。  うん すばるだってイケそうだぞ? 」

「 え ・・・ だってドロシーは女の子よ? 」

「 そうだけど〜 アイツ まだ ボーイ・ソプラノでぴいぴい言ってるからさあ 」

「 残念ですが〜 あのコには人前で演技したり踊ったり・・は ちょっと無理かも 」

「 けどさ!  ほら アイツにバレエ教えてもらって喜んでいたじゃないか〜 」

「 それはね タクヤとすばるは < 仲良し > だから なの。

 ウマが合う・・・っていうのでしょ ?  タクヤのこと、尊敬してるみたい・・・ 

 でもね〜  すばるはキャストよりスタッフの方が性に合っているのよ きっと。 」

「 ふうん ・・・ ま 本人がやりたい!ってことにチャレンジするのがイチバンだけど さ。 」

「 でしょ?  うふふ・・・ すぴかがどんな脚本を書くか  すばる達がどんなモノを作るのか

 楽しみだわあ〜〜 」

「 まあ な。  お それじゃ明日にでもまた 『 オズ 〜 』 のDVD,借りてきてやろ。 

 多分 粗筋とかは先生が書いてくれるんだろうけどさ。 」

「 そうね、  すぴかってばどんな風に脚色するのかしら〜〜 」

「 おか〜〜〜さんッ !!! 

「 おかさ〜〜〜〜ん  さらだ 完了 だよ〜〜 」

キッチンから きんきん声が二種類飛んできた。

「 あは ・・・ どっちもよく透る声だねえ〜 」

「 声量だけは文句なく合格、よね。  はあ〜い   今 行くわよ〜〜 」

フランソワーズは身軽にキッチンへ 駆けて行った。

「 ・・・ 声量は母親ゆずり だと思うなあ〜 」

 

 

 

  ワイワイワイ 〜〜〜   ガヤガヤガヤ ・・・  

 

四年生は全員体育館に集まっている。

そう、 今日は学芸会でやる劇 『 オズの魔法使い 』 の 役を決める日 ・・・

オーディションの日 なのだ。

立候補したヒトが 皆の前で順番に歌を歌ったり短いダンスをしたりしている。

主役のドロシーにはもう満場一致に近い感じで アユミちゃんにきまった。

「 やっぱね〜〜 アユミちゃん 上手だもんね〜  」

「 アユミちゃんね、 児童劇団 に入ってて・・・ 歌もピアノのダンスも習ってるんだって。 

 将来は みゅーじかる・スターになりたいんだって 」

「 ふ〜〜〜ん 」

すぴかはゆみちゃんとヒソヒソ・・・ナイショ話をしている。

 

「  はいっ  静かにっ!   では次は〜〜 」

 

舞台には竹山先生と上田先生がいて あと音楽担当の宮川先生もいて オーディションを

進めて行った。

わいわい騒いでいる子が多かったけど、主役以外もどんどん決まっていった。

「 わ〜〜 ゆみちゃん やったァ〜〜 」

「 えへへへ・・・ あたし〜 頑張る〜〜 」

ゆみちゃんは無事に < 良い魔女 > に決まり、他のブリキ男 とか らいおんさん

 とかも歌の上手な男の子やノリノリで演技ができる男の子がやることになった。

「 すぴかちゃん!  頑張ってね〜〜 」

「 うん。 アタシ ・・・ やる。 」

オーデイションの後、 すぴかは こっくり・・・頷いた。

 ・・・ そう。 島村すぴかさんは ―

 

竹山先生に聞かれた後でお父さんに もう一回 『 オズの魔法使い 』 のDVDを

借りて来てもらった。   じ〜〜っくり見た。

すばるが町の図書館から 『 オズの魔法使い 』 を借りてきた。

先に読ませて〜〜 って頼んだ。  すぴかは熱心に読んだ。

前に一回読んでたけど、 アニメ絵本だったし。 今度は字ばっかりの本を一字一句 

しっかり追って読んだ。  そして − 

 

  ―  パタン。   すぴかはゆっくり本を閉じる。

 

「 やる。  アタシ ・・・ やるよ〜〜〜! 」    と宣言をした。

 

その結果 学芸会での4年生の作品は みゅ〜じかる  『 オズの魔法使い 』

 

演出           宮崎 俊

脚本 ・ 演出補助  島村すぴか

舞台設定 ・ 美術  渡辺 大地  ・  島村すばる

照明・音響効果    羽田 健   

 

  というスタッフが決まったのだ。

宮崎君は一組の学級委員さんでなかなか頼もしい男子だ。 羽田君はピアノがすご〜〜〜く

上手だ。 将来は < げいだい > に行ってピアニストになりたいそうだ。

 

 

「 ほう〜  それはすごいなあ   ちっちゃなマドモアゼル〜    

グレート伯父さんは つるり と自分の禿頭をなで 大きくお辞儀をした。

週末に美味しいお土産と一緒に訪ねてきてくれた伯父さんに すぴかは早速報告した。

   脚本家デビュウ〜  おめでとう!    」

「  きゃ〜〜  グレート伯父さん〜    ありがと♪ でもね これから書くんだ すぴか。 」

「 ね! 僕はね〜  わたなべ君 とね〜  ぶたいせってい係  なんだ〜   」

「   おぉ〜  すばるは舞台美術担当かい ? 」

「 ・・・  え〜とぉ   大道具  小道具  背景 全部たんとう! なんだって。 」

「   うひゃあ〜 それはすごいじゃないか! 」

「   えへへへ〜  僕たち 張り切ってるんだ〜  とんかち とか のこぎり とか 使うんだよ!

  そうかい そりゃあすごいな。    それで出し物はなになのかな?   」

「  だしもの?  

「  演目さ   劇のタイトル   

「  あ〜  あのね!   『  オズの魔法使い 』 !  」 

 おお  いいなあ〜    」

グレートは すっとポーズをとると 有名な主題歌を歌い始めた。

「 あ〜〜 そう!  その歌でねえ ドロシー のオーデイション、やったんだよ。」

「 〜〜〜♪  ・・・っと。  ほう〜 それは本格的だなあ。  」

「 でしょ。  クラスでいっとう歌が上手なアユミちゃんが ドロシー になったんだ。 」

「 ふんふん 」

「 それでね。 グレート伯父さん。 」

「 ほい? 」

「 伯父さんは ほんしょく だってお母さんが言ってたから ・・・ 

 どうやったら上手に きゃくほん 書けるのか 教えてください。 」

「 僕も!  上手に大道具とかつくるのはどうしたらいいのですか。 」

「 ふ〜〜〜ん ふんふんふ〜ん 」

グレート伯父さんは 双子をちろり、と見てまた歌を歌い始めた。

「 ??? 」

「 そ〜れは  我輩が教えることじゃあないなあ 」

「 え。 どうして。  グレート伯父さんはやくしゃさんできゃくほんかでえんしゅつか だ・・・って

 お父さんも言ってたもん。 

「 ふんふんふ〜〜ん♪  それはそれは ・・・

 だけど プチ・マドモアゼル?  リトル・ボーイ?  脚本を書くのも大道具をつくるのも

 そなた達だろうが。 」

「 え ・・・ そうだけど ・・・・ 」

「 我輩が担当するのじゃあないぞ。  

 それにな、 我輩が いい! と思ったコトとそなた達が いい! と 思うことは  

 同じじゃないかもしれない。  」

「 ・・・・ そうかなあ ・・・ 」

「 そうさ。  では 魔法の呪文をひとつ、教えて進ぜよう。 」

「 わ♪ なになになに〜〜〜 」

「 なになに〜〜〜♪ 」

「 こんなの やってみたい!   って思って脚本を書いてごらん。 大道具つくってみよう。

 きっと う〜〜〜んと楽しいぞ。 」

「「 ・・・ こんなの やってみたい  ??  」」

「 そうさ。   まさしく  夢の実現 だ♪  虹の彼方に行けるかもしれんぞ。 」

「 そうかなあ 〜  」

「 そうさ。 そのことは 俳優であり脚本家であり演出家でもあるこの我輩が保証するぞ。 」

「 う〜ん ・・・わかった。 アタシ ― 書く! 」

「 僕〜〜 作るんだ〜  まじょのすみか とか ♪ 」

「 おう〜〜 頑張れよ〜〜 我輩と共にいざ 虹の彼方へ〜〜

 somewhere over the rainbow〜〜〜〜〜 ♪  」

グレートはご機嫌でまた歌い始めた。

「 な〜るほど ねえ ・・・    こんなの やってみたい  かあ 」

「 ジョー ・・・ なにを感心しているの。 」

「 あ いや   グレートってすごいポジティブ・シンキングなんだな〜 ってさ。 」

「 ???   ともかく子供たちにいいアドバイスをしてくれたみたいね。 」

「 多分  ね。 」

ジョーとフランソワーズは くすくす笑いつつ子供達と老優を眺めていた。

 

「 ねえ? ジョーの息子さんと娘さんはなかなか芸術的なのね。 」

「 あは ・・・ なにせ 母親はバレリーナで 伯父さんには演劇人やらピアニストがいますから。 」

「 あらあ〜 お父さんには似なかったのかしら? 」

「 ・・・ う ・・・ 芸術方面では似てほしくない・・・  

 が! 文筆家としては! おおいに父親の血を引いてほしい! と願いますな。 」

「 うふふふ・・・ ねえ 今年の学芸会には伯父さん方をご招待しなくちゃね? 」

「 あはは そうだねえ 」

「 さあ  お茶にしましょう。  グレートがとっておきの紅茶を持ってきてくれたの。

 あとね、クロステッド・クリームも♪ ですから。 腕にヨリをかけて スコーン を焼きました。 」

「 うほ♪  お〜〜い お前たち、 オヤツだってさあ〜 」

「「 きゃい〜〜〜〜 」」

「 グレート伯父さんの紅茶と お母さんの特製スコーンだって 」

「 ほっほっほ〜〜〜〜 」

「 さあ あなた達、 おじいちゃまをお呼びして?  」

「 はあい〜〜 」

「 じゃあ ぼくはティー セットを出すよ。 

「 マドモアゼル 〜〜 特製スコーン とな? 」

「 ええ。  クロステッド・クリーム に 自家製イチゴジャム と マーマレードつき♪ 」

「 うわお〜〜 」

「 すこ〜〜ん♪ すこ すこ すこ〜〜ん♪ イチゴじゃむ〜〜にくり〜む♪ 」

すばるのでたらめソングが 一層高声で響きだした。

 

 

 

 コショ コショ コショ ・・・ 最近すぴかはヒマさえあればなにか書いている。

リビングのテーブルに ノートを広げて熱心に書いている。

学芸会の脚本は 先生がお話を場面ごとに短く区切ってくれて、 すぴかはその場面の

セリフを書く ・・・という形なのだが 小学生には結構大変なのだろう。

「 う〜〜ん   こっちへゆきましょう?  なんて皆言うかなあ〜〜 

 アタシなら    さ  いこ!   だけだもんなあ・・・ 」

「 すぴかさん? どう ・・・ 進んでいる? 

「 あ〜〜 お母さん〜〜 お帰り!  今日はお稽古、早かったんだね〜 」

「 一つ、早い電車に乗れたから・・・ ほらあ〜 すぴかの好きな そうかせんべい よ。

 途中のターミナル駅で物産展 やってたの。 」

「 うわい♪ ありがと〜〜 お母さん♪ 」

すぴかは お煎餅だのポテチだの、ビーフ・ジャーキーだのが好きなのだ。

「 すばるにはチョコ饅頭なの。 すぴかさんも食べる? 」

「 いらない。 」

「 ・・・だわね。  ねえ〜〜 脚本家さん、お仕事はいかが? 」

「 う〜ん  書いた。  竹山先生は よくかけました って言ったんだけどさ〜 」

「 だけどさ? 」

「 うん。  すぴか ・・・  < こんなの やってみたい > って思わないんだ。

 先生は いい って言ったけど。  」

「 ??? どういうこと?  

「 ねえ お母さん。  書き直してもいい と思う? 」

「 さ さあ ・・・ でも間に合うの? 

「 それはだいじょうぶ。 

「 それなら ・・・ やってみたら? それで両方竹山先生に見せてみるのよ。 」

「 あ♪ そっか〜〜 お母さんってば アッタマ いい〜〜〜♪ 」

「 はい、すぴかさんのお母さんですから。 」

「 じゃ〜〜〜ん ♪ それじゃ もういっかい〜〜 ! 」

 

  ― バリン ッ !!  

 

固い草加煎餅を盛大に齧ると 島村すぴか嬢は猛然と鉛筆を走らせ始めた。

 

 

 

 

Last updated : 09,17,2013.                  index     /     next

 

 

*************  途中ですが

え〜 ・・・ またしても全然 009 じゃないですが・・・

果たしてどんな   みゅ〜じかる  になるのでしょうね?