『 つばさ ください ― (1) ― 』

 

 

 

 

 

   ジ −−−−−−− ・・・・

 

リビングから 小さいけれどずっと連続した音が聞こえてくる。

 

「 ・・・?  なんだ? 」

ジョーはキッチンから 耳を欹てた。

彼は コーヒーを淹れに自室から降りてきたのだが 妙な音が

気になったのだ。

「 なんの音だ?  あ フランがDVD見るって言ってたけど・・・

 オフにしてないのかなあ ・・・ まさか ね 」

マグ・カップ片手に ひょい、とリビングを覗けば ―

 

「 ・・・ あ れえ 」

 

リビングに置かれたTVの前で 金色のアタマが突っ伏していた。

モニターは なにも映していない画面が続いている。

「 寝ちゃったのかあ・・・ 」

ジョーはカップを置くと、そうっとリビングに入った。

 

「 フラン〜〜〜  こんなトコで寝たら風邪ひくよ〜〜 

カーディガンを羽織った肩を そっと揺する。

リビングはヒーターを切ってあるらしく かなり冷え込んでいた。

「 ・・・ オフにしなくてもいいのに ・・・

 フラン〜〜 ほら ここ 寒いよ〜 」

「 ・・・ ん ・・・? 」

「 DVD、終わってるよ? 

「 ・・・ え ・・・ あ ・・? 」

金色のアタマがゆっくりと起き上がる。

「 ・・・ ! やだ わたし〜〜 寝ちゃったの? 」

「 らしい ね 

「 きゃ ジョー〜〜〜  起こしちゃった?? 」

「 まだ寝てないけど・・・  風邪ひくよ ここで寝てたら。

 リビングの暖房、切ってたのかい? 

「 え ええ・・・ ちょっとだけDVD 見るだけだから・・・ 」

「 ちょっとだけ じゃなかったみたいだよ・・・

 寒い時期はヒーター 切らなくてもいいのに 

「 だめよ、そんな勿体ない。 ああ わたし 付けっ放しで・・・

 ごめんなさい 」

フランソワーズは しょんぼりしてTVのモニターをオフにした。

「 謝る必要ないけど ・・・ 風邪ひくから・・・ 」

「 ありがと、大丈夫よ。 あ〜あ ・・・ 

 もう ちっとも覚えられなくて ・・・ 」

「 ?? なんのDVD? 映画かなんか? 」

「 ううん 振りを覚えなくちゃならなくて  」

「 ふり・・・? 」

「 そうなの。 バレエ団の次の公演の・・・ 」

「 あ ああ そうか そうだったね!

 次の公演に出られるっていってたよね 」

「 そうなの。 今回はコールドの人数が多くて

 わたしみたいな研究生にも声がかかったのよ。 」

「 へえ・・・ すごいじゃん! 舞台に出るんだね 」

「 ありがと。 ふふ・・・でもね < その他大勢 > なのよ。 」

「 皆 最初は < その他大勢  > なんだろ?

 ぼく 演劇とか目指してるトモダチもいたから

 少しはわかるよ 

「 まあ そう・・・

 そうね、わたしとしてはもう最高にはっぴーよ♪ 」

「 よかったね  頑張ってるもんな〜 

「 ええ でもね ・・・ 

 

  ふう〜〜〜 ・・・・ フランンソワーズは大きくため息をついた。

 

「 でも? 」

「 うん。 振りは あ 踊りの順番のことね、 ちゃんと覚えたけど

 でも・・ 皆と合わせるの、大苦労なの 」

「 あわせるって ・・・ あ 大勢で同じ動きするよね

 あのこと? 」

「 そう。 順番は間違えてないし音はよ〜〜く聞いてもうしっかり

覚えているんだけど ・・・ 」

 

     はあ 〜  彼女は 俯いてしまった。

 

 

 

「 はい お疲れさま〜〜〜  」

「「 お疲れ様でした 」」

全員で優雅にレヴェランスをし、拍手をしあう。

 

 ― 朝のクラスが終わり スタジオ中の雰囲気が和らいだ。

 

「 はあ〜〜 やれやれ・・・・ 」

「 あ〜〜 ポアント 潰れたかなあ〜  

「 あは・・・ 着替えるわ、ワタシ 」

「 お腹へったぁ〜〜  」

「 ・・・ 足  いったァ〜〜〜 

ダンサー達は スタジオの隅っこにあちこちで座り込んだ。

 

「 う〜〜〜 靴 潰れたあ 」

「 え もう? 」

「 ウン。 あ〜あ また作らなくちゃ  めんどくさ 

「 そうねえ 」

「 フランソワーズは どこの靴? 」

「 レペット。 ああ でもそろそろダメかなあ 」

 

スタジオの隅で みちよとおしゃべりをしていたら 

フランソワーズ? と マダムがピアノの脇で手招きしている。

「 ・・・ はい! 」

慌てて立ち上がり彼女は 飛んでいった。

 

「 ・・・ あの・・・? 」

「 ねえ よく音、聞いて!  

 それでね 皆のカウントの取り方を 覚えて 」

「 は  ・・? 

「 揃える って。 皆のマネするのとは違うのよ?

 全員が 同じカウントで動くの。

 音をよく聞いて。  アナタのカウントの取り方が

 間違ってる、というのじゃないの。

 でもね そろえるためには 同じカウントで踊って 」

「 あ は はい ・・・ 」

「 次の公演ね、コールドで人数が必要なの。

 研究生からも出演してもらうわ。 フランソワ―ズ、あなたもお願い 」

「 え・・・!  公演に ですか! 」

「 そうよ。 それでね、クラスで気がついたの。

 コールドは 揃えてなんぼだから。 

 これも勉強、と思って頑張ってほしいわ。 」

「 はい。 ありがとうございます! 」

「 朝のクラスの研究生は全員参加だから。

 皆でしっかりお願いね。  あ 事務所でDVDをもらってね。

 振り、覚えておいて。 」

「 は はい・・・! 」

じゃあね、 と マダムは上機嫌でスタジオを出ていった。

 

    うっそ ・・・ !  

    本公演のステージに立てる なんて!

 

    ・・・ やった わ !

 

    このクラスの研究生全員・・・ってことは

    わあ〜〜 みちよ や あみちゃんも一緒!

 

      やったわあ 〜〜〜

 

「 ・・・ !!! 」

彼女は 思わずタオルをぽ〜〜〜ん と放り投げていた。

 

 

 

ジョーは カップを持ったままソファの隅に座った。

「 へえ よかったねえ 公演に出るんだ? 」

「 そうなの!  ああ でも ね・・・ 」

「 でも? 」

「 ええ。 わたし、全幕の作品に出たことって 

 子役しか経験がないの。 それでね ・・・ 振りを必死で覚えて 」

「 ふうん ・・・ 見るだけで覚えられるんだ??? 」

「 え  だってチビの頃とか TV見て人気アイドルの真似とか

 してたでしょう? 」

「 あ〜 ぼく さ TVとか見る時って皆でぼ〜〜っと見てたから

 ・・・ 団体生活 だったからね 」

「 ・・・ あ ごめんなさい 」

「 謝らないでくれよ そういう環境だったってことだけだもん。

 気にしてないよ 」

「 そう ・・・ ごめんなさい あ 」

「 で きみはそのう・・・踊りの順番を 見て覚えるんだ?

 ぼく バレエのこと、わかんないけど・・・ 長いだろ? 」

「 そうね。でもね バレエの振りは全部 文字で書けるの。 」

「 え そうなんだ〜〜 」

「 ええ ひとつ ひとつのパには名前があるし、その連続だから。

 あ ピアノとか楽譜があるでしょう? あんな感じ 」

「 ふうん ・・・ え それを見て書きとるわけ? 」

「 そうよ。 レッスンでもパの名前を先生が 言って

 ピケ パッセ 二回 シャッセ パ・ド・ブレ アラベスク〜

 から四番で降りて・・・ ってね 」

「 ひ え・・?? それ聞いただけで踊れるのかい? 」

「 うん。 ず〜〜っとそうやって習ってきてるの。 」

「 すっげ・・・ それで全部覚えたわけ?? 」

「 うん。  でもね〜〜 順番を覚えただけ じゃ ダメなのよ 」

「 なんで?? 

「 バレエは 音楽に合わせて踊るでしょ。

 音を踊るというか・・・音に合ってないとだめなの。

 それに 今回はコールドだから 皆と合わせないと ね 」

「 ふうん ・・・ なんか すごいね ・・・ 」 

「 だから頑張らなくちゃって DVD、見なおしてたんだけど

 あ〜〜 寝ちゃった ・・・ 」

「 冷えるしさあ 今晩はもう寝たら? 

 しっかり休んですっきりしたアタマで って方がいいよ 」

「 ふふふ なんか試験の前みたいねえ 」

「 あ そう? 」

「 ウン。 あら ジョーこそまだ起きてたの? 」

「 あ ぼくももう寝ます。 コーヒー 飲みたいな〜って

 思ったけど 寝るよ。 」

「 はあい。 じゃ お休みなさい〜〜 」

フランソワ―ズは TVのスイッチを切った。

「 なんか元気もらえた気分(^^♪ ありがと〜 ジョー 」

「 え 」

 

    ちゅ。  彼女は背伸びして彼のほっぺにキスをした。

 

「 じゃあ お休みなさい〜 」

「 お お おや す み ・・・ 」

 

    わっひゃあ〜〜〜〜〜  

    き きす してもらったあ〜〜〜〜〜

 

    ・・・ 寝られないかも ・・・

 

ジョーは カラのコーヒーカップを握りしめ立ち尽くしていた。

 

 

 

  〜〜〜♪♪   ぷつり と 音楽が消えた。

 

「 はい じゃ 10分休憩。 次 四幕のコールドだからね 

ぱん。  マダムは大きく手を打った。

 

  わいわい たたた ・・・・

 

し・・んとしていたスタジオは 急に賑やかになった。

「 はあ〜〜〜 神経つかう〜〜 」

「 ・・・ えっと 最初は通路の一席 こっち側にたち 」

「 あ〜〜〜 トイレ! 」

「 水 買ってくる〜〜 」

 

秩序だった動きから解放され 彼ら彼女らはほっとした様子だ。

 

「 ・・・ 」

「 フランソワーズゥ〜〜 ねえ チョコ たべる? 」

「 ・・・ 」

「 どうしたの? 」

「 ・・・ わたし 合ってない わよね 」

フランソワーズが こそ・・・っと呟く。

みちよは 食べかけていたチョコの手を止めた。

スタジオの後ろにいる研究生たちのカタマリの そのまた隅っこで 

若い二人がくっついてる。

「 え  今の < 序曲 > のとこ? 」

「 うん・・・ 」

「 そ そっかなあ 振り、間違えてないよ? 」

「 みちよの側から見てて 大丈夫だった? 

「 うん。 」

「 でも ・・・ はやい! て一回 言われたし 」

「 皆 なんか言われたけど 

「 ええ でも ・・・ 

「 さ 気分かえよ!  はい チョコ〜〜 」

「 あ ありがと。  ん〜〜 おいし♪ 

 じゃ わたしは フルーツ・ボンボン。  はい 」

「 きゃ〜〜  〜〜 おいし☆ 

「 そ? よかったあ〜 これね わたしのお気に入り 」

「 元気 出たね フランソワーズ 」

「 え ・・・ あは  ありがと みちよ 」

「 一緒できて めっちゃ嬉しいんだ アタシ。 

「 わたしも♪ 

「 ま〜 いろいろ言われて 当たり前ってことよん  

「 ん 」

二人は チョコを頬張りつつ突っつき合っていた。

 

 

「 はい 始めますよ。 コールドちゃんたち 」

マダムの声がひびく。

  

   ササササ −−−−

 

若い研究生たちは 緊張した顔でスタジオの上手 ( かみて )と

下手 ( しもて )に分かれた。

「 あ アタマからゆくからね 〜〜〜 

 振りは大丈夫ね? 」

全員が 真剣な顔でこくこく・・・と頷く。

「 Good girls !  じゃ 四幕ね〜〜  音 出して。 」

 

   ♪〜〜〜〜 ♪♪♪  

 

皆の耳に馴染すぎるほど馴染んでいる音が 響きだした。

 

< 白鳥たち > が つぎつぎに登場する。

 

「 場所取り 考えて。  ここがセンターよ 」

マダムは 自らが鏡の前に立った。

 

   ♪♪  ♪♪

 

ダンサー達は整然と列を作り 同じ動きを音に合わせ踊る。

「 下手 後ろから三人目! すこしはやい ! 」

「 上手 ! えっと・・・ りえ? 位置 ちがうでしょ? 」

「 左右対称!! よく見て! 」

「 フランソワーズ! 合わせて 合わせて。 音 聞いて! 」

音楽よりも強く マダムの声が飛ぶ。

名指しされたモノは びく・・・っとするが動きを止めてはいけない。

踊りつつ 修正してゆかなければならないのだ。

 

「 円、でしょ  二つ。  こっちにオデットが入るのよ〜

 ほら もうちょっと大きくして 

「 ん〜〜〜  あ 止めて。 」

マダムは音を止めさせ いくつか場所の修正をした。

「 覚えて! 振りを合わせて 目の隅で自分の位置を確認!

 ○○ホールだからね ここと そっちに通路があるでしょ。

 そこを目当てに!

 まみ と ゆか が 通路の前。 あとは等間隔で立ってみて。

 だいたい 自分の位置 わかるでしょ。 」

研究生たちは 歩いて次に移動する場所を確認する。

 

    ・・・ っと。 最初は通路から座席3つ外。

    で 次は ・・・

 

フランソワーズの位置は 後列の上手 ( かみて ) 寄り なので

ぶつぶつ・・・自分の場所を目で追っている。

 

  パンっ  マダムが手を打った。

 

「 場所、確認できたかな。 それじゃもう一回。

 四幕のアタマから  〜〜 

 

  コトコトコト  コトコト  ダンサー達が左右に控えた。

 

「 アタマからオデットの出まで通すわよ。

 それから ・・・ オデット、加わって? いいかしら えりちゃん 」

「 はい 」

オデットを務めるプリマさんは にっこり頷く。

「 ささっと行きましょ。  はい 音、お願い〜 

 

   ♪ 〜〜〜 ♪♪ 

 

音楽が流れ始め、スタジオの中には再び緊張感が漲る。

 

 

「 あ〜 お疲れ様〜〜  今日のとこ、しっかりチェックしておいて。

 コールドちゃん達 お願いね〜 」

きっちり時間通りに マダムはリハーサルを終わらせた。

「 四幕 あげてから二幕にもどるから。

 リハになれておいてね〜 合わせるのは二幕の方が大変だから 

 はい お疲れ〜〜〜 」

「「 ありがとうございました 」」

 

   ざわざわ がたごと ・・・

 

ダンサー達はわらわらと動きだす。

スタジオに残り自習をする者、お互いに位置確認を繰り返す者もいる。

若い研究生たちは だいたい同じくらいの年代なので

なんとなく共有感があるらしく、 雰囲気は和やかだ。

 

「 う〜ん ・・・? たららら・・で 振返り ・・・ 」

フランソワーズもスタジオを出てゆきつつ ぶつぶつ順番を

繰り返していた。

「 ねえ フランソワーズ、 お茶して帰ろ〜〜 」

「 みちよ ・・・ うん ・・・ ねえ やっぱりわたし、

 合ってない ・・・? 」

「 え そんなこと、ないと思うけどなあ 」

「 う〜〜ん・・・ なんか ねえ 」

「 ねえ ねえ 気晴らし! お茶してこ〜〜 

「 いいわね♪ ・・・ ケーキ たべたい! 」

「 アタシも〜〜 

二人で じゃれ合っていると 私室から出てきたマダムと

顔を合わせた。

 

「「 あ ・・・ ありがとうございました 」」

「 はい お疲れ様ね〜〜 

 あ フランソワーズ。 あなた コールドってあんまり経験ない? 」

「 あ は はい・・・ 白鳥は 初めてです 」

「 あ〜 そうなのね。 よく音聞いて。 カウントしていいけど

 皆と同じ速さでカウントしないと ね 」

「 は はい・・・ 

「 これも勉強だから。 頑張って。 」

「 はい。 」

「 みちよちゃん、今回は 張り切りすぎないでね〜 

「 あ はあい 」

「 じゃ ね〜 お疲れ〜〜 」

マダムは ピン・ヒールを鳴らし 颯爽と出て行った。

 

「 はあ ・・・ 相変らずカッコいいねえ〜 」

「 ホント  あんな風になりたいわ 」

「 ・・・ 無理だなあ 」

「 ウン ・・・ 」

まっすぐ帰ろうか ― 二人は寄り道せずに家路についた。

 

 

「 ― やっぱり わたし、皆と合ってない わ。 」

電車の中で 一人になるとどうしても考えてしまう。

 

  皆と同じ速さで カウントして

 

マダムの声が浮かんでくる。

リハーサルでの場面も蘇る。

 

   わたし、結構 注意されちゃった・・・

   場所 しっかり覚えなきゃ。

   ・・・ 前のヒトとの距離しか考えてなかったわ

 

< 白鳥 > のコールドは あの特徴的なアームスの動きも

しっかり揃えなければ価値がない。

 

   同じ カウントで、 かあ・・・

   う〜〜ん ・・・

   ちゃんと数えてる つもり、だったんだけど・・・

 

   そう なのよねえ 微妙〜に違うのよねえ

 

   ・・・ どうしたら わかるかなあ・・・

   横目で? まさか ね・・・

   見て真似してたら やっぱり微妙に遅れるし

 

   同じ曲を聞いて 同じカウントしてるはずなんだけど・・・

   

   ― タイミング かしら 

 

ふう〜〜〜〜 ・・ 溜息ばかりが漏れてしまう。

 

     タタタタン ・・・ タタン ・・・

 

電車の単調な音にかえってほっとする。

ぼんやり車窓から外を眺めれば 冬枯れの景色が

どんどん後ろへと 飛んでゆく。

 

   ふうん ・・・ 

   加速そ〜〜ち! ってこんなカンジなのかしらね

   あ〜  速さが全然違うかあ 

 

色彩の乏しい冬景色の中 郵便配達の赤いクルマが目を引いた。

 

   ・・・ 防護服みたい ね ・・・

 

 

         あ。

 

 

突如 見慣れたシーンが蘇った。

赤い特殊な服を着てたった8人の仲間達と闘っていた日々 だ。

いつもは 意識して封印している記憶なのだが

今 彼女は仔細にそれを手繰り寄せ丹念に辿る。

 

   タイミング よ ・・・!

   そうよ!  わたし達 タイミングを読み合ってる!

 

 

戦闘の現場 ― そこは命のやり取りをする凄惨な現場だ。

サイボーグ達は いわば 戦闘のプロ として

数少ない味方同士、自然にお互いのタイミングを覚えていた。

 

  ドガ −−−− ン ッ  爆音がひびく。

 

≪ おい! 上からだ  ≫ 

≪ お〜らい ≫

 

赤い風が急降下し、さっと現れたやはり赤い服の仲間を運び上げる。

 

    ババババババババ  −−−−−  !!!

 

マシンガンが 上空からある一点に集中して炸裂した。

 サ −−−−  赤い風は悠々と飛び、仲間は宙で一回転し

余裕で瓦礫の陰に身を潜めた。

 

      グワ −−− !!!

 

しつこく攻撃してきていた敵の一拠点が爆発した。

 

 ≪ 002  004 やったな〜〜 ≫

 ≪ ふん ・・・ ≫

 ≪ あったりめ〜よ ≫

絶妙なコンビ・プレーを繰り広げる二人は 顔を合わせることもない。

 

  何回言ったらわかるんだっ   うっせ〜な オッサン!

 

普段は 顔を合わせればケンカばかりしている二人なのだが

戦闘中は ぴたり、と息が合う。

「 はあ??  あ〜 オッサンのタイミング、わかってっからよ〜 

「 アイツは 俺のスピードをわかっている。 」

二人は 当たり前のように言うのだ。

互いに称賛し合ったりもせず 当然、といった表情なのだ。

 

    仲よくないからかな〜 って思ったこともあったけど。

 

    ちがうわ。 

    そうよ!!! しっかわかり合ってるからなのよ!

    あんな場面、通信してる暇なんかないもの

    打合せてなんて余裕、ないし。

 

    二人は ううん わたし達はプロフェッショナルだから。

    なにも言わなくても  わかってる。

    ・・・命をかける時なんですものね 

 

    そうよ、そうなのよ!

 

普段は思い出したくないはずの記憶だが 今はもっともっと

細かく思い浮かべたくなる。

 

 

「 お前の走る音の特徴を知っているのさ 」

あの地下での凄惨な闘いで 004はさらり、と言ってのけた。

彼は 加速して闘っている仲間の援護射撃を見事にやったのだ。

 

    そうだったわ ・・・!

 

あ わたしも!

ジョーの走るタイミングを覚えてるわ。

 そうよ  ―  だから!

だから 彼が加速装置を解除する隙にデータを送れるのよね!

打合せしたわけでも 教えあったわけでもない。

 

    おなじこと  かも!

 

    わたし。 プロフェショナルとして舞台にたつ のよ。

    ― よまなくちゃ タイミング! 

 

 

  ○○〜〜 ○○〜〜〜 次は ・・・

 

ふと 車内アナウンスが耳に入ってきた。

「 あ!! いっけない〜〜  おります〜〜 」

大きなバッグを抱え フランソワーズは慌てて降りた。

 

  ふう ・・・  乗り越さずに済んだわあ・・・

 

「 ふ ・・・ 美味しい晩御飯つくろっと!

 そうだわ ジョーに聞いてみなくちゃ 」

バッグを抱えなおし、 フランソワーズは元気に歩きだした。

「 きゃ ・・・ 風が強いわねえ ・・  

マフラーをしっかりと巻き直した。

 

    そう よね!

    わたし いちいち皆のこと 見てないもん。

 

    ジェットとジョーじゃ 全然タイミング、違うし。

    アルベルトは 無言が普通。

    でも わかる。

 

    ピュンマは ちゃんとタイミングを計って

    わたしにデータを送ってくれてる

    グレートは 皆の隙間を埋めるのよ。

    彼こそ 間を読む天才かも。 

 

    大人の炎は ジェロニモ Jrが合図してるものね!

 

    ―  わたしだって  できるはず!

 

 

その晩の食事は ジョーの大好物・肉ジャガになった。

「 ・・・っと。 あとは最後の仕上げだけ ね 」

カタン −  キッチンのドアが開き、 博士が顔を覗かせた。

手にしたザルを差し出す。

「 フランソワーズ?  温室のイチゴがいい具合じゃぞ 

「 わあ〜〜 可愛い! 博士 ありがとうございます 」

「 まだ数少ないがな。 」

「 春の色ですね! あ ジョーは 今日遅いのでしたっけ? 」

「 ん? ああ 多分バイトじゃなあ 」

「 え なんの? 」

「 あれ 知らんかったか?  今日はコンビニでレジだな 」

「 え〜〜〜 ジョーが コンビニで?? 」

「 ああ。 秋口からやっておるよ。 やっと慣れたといっておるよ 」

「 まあ そうなんですか!

 じゃあ いっぱい晩御飯、食べてもらいますね 」

「 そりゃいいな。 もうおっつけ戻るじゃろうよ

 ワシも手を洗ってくる。 」

「 はい。 お願いします。 ふんふんふ〜〜ん もうちょっと

 煮込んでおきましょ♪ 」

 

 

「 ただいま〜〜 」

しばらくして 玄関が開いた。

「 ジョー 〜〜!!!

フランソワーズは 菜箸を持ったまま玄関に飛んでいった。

「 お帰りなさいっ!! 

「 ただいま〜〜 」

「 ねえ ねえ ジョー! 聞いてもいい? 」

彼女は靴も脱いでいないジョーに 息せき切って尋ねた。

「 え え?? な なんだい 

「 皆のタイミング どうやってわかるの? 」

「 ・・・ は?? 」

 

彼は 目をぱちくりさせているばかりだ。

 

「 だからね、どうやって知ったの? 」

「 な なにを?? 」

「 だから〜〜〜  皆のタイミング よ! 」

「 たいみんぐ? 」

「 そ! ジェットの下降速度とか アルベルトの切り替えとか

 ピュンマの射撃速度とか ・・・ 」

「 ・・・ あ ・・・ 戦闘中の、ってこと? 」

「 そうです〜 」

「 でもどうして? 」

「 知りたいの。 タイミングって とて〜〜〜〜も大切なの。 」

「 そう思うけど・・・ なぜ 今? 」

「 ・・・ あの ね 」

やっと彼女は 詳しく話し始めた。

「 ・・・ ふ〜〜ん ・・・ そうなんだ? ・・・・

 へえ ・・・ ああ  それで ・・・ 」

「 そうなの! だからぜひ教えてほしいなって思って。

 そのう・・・ コツとか 」

「 コツなんて ないよ。 きみはどうやってぼくのタイミングを

 読むんだい? 戦闘中に さ。 」

「 それは ― ずっと一緒に闘っているから・・・ 」

「 だよ ね。  きみも同じなんじゃないかな。

 ぼく、バレエのことは全然わかんないけど ・・・

 皆で同じ動きをするんだろ? 」

「 ええ。 」

「 その時は 皆に溶け込んでみれば? 

 ぼくら 戦闘時は9人でひとつ、だしね。 」

「 ―  !!!  そ そうよ ね!!! 」

ぱあ〜〜〜っと 笑顔の華がひろがった。 

「 あは ・・・ あのう ぼく、腹ペコなんだけどぉ 

「 あ ごめんなさい!  手、洗ってウガイしてきて!

 ふふふふ〜〜〜 今晩は 肉ジャガ です♪ 」

「 わお〜〜 やた〜〜〜〜 」

ジョーは スニーカーを脱ぐとぱたぱた・・・バスルームに

駆けていった。

 

    ありがと ジョー ・・・ !

   

    わたし 白鳥たち になれる わ!

 

Last updated : 01,28,2020.             index      /     next

 

 

************  途中ですが

こてこてバレエ物です〜〜 (>_<)

群舞 ( コールドバレエ ) ってね〜〜

それなりに大変なのですよん☆

ひとつだけウソ → < 序曲 > に

踊りはありません・・・ ごめん☆