『 蜜月旅行 ― (1) ― 』
青い空に ふんわり ・・・ 薄い雲が渡って行く。
今日はお日様の光も 空気も そして 風すらも 柔らかく優しい。
耳をう〜んと澄ませば 微かに潮騒も聞こえてくるのかもしれない。
穏やかにながれてくる風は 潮の香やら 甘い花の香 を運んできているのだから。
「 皆さん 本日は本当にありがとうございました。 」
ジョーとフランソワーズは肩を並べまま振り返ると 教会の前で待っていた人々に
深々とアタマをさげた。
「 今日から二人、力を合わせて温かい家庭を築いてゆきます。 」
「 どうぞ これからもよろしくお願いします。 」
パチパチパチ ・・・ 拍手と満面の笑みが彼らに降り注がれた。
「 じゃ ・・・ 行こうか 」
「 ええ。 」
そんな中で ジョーはす・・っと腕を差し出しぱあ〜っと笑った。
一張羅のスーツに 白い借り物のタイを締めぴかぴかの革靴だ。
そんな彼に フランソワーズは白い手を絡め にっこり笑った。
ふんわり裾の開いた白いワンピース、先ほどまで被っていたヴェールは丁寧に外した。
腕を組んで。 二人はゆっくりと歩き出した。
町外れの教会から 岬の崖っぷちに建つ洋館まで ― そう 二人の家 まで。
それが 二人のハネムーン。 ごく普通の青年と娘として二人は夫婦となった。
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「 え。 おかあさんとおとうさん って。 しんこん旅行 いってないの? 」
自分と同じの色の瞳が 飛び出さんばかりに大きく広がってまじまじと見上げている。
フランソワ―ズは そのあまりの真剣さに思わずたじろいでしまった。
う わ?? な なんなの どうしたの??
「 そうねえ ・・・ 行ってないわねえ 」
娘の真剣さに心底驚いたけれど その話題はどうでもいいことだった。
というより 結婚生活10年以上にもなれば 新婚旅行がど〜の こ〜の・・・なんて
とお〜〜〜い話であり ああ そんなコトもあったかな〜程度の関心なのだ。
「 な なんで?? 」
「 なんでって ・・・ 行ってないだけ よ 」
「 だめだよ〜〜 そんなの! 」
「 へ? 」
「 そんなの だめ。 アタシ おとうさんにちゃんと言うから! 」
ふんっ!! すぴかは鼻息も荒く ひとり、うんうん〜〜と頷いていた。
・・・ うわ このコ 本気だわ ・・・ こわ ・・・
そう ・・ 現在小四の 島村すぴか嬢 は 正義の味方、 曲がったコトが
大嫌いなのだ。
「 あ ・・・ いいのよ、すぴか。 お母さんは別に 」
「 そんなの だめ。 おとうさんとおかあさんはしんこん旅行 行かなくちゃ! 」
「 あ〜〜〜 その ・・・ 」
「 アタシ、すばると一緒におとうさんに話すから。 安心して おかあさん! 」
「 あんしん ・・・ ? 」
「 すばる〜〜〜? あ〜〜 まだ帰ってないかぁ・・・
いいや あとでじっくり相談しよっと。 あ お母さん オヤツ〜〜〜 」
「 はいはい ちゃんとキッチンに出してありますよ 」
「 わい〜〜 」
「 まず手を洗ってね 」
「 ウン。 ランドセルもおいてくるね〜〜 」
カッチャ カッチャ カッチャ ・・・
ランドセルを鳴らしすぴかはコドモ部屋に上がっていった。
「 ・・ ひゃ 〜〜 あのコ 本気だわぁ・・・ 」
金色のお下げが ぴんぴん跳ねてゆくのを、母は呆然を見送った。
「 新婚旅行 ・・・? 今さら ねえ ・・・ 」
彼女は 遠い目をしてキッチンの窓から 裏庭を眺めた。
堂々そした樹が大きく枝を広げ 早春の光に白い花を誇らし気に咲かせている。
ああ 今年も梅がキレイねえ ・・・
・・・ そういえば 結婚した年に植えたんだったっけ
結婚したのは よく晴れた五月のある日。
( ま〜 それまでもず〜〜〜っと一つ屋根の下 で暮らしていたけれど )
町の教会で簡素な式を挙げ 二人で腕を組んで家まで歩いて帰った。
それが ― 二人の新婚旅行。
豪華なウェディングドレス も 華やかな披露宴もなかった。
旅行・・・なんて考えもしなかった。
だって 最高に幸せだったから。 この世で一番愛する人と一緒に腕を組んで
二人で暮らす家に歩んでゆくのは 最高の幸せ以外のなにものでもなかった。
「 そうよねえ ・・・ 旅行も嫌いじゃないわ でも
大好きなお家で 大好きなヒトとこれからず〜〜〜っと一緒・・・なんて
もう最高〜〜〜にシアワセ って思ってたし ・・・ 」
毎日一緒にいられる、これからもずっと! なんてもう幸せすぎて
どうしていいかわからない、とまで思っていた。
「 こんなにシアワセでいいの? って思ったもの ・・・
シアワセ なんて別世界のこと、って諦めていたし 」
あの頃の自分自身を思い出すと なんだか頬が熱くなる。
シアワセにどっぷり浸かっていた自分の姿が 気恥ずかしいようでもあり
今振り返れば 可愛いなあ〜 とも思うのだ。
「 でもね それは思い出の中のこと。 もう過ぎた頃の出来事なのよ
それでいい って わたし 思うわ 」
けど。 彼女の娘は だめだよ〜〜 と言う。
真剣な顔で そんなの だめ! と言う。
「 でも うふふ・・・ すぴかが結婚に興味を持つなんて・・
あのコも ちゃ〜んとオンナノコなのねえ 〜 ふふふ・・・ 」
日頃はジーパンのハーフ・パンツ姿で 外を飛び回っているのが大好きなすぴかなのだが。
「 ふふふ〜〜 すぴかもやっぱり女の子♪ そろそろ一緒にバーゲンとかにも
行けるかなあ〜 楽しみ〜〜〜 」
長年 紅一点 だったフランソワーズは 娘が生まれた時 本当に本当に
嬉しかった。
は〜やく大きくなあれ・・・ あ ううん まだずっと可愛い赤ちゃんでもいいの
も〜〜 どっちでもいいわ ねえ すぴか?
小型版・ジョー である息子は もちろん大好きでカワイイけれど
自分と同じ髪と眼をもってやってきた娘は 彼女にとって特別の存在だった。
うふふ〜〜〜 レースのリボンで髪を結ってあげるわ
ひらひらのスカート に フリルつきのブラウス で
あ〜〜 お人形さんみたいにカワイイわ きっと♪
そんな願を込めて 彼女はちっちゃな金色のアタマを撫で撫でしていた・・・ が。
「 おか〜さん こうえんにいってくるね! 」
「 はいはい ・・・ すばるは ? 」
「 しらな〜〜い まだかえりみち かも〜 じゃね! 」
「 気をつけてね ・・・ ああ ・・・ 」
オヤツを食べ終えたすぴかは Gパンの半ズボンにトレーナーをひっかけ
愛用の自転車で飛び出していった。
金色の ぎっちり編みのお下げが 背中で跳ねている。
・・・ 元気で明るいのはとてもうれしいのだけれど ・・・
ああ ・・・ フリルのリボン には程遠いわ ね・・・
「 おか〜さん ただいま〜 」
ため息をついている母のエプロンを 茶髪の少年がつんつん引っ張った。
「 あ すばる〜〜 お帰りなさい。 すばるも公園に遊びにゆくの? 」
「 ウウン。 僕 いかない 」
ジョーそっくりの瞳が にこ・・っと笑う。
「 あ そう? 」
「 ウン。 僕 わたなべクンといっしょんにJRみにゆくんだ〜 」
「 ああ ・・・ わたなべクンとね 」
「 ウン。 その前にオヤツ たべる。 オヤツなあに お母さん 」
「 はいはい すばるの好きな オーツ・ビスケットよ レーズンいり。 」
「 わあい あ みるく・てぃ〜 もね おさとう、三杯〜 」
「 はいはい 」
茶色のアタマは かっちゃ かっちゃ かっちゃ
ランドセルをの〜〜んびりゆらし の〜〜んびり子供部屋に昇っていった。
ほ〜〜んと マイぺ−ス なんだからあ ・・・
ま さすが ジョーのムスコ ってとこねえ
すばる は 相棒で<しんゆう> の わたなべクンと踏切での〜んびりJRを
ながめ 型を当てたりして楽しんだのだ。
「 で ね。 そんなのだめだよっ て。 」
「 へえ〜〜 すぴかが かい 」
「 そ〜なのよ〜〜 あの 正義の味方さん がね〜 学校から帰ってきて
真剣な目で聞いたのね おあかさんたち しんこんりょうこう いった?って 」
「 あ は ・・・ 」
その夜 ― チビたちはとっくにベッドでカワイイ寝息をたてている頃・・・
島村ジョー氏 は 岬の我が家に帰ってきた。
都心の出版社、雑誌の編集部に勤めるジョーは 帰りが遅い。
朝は なんとかチビたちを送りだせるが 日付の変わるすこし前に帰宅なのだ。
「 あ〜 それでかあ〜〜 」
「 え? 」
「 さっきね コドモ部屋にそ〜〜〜っとアイツらの寝顔を見にいったら・・・
すぴかが ばっと置き上がって おとうさん いきたいトコ ある? って聞くん だ 」
「 まあ ・・・ 今まで起きてたのかしら??? 」
「 う〜〜ん どうだろ? でも大真面目に訊くんだよ 」
「 へえ 」
「 それでさ すぴかが行きたいトコがいいなあ〜 ていったら 」
「 ち が〜〜〜うの! おと〜さんがいきたいトコ! 」
ベッドの上で 彼女は真剣な顔で父に訴えた。
ジョーはその真剣さに 少々たじろぎつつも穏やかに返事をした。
「 あ ごめん ごめん・・・ 皆で行きたい場所かな〜って思ったんだ、お父さんは」
「 ん〜〜〜 ちがうの。 お父さんが行きたいとこ。 お母さんと。 」
「 え? ・・・ う〜〜ん ・・・ お母さんと? 」
「 そ! 」
「 お母さんと一緒ならどこだっていいんだけど ・・・
そうだなあ ・・・ う〜〜ん
」
「 ねえ どこ どこ? 」
「 う〜ん ・・・ あ 箱根とか いいかもな。 そんなに遠くないけど
まだ行ったコトないし ・・・ 温泉とかあって景色もいいんだ。 」
「 は こ ね? ふうん そっか 」
「 そうだよ。 さあ もういいだろ? すぴかは寝なくちゃ。 」
「 ウン おやすみ〜〜なさい おと〜さん 」
きゅ ・・・ ちっちゃな手がセーターの裾を握った。
「 おやすみ〜〜 すぴか 」
くしゃ ・・・ 大きな手が金色の髪を撫でた。
「 まあ そうなの?? まだ引きずっていたのね 」
「 らしい ね。 でもまあ < 行きたい場所 > を答えたから
あれで満足したのじゃないかなあ 」
「 そうなら いいけど ・・・ でもこんな時間まで起きてちゃ困るわ。
明日 ちゃんと言っておかなくちゃ。 」
「 必死に起きてたってカンジだからね〜 もうぐっすり・・・だよ。 」
「 うふふ ・・・ すぴかもやっぱり オンナノコ なのよねえ
どんな 花嫁になるのかしら 」
「 ! 冗談じゃないよ。 すぴかはまだ小四なんだよ?
は 花嫁なんて まだまだまだまだ ず〜〜〜っと先のことだよ! 」
「 ああら な〜に〜〜 もう 花嫁の父 ? 」
「 そ そんなコト ・・・ なくはない かも ・・・
まだ考えたくないよ 今は ― ぼくのオクサンのことだけ さ♪ 」
「 うふん ・・・♪ 」
熱い視線が絡まり合った。
・・・ 何年たっても 熱々〜〜ってことを知っているのは
当のご本人たちだけ ・・・ なのさ☆
ガサ ガサ ガサ ゴソゴソ ・・・ ばさ。
「 あ〜〜っと ・・・ 落としちゃった っとこれとこれと アレと 」
すぴかは抱えてきた紙だの小冊子だのを 机の上に置いた。
「 ん〜〜〜? なに それ すぴか 」
隣の机から すばるがのぞきこんだ。
「 ひみつ! ・・・ じゃないや。 すばる〜〜 アンタもきょうりょくして 」
「 ?? なに 〜〜〜
」
「 あのね おと〜さん と おか〜さん のね 」
「 ・・・ しんこんりょこう?? 」
「 そ! しんこんりょこう。 おか〜さんたち 行ってないんだって。 」
「 ふ〜ん 」
「 ふ〜ん・・って すばる! あんた なんにも思わないの?? 」
「 なんにも って? 」
「 だってさ おか〜さんたち、けっこんしてるんだよ?
しんこんりょこう ゆかなくちゃ だめじゃん。 」
「 だめ なの? 」
「 そ! だめなの。 だから〜 これから行かなくちゃ。
そんでもってね、おと〜さんに いきたいトコ ある? ってきいたらね 」
「 え〜〜〜 いつ きいたの、 すぴか 」
「 きのう! よる おと〜さんが帰ってくるの、まってた 」
「 え〜〜〜 ずる〜〜〜 」
「 あんた ぐ〜すか寝てたじゃん。 アタシ、 がんばっておきてたもん! 」
「 ふ〜〜ん 」
「 そんでね おと〜さん はこね にゆきたいんだって! 」
「 はこね? ・・・ 新宿からろまんす・かー だね 」
テツなすばるは 即答した。
「 へ〜〜? そうなんだ? ろまんすか〜 ? なんかいいね〜
あ それでさ、りょこう きめなくちゃ・・って これ 集めてきたんだ 」
「 これ? ・・・あ〜 いろんな写真とかのってるヤツ? 」
「 ウン。 商店街にさ 旅行屋さん、あるじゃん? あそこからもらってきたんだ 」
「 旅行屋さん? ・・・ あ あのな〜んも売ってないおみせかあ 」
「 そ。 ! あそこはね りょこうのやりかた をおしえてくれるトコなんだよ 」
「 ふ〜〜ん 」
そう ・・・ そのお店は なんにも売ってない。
明るくてキレイなお店で ショーウィンドウはぴかぴか・・ なんだけど
< 売るもの > は なんだか紙とか写真ばっかりがならんでいるのだ。
でも いつかおじいちゃまのお散歩のお供をした時のこと・・・
「 あ ちょっと待ってておくれ。 旅のチケットを頼んでくる 」
おじいちゃまは そのお店の前で立ち止まった。
「 ちけっと? 」
「 そうじゃよ 今度 コズミ君と出席する学会があってな〜
京都までゆくんじゃ。 その切符を頼んでくる 」
「 ここ ・・・切符 売ってくれるおみせ? 」
「 う〜〜ん ・・・ そうじゃなあ 切符を取り寄せてくれるお店 かな。
旅行に行く時などに 泊まる場所などいろいろ探す手助けしてくれるところだよ 」
「 ふうん ・・・ りょこう を売ってるんだ? 」
「 まあ そんなところさ。 さあ おいで 」
おじいちゃまにくっついてお店に入り ・・・ あらカワイイお孫さんですね〜〜って
お店のお姉さんは にこにこ ・・・・ キャンディ をくれたけど
甘いモノは好きじゃないすぴかは ありがとう をしてからポケットにしまった。
「 まあ〜〜〜 なんてお行儀のいいお嬢さんなんでしょう! 」
お姉さんは感激してたけど・・・
アタシ お嬢さん じゃないもん。 しまむら すぴか !
すぴかはお口を への字 にしたけど黙っておじいちゃまの側に立っていた。
そして おじいちゃまが紙になにかを記入しているのを観察した。
「 りょこう をする時には まず、あそこに行くんだって。
だからアタシね、学校の帰りに行ってみたんだ〜 そんでね、 <しおり> みたいの を
い〜〜っぱいもらってきたんだ 」
「 <しおり>? 遠足のしおり みたいなヤツ? 」
「 そ。 ね この中から はこね と ろまんす・か〜 がでているの、
さがして ! すばる そっち やって。」
「 う うん ・・ 」
子供部屋の床に パンフレット やら チラシ やらをぶちまけ 二人はひとつひとつ
熱心に見始めた。
「 え〜〜と ? ・・・ 秋の〇葉○り ・・・ 春○○の桜○○??
はこね ・・・ 箱 根 だよね ・・・ 」
「 ろまんす・か〜 ・・・ ろまんす・か〜〜っと ・・・ ないなあ? 」
なにせ読める字だけを拾ってゆくので解読と探索は甚だ難航した!
それでも ついに ・・・
「 ・・・ あ これ! これだよ すばる! 」
「 ろまんす・か〜 ・・・ え あった? 」
「 ウン これ! 」
すぴかが ぱっと持ち上げたパンフレットには 満面の( 営業用 )笑み をたたえた
若いカップルが手を繋いでいた。 そして 伊豆・箱根 の文字が。
「 はこね! ほら ここに書いてある! このしゃしん なかよしカプじゃん、
きっとこれ しんこんりょうこう用 だよ! 」
「 ろまんす・か〜 でてる? 」
すばるはパンフをぺらぺら〜〜 捲ってみた。
「 ・・ あ 時間わりがある! う〜〜ん ・・・ あった! 新宿から
ろまんす・か〜 だって! これだよ〜〜〜 これ! 」
彼はかなり細かい字を熱心に読み、 ろまんす・か〜 の文字を見つけた。
「 ホント? それじゃ これにしよう! 」
「 ウン! ・・・ あ でもどうするの? 旅行屋さんにゆくの? 」
「 う〜〜ん??? よくわかんない ・・・
でもさ この はこね できまり! あとは〜〜 ・・・ おじいちゃまに
りょうこう のちゅうもんのほうほう 教えてもらおうよ 」
「 あ そうだね おじいちゃま なんでも知ってるし〜
よく旅行 ゆくもんね。 ちゅうもんのやり方、知ってるよ 」
「 ね〜〜 ・・・ で さ。 お金 ・・・ どうする? 」
「 お金? 」
「 そ。 遠足の時だって < さんかひよう > いるじゃん? 」
「 そっか・・・ 僕の ブタさん ・・・ お腹減ってるかも 」
「 アタシのブタさんだって・・・はらぺこ 」
二人は タンスの上に座っている豚の貯金箱を見上げたけど・・・
ふうう ・・・ 絶望的な溜め息を吐いた。
「 やっぱ おじいちゃまにきく。 」
「 そだね〜〜 オヤツ食べたら ききにゆく?
今日はおじいちゃま オウチにいるじゃん 」
「 あ そ〜だね〜〜〜 オヤツ〜〜〜は なにかな〜〜〜 」
「 あ! もうこんな時間だよ? 」
「 あ〜〜 おやつ たいむ〜〜〜 」
だだだだだ ・・・・! 二人は子供部屋を飛び出しキッチンに駆けこんだ。
「「 おか〜〜さん オヤツっ !! 」」
お母さんは 目をぱちくり。
「 あら 二人ともウチにいたの? 今 公園まで呼びに行こうと思ってたのよ 」
「 アタシたち ず〜〜っとウチにいたよ 」
「 こどもべや にいたんだ 」
「 まあ〜〜 二人で宿題していたの? 」
「 あ〜〜 ・・・ < しらべもの > してた! 」
すぴかは おじいちゃま の真似をして言った。
「 ぼ 僕も! < しらべ〜 > してたんだ ね〜〜 すぴか? 」
「 そ! いっしょにしてた! 」
「 へ〜え? なにを調べていたの? 」
「 ・・・ ひみつ! ね〜 すばる? 」
「 ウン! ひ み つ! 」
「 あらあら 二人だけの秘密なの? じゃあ 頑張って調べてね。
完成したら お母さんにも教えてくれるかしら 」
「 あ〜 うん いいよ。 ね〜 すぴか? 」
「 ウン。 かんせいしたら ね。 」
「 そう 楽しみに待っているわね。 オヤツたべる? 」
「「 たべる〜〜〜 」」
「 はい 今日は蒸しパンよ すぴかはチーズ入り、すばるはサツマイモ。 」
「「 うわ〜〜〜ぉ〜 」」
二人は歓声をあげ テ―ブルについた。
とん とん とん。 博士の書斎のドアに小さなノックが聞こえた。
「 ・・・? うん? 風 か ・・・? 」
博士はちょいと顔をあげたが すぐにモニター画面に視線を落とした。
とん とん とん。 再び 小さな音が聞こえた。
「 ? ・・・ ! お入り〜 チビさん達かい 」
はっとして博士は腰を浮かせ ドアの方に身体を向けた。
「 おじ〜ちゃま あけていい? 」
「 おお いいよ、入っておいで すぴかや 」
「 僕もいる〜〜 」
「 おお おお すばる も入っておいで。 」
「 おじ〜ちゃま。 あのね あのね おねがいがあるの 」
「 おねがいがあるの〜〜 」
すぴか と すばる が なにやら小冊子を手にもじもじしている。
「 なにかね。 宿題の手伝いかな 」
「 ちが〜〜〜うよぉ あの ね ・・・ りょこうのちゅうもんのしかた
おしえて おじいちゃま。 」
「 おしえて〜〜 おじいちゃま。 それとね 僕もすぴかも ブタさん、
腹ペコなの。 どうしたらいい 」
チビたちはとてもとてもとて〜〜も真剣な顔で口々に訴える。
「 ?? あ ・・? なんじゃな? りょこうのちゅうもん?
・・・ あ〜 旅行のことかい? どこかへ行きたいのかね 」
「 そ! りょこう! おと〜さん と おか〜さん のりょこう。 」
「 お父さんとお母さんの? 」
「 ウン! しんこんりょこう なの 」
「 ??? 」
「 あのね あのね ・・・ 」
「 あのね〜〜 おじいちゃま 」
「 なんだね? いいたいことをぜ〜んぶ話てごらん 」
おじいちゃまはいつも優しい。 すぴか や すばる がむにゃむにゃ訳のわからん
ことを言っても ちゃ〜んと熱心に、そして真面目に耳を傾けてくれるのだ。
・・・ お父さんみたく話の途中で居眠りしたり お母さんみたく じゃ続きはご飯の後ね〜
なんてことは言わない。
「 あの ね おか〜さん達ったらね〜 」
「 うん? すぴか達の父さんと母さんのことかい 」
「 そ! おと〜さんとおか〜さんがね 」
「 おか〜さんがね〜〜 」
二人は行きつ戻りつ・・・ でもなんとか < お母さんたちの新婚旅行計画 >
についておじいちゃまに説明することができた。
「 ふ〜〜〜む ・・・ なるほど ・・・ 」
博士はもう大にこにこ・・・で でも一応最もらしく腕組みをし、うんうん・・・
と頷く。
「 そうかそうか ・・・ 二人ともよく思い付いたなあ。
ワシも二人の計画の仲間に入れてもらおうかな 」
「 え ホント?? 」
「 おじ〜ちゃまもいっしょ〜〜〜 」
「 うむ。 二人の計画はすばらしいぞ。 あとは すぴかの言う < 旅行屋さん >
に注文するだけ じゃな。 」
「 ウン ・・・ でも でもね ・・・ おじいちゃま 」
「 よし これはワシが引き受けよう。 あ でも一緒に来てくれるかい 」
「 え ホント!? 」
「 あのね あのね おじいちゃま 僕たちのブタさん 腹ペコなの。
だから ・・・ 」
「 あとはワシの担当、と言ったじゃろう? 二人は < つきそい > で
一緒に旅行屋さんまでついてきておくれ 」
「「 うん!!! おじいちゃまあ〜〜 」」
すぴかとすばるは 左右からぴょ〜〜んと飛び付いた。
「 わははは・・・ ほんに子供は宝モノじゃ ・・・・ 」
「 え〜〜 アタシたち、たからもの じゃないよぉ〜 」
「 いやいや お前たちは父さん、母さんの そして ワシの何よりも大切な
宝モノなのさ。 」
「 ふうん ? 」
「 さ それでは明日、一緒に旅行屋さんに行こうな。 」
「「 うん!!! おじいちゃま! 」」
「 さあ 遊んでおいで。 おっと宿題は済ませたかい。 」
「 ・・・ あ まだ ・・・ ちょうとっきゅう でやっちゃうね〜〜 」
すぴかは ぱっと書斎から飛び出していった。
「 すばるはもう終わったのかい 」
「 ウウン。 僕、これから宿題、やってくるね 」
すばるはひらひら手を振ると のんびり子供部屋に行った。
「 ・・・ ふふふ ・・・ なかなかいいコンビじゃのう・・・
新婚旅行、 か。 ああそういえばあの二人は町の教会で式を挙げただけ
じゃったなあ ・・・ あれからもう10年 か ・・・ 」
博士は 窓越しに早春の空へと視線を飛ばすのだった。
Last updated : 02,28,2017.
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******** 途中ですが
お馴染み 【島村さんち】 シリーズ・・・・
すぴかちゃんも やっぱり オンナノコ??