『 どこに続く道  ― (1) ―  』

 

 

 

 

 

 

   ほい ほい ほ〜〜〜い♪

 

「 あ・・・サトウせんせ〜〜 おはよ〜〜ございますぅ〜〜 」

「 ああ おはよう。 好い天気だねえ〜〜 」

「 ・・・ え ( 午後 雨って聞いてね? ) 」

「 あ 雨になるんだっけ? こりゃ失敗だなあ 

「 へ ・・・ ( 聞こえたか?? ) 」

「 皆 元気かなあ〜〜 はっはっは 」

サトウ先生は 大らかに笑うと大股で職員室に行ってしまった。

 

「 へ え・・・ 機嫌いいねえ 」

「 サトウ先生だろ?  あ〜 最近さ〜 プリントとか忘れても

 明日は忘れんなよ〜 で終わるんだ 」

「 ほえ〜〜〜  去年まで マジクソおっかなかったじゃん? 」

「 んだべえ〜〜  あ カノジョ できた とか? 」

「 ・・・ アイツ とっくに妻子もち   

「 ― 謎だ 

「 謎。 」

 

生意気盛りの中坊共は 心底驚き首を捻っている。

 

  近頃、 K県の市立海岸通り中学校 の 数学科担当、サトウ先生は

超〜〜〜 ご機嫌である。

先生は 今年受験指導担当で本来なら一年中眉間に縦皺〜〜 の

憂鬱な日々 のはずなのだが ― なぜか 超ご機嫌ちゃん のなのだ。

 

 −  ガラリ。 職員室のドアをあける。

 

「 おはよう〜〜ございまっす 」

「 サトウ先生 おはようございます  」

「 おはようございます サトウ先生  ・・・来週の

 全国一斉の実力テストの件ですが〜〜 」

同じ学年の 国語担当、ヤマダ女史が声をかけてきた。

「 あ そうでしたね〜〜 忘れてたあ 」

「 ・・・ 暢気ですね 先生。 」

「 そうっすかあ〜?  まあ ウチの学年は なんとか

 やるでっしょ 」

「 ・・・ 補習で特別指導してるんですか? 」

「 い〜や べつに。 ふつ〜に問題集やってるだけですよ  」

「 ふう ん ・・・ 」

「 まあ せいぜい前の晩に夜更かしするな! と

 いっておきますよ はっはっは 

「 ・・・ 余裕ですねえ 」

「 そうですかねえ〜〜 生徒達 がんばってくれますよ 

 国語科はどうです 」

「 ・・・ いつもと同じでしょうね

 やるコは ほうっておいてもやるし ダメなコはダメなまま 」

「 ダメなコなんていませんよ 

 ほら あの しまむらすぴか みたいに普段は飄々としてても

 やる時はやる!ってコもいますから 」

「 しまむら すぴか?  ああ あのコはね〜

 なにか目標があるみたいですね〜 教えてはくれないけど 」

「 へえ〜〜 なんなんだろ? 」

「 さあねえ  あのコ 案外頑固なんですよ 

「 ふうん 部活じゃ頑張ってたけどね 」

「 ですよね  

 

  朝礼 はじめます!  副校長の声で二人のおしゃべりは中断した。

 

 

― なぜ サトウ先生が 余裕〜でご機嫌ちゃん なのか というと。

 

なにせ 今年の中三、 こと数学に関しては

県下一位 二位 のコンビがいる。 

いまや K県立海岸通り中学 はちょっとした有名校なのだ。

 

    ふっふっふ〜〜〜

    俺もハナが高いよなあ〜〜〜

 

    ・・・ って マジ特別な指導 してないんだけど

 

わたなべ だいち  しまむら すばる。

この二人、 学期末試験などでは ソコソコ10番以内程度なのだが

実力テスト、 県下一斉模試  ○社の模試 などになると

数学は決まって < てっぺん >  に名を連ねる。 

それも満点にちかい点数で。

しかも! 彼らは 塾通い をしていないのだ!

そう  早稲○アカ  にも さぴっ○す にも ○○塾 にも

行っていない。

 

「 ふんふん〜〜  あ〜 アイツの姉貴も最近英語で

 ばりばり出てきたなあ〜〜 彼女 やる時はやる! タイプだものな 」

 

サトウ先生は < 目標にすべき生徒 > がいることで

かなり肩の荷が下りている気分 らしい。

数学コンビ は県下にも名がしれている。

県内での研修会などに参加すると ―

 

   あ  海岸通り中さんですか!  あの〜 是非教えていただきたくて

   数学の受験指導の秘訣は ・・・

 

   サトウ先生 ですよね?? どこのテキストをお使いですか?

   あ もしかして 自作の問題 とか??

 

   すいませ〜〜ん  週5とかで補習 してます?

   それとも 朝勉?

 

休憩時間には 四方八方から質問が飛んでくるのだ。

 

「 あ はあ 海岸通り中のサトウですが 〜

 いえいえいえ なにも特別なことは   はい ・・・

 補習は 他の教科との関連もありますから ・・・

 数学科は 週2 くらいですね〜

 テキスト? ああ 県指定のアレですよ 〜 はい  」

 

サトウ先生は てきと〜に答えさっさと退散することにしている。

 

 だって ―

 

「 じゃ〜な〜 オレ 塾だから 」

「 おう またな〜 」

すばるは 帰ってゆく友達にわさわさ手を振った。

「 すばる〜〜〜  だらだらしてないで 帰るっ 」

 

     ばっち〜〜〜〜ん ッ !!!

 

お下げ髪の女子が すばるの背中をど突いて通りすぎていった。

「 ! いって〜〜〜〜  ううう あの凶暴オンナ〜〜〜 」

「 すばる  じゃな 」

「 おう だいち 」

ひょろり、と長身の男子も 彼を追い抜いていった。

「 あ〜〜  ・・・ オレも帰るかあ 〜〜〜 」

島村すばるは うにゃあ〜〜〜っと伸びをすると

ふ〜らりふらふら あっちゃこっちゃ眺めつつ

やっと校門を出ていった。

 

 そう ―  わたなべだいち君 と しまむらすぴかさん 

 そして しまむらすばる君  は  塾に通っていない。

部活は 引退ぎりぎりまで熱心にやっていた。

今  この三人は < 帰宅部 > なので ある。

 

    アイツら ・・・ 自宅学習 だけ なんだよなあ・・・

    お仕着せのテキストだけ???

    それで 県下一番 二番 かあ??

 

    う〜〜ん ・・ マジで謎だなあ〜〜

 

サトウ先生は いつでもこっそり首を捻っているのだった。

 

 

「 ただいまあ〜〜〜  腹へったァ〜〜〜 ナンか喰うもの〜 」

すばるは 玄関のドアを開けるなり喚く。

「 すばるクン お帰り〜  手洗ってウガイ!

 鞄おいて 着替えてから! 

キッチンから いつもの声が飛んでくる。

「 へ〜〜い 」

 

    ちぇ。 チビの同じじゃんか。

    ・・・ すばるクン じゃね〜ぞ〜〜

 

「 なに?? なんか言った?? すばるクン? 」

相変らず 母は耳敏い。

「 い〜え。 なにもいってません〜〜〜  

 手 洗ってきます 〜〜 」

すばるは 大声で返事すると ずりずり〜鞄を引きずりつつ

バス・ルームに歩いていった。

 

  ガタン。

 

「 腹 へった。 」

すばるはキッチンの椅子に座るなり 呻く。

「 わかってますよ。  ほら アンマン。 」

 ことん。  湯気の上がる餡饅の皿が置かれた。

「 うほ♪ 

「 げ〜〜〜  あんまん!! 信じられない〜〜 」

向かいの席で すぴかが顔を顰めている。

「 ふん。 俺はこれがウマいの! 

「 げ〜〜〜 オトコのくせに〜〜 」

「 あ〜〜 セクハラ発言〜〜〜 許せません〜〜〜 」

「 なにがセクハラだよ 姉にむかって 」

すぴかは ほかほか肉まんの最後の一口を頬張った。

 

「 ほらほら 二人とも  はやく 庭に行ったら?

 おじいちゃまはもうとっくに いらしてますよ 」

「 あ〜〜 う〜〜〜 」

「 あっと ・・・ だいち君も来てるよね? 」

「 ええ。 また これ いただいちゃったわ 」

母は 嬉しそうに茶色の包を持ち上げた。

 

   ふわ〜〜〜ん ・・・ コーヒーの香が漂う

 

「 あ だいちんとこのおじさん スペシャル? 

「 そうよ〜〜 毎月くださるの。 美味しいわよねえ 」

「 アタシ、後で飲むからね  あ お父さんに淹れてもらうから。

 おか〜さん やらなくていいからね!」

「 ・・・わかってますよ。 」

「 ふんふん♪ じゃ 脳に汗、かいてくるね〜 」

すぴかは 使った食器を洗うと 勝手口から出ていった。

「 ほら〜〜 すばる? はやく食べちゃいなさいよ  」

「 ん〜〜〜 むぐむぐむぐ〜〜   

 か〜さん みるく・てぃ。 砂糖3杯 」

「 !  あ〜 わたしの息子は

 アンマンをミルク・ティで食べるわけ ・・・? 」

「 いいじゃん これから 俺、たっぷし脳ミソ使うんだからあ

 エネルギーが必要なの! 

「 わかりました。  ・・・ どうぞ すばるクン。

 そして さっさと庭に行きなさい。 時間厳守! 

「 ふぇ〜〜い 」

すばるは アンマンをもぐもぐ・・・し マグ・カップを手に

庭に出ていった。

 

「 ふう〜〜 やれやれ・・・  

 さて 美味しい晩御飯 用意しておきますか  」

フランソワーズは きゅ・・・っとエプロンのヒモを締め直した。 

 

 

そもそもコトの始めは 去年の秋、子供たちが中二の秋。

久々にやってきた アルベルトの発言から だ。

コドモ達は 受験期を控え 不安だけど < 県立翠が丘高 > を狙う!と

宣言をした。

 

    俺んとこ・・・ ほら 親父が念願の店、開いたばっかだし。

    あんまし 負担かけらんないんだ。

 

    だいち・・・ ウチだってさ。

    ウチは な〜〜んでも × ( かける )2 だからさ〜

 

    ウチのおか〜さん ・・・ 塾 なんて知ってるかなあ

    あのヒト、浮世離れしてるからさあ

 

3人には それぞれ事情があるのだ。

そんな すぴか すばる、そして すばるの親友・わたなべ だいち君に

銀髪の伯父さんは 最上策 を囁いた。

 

「 お前たち、身近に最高の人物がいるじゃないか。

 博士に教えてもらえ。 博士は マルチ天才 だから。 」

 

この提案には 博士の方から乗ってきてくれた。

「 ふむ・・・ それは是非 やりたいなあ。

 若者たちと一緒に 脳に汗をかいてみようじゃないか。 」

場所は 庭の掘っ立て小屋 ― 

いや すばるとだいち君の かつての < 秘密基地 > となった。

まあ なんとか雨露は凌げる。 寒くなったら博士はストーブ、

若者たちは ひたすら着込む。

もちろん 三人一緒。

 

「 最初に言っておく。 御礼だの月謝だの は ナシ。

 条件は 三人が熱心に参加してくれること、以上じゃ。 」

 

そして それ以来 ― すぴか すばる そして だいち君は

< ぎるもあ・勉強会 > で しっかり頭脳に汗をかいているのだ。

 

博士の授業は 全ての学科に及ぶ。 

まあ 目的のために数学 語学  が中心はなるが・・・

日本のふつ〜の・中坊達は ハーバード出身のマルチ天才に たっぷり

そして しっかり鍛えられるのである。

 

「 諸君。 それでは始めよう。  今日は ・・・ 」

掘っ立て小屋の中で 博士はごく原始的?に ホワイト・ボードに

さらさらと問題を揚げてゆく。 

「 げ〜〜〜〜  これってぇ 習ってないデス〜〜 どくた〜 」

「 う・・・ わかんないデス どくた〜 」

「 ・・・・ 」

三人の生徒は この小屋の中では博士のことを どくた〜 と呼ぶ約束。

「 そうかな? 基本の数式と概念は学んでいるはずだ。

 応用してごらん  ほら 基本の式は これじゃ 」

「「「 げ〜〜〜  」」」

博士の ぽつぽつ出てくるヒントで 三人はなんとか問題を解いてゆく。

「 ・・・ 〜〜〜 です かあ? 」

「 ん? お〜〜 だいち君、正解じゃな。 」

「 うわお♪ 」

「 やったな〜〜 だいち 」

「 う〜〜〜ん ・・・・あ こういう解 ありですかあ? 」

「 ふん・・・?  すぴかさん よく気付いたな 

「 えへへ・・・ 」

若者たちの視野はどんどん広がってゆく。

 

「 では ノートをだして。 ディクテーション しなさい。

 いいかな 」

手元のスマホから ネイティブのスピーチが流れだす。

「 わ わ〜〜〜 待って〜〜 」

「 ・・・ え〜 な なんだ これ 」

「 知らない単語ばっかあ〜〜 」

「 静かにしないと聞きとれないぞ 」

「「「  う・・・ 」」」

なんとか書きとった文章を前に 三人は はへ・・・ な顔だ。

「 では このスピーチについて諸君の意見をききたい。 」

「「「 え〜〜〜〜〜 いみ わかんないよう〜  」」」

「 辞書の使用を許可する 」

「 う〜〜〜  ・・・ でも意味 わかんね 」

「 ・・・ これ 日本語、どういう意味? 」

「 え? ・・・ う〜〜  広く使う  ってことかなあ 」

若者たちは アタマを寄せ合って乏しい知識を出し合っている。

 

庭の掘っ建て小屋 での 授業。

アルベルト伯父さんの アドバイスで始まった ドクター・ギルモア の

ブレイン・ストリーミング で 子供達はつまり 脳に汗をかこう というわけだ。

学校の試験対策や 受験用の勉強は 一切しない。

しかし 三人の 頭脳 は 確実に 飛躍的に レベル・アップしていた。

 ― まだ 気づいてはいないけれど。

 

そして 博士が一番活き活きとしている。

最近は 寄る年波もあり、なにかと体調を崩しがちだった。

それが掘っ立て小屋教室 が始まって以来 外出も増え 

背筋も伸びてぴんしゃん・・・ だ。

 

「 〜〜〜〜  デス 」

すぴかが 和訳文を読み上げる。

「 すぴか。  そういう日本語は いや 言い方はあるかい? 」

「 あ〜 辞書に載ってたです 」

「 では すぴかは 普段そういう風に話すかな 」

「 ・・・ 話しマセン 」

「 では 適切な言葉に直してごらん?  

「 ・・・ ハイ 」

だいち君とすばるは 考え込んでいる。

「 あ そっか〜 そういう意味だったのか 」

「 ・・・ う〜 」

「 だいち君 すばるクン。 新聞を読みたまえ。 一番の訓練じゃよ 」

「 へ〜〜い 」

「 俺 ・・・ 店にオヤジが日経、置いてるから 読む! 」

 

 わいわい がやがや  う〜〜〜ん  わかんね〜〜

 

ワカモノ達は 楽しそうにアタマを突き合わせている。

 

    ふふふ ・・・ 小さい頃と同じじゃなあ

    三人で よく遊んでおったっけ

 

博士の方こそが この勉強会が楽しみになってきている。

 

 

 ― その頃 ・・・

 

     ガチャ。   玄関が開いた。

 

「 ただいま〜〜〜 」

「 あ ジョー ! お帰りなさ〜い 」

フランソワーズは 菜箸をもったまま飛び出してゆく。 

「 お帰りなさい ジョー〜〜 」

「 フラン ただいま   ・・・ ん〜〜〜 」

誰もいない玄関で 二人はみっちりキスを交わす。

これは結婚前からの習慣なのだ。

 

「 ・・・ お疲れさま。 今日は早いのね 

「 ああ たまには ね ・・・ 

 ああ チビ達 庭 かい? 」

ジョーは くい、と庭を指さす。

「 ええ。 そろそろバテている頃かな〜〜 

 お茶タイム の差し入れにゆくわ 」

「 ふふふ  あ ぼくも腹減ったあ〜〜  

「 まずは ウガイ 手洗い デス 」

「 はあい  お母さん。 」

「 イイコね。 晩ご飯は 大好物の肉ジャガです 」

「 うわお〜〜〜〜♪  手伝うよ 待ってて 」

「 お願いします 」

 ちゅ。 もう一回軽くキスを交わした。

 

キッチンで 久々に夫婦二人の差し向かいとなった。

「 ふん?? ああ いい匂いだなあ〜 だいち君とこから? 」

ジョーは くんくん・・・ハナを鳴らす。

「 そうよ。 ほら〜〜 」

フランソワーズは茶色の包を ふわ〜〜んと振ってみせる。

「 お〜〜〜 挽きたてのコーヒー〜〜〜♪

 しかし 毎月申し訳ないよなあ 

「 そうなんだけど ・・・ 」

わたなべ だいち君の家は お父さんがマスターを務める珈琲店。

< ぎるもあ・勉強会 > の御礼に、と

マスター自ら選びブレンドした特選・珈琲を 毎月届けてくれている。

「 どうしても・・・って。 だいち君のお父さん、お母さんが ね。」

「 ありがたいねえ ああ いい香だあ 

「 あ ・・・ すぴかがねえ お父さんに淹れてもらって。

 お母さんは触らないでね って 」

「 ははは 了解〜 最高にウマい一杯、淹れるよ 」

「 お願いします 」

「 ・・・ なんかさ〜 二人っきりって 」

「 ? なあに? 」

「 アイツらがさ 生まれる前 以来かあ? 」

「 あ〜 そうかも 

「 ふふ〜〜 ねえ フラン〜〜  

「 なあに。 」

ジョーは 白い手をこそ・・・っと握る。

きゅう〜 ・・・ 細い指が握りかえしてくれた。

「 えへへ  週末、デートしようよ? ドライブ、ど? 」

「 あらあ 久し振り♪  どこ 行く? 」

「 そうだなあ 久々 温泉とか ・・・ 近場だけど伊豆とか 」

「 いいわね〜〜  で どんな設定? 」

「 う〜ん ・・・ 新婚旅行? 」

「 あら 恋人同士のナイショの婚前旅行 なんかも 」

「 悪い娘だね 」

「 相手が悪いオトコなので 」

「 へへへ〜〜  では 悪巧み するか♪ 」

「 うふふ・・・ ウチのことはコドモたちに押し付けて 」

「 当然さ。 」

「  ・・・・ 」

 

   ちゅ。  熱いキスが ジョーの唇に降ってきた。

 

 

 

「 では 今日はここまで。 諸君、また次回。 」

「「「 ありがとうございました 」」」

勉強会は 時間通りに終わった。

 

「 うっぴゃ〜〜〜 疲れた〜 チョコ、くいて〜 」

「 あんたって食べることばっか すばる 」

「 あ じゃあ 僕は 」

「 あれ だいち君 晩ご飯一緒しない? 

「 すぴかちゃん、 ウチで待ってるからさ 」

「 そっか〜〜 あ オジサンに 珈琲ご馳走様です って。

 ほっんと美味しいよう〜〜 」

「 はは 親父 喜ぶよお〜  ありがと、すぴかちゃん 」

「 だいち 送ってくよ  あ チャリ? 」

「 ん。 」

「 え〜〜  チャリって 来るときは あの坂、昇ってくるわけ?

 チャリで?? 」

「 あは そうだけど 」

「 すっげ〜〜〜 脚 ぱんぱんにならね? 」

「 運動不足解消〜〜ってか  じゃ。

 あ オジサンとオバサンによろしく〜〜 」

「 うん ばいばい〜〜 」

「 ドクター  さようなら〜〜 」

「 おお 気をつけてな。 お父さん お母さんにヨロシクな  」

「 はい  

オトコのコ達は 連れだって出ていった。

 

「 ふぁ〜〜〜  おじいちゃま〜 戻る? 」

「 そうじゃな。 疲れたかい 」

「 そ〜でもない かな。  ねえ 面白いね〜〜 」

「 なにが 」

「 え 英語と国語と。 社会科も一緒くたになるね 」

「 そうじゃなあ 数学も一緒だぞ。 」

「 うん ・・・ ねえ おじいちゃま 」

「 なんだね 」

「 アタシ さ。 将来 ― お母さんの国に行きたいんだ 」

「 ほう?  観光かい 

「 − ううん。 留学 ってか・・・ 高校生になれば

 交換留学って あるでしょ 」

「 そうか。 それを目指すかい 」

「 ん。 アタシ お母さんの国で お母さんの国の言葉 勉強したい 

 あの さ  交換留学なら お金 そんなにかからない よね? 

「 わかった。 では すぴかはその目標めざし GO! だ

 お金のことは心配するな。 すぴかのやることは 試験に受かることじゃ 」

「 − はい!  あ ひざ掛け 持つね 」

「 おお ありがとう。 では 電気 消しておくれ。 

 ワシは戸締り じゃ 」

「 はは〜〜  こんな小屋 どろぼ〜に入ってもなんもないよね 」

「 まあ 一応 な 

博士とすぴか、 ずっと < 仲良し > な二人は

手を繋いで 母屋へ戻っていった。

 

さて オトコノコ達は暗くなった中 門の前でハナシ込んでいる。

 

「 ひゃ〜 暗いなあ だいち、チャリ大丈夫かよ 

「 ふん 慣れてるから 」

「 あ そだよなあ〜  ず〜っと上り下りしてるもんな 」

「 ここに住んでるヤツが な〜にいってんだよ 」

「 ま〜 そうだけど・・・

 あ だいち。 お前さ どうするつもり? 」

「 なにが? 」

「 だから 〜  そのう 将来 さ。 大学とか 」

「 う  ん ・・・ 俺 経営学部 とかかなあ

 国公立大の さ。 

「 経営? 」

「 ん。  ウチの店 しっかりしとかないと。 経営的にさ。

 それから ― カメラ やる!   すばるは? 」

「 俺?  あ〜 いちお〜 工学部 とかか かなあ 」

「 どくた〜 の後を継ぐっていってたじゃん 」

「 ん〜  できれば な  まだわかんないけど 」

「 すぴかちゃんは? 

「 アイツ?  ・・・ 多分 留学 だな 」

「 え!? 」

「 多分 な。 直接聞いてないけど なんとなく・・・ 

「 すぴかちゃん 英語 出来るよね  アメリカとか? 」

「 ん〜〜  多分 フランスだ 」

「 ふ フランス???  あ お前んとこのおばさんの国かあ 

「 ん ・・・ すぴかってさ お袋とあんまし仲良くないんだけどね 」

「 へ ええ・?? 」

「 すぴかは ず〜〜〜っとめっちゃ父さんっ子でさ。 」

「 ふ〜ん ・・・ 留学 かあ ・・・ 」

「 ま ウチはさ 金、ないから〜 無理っぽ 」

「 公費留学ってのもあるぜ 」

「 ふうん ・・・ 英語と国語じゃ アイツに敵わないし 」

「 ― ま 県立翠が丘 に合格するのが〜〜 先! 」

「 当然さ。  ガッツ! 」

「 おう 

< しんゆう > 同士は ぐ〜 タッチをし。

わたなべ だいち君は 急坂を自転車で  サ 〜〜〜〜〜〜っと

下っていった。

 

 

「 ごちそ〜〜さま でした 

ほかほか晩御飯のテ―ブルで 家族はみんな満足の笑顔 だ。

「 あっは〜〜〜 美味しかったなあ〜〜

 フラン〜〜 きみの料理はいっつも最高だよ♪ 」

ジョ― が でれ〜〜〜んとヒモが緩んだ顔で惚気ている。

「 あらあ(^^♪ そう? うふふ〜〜 嬉しいわあ 」

「 もうさ、 ジャガイモと玉ねぎと肉に割合、最高〜〜

 味付けも最高だよん♪ 」

「 うふふ〜〜 ワインとね、リンゴもちょっと入っているの 

「 なるほど〜〜 あ あと きみの愛〜〜 」

「 やだあ〜〜 もう(^^♪ 」

 

   ・・・ また やってるよ。    ようやるワ ・・・

 

彼らの息子と娘は あきれ果てた顔でしっかりソッポを向いている。

「 おじいちゃま  今日の 英語の話、 面白かった〜 

「 そうかい。 それでは 後で にゅうず・うぃ〜くで検索してごらん。

 全文が読める 」

「 わあ そうなんだ? 」

「 ねえ おじいちゃま  だいち ってばさあ

 いっつも < 問題 > の紙、もってんだよ 」

「 ほう? 数学のかい 」

「 そ! 俺らが解けないヤツばっかの ・・・

 アイツさ〜 ヒマがあると、その紙 眺めてる 」

「 ふふん そうか そうか ・・・

 彼はいずれ近いうちに 解 を見つけるだろう 

「 ふ〜〜〜ん  」

「 アンタみたく 甘いモノのことばっか考えてないってさ 

「 い〜じゃね〜か〜  好きなんだからああ 」

「 げ〜〜 アタシはあ アンマンを砂糖三杯いりのミルクティで

 たべる弟なんか 持った覚え ないよ? 」

「 すぴかに関係ね〜だろ〜 」

「 あ その言い方 なにさ〜 」

「 これこれ・・・ ケンカはよさんか。 」

「「 だあ〜〜ってぇ〜〜〜〜 」」

「 ほれ 来週は 全国統一模試 なのだろう? 

 ちゃんと寝とけ。 すばる!  名前 書くの、忘れるな。

 すぴか。  さっさと終わらせるのはいいがな、見直し を 

 念入りに。  いいな 」

「「 はあ〜〜い 」」

「 そうじゃ だいち君にな いつものペースで、と伝えておくれ 」

「 了解〜〜 」

 

 ― こんな会話の向うで ジョー と フランソワーズ は

いちゃいちゃ〜〜 しまくっていた ・・・ 新婚サンのように ・・・

 

 

  さて。  その次の週、中三全国一斉模試が行われた。

 

そのまた数日後のこと ―

 

 

  バン ッ !!

 

海岸通り中学の職員室で サトウ先生が 突然立ち上がった。

「 ?? 」 

全員が 振り向いた。

 

   た  大変 だ!  ウチから 全国一位 二位 が 出た!!!

 

「 え〜〜〜〜〜〜 」

「 って ・・・ この前の模試ですかあ〜〜 」

「 え す 数学で??? 」

先生方は口々に尋ねるが 肝心のサトウ先生は目を白黒しているばかり。

 

「 サトウ先生〜〜  しっかりしてくださいよ。

 誰が 全国一位 と 二位 なんです? 

国語科の ヤマダ女史は わさわさ・・・サトウ先生の肩を揺すった。

「 ・・・ あ  あ〜〜〜  

 は  はは ・・・ わたなべ だいち と しまむら すばる  が 」

 

   「「「  え〜〜〜〜〜〜〜  ????  」」」

 

職員室中が どよめいた。

 

 

Last updated : 04,14,2020.              index      /     next

 

***********   途中ですが

お馴染み 【 島村さんち 】 シリーズ〜〜〜

今回は ばっちり双子ちゃんがメインです。

以前 書いたハナシの拡大版 かな〜〜〜 続きます♪