『  夏を迎えに ― (1) ―  』 

 

 

 

 

    サア −−−−−−− ・・・・・!

 

真っ青な空から 風が勢いよく吹き降りてくる。

すでに熱気を含んではいるが それでも地上の熱さをふきとばす。

 

「 ん〜〜〜〜〜  いい風〜〜〜〜

 はあ〜〜 少しは涼しくなるかしら ・・・ 」

 

海からの風に 金色の髪を揺らせ フランソワーズはう〜〜ん と

伸びをする。

 

「 梅雨のじめじめ・・・が終わったのは嬉しいけど ・・・

 もうさっそくこの太陽ですものねえ ・・・ ちょっと負けるわあ 」

 

海に近い崖っぷちに建つ ちょっと古びた洋館・ギルモア邸。

実は鉄壁のセキュリティ と 巧みな設計により一年中の快適さ を

誇っている。

もちろん 冷暖房完璧完備、洗濯モノはウォッシング・マシンに放り込んでおけば

数分後にはぱりっと乾いて 出来上がる。 

食事は 超・電子レンジ によりほんの少し待つだけで 

山海の珍味 を とれとれの味で楽しめる。 

後片付けは 特殊食洗器 に入れておけば 使う前よりもぴかぴかの

滅菌済みの食器が静かにならんでいる。

掃除は もう最初から自動掃除機が徘徊し るんば なんぞとは

比べものにならない完璧さで 邸中を磨きあげる。

風呂・トイレ も 当然自動洗浄・床掃除 に設定してある。

ニンゲンは 設定さえきちんとしおくのが < 仕事 >だ。

 

 だから  家事の負担 というものは 限りなくゼロに近い。

 

 

    ・・・・ はずなのであるが。

 

「 ジョーぉ〜〜〜〜  洗濯ロープ 張ってぇ 〜〜〜〜 !  」 

フランソワーズは 裏庭から勝手口に向かって声を張り上げる。

「 ・・・ おう〜〜 全部  使うかあ? 」

「 ええ お願い〜〜 」

「 よし。  さ すぴか すばる。 そのカゴ 持ってこい。 」

「 は〜〜い   あ おと〜さん せんたくばさみ は? 」

「 おっと忘れてた〜〜  じゃあ すばるは そっちのカンを

 頼むな 」

「 はあい  ・・・ うわ おも・・・ うっんしょ! 」

「 フラン〜〜〜 ハンガー いるかい? 」

「 えっとぉ   5本、もってきて 」

「 オッケー。  すぴか すばる 持てるかい 」

「 もった! おと〜さん! 」

「 僕 も ・・・ 」

「 よ〜し 洗濯隊 しゅっぱ〜つ  

 

   よいしょ えっほ  うんしょ えっほ ・・・  

 

ジョーを先頭に < 洗濯隊 > が 裏庭に出てきた。

 

「 おか〜さ〜〜ん  もってきたァ〜〜 」

「 ありがとう 皆〜〜〜  

 すっごくいいお天気よ〜〜〜 パリッパリに乾くわね 」

「 そうだねえ  じゃあ ロープ 張ってくから・・・

 すぴか すばる こっちのカゴのシャツから乾せるかなあ 」

「 うん! できる!  アタシ、しゃつ ほすから〜〜

 すばる、くつした と はんかち! いい? 」

「 ん〜〜  ぱっちん  ぱっちん〜〜 」

「 まあ 二人とも上手ねえ〜〜  お母さん びっくりよ 」

「「 えへへへ・・・ 」」

「 大きなモノは お父さんが乾すからね〜〜〜

 あ すぴか 洗濯バサミ 持ってきて。

 すばる〜 こっち側 抑えててくれ〜 」

「「 はあい!!  」」

週末やら休日は 家族総出で洗濯するのがこの家の習慣なのだ。

家族で家事を分担するのは コドモ達は初めからそう教わっているし

特に ジョーは嬉々として < ウチの仕事 > を受けもつ。

 

 ― 住人たちは ごく原始的? いや 昭和的 に

自分たちの手足を使って家事をこなしている  それも 楽し気に☆

 

洗濯だけじゃない。 お風呂とトイレの掃除は お父さんの担当 で

コドモたちは 玄関とテラスの掃除が 仕事。

お母さんは 忙しいので休日に た・・・・っくさんお料理を作り

急速冷凍 しておく。

この作業には < お手伝い > が多数?参加し

特にすばるは熱心で 包丁はとっくに上手に使う。

最近は スウィーツ作り に凝っている ( すぴかは味見専門 )

 

   ― つまり 完備している自動家事装置 をあまり活用していない。

 

一見 不便そうだが 住人達はそんな風に考えたこともなく

自分たちの暮らす家の仕事を 誰もがそれぞれ受け持っている。

 

 

「 ねえ ジョー  夏休み ・・・ とれそう? 」

「 ああ < 取る > から。 」

そろそろ 蝉の声が賑やかになってきた日 フランソワーズは

少し不安そうに聞いた。

ジョーは遅い晩御飯を終え 二人で淹れたてのコーヒーを楽しんでいる。

「 え 取る? 」

「 そ。 なにがあっても! 夏季休暇 取得する。 

 そのために ず〜〜〜っとリモート・ワークも頑張ってるんだ 

「 ああ そうねえ ・・・ 普通に出社して

 それでまた持ち帰り仕事、してるわねえ  

「 うん。  今年はど〜〜しても 10日間 夏季休暇、取る 」

「 嬉しいけど ・・・ なにか  あった・・・ ?? 」

「 ははは なんか不思議そうだね〜 」

「 だって なんかすごく強気だから ・・・ 珍しく・・・ 

「 え  なに? 」

「 あ ううん なんでもな〜い 」

「 ?? ま いっか。  ふっふっふ〜〜 あのなあ

 言っちゃおうかなあ〜〜 」

「 え〜〜 なによ なによ〜〜〜  ナイショはナシよう〜 」

「 う〜〜ん もうちょっとヒミツにして置こうかな って

 思ってたんだけどぉ 」

「 え〜〜〜 やだやだ 教えてよ〜〜

 家庭内に秘密はナシ!  ねえねえ ってば 」

「 ふふふ  じゃあね・・・ じゃじゃ〜〜〜ん 発表しまあす♪

 ウチの家族はぁ 今年の夏は 北海道の別荘 で過ごしまあす 

「 え  え〜〜〜〜〜〜〜〜 !! 

「 ・・・ なんか すごい驚き方なんですけど ? 

「 あ ・・・ ご ごめんなさい ・・・ でも だって

 別荘 なんて・・・・ ウチが・・・ 」

「 えへへ ・・・ ぼくが借りたってわけじゃなくて。

 なあ 覚えてるかい?  結婚する前にさ ・・・

 ほら 北海道で避暑したこと、あっただろ?

 博士のご友人の別荘で ・・・ ジェットも来てさあ 」

 「 ! ああ あの時!  ・・・ なんか蝶々の標本が

 たくさんあるお家だった・・・? 」

「 うん そうなんだ。  今はね あの標本は全て

 研究機関に寄贈したんだって。 個人で管理するのは大変だしね 」

「 ああ そうなの。 それは いいことだと思うわ。

 わたし・・・ 標本って、特に昆虫とかの・・・ あまり好きじゃないのね

 ・・・ だって 採集して・・・ 殺すのでしょ 」

「 うん。 最近じゃあ あまりやらないみたいだけど ・・・ 

 博士のご友人も いろいろ考えたみたいだね。

 普通の家にしたので コドモさんもどうぞ どんどん使ってくださいってさ 」

「 まあ よかった!  ウチが行ってもそれなら安心ね 」

「 だろ?  あ・・・ きみの方のスケジュールは?  公演の予定とか ・・・

 大丈夫かな 」

「 ふふふ〜〜 わたしが ウチの行事に合わせます♪

 それにね あの別荘は広くて玄関に大きな鏡があったわ。

 わたし そこでレッスンします、ご心配なく♪ 」

「 わはは〜〜 ありがとう!

 それじゃ 今年の夏は〜〜  涼しいトコでバカンスだあ 」

「 嬉しいわあ〜〜 

「 あ ・・・ コーヒー  冷えちゃったね 淹れ直すか? 」

「 いいわ これで。  冷えてもオイシイし。 」

「 ま そうだね 」

二人は 笑い合いつつ残りのコーヒーを飲み乾した。

 

「 ああ 楽しみ〜〜〜〜  うふふ すぴかとすばる、

 きっと大騒ぎよ〜〜 

「 そうだねえ  今まで夏休みって・・・遠出したこと 

 ないもんなあ  

「 でも ウチの庭でキャンプしたり 魚屋さんとこの船に

 乗せてもらったり 結構いろいろ冒険したわ 

「 少しは ね。  できれば一回は 

 あの時の夏休み 忘れられないなあ〜〜 って思い出

 作ってやりたいんだ。 」

「 ジョー ・・・ 素敵なお父さんね  

「 え? ・・・ えへへ えっとぉ〜〜〜   あ そうだ。

 フラン きみはどんな風に夏休み 過ごしてた?

 そのう・・・ チビの頃 さ 」

「 わたしの夏休み?  そうねえ ・・・ ウチはごく普通の家だったけど

 毎年夏には 中部フランスの農園にあるコテージを借りてね

 家族で過ごしてたわね〜  うん  だいたい一月 ・・・

 畑もあって 取りたての野菜、すごく美味しかったな 」

フランソワーズは ちょっと目を細め少女時代を懐かしむ。

「 へ え・・・・ すごいなあ〜〜〜 一月! 」

「 あ それが普通なのよ  夏休みにパリにいるのは・・・

 旅行者の外国人ばっかり 」

「 へ え〜〜〜  」

「 ジョーは? 」

「 ぼくの夏休みの思い出? そうだなあ ・・・ 」

ジョーは 結構真剣な顔で考えこんでいた。

「 う〜〜ん ・・・ 全然いい思い出なんかないなあ 

 教会の施設にいたから 旅行なんてできなかったし・・・・

 あ  でも一回だけ 信者さん達のチャリティーで 

 皆で海の家にキャンプしたよ  うん あれはとても楽しかった! 」

「 ふふふ・・・ ちゃんといい思い出 あるじゃない?  

「 ま ささやかなものだけど 

「 規模とか長さが問題なのじゃないと思うわ。

 コドモ達が  これ 楽しい! って思うコトがあれば

 それが 最高なんだと思うの。 」

「 そうだね ・・・

 ふふふ〜〜 でも今年は ぼくも楽しみなんだ〜〜〜 」

「 わたしも で〜〜す♪  北海道でしょう? 

 きっとぴやぴや・・・・涼しいわね! 」

「 ウン  確か ・・・ 薪のストーブがあったはず・・・ 

 あれ 使えるかな 

「 ジョー〜 夏よ? いくら北海道でも

 夏にストーブは使わないでしょう? 

「 あ そうかあ ・・・ でも 焚火とかしたいなあ  」

「 ぶっぶ〜〜〜  焚火はダメよ。 」

「 う〜〜ん 残念〜  ぼくがチビの頃はさ 秋も終わりのころ

 落ち葉を集めて 教会の裏庭で焚火とかしてたんだ・・・

 時には 寮母さんがサツマイモを入れてくれてさ 

 皆 ものすご〜〜〜く楽しくて 美味しくて・・・ 

 うん ・・・ あの頃 結構楽しいことも あったんだなあ 」

「 ジョー ・・・ 素敵な思い出ね。 

「 フラン ・・・ うん ・・・ ありがとう 」

「 ねえ ウチのコドモたちにも そんな楽しい思い出、

 作ってあげましょうよ  ・・・たっくさん ・・・!

 いつか ・・・ 思い出して笑えるように ・・・

 いつか ・・・ 二人っきりに なっても ・・・ 

「 ・・・ フラン ・・・ 

ジョーは 彼の細君を抱き寄せた。

「 そうだね  そうだね  楽しい思い出 山盛りさ!

 もう一生分の思い出 二人に背負わせてやろうよ 」

「 ・・・ ジョー ・・・ 」

 

いつかは。  それはまだ遠い日だけれど。 

でも < その日 > は 必ずやってくる。

ごく普通に歳月を過ごし 年齢を重ね 大人になってゆく ― 

すぴか と すばる。

愛しい 愛しい 愛しい 我が子達。

ジョーは 子供達が生まれて 初めて < 目に入れても痛くない > という

表現を 実感として理解した。

フランソワーズは 自分でも 最強の存在 と自覚している。

子供達を護るためなら なんだって速攻でできる。 

それほどに ジョーとフランソワーズは コドモ達を愛している。

 

    そんな二人の前から  ―  姿を消さなければならない。

 

齢をとらず 永遠にその姿を変えることがない・サイボーグは。

ジョー と フランソワーズ は ・・・ 去らなければならないのだ。

 

「 ごめんなさい ・・・ わかっていることなのに・・

 あのコ達の命を授かった時から  わかっていたの  ・・・ 」

「 でも チビ達はぼくらのとこに来てくれたんだ!

 なあ これも運命だよ? う〜〜〜〜〜〜〜んと可愛がってやろうよ 」

「 ん ・・・ そ そうよね ・・・

 シアワセな楽しい時間を ぎゅ・・・っとして 」

「 そうさ。 一生分!

 だから! 今年の夏は 涼しいトコでう〜〜〜んと楽しもうぜ 

「 ええ ええ 」

「 博士もね〜〜 涼しいところで論文をいくつか仕上げたいんだって 」

「 あら いいわね〜〜 

 ・・・ あ チビ達 ウルサイかしら・・・ 」

「 へ〜きへ〜き  ひろ〜〜い原野があるじゃん?

 すぴかが叫ぼうが すばるが喚こうが  聞こえないさ  」

「 そうね そうね 」

「 あ・・・ 庭にピザ窯がある・・・って聞いたから

 そこで ピザとかパンとか焼けるよ 」

「 うわあ〜〜 素敵!  お家で焼きたてパン〜〜 なんて

 最高よ〜〜 」

「 楽しい夏休み! だね 」

「 ええ♪   最高のお父さんね ジョーってば 」

 

     ちゅ。   温かいキスがジョーの唇に降ってきた。

 

「 むっふっふ〜〜 ♪  奥さま そんなに誘惑しないでください? 

「 え?? 」

「 アラート・ランプ  ぴかぴか〜〜 です♪ 

 今晩は 夏休み前夜祭 ってことで♪ 」

「 え あ あらら ・・・ うふ♪ 」

彼は さっくり・・・ 彼の愛妻を抱き上げた。

 

 

 

    バァ −−−−−   ザザザ ・・・

 

小型のバンは 邸の門の前にゆっくりと止まった。

 

   ドン。    ドアが開いて金髪美人が勢いよく出てきた。

 

「 門  開けるわね〜〜〜〜 

 

ガラガラガラ ・・・  

低い鉄格子の門が 少々軋みつつ左右に開いた。

「 さ  入って  」

 

  パ パアン ・・・ !    バンがすぐに応答した。

 

「 ピッピ〜〜 そのまま バックしてくださあい・・・

 玄関の横まで 誘導します 」

 

   ザリザリザリ ―  バンはゆっくりと邸の庭に入っていった。

 

「  わあい !! 

「  うっわあ〜〜〜 」

 

バンが止まると すぐに 色違いの髪をしたチビっこが二人、

飛び出してきた。

 

「 ひゃあ〜〜〜  すずし〜〜〜〜 」

「 ・・・ お外も くーらー? 」

「 ち が〜〜うよ〜〜〜〜  すばる。 ここは ほっかいど〜 だもん 」

「 ほっかいど〜 ってクーラーの国? 」

「 すずしいトコ つてこと!  ね〜〜〜 おじ〜ちゃま〜〜 」

「 おじ〜ちゃま〜〜〜 」

 

二人はすぐにバンの側に戻ると 降りようとしている博士に手を貸した。

「 おう ・・・ ありがとうよ すぴか すばる 」

「 えへへ ねえ おじいちゃま〜 ここ ほっかいど〜 だよね 

「 そうじゃよ すぴか。 よく知ってるなあ 」

「 ねえねえ ほっかいど〜 って クーラーの国? 」

「 ははは ここはなあ すばるのオウチよりもず〜〜〜っと

 北にあるのさ。  冬なんか雪で埋まるところだよ 」

「 へ  え ・・・   ゆき ふるかな・・・! 」

「 今は夏じゃから 雪は降らんがね。 

「 ふうん ・・・ 」

「 ああ 気持ちがいいのう〜〜 緑の匂いがする ・・・」

「 うん・・・?  あ ・・・ くりすます・つり〜 のにおい・・・ 」

すぴか がくんくん・・・ 空気の匂いを嗅いでいる。

「 あはは クリスマス・ツリーかあ ・・・

 うん これは針葉樹の葉の香り じゃな 」

「 しんようじゅ? 」

「 そうじゃよ。 クリスマス・ツリーの葉っぱみたいに

 尖った葉っぱの樹のことだよ 」

「 ・・ ふうん ・・・ 」

 

「 すぴか〜〜 すばる〜〜 荷物、運ぶの 手伝ってくれ 」

「「 はあ〜〜い  おと〜さ〜ん  」」

父親に呼ばれ コドモたちはバンの後方に駆けていった。

 

 

「 うんしょ うんしょ ・・・ おじ〜ちゃま〜〜〜

 ぱそこん こっち? 」

「 おお ありがとうよ すぴか  うん その机の上に頼む 」

「 はあい ・・・  ん〜〜〜  これでいい? 」

「 おう ありがとう。  ・・・ ほら ここに来てごらん 」

「 ?? 」

博士は 大きな窓の側にお気に入りの孫娘を差し招いた。

「 外の樹々 ・・・ ほとんどが針葉樹だよ。

 ウチの裏山の樹とは ずいぶん違うだろう? 」

「 ・・・ ほんとだ!  葉っぱ つんつん〜〜〜 だね!

 くりすます・つり〜 の匂い いっぱいだあ〜〜 」

「 すぴかはよう気が付くコじゃのう・・・ 」

「 えへへ・・・ そう? 」

「 ああ  なんでもよく観察している、ということじゃ。

 すごくいいことだよ。 その大きな目で なんでもしっかり・・・

 見つめてごらん 

「 ん。  ねえ おじいちゃま  ここはすずしいし〜

 くうきのにおい がウチとはちがうね  」

「 うむ これは森の匂い かな。

 さあ 10日間 すぴかはどれだけいろいろなものを

 見つけることができるかな? 」

「 え〜〜〜〜  どうだろ・・・? 」

「 見つけたモノ、書き留めておけば 夏休みの研究 に

 なるよ 」

「 あ そか!  うわあ・・・ 

 あ?  なんか飛んでる ・・・?  むし ? 」

「 どれ・・・  ああ あれは蝶じゃな。 蛾もおるだろう 」

「 ちょうちょ?  わあ いっぱい・・・ 」

 こっちにも あっちも ・・・ 」

すぴかは 窓を大きくあけてじ〜〜〜っと森の中に視線を飛ばしていた。

 

 

「 す〜ばる〜〜〜  お〜〜い すばる〜〜 」

キッチンでお父さんが呼んでいる。

「 なに〜〜〜  おと〜〜さ〜〜〜〜ん 

 

  どたどたどた・・・ すばるは コドモ部屋から駆けてきた。

 

「 自分の荷物、お部屋に入れたかい 

「 うん!  ぱんつ と しゃつ と くつした!

 ね〜〜 ベッド おっきいのがいっこ だよ? おと〜さん 

「 うん 大人用だから すぴかと一緒に使いなさい 」

「 ・・・ え 」

「 < え >  って なんだ 」

「 すぴか ・・・ けっとばすんだもん・・・ ねてるとき 」

「 あはは  すぴかは素晴らしい寝相だからなあ 」

「 だから ・・さ ・・・ 僕ぅ 〜〜 」

「 じゃあね う〜〜んと端っこで寝たらいいさ。

 実はね・・・ お父さんもさ お母さんに蹴飛ばされたこと、あるんだ  」

「 え??  おか〜さんが ?  ウソ・・・ 」

「 ホント。  これはナイショだけどさ  お母さんの寝相も

 か〜〜なりスバらしいのさ 」

「 ひゃあ ・・・  おと〜さん いたかった?

 おか〜さんにけっとばされて ・・・ 」

「 ふふふ びっくりして飛び起きた!  そしたら 」

「 そしたら ・・・? 」

「 おか〜さんは す〜す〜 眠ってたのさ 」

「 ・・・ すぴかとおんなじだあ 」

「 ウチの女子チームは寝てても元気だよねえ・・・

 すばる、すぴかに蹴飛ばされて目が覚めたらさ

 お父さんのトコに避難しておいで〜  一緒に寝ようよ 」

「 うっわ〜〜〜♪  うん!  えへへへ  」

「 さあ 晩ご飯の用意するぞ〜〜〜

 すばる 手伝ってくれ 」

「 うん!  なに つくるの〜〜〜 

 ここのきっちん ・・・ ウチよかせまいね 」

「 そうだねえ  ・・・ じゃ 野菜剥きとか 外でやろうか 

「 え  お外で?? 」

「 ああ。 涼しいし 蚊もいないよ。 」

「 うわあ・・・ お外でお料理〜〜〜〜〜 うわあ〜〜〜 」

「 じゃ お父さん ベランダにあったテーブル 持ってくるから。

 すばる、 じゃがいも と にんじん、きゃべつ、を

 出しておいてくれ 」

「 うん!  え〜〜っと・・・ あ たまねぎ もほしいなあ

 おと〜さん きっと カレー 作るよね 

お料理少年・すばる は ごそごそ・・・食糧庫の中に

首を突っ込んでいる。

 

 

「 すばる そっちの野菜、 皆 切ってくれ 」

「 ウン わぎり でいい  おとうさん 

「 いいぞ〜 一センチくらい かな 」

「 おっけ〜〜   おと〜さんは 」

「 お父さんは 肉を切る。 あと トウモロコシ だな 」

「 ??? おと〜さん  カレーに とうもろこし いれるの?? 」

「 え??  あはは 今晩はカレーじゃないよ 

「 え???  じゃがいも にんじん たまねぎ・・・

 あと きゃべつ に お肉・・・ だよね?  」

「 そうさ。 」

「 ばんごはん ・・・ なに?? 

「 うふふ・・・ 鉄板焼き さ! 最後に 焼きそば するよ〜 」

「 う わあああ〜〜〜〜〜〜  てっぱんやき !!! 」

「 そ。 それも ここで ・・・ 外で やるよ 」

「 うっそ〜〜〜〜 うわ うわ わああああ〜〜〜 

「 ははは  さあ がんばって野菜 切ってくれ すばる。 」

「 うん!!! 」

男子チームは 庭で食事の準備に集中、余念がない。

 

一方 女子チームは ・・・

 

「 ・・・ くんくん ・・・ あ〜 またちがうニオイ ・・・

 ミント・アイス みたいだよ? 

すぴかは 門の側で別荘の周りを眺めている。

「 すご〜〜い〜〜〜〜 みどり色って ・・・

 すご〜いいっぱいあるんだぁ〜〜〜  木の色がさ 

 み〜〜んなちがうよう・・・ 」

「 すぴか〜〜  なにを見てるの 」

「 おか〜さん ・・・ 」

後ろから お母さんが ぽん、とすぴかのアタマに帽子をのせた。

「 お帽子。 涼しくてもお日様 出てるからね〜 」

「 あ ・・ うん ・・・ 」

「 なに見てるの 」

「 え ・・・ うん あの ・・・ 葉っぱ! 」

「 葉っぱ?  ああ 樹の葉っぱね 」

「 ウン。 いろんなみどり色なんだよ〜〜

 それでさ ちょうちょ がひらひら・・・ いっぱいいる 」

「 え・・・ あら ホント・・・ 」

お母さんも 林の方を見つめている。

「 ねえ すぴかさん。 お母さんとほら・・・あっちの林の方

 いってみない?  

「 うん いく!!! 」

「 大きな木 たくさんあるわね〜〜〜 面白いわ 」

「 えへへ  アタシ 登りたいなあ 」

すぴかは 嬉しさに頬を染めて そ・・・っと母の手を握ってきた。

「 あら いいわね!

 ・・・ ふふふ  ねえ すぴか。 いいこと、教えてたげるわ 」

「 ?? なに おか〜さん 」

「 き の ぼ り。  

「 きのぼり・・・?    おか〜さんが??  うっそ〜〜 」

すぴかの目は もうまん丸でこぼれ落ちそうだ。

「 ホントよ〜う。  うふふ あのね・・・

 お母さんね〜 実はチビのころ 木登名人だったの 」

「 ウソ〜〜〜〜〜〜〜〜 !!! 」

「 すぴかには負けないわよ〜〜〜  さ 登れそうな木、

 見つけに行きましょ 」

「 うん♪  うわ〜〜〜い〜〜〜 」

 

  ふんふんふ〜〜ん♪    るんるんら〜〜〜ん ♪

 

手を繋いだ金髪アタマが二つ 緑の中を分け入ってゆく。

 ひらひらひら ・・・  小さな蝶々が 纏わるみたいに飛んでいた。

 

 

Last updated : 07.20.2021.                index       /      next

 

 

*********    途中ですが

え〜〜〜 夏休み話 です☆

原作あのお話 のシチュエーションを拝借していますが

【島村さんち】 ですので 2君は出演いたしませんです。