『 夏を迎えに ― (1) ― 』
サア −−−−−−− ・・・・・!
真っ青な空から 風が勢いよく吹き降りてくる。
すでに熱気を含んではいるが それでも地上の熱さをふきとばす。
「 ん〜〜〜〜〜 いい風〜〜〜〜
はあ〜〜 少しは涼しくなるかしら ・・・ 」
海からの風に 金色の髪を揺らせ フランソワーズはう〜〜ん と
伸びをする。
「 梅雨のじめじめ・・・が終わったのは嬉しいけど ・・・
もうさっそくこの太陽ですものねえ ・・・ ちょっと負けるわあ 」
海に近い崖っぷちに建つ ちょっと古びた洋館・ギルモア邸。
実は鉄壁のセキュリティ と 巧みな設計により一年中の快適さ を
誇っている。
もちろん 冷暖房完璧完備、洗濯モノはウォッシング・マシンに放り込んでおけば
数分後にはぱりっと乾いて 出来上がる。
食事は 超・電子レンジ によりほんの少し待つだけで
山海の珍味 を とれとれの味で楽しめる。
後片付けは 特殊食洗器 に入れておけば 使う前よりもぴかぴかの
滅菌済みの食器が静かにならんでいる。
掃除は もう最初から自動掃除機が徘徊し るんば なんぞとは
比べものにならない完璧さで 邸中を磨きあげる。
風呂・トイレ も 当然自動洗浄・床掃除 に設定してある。
ニンゲンは 設定さえきちんとしおくのが < 仕事 >だ。
だから 家事の負担 というものは 限りなくゼロに近い。
・・・・ はずなのであるが。
「 ジョーぉ〜〜〜〜 洗濯ロープ 張ってぇ 〜〜〜〜 ! 」
フランソワーズは 裏庭から勝手口に向かって声を張り上げる。
「 ・・・ おう〜〜 全部 使うかあ? 」
「 ええ お願い〜〜 」
「 よし。 さ すぴか すばる。 そのカゴ 持ってこい。 」
「 は〜〜い あ おと〜さん せんたくばさみ は? 」
「 おっと忘れてた〜〜 じゃあ すばるは そっちのカンを
頼むな 」
「 はあい ・・・ うわ おも・・・ うっんしょ! 」
「 フラン〜〜〜 ハンガー いるかい? 」
「 えっとぉ 5本、もってきて 」
「 オッケー。 すぴか すばる 持てるかい 」
「 もった! おと〜さん! 」
「 僕 も ・・・ 」
「 よ〜し 洗濯隊 しゅっぱ〜つ
」
よいしょ えっほ うんしょ えっほ ・・・
ジョーを先頭に < 洗濯隊 > が 裏庭に出てきた。
「 おか〜さ〜〜ん もってきたァ〜〜 」
「 ありがとう 皆〜〜〜
すっごくいいお天気よ〜〜〜 パリッパリに乾くわね 」
「 そうだねえ じゃあ ロープ 張ってくから・・・
すぴか すばる こっちのカゴのシャツから乾せるかなあ 」
「 うん! できる! アタシ、しゃつ ほすから〜〜
すばる、くつした と はんかち! いい? 」
「 ん〜〜 ぱっちん ぱっちん〜〜 」
「 まあ 二人とも上手ねえ〜〜 お母さん びっくりよ 」
「「 えへへへ・・・ 」」
「 大きなモノは お父さんが乾すからね〜〜〜
あ すぴか 洗濯バサミ 持ってきて。
すばる〜 こっち側 抑えててくれ〜 」
「「 はあい!! 」」
週末やら休日は 家族総出で洗濯するのがこの家の習慣なのだ。
家族で家事を分担するのは コドモ達は初めからそう教わっているし
特に ジョーは嬉々として < ウチの仕事 > を受けもつ。
― 住人たちは ごく原始的? いや 昭和的 に
自分たちの手足を使って家事をこなしている それも 楽し気に☆
洗濯だけじゃない。 お風呂とトイレの掃除は お父さんの担当 で
コドモたちは 玄関とテラスの掃除が 仕事。
お母さんは 忙しいので休日に た・・・・っくさんお料理を作り
急速冷凍 しておく。
この作業には < お手伝い > が多数?参加し
特にすばるは熱心で 包丁はとっくに上手に使う。
最近は スウィーツ作り に凝っている ( すぴかは味見専門 )
― つまり 完備している自動家事装置 をあまり活用していない。
一見 不便そうだが 住人達はそんな風に考えたこともなく
自分たちの暮らす家の仕事を 誰もがそれぞれ受け持っている。
「 ねえ ジョー 夏休み ・・・ とれそう? 」
「 ああ < 取る > から。 」
そろそろ 蝉の声が賑やかになってきた日 フランソワーズは
少し不安そうに聞いた。
ジョーは遅い晩御飯を終え 二人で淹れたてのコーヒーを楽しんでいる。
「 え 取る? 」
「 そ。 なにがあっても! 夏季休暇 取得する。
そのために ず〜〜〜っとリモート・ワークも頑張ってるんだ 」
「 ああ そうねえ ・・・ 普通に出社して
それでまた持ち帰り仕事、してるわねえ
」
「 うん。 今年はど〜〜しても 10日間 夏季休暇、取る 」
「 嬉しいけど ・・・ なにか あった・・・ ?? 」
「 ははは なんか不思議そうだね〜 」
「 だって なんかすごく強気だから ・・・ 珍しく・・・ 」
「 え なに? 」
「 あ ううん なんでもな〜い 」
「 ?? ま いっか。 ふっふっふ〜〜 あのなあ
言っちゃおうかなあ〜〜 」
「 え〜〜 なによ なによ〜〜〜 ナイショはナシよう〜 」
「 う〜〜ん もうちょっとヒミツにして置こうかな って
思ってたんだけどぉ 」
「 え〜〜〜 やだやだ 教えてよ〜〜
家庭内に秘密はナシ! ねえねえ ってば 」
「 ふふふ じゃあね・・・ じゃじゃ〜〜〜ん 発表しまあす♪
ウチの家族はぁ 今年の夏は 北海道の別荘 で過ごしまあす 」
「 え え〜〜〜〜〜〜〜〜 !! 」
「 ・・・ なんか すごい驚き方なんですけど ? 」
「 あ ・・・ ご ごめんなさい ・・・ でも だって
別荘 なんて・・・・ ウチが・・・ 」
「 えへへ ・・・ ぼくが借りたってわけじゃなくて。
なあ 覚えてるかい? 結婚する前にさ ・・・
ほら 北海道で避暑したこと、あっただろ?
博士のご友人の別荘で ・・・ ジェットも来てさあ 」
「 ! ああ あの時! ・・・ なんか蝶々の標本が
たくさんあるお家だった・・・? 」
「 うん そうなんだ。 今はね あの標本は全て
研究機関に寄贈したんだって。 個人で管理するのは大変だしね 」
「 ああ そうなの。 それは いいことだと思うわ。
わたし・・・ 標本って、特に昆虫とかの・・・ あまり好きじゃないのね
・・・ だって 採集して・・・ 殺すのでしょ 」
「 うん。 最近じゃあ あまりやらないみたいだけど ・・・
博士のご友人も いろいろ考えたみたいだね。
普通の家にしたので コドモさんもどうぞ どんどん使ってくださいってさ 」
「 まあ よかった! ウチが行ってもそれなら安心ね 」
「 だろ? あ・・・ きみの方のスケジュールは? 公演の予定とか ・・・
大丈夫かな 」
「 ふふふ〜〜 わたしが ウチの行事に合わせます♪
それにね あの別荘は広くて玄関に大きな鏡があったわ。
わたし そこでレッスンします、ご心配なく♪ 」
「 わはは〜〜 ありがとう!
それじゃ 今年の夏は〜〜 涼しいトコでバカンスだあ 」
「 嬉しいわあ〜〜 」
「 あ ・・・ コーヒー 冷えちゃったね 淹れ直すか? 」
「 いいわ これで。 冷えてもオイシイし。 」
「 ま そうだね 」
二人は 笑い合いつつ残りのコーヒーを飲み乾した。
「 ああ 楽しみ〜〜〜〜 うふふ すぴかとすばる、
きっと大騒ぎよ〜〜 」
「 そうだねえ 今まで夏休みって・・・遠出したこと
ないもんなあ
」
「 でも ウチの庭でキャンプしたり 魚屋さんとこの船に
乗せてもらったり 結構いろいろ冒険したわ 」
「 少しは ね。 できれば一回は
あの時の夏休み 忘れられないなあ〜〜 って思い出
作ってやりたいんだ。 」
「 ジョー ・・・ 素敵なお父さんね
」
「 え? ・・・ えへへ えっとぉ〜〜〜 あ そうだ。
フラン きみはどんな風に夏休み 過ごしてた?
そのう・・・ チビの頃 さ 」
「 わたしの夏休み? そうねえ ・・・ ウチはごく普通の家だったけど
毎年夏には 中部フランスの農園にあるコテージを借りてね
家族で過ごしてたわね〜 うん だいたい一月 ・・・
畑もあって 取りたての野菜、すごく美味しかったな 」
フランソワーズは ちょっと目を細め少女時代を懐かしむ。
「 へ え・・・・ すごいなあ〜〜〜 一月! 」
「 あ それが普通なのよ 夏休みにパリにいるのは・・・
旅行者の外国人ばっかり 」
「 へ え〜〜〜 」
「 ジョーは? 」
「 ぼくの夏休みの思い出? そうだなあ ・・・ 」
ジョーは 結構真剣な顔で考えこんでいた。
「 う〜〜ん ・・・ 全然いい思い出なんかないなあ
教会の施設にいたから 旅行なんてできなかったし・・・・
あ でも一回だけ 信者さん達のチャリティーで
皆で海の家にキャンプしたよ うん あれはとても楽しかった! 」
「 ふふふ・・・ ちゃんといい思い出 あるじゃない?
」
「 ま ささやかなものだけど 」
「 規模とか長さが問題なのじゃないと思うわ。
コドモ達が これ 楽しい! って思うコトがあれば
それが 最高なんだと思うの。 」
「 そうだね ・・・
ふふふ〜〜 でも今年は ぼくも楽しみなんだ〜〜〜 」
「 わたしも で〜〜す♪ 北海道でしょう?
きっとぴやぴや・・・・涼しいわね! 」
「 ウン 確か ・・・ 薪のストーブがあったはず・・・
あれ 使えるかな 」
「 ジョー〜 夏よ? いくら北海道でも
夏にストーブは使わないでしょう? 」
「 あ そうかあ ・・・ でも 焚火とかしたいなあ 」
「 ぶっぶ〜〜〜 焚火はダメよ。 」
「 う〜〜ん 残念〜 ぼくがチビの頃はさ 秋も終わりのころ
落ち葉を集めて 教会の裏庭で焚火とかしてたんだ・・・
時には 寮母さんがサツマイモを入れてくれてさ
皆 ものすご〜〜〜く楽しくて 美味しくて・・・
うん ・・・ あの頃 結構楽しいことも あったんだなあ 」
「 ジョー ・・・ 素敵な思い出ね。 」
「 フラン ・・・ うん ・・・ ありがとう 」
「 ねえ ウチのコドモたちにも そんな楽しい思い出、
作ってあげましょうよ ・・・たっくさん ・・・!
いつか ・・・ 思い出して笑えるように ・・・
いつか ・・・ 二人っきりに なっても ・・・ 」
「 ・・・ フラン ・・・ 」
ジョーは 彼の細君を抱き寄せた。
「 そうだね そうだね 楽しい思い出 山盛りさ!
もう一生分の思い出 二人に背負わせてやろうよ 」
「 ・・・ ジョー ・・・ 」
いつかは。 それはまだ遠い日だけれど。
でも < その日 > は 必ずやってくる。
ごく普通に歳月を過ごし 年齢を重ね 大人になってゆく ―
すぴか と すばる。
愛しい 愛しい 愛しい 我が子達。
ジョーは 子供達が生まれて 初めて < 目に入れても痛くない > という
表現を 実感として理解した。
フランソワーズは 自分でも 最強の存在 と自覚している。
子供達を護るためなら なんだって速攻でできる。
それほどに ジョーとフランソワーズは コドモ達を愛している。
そんな二人の前から ― 姿を消さなければならない。
齢をとらず 永遠にその姿を変えることがない・サイボーグは。
ジョー と フランソワーズ は ・・・ 去らなければならないのだ。
「 ごめんなさい ・・・ わかっていることなのに・・
あのコ達の命を授かった時から わかっていたの ・・・ 」
「 でも チビ達はぼくらのとこに来てくれたんだ!
なあ これも運命だよ? う〜〜〜〜〜〜〜んと可愛がってやろうよ 」
「 ん ・・・ そ そうよね ・・・
シアワセな楽しい時間を ぎゅ・・・っとして 」
「 そうさ。 一生分!
だから! 今年の夏は 涼しいトコでう〜〜〜んと楽しもうぜ 」
「 ええ ええ 」
「 博士もね〜〜 涼しいところで論文をいくつか仕上げたいんだって 」
「 あら いいわね〜〜
・・・ あ チビ達 ウルサイかしら・・・ 」
「 へ〜きへ〜き ひろ〜〜い原野があるじゃん?
すぴかが叫ぼうが すばるが喚こうが 聞こえないさ 」
「 そうね そうね 」
「 あ・・・ 庭にピザ窯がある・・・って聞いたから
そこで ピザとかパンとか焼けるよ 」
「 うわあ〜〜 素敵! お家で焼きたてパン〜〜 なんて
最高よ〜〜 」
「 楽しい夏休み! だね 」
「 ええ♪ 最高のお父さんね ジョーってば 」
ちゅ。 温かいキスがジョーの唇に降ってきた。
「 むっふっふ〜〜 ♪ 奥さま そんなに誘惑しないでください? 」
「 え?? 」
「 アラート・ランプ ぴかぴか〜〜 です♪
今晩は 夏休み前夜祭 ってことで♪ 」
「 え あ あらら ・・・ うふ♪ 」
彼は さっくり・・・ 彼の愛妻を抱き上げた。
バァ −−−−− ザザザ ・・・
小型のバンは 邸の門の前にゆっくりと止まった。
ドン。 ドアが開いて金髪美人が勢いよく出てきた。
「 門 開けるわね〜〜〜〜 」
ガラガラガラ ・・・
低い鉄格子の門が 少々軋みつつ左右に開いた。
「 さ 入って 」
パ パアン ・・・ ! バンがすぐに応答した。
「 ピッピ〜〜 そのまま バックしてくださあい・・・
玄関の横まで 誘導します 」
ザリザリザリ ― バンはゆっくりと邸の庭に入っていった。
「 わあい !! 」
「 うっわあ〜〜〜 」
バンが止まると すぐに 色違いの髪をしたチビっこが二人、
飛び出してきた。
「 ひゃあ〜〜〜 すずし〜〜〜〜 」
「 ・・・ お外も くーらー? 」
「 ち が〜〜うよ〜〜〜〜 すばる。 ここは ほっかいど〜 だもん 」
「 ほっかいど〜 ってクーラーの国? 」
「 すずしいトコ つてこと! ね〜〜〜 おじ〜ちゃま〜〜 」
「 おじ〜ちゃま〜〜〜 」
二人はすぐにバンの側に戻ると 降りようとしている博士に手を貸した。
「 おう ・・・ ありがとうよ すぴか すばる 」
「 えへへ ねえ おじいちゃま〜 ここ ほっかいど〜 だよね 」
「 そうじゃよ すぴか。 よく知ってるなあ 」
「 ねえねえ ほっかいど〜 って クーラーの国? 」
「 ははは ここはなあ すばるのオウチよりもず〜〜〜っと
北にあるのさ。 冬なんか雪で埋まるところだよ 」
「 へ え ・・・ ゆき ふるかな・・・! 」
「 今は夏じゃから 雪は降らんがね。 」
「 ふうん ・・・ 」
「 ああ 気持ちがいいのう〜〜 緑の匂いがする ・・・」
「 うん・・・? あ ・・・ くりすます・つり〜 のにおい・・・ 」
すぴか がくんくん・・・ 空気の匂いを嗅いでいる。
「 あはは クリスマス・ツリーかあ ・・・
うん これは針葉樹の葉の香り じゃな 」
「 しんようじゅ? 」
「 そうじゃよ。 クリスマス・ツリーの葉っぱみたいに
尖った葉っぱの樹のことだよ 」
「 ・・ ふうん ・・・ 」
「 すぴか〜〜 すばる〜〜 荷物、運ぶの 手伝ってくれ 」
「「 はあ〜〜い おと〜さ〜ん
」」
父親に呼ばれ コドモたちはバンの後方に駆けていった。
「 うんしょ うんしょ ・・・ おじ〜ちゃま〜〜〜
ぱそこん こっち? 」
「 おお ありがとうよ すぴか うん その机の上に頼む 」
「 はあい ・・・ ん〜〜〜 これでいい? 」
「 おう ありがとう。 ・・・ ほら ここに来てごらん 」
「 ?? 」
博士は 大きな窓の側にお気に入りの孫娘を差し招いた。
「 外の樹々 ・・・ ほとんどが針葉樹だよ。
ウチの裏山の樹とは ずいぶん違うだろう? 」
「 ・・・ ほんとだ! 葉っぱ つんつん〜〜〜 だね!
くりすます・つり〜 の匂い いっぱいだあ〜〜 」
「 すぴかはよう気が付くコじゃのう・・・ 」
「 えへへ・・・ そう? 」
「 ああ なんでもよく観察している、ということじゃ。
すごくいいことだよ。 その大きな目で なんでもしっかり・・・
見つめてごらん 」
「 ん。 ねえ おじいちゃま ここはすずしいし〜
くうきのにおい がウチとはちがうね 」
「 うむ これは森の匂い かな。
さあ 10日間 すぴかはどれだけいろいろなものを
見つけることができるかな? 」
「 え〜〜〜〜 どうだろ・・・? 」
「 見つけたモノ、書き留めておけば 夏休みの研究 に
なるよ 」
「 あ そか! うわあ・・・
あ? なんか飛んでる ・・・? むし ? 」
「 どれ・・・ ああ あれは蝶じゃな。 蛾もおるだろう 」
「 ちょうちょ? わあ いっぱい・・・ 」
こっちにも あっちも ・・・ 」
すぴかは 窓を大きくあけてじ〜〜〜っと森の中に視線を飛ばしていた。
「 す〜ばる〜〜〜 お〜〜い すばる〜〜 」
キッチンでお父さんが呼んでいる。
「 なに〜〜〜 おと〜〜さ〜〜〜〜ん 」
どたどたどた・・・ すばるは コドモ部屋から駆けてきた。
「 自分の荷物、お部屋に入れたかい 」
「 うん! ぱんつ と しゃつ と くつした!
ね〜〜 ベッド おっきいのがいっこ だよ? おと〜さん 」
「 うん 大人用だから すぴかと一緒に使いなさい 」
「 ・・・ え 」
「 < え > って なんだ 」
「 すぴか ・・・ けっとばすんだもん・・・ ねてるとき 」
「 あはは すぴかは素晴らしい寝相だからなあ 」
「 だから ・・さ ・・・ 僕ぅ 〜〜 」
「 じゃあね う〜〜んと端っこで寝たらいいさ。
実はね・・・ お父さんもさ お母さんに蹴飛ばされたこと、あるんだ 」
「 え?? おか〜さんが ? ウソ・・・ 」
「 ホント。 これはナイショだけどさ お母さんの寝相も
か〜〜なりスバらしいのさ 」
「 ひゃあ ・・・ おと〜さん いたかった?
おか〜さんにけっとばされて ・・・ 」
「 ふふふ びっくりして飛び起きた! そしたら 」
「 そしたら ・・・? 」
「 おか〜さんは す〜す〜 眠ってたのさ 」
「 ・・・ すぴかとおんなじだあ 」
「 ウチの女子チームは寝てても元気だよねえ・・・
すばる、すぴかに蹴飛ばされて目が覚めたらさ
お父さんのトコに避難しておいで〜 一緒に寝ようよ 」
「 うっわ〜〜〜♪ うん! えへへへ 」
「 さあ 晩ご飯の用意するぞ〜〜〜
すばる 手伝ってくれ 」
「 うん! なに つくるの〜〜〜
ここのきっちん ・・・ ウチよかせまいね 」
「 そうだねえ ・・・ じゃ 野菜剥きとか 外でやろうか 」
「 え お外で?? 」
「 ああ。 涼しいし 蚊もいないよ。 」
「 うわあ・・・ お外でお料理〜〜〜〜〜 うわあ〜〜〜 」
「 じゃ お父さん ベランダにあったテーブル 持ってくるから。
すばる、 じゃがいも と にんじん、きゃべつ、を
出しておいてくれ 」
「 うん! え〜〜っと・・・ あ たまねぎ もほしいなあ
おと〜さん きっと カレー 作るよね 」
お料理少年・すばる は ごそごそ・・・食糧庫の中に
首を突っ込んでいる。
「 すばる そっちの野菜、 皆 切ってくれ 」
「 ウン わぎり でいい おとうさん 」
「 いいぞ〜 一センチくらい かな 」
「 おっけ〜〜 おと〜さんは 」
「 お父さんは 肉を切る。 あと トウモロコシ だな 」
「 ??? おと〜さん カレーに とうもろこし いれるの?? 」
「 え?? あはは 今晩はカレーじゃないよ 」
「 え??? じゃがいも にんじん たまねぎ・・・
あと きゃべつ に お肉・・・ だよね? 」
「 そうさ。 」
「 ばんごはん ・・・ なに?? 」
「 うふふ・・・ 鉄板焼き さ! 最後に 焼きそば するよ〜 」
「 う わあああ〜〜〜〜〜〜 てっぱんやき !!! 」
「 そ。 それも ここで ・・・ 外で やるよ 」
「 うっそ〜〜〜〜 うわ うわ わああああ〜〜〜 」
「 ははは さあ がんばって野菜 切ってくれ すばる。 」
「 うん!!! 」
男子チームは 庭で食事の準備に集中、余念がない。
一方 女子チームは ・・・
「 ・・・ くんくん ・・・ あ〜 またちがうニオイ ・・・
ミント・アイス みたいだよ? 」
すぴかは 門の側で別荘の周りを眺めている。
「 すご〜〜い〜〜〜〜 みどり色って ・・・
すご〜いいっぱいあるんだぁ〜〜〜 木の色がさ
み〜〜んなちがうよう・・・ 」
「 すぴか〜〜 なにを見てるの 」
「 おか〜さん ・・・ 」
後ろから お母さんが ぽん、とすぴかのアタマに帽子をのせた。
「 お帽子。 涼しくてもお日様 出てるからね〜 」
「 あ ・・ うん ・・・ 」
「 なに見てるの 」
「 え ・・・ うん あの ・・・ 葉っぱ! 」
「 葉っぱ? ああ 樹の葉っぱね 」
「 ウン。 いろんなみどり色なんだよ〜〜
それでさ ちょうちょ がひらひら・・・ いっぱいいる 」
「 え・・・ あら ホント・・・ 」
お母さんも 林の方を見つめている。
「 ねえ すぴかさん。 お母さんとほら・・・あっちの林の方
いってみない? 」
「 うん いく!!! 」
「 大きな木 たくさんあるわね〜〜〜 面白いわ 」
「 えへへ アタシ 登りたいなあ 」
すぴかは 嬉しさに頬を染めて そ・・・っと母の手を握ってきた。
「 あら いいわね!
・・・ ふふふ ねえ すぴか。 いいこと、教えてたげるわ 」
「 ?? なに おか〜さん 」
「 き の ぼ り。 」
「 きのぼり・・・? おか〜さんが?? うっそ〜〜 」
すぴかの目は もうまん丸でこぼれ落ちそうだ。
「 ホントよ〜う。 うふふ あのね・・・
お母さんね〜 実はチビのころ 木登名人だったの 」
「 ウソ〜〜〜〜〜〜〜〜 !!! 」
「 すぴかには負けないわよ〜〜〜 さ 登れそうな木、
見つけに行きましょ 」
「 うん♪ うわ〜〜〜い〜〜〜 」
ふんふんふ〜〜ん♪ るんるんら〜〜〜ん ♪
手を繋いだ金髪アタマが二つ 緑の中を分け入ってゆく。
ひらひらひら ・・・ 小さな蝶々が 纏わるみたいに飛んでいた。
Last updated : 07.20.2021.
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********* 途中ですが
え〜〜〜 夏休み話 です☆
原作あのお話 のシチュエーションを拝借していますが
【島村さんち】 ですので 2君は出演いたしませんです。