『 春 ・・・ ! ― (2) ― 』
ふぁさ 〜〜〜〜〜 ・・・・
爽やかな風が 首に巻いていたスカーフを揺らす。
「 あら いい風 ・・・ふ〜〜ん 海の香 〜〜 」
フランソワーズは しばらく門の前に立っていたが ― ゆっくり歩きだした。
少し坂を降りると左側が ぱあ〜〜っとひろがり、 海が見えてきた。
「 ・・・ ! 」
彼女は また足をとめた。
ああ ・・・ きれい ・・・!
こんな風に 海が見えたのね
この家にやってきた時、確かに周りの風景をチェックしこの道を通ったのだが ・・・
海のある方角、 後ろの裏山の様子、 そして 付近を通るはずの
幹線道路の状況 ばかりに気を回していた。
どんな植物が生えているか 海の色の変化や 風の香り
そんなモノには まったく気を回す余裕などなかったのだ。
海原から視線をもどせば 足元の両側には 柔らかい色が散らばっていた。
「 ずっと・・・坂道 なのね。 わあ ここにもタンポポ〜〜〜
あ 小さな水色の花も ・・・ スミレ! すみれだわ 」
思わずしゃがみ込み手を伸ばす。
「 本当に春が早いのね ・・・・ 小さな春 みつけたわ 」
花たちに元気をもらった気分で 彼女は立ち上がり歩き出す。
「 ふう〜〜 いい気持ち・・・ きっと海の方にはもっと春 が
あるわよね ・・・ キレイだわ どの花も緑も ・・・ 」
道端の小さな黄色い花にも 心が震える。
「 きれい って感じることが できるのね わたし。 」
目を上げれば ― うすい水色の空がひろがる。
空 ・・・ ! ああ 空 ・・・・
もう一回 深呼吸をし すこし小走りに坂道を降りていった。
「 あ こっちにゆくと大きな道路なのね。 ・・・ そうだわ ここから
急な路を上ってきたのよね、 初めてここに来たとき ・・・ 」
坂の下は空き地になっていて 幹線道路への路と 海岸沿いに進む道、
そして 砂浜に降りてゆく小路に分かれていた。
「 ・・・ こっちへ行くと 商店街 か ・・・ ヒトがいるわよね 当然。
幹線道路を辿ると駅 でしょう? ・・・ じゃ こっち。 」
彼女は 両側から雑草がしげる小路に足を向けた。
ザワ ザワ ゴソ ゴソ ・・・ 雑草を分けて進む。
「 わ ・・・ すご〜〜い ここ、誰も通ってないんじゃない?
あ ・・・ 潮の香りがつよくなってきたわ 」
足元は次第に砂地になってきた。
「 ・・・ あ ・・・ 海 ・・・ 」
ザ ・・・ ザザザ ・・・・ ザ ・・・ ザザザ ・・・
少し離れているが 波が静かに寄せては返している。
「 穏やかで静かな海ね ・・・ ちょっと茶色っぽいけど
ああ 沖の方は濃い紺色 ・・・ きれい ・・・ 」
砂浜に立ち、 彼女はしばらく海を眺めていた。
「 静かで ステキな海岸だわ ・・・ こんなに優しい海もあるのねえ 」
ゆっくり波打ち際めざしていたが 途中に大きな流木があったので腰を下ろした。
「 ・・・ いい気持ち ・・・ あ 日焼け しちゃうかな〜〜
帽子、被ってくればよかった。 ・・・ ママンによく怒られたっけ。
マドモアゼルは 帽子とよい靴を忘れてはいけませんって ・・・ 」
懐かしい面影が浮かび ちょっとしんみりしてしまった。
わんわん わん ワン〜〜〜〜〜〜〜 きゅうん〜〜
「 え ?? 」
彼女の前に 突然、茶色毛の犬、仔犬が 現れた。
「 ま まあ〜〜 どこからきたの? 」
「 くぅ〜〜〜ん 」
仔犬は 彼女の足元にすり寄ってきた。
「 あら どうしたの? 首輪してるわね あら
リード も引っ張ってる 」
「 きゅう〜〜ん きゅう 」
どう見ても雑種のそのコは フランソワーズの手にぐいぐいアタマを
押し付ける。
「 まあまあ ・・・ 元気なわんちゃんねえ。
迷子ちゃんなの? あ〜 それとも 脱走してきたのかなあ? 」
「 わん? 」
「 あなたの飼い主さん、心配しているんじゃない? 」
「 わ わん ・・ 」
茶色のクセ毛の仔犬は ちょいとアタマを傾け彼女をじ〜〜〜〜っと見上げる。
「 なあに? あ お腹 減ってるのかしら? 」
「 くぅ〜〜ん ・・・・ わん!? 」
「 あら どうしたの? あ ・・・・ 」
仔犬が さっとアタマを上げてすぐ、海岸の方から声がきこえてきた。
ちゃ〜すけ〜 お〜い どこだあ〜〜〜 ちゃ〜すけ〜〜
ぴっ! 仔犬の耳が峙つ。
「 あ・・・ きみのこと? 」
「 わん! 」
「 ちゃ〜すけ? いるのか〜〜い? どこ? 」
中学生くらいの少年が 駆けてきた。 仔犬も ぱっと彼の方に走ってゆく。
「 あ〜〜〜 ちゃ〜すけ〜〜〜 おまえ〜〜 勝手に走って〜〜〜 」
「 うわん ! 」
「 え? あ ! すいません コイツ、 急に走りだして ・・・ 」
少年は 被っていたキャップをとってお辞儀をした。
「 ちゃ〜すけ君って このわんちゃんのこと? カワイイわねえ〜 」
「 ありがとうございます。 あ! は はろ〜? 」
彼はフランソワーズの容貌に気づき 慌てて口を押さえた。
「 あらら 大丈夫 日本語わかりますよ。 はい
これ 」
フランソワーズは さっきから握っていたリードを返した。
「 あ ありがとうございます〜 ちゃーすけ〜〜〜 おまえ〜〜
なんで勝手に走ってくんだよ〜〜 知らないトコばっか行きたがってさあ 」
「 わんわんわん♪ 」
「 あはは〜〜 そっか〜〜〜 冒険だいすき かあ 」
「 わ わんっ ! 」
「 そっか〜〜 知らないトコ、わくわくするもんね。
えへ ちゃ〜すけ のお蔭で きれ〜なおねえさんとトモダチ だぞ〜 」
「 きゅうん〜〜わん! 」
「 あ ちゃ〜すけ もトモダチになった? よかったな〜〜 」
「 わんっ 」
少年と仔犬は抱き合って転げまわる。
「 うふふ
お散歩の途中? 」
「 もう〜〜 あ はい
日曜は 僕が散歩当番なんで〜
」
「 そうなの ・・・ 」
あ
にちよう なのね
今日は・・・
突然 トン と、胸の中で小さな音がきこえた。
「 やだ ・・・ そんな基本的なことにも 気付かなかったわ …
」
「 え なに おねえさん? 」
少年と仔犬が こちらをじ〜〜っと見ている。
「 あ ううん ああ いい日曜日だな〜〜って思ったの。 」
「 あは そうだね〜〜〜 う〜〜〜ん 」
少年は 海に向かって大きく深呼吸をした。
「 うふふ わたしも〜〜 ふ〜〜〜〜 」
「 あはは ちゃ〜すけ のお蔭でいっぱい走っちゃったな〜〜
こっち来たの初めてだし ・・・ おねえさんと知りあえたし〜〜 」
「 わん♪ 」
仔犬が 上手にチャチャをいれる。
「 カワイイわね。 ・・・ね わたし。
普通のヒト よね
」
「 ? なに、 キレイなおねえさん 」
「 きゃう? 」
「 う ううん わたしも走ろうかな〜〜って思って。 」
「 あ それじゃ〜 おねえさんも わんこ 飼うといいよ 走るの、大好きだもん。
ちゃ〜すけ は 僕の弟なんだ 」
「 あら いいわねえ 」
「 きゅ〜〜〜〜 きゅん 」
仔犬は盛んにハナを鳴らしている。
「 ? なに ちゃ〜すけ ・・・ あ 腹ぺこあか 」
「 そろそろランチが欲しいのかしらね? 」
「 え そんな時間なんだ? いっけね〜 帰らなくちゃ
ちゃ〜すけ〜 行くよ 」
「 わ わん! 」
少年は 仔犬のリードを持って走りだした。
ばいば〜い おね〜さ〜ん くぅ〜ん ・・・!
「 ばいば〜〜〜い !! 」
駆けてゆく少年と犬に 彼女もぶんぶん手を振り返した。
「 ・・・ 知らないトコは どきどき ・・・ か 」
少年のコトバが まだ目の前に浮かんでいる気がした。
そっか ― 勇気 をだして。
そして。
彼女は くるり と振り返り 降りてきた小道を がしがし上り始めた。
「 こっちね。 」
三叉路で
商店街 への道 を選んだ 。
「 行ってみる。 いろんなヒトに 会ってみる ・・・! わくわく どきどき 」
海から少し離れると ぽつ ぽつ 民家が見えてきた。
― やがて 両側に店がならんでいる道にやってきた。
「 わあ いろんなお店がある〜 ここは八百屋さん ね きゃ〜
きれい …
あ あっちは お肉屋さん … ? 」
店先にまで こぼれんばかりに色とりどりの野菜やら果実が並んでいる。
「 ・・・ え これ、リンゴ?? おっき〜〜〜〜〜 ・・・・
あらら? オレンジが何種類あるわ! ちっちゃいのもあるし・・・
えっと。 あ〜〜〜 コンニチワ? 」
フランソワーズは 息を吸うと八百屋の店に入っていった。
「 へい らっしゃい〜〜 あれ 綺麗な外人さん 」
「 あ 日本語、わかります。 でも 日本のお野菜、わからないんです、
美味しいお野菜 教えてください 」
「 お〜〜〜〜 わかったよ 歓迎〜〜 美人さん♪ 観光旅行かい? 」
「 え いいえ。 あの〜〜 岬の上の家に越してきました。 」
「 ・・・あ! あの〜〜 白髭のご隠居さんちの ・・・ あ〜〜
あんた ご隠居さんのお嬢さんかい? 」
「 え ・・・ あ は はい。 どうぞよろしくお願いシマス 」
フランソワーズは丁寧にお辞儀をした。
「 うわ〜〜〜〜 今時なんて礼儀正しいんだい ・・・
よっしゃ 全面的に応援しちゃうぜ。 フルーツは俺に任せとき。
野菜は〜 お〜〜い オマエ〜〜〜 」
八百屋の主人は 店の奥へ声を張り上げた。
「 ??? 」
フランソワーズが目を丸くしていると 奥から割烹着をきた中年の女性が
出てきた。
「 ・・・ はいよ アンタ なんですね あ 御客さん? いらっしゃい・・・・
あれ 美人のガイジンさん 」
「 岬のご隠居サンのお嬢さんだと。 ここいらの美味い野菜のこと
教えたって 」
「 へえ〜〜 あのご隠居さんのねえ〜〜 野菜? 任せて!
ここいらの野菜はね なんでもウマいよ〜〜
」
「 まあ そうなんですか? 嬉しい・・・
あの ご迷惑でなければ 美味しい日本のお料理も教えてください。 」
「 日本の料理 ・・・って この辺で食べてるのでもいいかい? 」
「 ええ お願いシマス 」
「 そんじゃ〜 な? 」
八百屋の主人はおかみさんを振り返る。
「 まかして! まずは 大根だね。 ここいらの名産なんだよ。
あと・・・この季節なら 新ジャガに春キャベツかね 」
「 おうよ。 そんでもって でざ〜と は イチゴ 一押し!
それと〜 温州みかん、地元のヤツが出てきたぜ。 」
「 あ ちょっと待ってください 」
フランソワーズは 慌ててバッグの中からメモ帳を取りだした。
「 書き留めておかないと ・・・ お願いシマス 」
「 ほえ〜〜〜 なあ かあちゃん 」
「 ふえ〜〜 ウン アンタ。 」
八百屋の夫婦は ガイジンさんの真摯な態度に感動した様子だ。
「 あの〜 失礼だけど、 日本語、 読める? 」
「 ハイ。 」
「 あ じゃあ ちょっと待ってて。 ウチのばあちゃん秘伝の
肉ジャガの作り方、コピーしたげる。 」
おかみさんは ばたばた・・・店の奥駆けこんだ。
「 お〜 ばあちゃんの肉ジャガ、激ウマだからな〜〜
あ 向かいの肉屋と あっちの魚屋にも寄ってゆくといいよ 」
「 はい ありがとうございます 」
八百屋で あれこれ 買い 向かいの肉屋にも寄り・・・・最後に魚屋の
店先に寄った。
この季節は ちょっと早いけどカツオだよっ と 八百屋の主人も言っていた。
か かつお ね。 かつお かつお・・・
フランソワーズは 店先で冷蔵ケースを覗きこむ。
か つ お。 あ ! あのおっきいのね?
「 コンニチワ。 あの か かつお ひとつ ください! これ!! 」
彼女の必死な声に 魚屋のおっさんはびっくり・・・飛び出してきた。
「 へ? これ・・・って かつお だよ? 」
「 はい! かつお ください。 この季節はかつおだ って伺いました。 」
「 そりゃそうだけど・・・・ 刺身、食べられる? 」
「 は はいっ ! がんばってつくりマス 」
「 それなら・・・ あ〜 一匹丸々捌くのは おね〜さんには無理だよ〜
何人家族?
え 三人? りょ〜かい
了解 オレが 美味しく捌いてやるよ
おじょ〜さん。 あ
若オクサン かな〜
」
「 え い いえ あの〜〜〜 岬のウチに越してきて ・・・ 」
「 岬の? ・・・ あ〜〜 あの白髭のご隠居さんとこかあ
じゃ アンタ あのご隠居さんのお嬢さん? 」
「 え ええ はい。 」
「 そっか〜〜 ご隠居さんとウチのじいちゃん、囲碁仲間なんだよ〜
そっか〜〜 穏やかでいいお父さんだね〜〜 」
「 は はい ・・・ 」
「 オレらもな いいヒト達があそこに住んでくれてよかった〜〜
って言ってるんだよ 」
「 まあ そうなんですか 」
「 魚とか 大丈夫かい? さわれる? 」
「 は はい なんとか ・・・ 」
「 ま 無理ないよ 調理しやすいように捌いてやるよ 任せて! 」
「 ありがとうございます〜〜 」
「 おう! 」
― 結局 両手にぱんぱんの買い物袋をぶら下げ フランソワーズは
意気揚々と帰宅した。
「 ただいまあ〜〜〜〜 」
玄関を開けると ジョーが飛び出してきた。
「 おかえり! 遠出してきた? 」
「 ええ。 見て。 収穫〜〜〜〜 持って ! 」
「 へ? わ ・・・!! 」
ぽい、と渡された袋を受け取り ジョーは思わずよろめいた。
いかに 009であっても 予期せぬヒトからの予期せぬ攻撃? には
たまには不意打ちを喰らうのである。
「 ! 気をつけて〜〜 卵 入ってるのよ 」
「 ご ごめん ・・・ 落としてないから大丈夫だよ 多分・・・
あ これ 食糧? 」
「 そうなの〜〜 うふふ・・・ 海岸通り商店街 に
行ってきたの 」
「 え そうなんだ? すご〜〜い フラン〜〜 」
「 うふふ〜〜 ステキなところね〜〜
美味しい! ってものばっかり買ってきたの。 キッチンに持って
いってくれる? 」
「 うん。 あ イチゴ! 美味しそう〜〜 」
「 お茶にしましょ、イチゴ食べましょ 」
「 わ〜〜い♪ 」
ジョーは嬉々として買い物袋をキッチンに 持っていった。
「「 いただきま〜〜す 」」
「 うふ 今晩のメニュは〜 地元の新ジャガと地元の鶏を使った
肉ジャガ。 そして 季節早取りの カツオのお刺身。
デザートは 地元のイチゴと温州みかん です。 」
「 すっげ〜〜〜〜 ・・・・ 」
「 ほう・・・これは美味そうな ・・・ 」
フランソワーズの説明に ジョーも博士も感歎の吐息だ。
食卓の上には 湯気のたつ深皿やいろどりも鮮やかな刺身皿が
並んでいる。
「 お澄まし もガンバリました。 ご飯ほかほか・・・どうぞ 」
・・・ しばらくの間 食卓では発言が絶えた。
そう、皆 すばらしく美味しい晩御飯を 食べることのみに集中していたから。
「 ・・・ う ま〜〜〜い〜〜〜 」
「 ああ これは美味いな ・・・ 澄まし汁の味が沁みるよ 」
「 ホント、美味しいですね〜〜 うふふ 作っておいて言うのも変かしら?
あ 素材がいいから ですよね 」
「 ん〜〜〜 フランの料理が上手だからで〜〜す ねえ 博士。 」
「 うむ うむ ・・・ 和食とはなんと柔らかい味なのだろう 」
「 う〜ん ・・・ よくわかんないけど 美味い! 」
「 よかったわ。 チキン、とっても美味しいから ・・・
今度はロースト・チキンに挑戦してみるわ。 」
「 わっほ〜〜〜〜い♪ クリスマスが来た〜〜 」
「 え?? 」
「 だってさ、ロースト・チキン って クリスマスの時くらいにしか
食べられなかったんだも〜〜ん 」
「 あら ・・・ じゃあ 次、作りましょ。 ロースト・ポテトもね 」
「 ろ〜すと・ぽてと?? 」
「 あ アメリカ風に言えば フライド・ポテト。 」
「 うっわ〜〜 うっわ〜〜〜 もう嬉しすぎ〜〜 」
「 ふふ ジョーは大喜びだな。 チキンも野菜も本当に美味しいよ。
このカツオの刺身は 絶品じゃ ・・・・
フランソワーズ、 料理のウデをあげたなあ 」
博士もにこにこ 箸を動かしている。
「 いえ ・・・ ふふふ あのね、八百屋さんや肉屋さん、魚屋さんに
作り方をしっかり教わってきたんです。 」
「 へ〜〜〜 あの海岸通り商店街の? 」
「 そうなの。 いろんなお店があるのねえ ・・・
とっても面白かったの。 」
「 ふうん ・・・ 出かけて よかったね 」
「 ええ。 ジョーと ちゃ〜すけクンに 応援してもらったから 」
「 ちゃ〜すけ? ・・・ 誰 ? 」
「 うふふ ナイショ。 ・・・ ねえ 春 ね! 」
フランソワーズは ぱあ〜〜っと 微笑んだ。
う わ ・・・ かわいい〜〜〜
ジョーは もうただただほれぼれと 彼女の顔を見つめていた。
「 春 か。 このウチにも春が来たよ 」
「 え? 」
「 その笑顔さ、フランソワーズ。 大輪の花が開いたようじゃ ・・・
うん うん いい笑顔だなあ なあ ジョー? 」
「 はい! もうさいこ〜〜にカワイイよぉ〜〜 フラン♪ 」
「 ま まあ 」
「 晩御飯さ〜 あ〜〜〜 おいしい〜〜〜 」
ジョーは どの皿 小鉢も キレイ〜〜に空にしていた。
「 嬉しいわ、 ジョー。 じゃあ デザート持ってくるわ。 」
「 わお〜〜〜 なに なに? 」
「 うふふ 美味しいイチゴをみかんをね そのままゼリー寄せ
にしたの。 きんきん冷えてるから ・・・ 今 持ってくるわ。 」
「 わ〜〜 手伝うよ! 」
彼は 仔犬みたいにちょんちょん・・・ 彼女の後をついていった。
食後は リビングでまったりとお茶を飲んだ。
「 ・・・ あ〜〜 おいしかったぁ〜〜〜 」
ジョーは 満足の吐息をついている。
「 うむ うむ ・・・ 」
博士も相好を崩している。
「 よかった・・・・ この辺りにはオイシイ食材がたくさん
ありますねえ 」
「 ふむ、温暖な地域じゃし 昔から半農半漁、 結構土地があるから
養鶏も盛んだからな。 」
「 そっか ・・・ あ フラン、お願いがあるんだけど ・・・ 」
「 あら なあに。 」
「 ウン。 今度 買い物に、 食糧の買い出しに 付き合ってほしいんだ〜 」
「 え! わ わたしに?
」
「 ウン ぼくさ〜 美味しい野菜の見分け方とかわかんないんだよね〜
きみ 八百屋の大将に教わったんだろ? 」
「 野菜は おかみさん。 果物は大将。 」
「 あ そうなんだ?
ぼく、買い物はチビの頃からよく行ったけど 買い物当番の時は
寮母さんのメモのまんま 買っただけで ・・・ 」
「 りょうぼ? 」
「 あ
ぼくさ 孤児の施設育ち。 」
「 ま
まあ …
」
「 だからね 家庭料理の味 って 知らないんだ。
ね〜今度は きみの家の味食べたいな きみが食べたい朝御飯 作ってほしい 」
「 え
い いいの?
あの・・・わたしの国の朝ご飯でも ? 」
「 もっちろ〜ん
」
「 それなら! とっびきりオイシイ朝ごはん、作るわ! 」
「 うわ〜い♪ 朝ごはん 超〜〜たのしみ♪ 」
― そして翌朝の食卓には
湯気の上がるカフェ・オ・レ に ふわふわ〜なオムレツ。
キュウリとトマトのサラダに ぱりぱりなバゲット そして 御漬物。
が ならんでいた。
「 わ〜〜〜 すご・・・ これ パリの朝ご飯? 」
ジョーは おはよう を言うのも忘れ 呆然とテーブルの上を見ている。
「 おはよう、ジョー。 うふ わたしの家の朝ごはん デス。 」
「 ふうん ・・・ あ? 漬け物に梅干し もある?
え・・・ パリでも浅漬けとか食べるの? 」
「 ううん でもピクルス、食べるから・・・ わたし お漬物 大好きなの
それに 梅干しも。 」
「 あ 梅干し、食べれる? 」
「 大丈夫。 パンチの効いた味で美味しいわ、ドレッシングに混ぜてみたわ。 」
「 へえ〜〜 あ これかあ ・・・ ちょっと味見〜〜
・・・ あ ウマ〜〜〜〜〜 」
「 気に入った? ねえ 裏庭の梅ね、実が生ったらウチで梅干し、作りたいの。
作り方、知ってる? 」
「 え ・・・ うめぼしの作り方?? さ さあ ・・・
あ ネットで調べるか 八百屋さんに聴いてみようよ 」
「 そうね。 あ 博士〜〜 おはようございます〜 」
博士も コーヒーの香に引き寄せられてやってきた。
「 おはよう。 おお これは 」
「 おはようございます、博士。 今朝は パリ で〜す♪ 」
「 うむ うむ ・・・ 今朝もおいしそうじゃな 」
いただきま〜す ― 楽しい朝食が始まった。
日溜まりに咲く春の野草
裏庭には 梅 やがて 裏山では 桜
ああ きれい
…
春 が来た わ !
明るく笑う彼女の笑みが 春を呼んだのかも しれない。
少し後のことだが ―
梅雨をすぎるころ フランソワ―ズはでっかいガラス瓶を買ってきた。
「 これ・・・ なに? 」
「 あのね これで 梅干し、作るの。 そろそろ梅の実、収穫できるし。 」
「 梅干し 作るんだ? 」
「 そうよ。 まずは この瓶をキレイに洗って・・・ 」
「 あ やるよ〜〜 」
そして 真夏の盛りのころ・・・
「 ジョー ! 手伝って〜〜〜 これ 干すの 」
「 ほす・・・? 」
「 そうよ 梅干し はねえ 土用干し が必須なの 」
「 へえ ・・・ 」
「 裏庭の樫の樹の下に干すわ。 風通し、いいし。 」
「 あ 手伝うよ〜 」
裏庭の梅は 立派な梅干し となり世界中に旅立って行った。
ジェロニモ Jr. は 食べた後の種を丁寧に磨いてチャームにしてくれた。
「 アイヤ〜 おいしなあ〜 お得意さんのじいちゃんがえろう
喜んでくれはったで〜 また たのみます 」
料理人もえびす顔。
俳優氏は 「 こりゃ 最高の強壮剤だ 舞台前に必ずひとつ。 」
「 いいねえ 気付け薬だよ、暑さに効くよ 」
灼熱の地でも 歓迎された。
「 ザワークラウト に合う。 うまい 」
独逸人は自国の料理に上手く利用している。
「 なんだ これ〜〜〜 激すっぱ !! 」
言わずと知れた某赤毛の感想。
「 うむ うむ ・・・ これを食べると体調、いいのだよ 」
博士もたいそう気に入って 毎日一粒、が習慣となった。
**************************** Fin. *************************
Last updated : 05,01,2018.
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************* ひと言 ************
なんか すご〜く 季節外れ ハナシ ・・・・
梅干しを作るのは とても大変です〜〜〜
ジョー君が必死でフォローしたかも ・・・