『 早い春 ― (1) ― 』
― ここ ・・・・?
金髪娘の足が 止まった。
「 ・・・・ 」
目の前には 荒地にぽしょぽしょ・・・緑が点在し
その中に 少々古風な屋敷があった。
・・・ ここ に ・・・ 住むの?
初めてこの国に来て 身を寄せたところは、緑豊かな中の家だった。
あのお家 ・・・ 好きだったわ・・・
その後のごたごたで 失われてしまったけれど
彼女には楽しい思い出の場所でもあったのだ。
「 さあ〜〜 皆 入った入った〜〜〜 玄関はちゃんと開くよ!
ほら 003? 」
ぽん、と後ろから肩を叩かれた。
「 ・・・ 008 」
「 いいとこじゃないか〜〜 広々しててさ〜〜
この土地 全部買ったのですか 博士 」
「 ははは・・・ コズミ君の尽力でなあ この僻地の荒地なので
とても < お買い得 > じゃったよ 」
「 ほう ・・・ この崖下は格納庫 ですか 」
004は 崖っぷちから覗いている。
「 その予定じゃ。 とりあえずドルフィンは海から入った。
002と009が 操縦しているよ。 」
「 ふふん、 地下でガリガリやっているのか 」
「 え〜〜 僕 あとで潜ってみていいですか? ここの海 どんなんだろ? 」
「 ははは 海の護りは任せるよ 地下は工場 いや 作業場にする。 」
「 へ〜 すごいなあ 資材はどうするんです? 」
「 それもコズミ君のツテでなあ いろいろ・・・ 集められそうじゃ 」
「 ありがたいですな。 ここを根城にできる。 」
「 ほんになあ〜〜 お台所、見せてもらいまっせ〜〜 」
「 おう いろいろ注文しておくれ 」
「 はいナ〜〜〜 」
006は ちょんちょん跳びつつぴかぴかの厨房に向かった。
「 ・・・ 」
003は一番最後に ゆっくりと足を運んだ。
「 ・・・ ・・・ 」
玄関から入った最初の部屋は 広くて陽射しがいっぱいだ。
「 お ここはサンルームですなあ。 なんと素晴らしい冬の陽射しよ〜
吾輩の創作意欲が もりもり湧いてきましたぞ 」
「 ははは ・・・居間にでもしようか と思うのじゃが。
ああ 二階は諸君らの個室になっておる。 自由に使っておくれ 」
「 ほう? 部屋割りは? 」
「 004、皆で相談して決めておくれ。 ワシは一階の奥を貰うよ。 」
カチャリ。 玄関のドアが開いた。
「 あ〜〜 失礼しますぞ 」
「 は〜〜い どちらさま〜〜 あれ セキュリティ 切ったかなあ? 」
008が玄関に飛んでいった。
「 ほっほ〜〜 諸君 新居は如何かな? 」
「 あ〜〜 コズミ博士〜〜 ギルモア博士〜〜 コズミ先生ですよ〜〜 」
「 おお コズミくん! なんとかなっておるよ〜〜
ほんに ありがとうなあ〜〜 」
「 いやいや・・・ 地主サンもなあ 持て余していた土地らしくて・・・
買ってもらえただけで御の字、と言っておったよ。 」
「 そうか そうか ・・・ なかなか穏やかな土地柄らしいな 」
「 その点は 太鼓判じゃ。 」
「 暮らしやすそうですな。 ・・・ おい 003? どうした。
疲れたなら休め。
」
003は 仲間たちからすこし離れて ぼんやりと立っている。
「 ! 別に疲れてなんか いないわ。 」
「 ふん? ああ お前の部屋は 東南の角 だ。 なあ? 」
いいだろう? と 004は他のメンバーを見回す。
「 勿論さ。 ・・・ あ 隣は 」
「 吾輩と004が 門番になるぞ。 ワカモノには任せられん。 」
「 あはは〜〜 そうだねえ あ 僕は出来れば海が見えるトコがいいんだけど 」
相変わらず陽気に 008は雰囲気をもりあげる。
「 好きに選べ、西側でもいいか? 」
「 歓迎〜〜〜 西日好きなんだよ 夕陽もね 」
「 じゃ 西南の角だ。 それでいいか? 」
「 お〜〜 いいねえ 003 一緒に二階に見にゆこうよ 」
「 え ええ 」
008は 白い歯を見せて爽やかに笑い金髪娘の手をとった。
「 僕さあ ひとりの部屋なんて初めてなんだ〜〜 」
「 そうなの? 」
「 うん 故郷 ( くに ) では 兄弟はいっしょくただったもん。
妹だけは母親の部屋と一緒だったけどね 」
「 ・・・ そう ・・・ 」
「 ねえ 壁の色とか・・・ 塗ってもいいよね 」
「 あら 壁紙を張れば? いろいろあるわよ、色も模様も 」
「 ふうん・・・ いろいろ教えてよ 初めてなんだ〜 わくわくしてるよ 」
「 わたしの知識なんか古くてだめよ 」
「 そんなことないって ― お〜〜 北側が廊下かあ ふうん・・・
広々してていいねえ
」
二人は 二階の階段を上がりあちこち見回し 探検気分らしい。
「 ずいぶん広いお家なのねえ 」
「 あは 辺鄙な土地だからね、お〜〜 高級アパルトマン だね こりゃ 」
「 ホント・・・ わたしの住んでたトコよりずっと立派よ 」
「 え〜と 西側っていうと・・・ あ ここが僕の部屋かあ 」
「 まあ どんなお部屋? 」
「 ドアを開けるよ〜〜 お。 広いな〜〜 」
「 ホント ・・・ うふふ まだなんにもないわねえ 」
「 え〜〜 ちゃんとベッドに机 あるじゃないか。
・・・ クローゼットは作りつけか うんうん ・・・ 僕はここに
PCを置ければ十分だ 」
「 うふふ・・・ 008らしいわねえ 」
「 君の部屋も みせてくれる? 」
「 ええ 一緒に見て? え〜〜と 東南の角っていうから ・・・
あ このドアね? 」
パタン。
ドアの向こうには 早春の陽射しあふれる空間が広がっていた。
「 お〜〜〜 いいねえ〜〜 キミにぴったりじゃん 003 」
「 え ・・・ こんなに広いお部屋って いいのかしら ・・・ 」
「 皆 同じだよ〜 君はどんな風にアレンジするのかい? 」
「 ・・・ ベッドに机 クローゼット。 わたしもこれで十分よ。
あとは カーテンが必要ね ・・・ 」
「 そうだね。 あは 僕はやっぱり青とか群青にしたいな。 」
「 うふふ・・・ 海の底みたいなお部屋になりそうね 」
「 その予定。 君の部屋はどんな風にする? 」
「 ・・・ お日様が入ればそれで幸せよ ・・・ パリでは冬なんて
いつまでも灰色の空だったから 」
「 ふうん 」
「 008の国はいつでも明るい陽射しいっぱいなのでしょう? 」
「 まあね かんかん照りだから。 国では陽射しは 遮るもの、なんだ。
・・・ 僕 帰国するんだ。 」
「 そうなの ・・・? あ なにか 故国で起こったの・・・? 」
「 あは そういうワケでもないんだけど。
解放されたら すぐに戻るんだ!ってず〜〜っと決めてたんだ。
こんな僕だけど 国のためにできることはあると思う。
それにね〜〜 まだまだ勉強したい。 やりたいことは山ほどあるよ 」
「 さすが008ね 」
「 あは ・・・ 経済的にもギルモア博士が援助してくれるって言って
くれたし。 こんな身体だけど ― 僕 はやる。
まずは大学に行きたい。 実はね〜〜 考古学にも興味があるんだ 」
「 え〜〜^ ITなんかに強い008が 考古学??
ちょっと意外だわあ 〜 」
「 そうかな? 考古学の検証には IT技術が必須なんだよ。
祖国の遺跡なんかも きちんと保存しなくちゃって思うしね。 」
「 そう ・・・ 頑張ってね 」
「 ありがとう。 003 君は? 祖国に帰るのもいいんじゃないかな。
この国は穏やかで暮らしやすそうだけど ・・・ 」
「 え ええ ・・・ まだ決めていないわ 」
「 まあ 焦ることはないと思うけど 」
「 ・・・ ええ。 よく考えてみるわ。 」
「 そうだね。 なにか僕にできるコトがあったらいつでも言ってくれよ。
へへ 僕はこれでも < お兄ちゃん > だからね 」
「 うふふ ありがと。 」
「 買いだし〜〜〜 行くよぉ〜〜 」
階下では 009が声を張り上げる。
「 ほい ワシも一緒に行こうなあ。 地元の人々に紹介しておこうよ 」
「 わあ コズミ先生〜〜 ありがとうございます。
先生の地元だもんなあ〜 うん 信用度 アップだな〜〜 」
「 ふぉふぉ ふぉ ・・・ 009クン 君はギルモアクンの研究所の
助手 ・・・とでも紹介しておこうな 」
「 ああ ワシが後見しておる若者、 と言うよ。 」
「 ありがとうございます。 あ そうだ ・・・
お〜〜い 003〜〜〜 ! コート 着て、降りてきてくれないかなあ〜 」
009は 二階によびかける。
「 ・・・? あら 呼んでる ・・・ ちょっと行ってくるわね 」
「 うん。 あ チカラ仕事は引き受けるから。 家具とか運ぶからね〜〜
言ってくれよね 」
「 ありがと、 ピュンマ。 え〜と ・・・ 確かクローゼットに
コートが掛かっていたはず・・・ 」
003は ウオーク・イン・クローゼットのドアをあけた。
「 ・・・ まあ 」
トン トン トン ・・・ 軽い足音が聞こえた。
「 お待たせしました。 」
ファー付きのベージュのコートに ベレエ帽 という姿で003が降りてきた。
「 おやおや お嬢さん。 よくお似合いじゃなあ 」
コズミ博士は もう相好を崩しっぱなしだ。
「 うふ・・・ そうですか クローゼットに置いてくださったのは
コズミ先生ですか 」
「 ふぉ ふぉ ふぉ ・・・ ワシの娘に頼んで注文してもらったのですよ
サイズは合いましたかいな 」
「 ええ ぴったり。 ありがとうございます 」
「 わ〜〜〜 よく似合うよ〜〜 003、 ぴったりだね。
じゃあ 出発しようか 」
「 え どこにゆくの 」
「 うん 地元の商店街。 一応ここに住むからさ ・・・
地元のヒトに顔、見せて置く方がいいかな〜〜って 」
「 そうね 商店街 って ・・・ マルシェのこと? 」
「 まるしぇ? 」
「 市場のことじゃよ 009クン。 地元商店街は ちと小規模じゃが
八百屋や肉、魚、 ・・・ パン屋に米屋・・・ 食糧はだいたい
調達できるはずじゃ。 ああ 雑貨屋もあるでの、最低限のモノは
揃うと思うぞ 」
「 ほっほ〜〜〜 ワテも行きまっせ〜〜
できればその後、 ヨコハマ、 中華街たらいうトコ、見てきまっさ 」
「 おう 大人、吾輩も港ヨコハマを散策して参ろう 」
「 ほな ご一緒しまほ。 実はやね〜〜 店の候補地に目ぇつけてるトコ
あるんですワ ネット検索しましてん。」
「 おうおう さすが大人〜〜 」
「 ほっほ〜〜 今に必ずおっきな店、 構えたるで〜〜
中華街たら ワテにうってつけや。 葉っぱを隠すのんは
森が一番、いいますやろ 」
「 まあな。 」
「 ふふふ〜〜 ワテは必ず一財産 儲けてみせまっせ〜〜
皆はん みててや〜〜 行列のでける店 になったるで 」
「 ふん アンタに向いてるなあ。
吾輩も ヨコハマ という地に興味があるな。
ガイジンには生活しやすい雰囲気がある。 」
「 ほな 二人で頑張りまほ 」
「 だな〜〜 とりあえず 009。
この地の人々への顔繋ぎをたのむぞ 」
「 まかせて! あ 用意できた? えへ 003 帽子も可愛いよう 」
「 そう? ・・・ またオシャレできる日がくるなんて
思ってもみなかったわ ・・・ 」
「 さあさ そんな顔はおやめなされや。
お若いお嬢さんは いつもにぎやかに笑っていなされ 」
「 ・・・ コズミ先生 ・・・ はい 」
「 あは〜〜 大人数だね〜〜 ま いっか ・・・
それじゃ 行ってくるね〜〜 004 留守 頼みます 」
「 おう 任せとけ。 002を使って地下の格納庫、 片づけておく。 」
「 わお〜〜 」
「 ほっほ〜〜〜 今晩は ご馳走でっせ〜〜〜
ええ食材、 た〜〜んと仕入れてきますさかい 」
「 それじゃ まずは地元の商店街 だね。 」
「 ふむ 商店街の町会長さんとはムカシ馴染みでのぉ
なに 気のいいヒトたちばかりじゃよ 」
「 コズミ先生〜〜 いろいろお願いしまっさ 」
「 どんなお店があるのかなあ〜 」
「 009は 出身地なの?
」
「 あ〜〜 少し違うけど ・・・ でも湘南地域ってことは
懐かしよ。 うん いいとこさ 」
「 そう ・・・ 」
わいわい と 賑やかに買い出し組 は門を出ていった。
海岸から少しだけ陸側に入り、 国道からは一筋離れた場所に
地元商店街 が広がっている。
「 え〜〜と? あのう コズミ先生。
ここの町会長さん ・・・ その方の店はどこなんですか? 」
「 ああ それはのう〜 まずはあの煙草屋のご隠居に挨拶じゃ。」
「 ふ〜ん・・・ あ 地域の長老さん かあ 」
「 なかなか詳しいのう 君は 」
「 へへへ ・・・ これでも日本人ですよぉ〜 ぼく。
あ こんにちは〜〜〜
」
009は 満面の笑みで煙草屋の店先に立った。
009は 張り切っている。
今まで なんとなく引っ込み思案で おどおどと皆の後ろに付いてきていた009。
最新型の最強、と言われているのにいつも控えめだった。
― それが。
祖国に帰ったからだろうか 活き活きと走り回っている。
「 元気ねえ ・・・ やっぱり祖国がいいのねえ 」
「 はあん? どうしたね、マドモアゼル? 」
「 ・・・ 007。 009ってば 張り切ってるわね 」
「 ああ 彼はおそらくああいう性格なんだろうな 」
「 ああいう性格? 」
「 そうさ。 ヒトの役に立ちたい ・・・ というかな。
俗に言う 面倒見がいい ってヤツさ。
マドモアゼル? ああいうヤツを彼氏にしておくと なにかと便利だぞ? 」
「 ・・・ タイプじゃないわ。 」
「 おや それは残念〜〜〜 」
「 ・・・ いいヒトだとは思うけど ・・・
わたし、どっしり構えているヒトの方が いいわ 」
「 ふうん? まあ そう決めつけずに ゆっくり見ていてごらん 」
「 ?? 」
「 いずれ ヤツの本来の姿が見えてくるさ。 」
「 ・・・ そう ・・? 」
「 さて それでは我々はヨコハマに出発だ。 」
「 あら おでかけ? 」
「 左様。 我らが次の目的を目指し 出航さ 」
「 ほっほ〜〜〜 003はん よければご一緒しまほか?
ヨコハマの街、楽しそうでっせ〜〜 」
「 ・・・ また誘ってくださる? 今日は やめておきます 」
「 さよか。 ほな またな 」
「 マドモアゼル? 」
「 はい ミスタ? なにか? 」
「 ・・・ いや。 別に。 ― 休養も大切だ。 少々のんびりしたまえ。
006、では ゆくか。 」
「 ハイな。 そこの角でタクシー、拾いまほ。 」
「 そうだな。 では 先生方〜〜 我らはお先に 」
006と 007は 会釈をし、別行動を開始した。
「 おう 頑張れよ〜 」
「 ふぉ ふぉ ふぉ・・・ 上首尾を願っとりますぞ 」
博士たちの激励に 凸凹コンビはわさわさと手を振っていった。
地元商店街では それなりに好奇の視線はあったが概ね好意的だった。
「 へ〜〜〜 ああ あの岬の荒地にねえ〜〜 」
「 まあ まあ コズミ先生のお知り合い? そりゃ安心ですわあ〜 」
「 こちら・・・ お嬢さんで? うわ〜〜〜 キレイな方ですね〜 」
「 へえ〜〜 研究所? ああ 気象とかの? そりゃいいねえ 」
ほとんどが中高年のヒト達だったが 温かい言葉をかけてくれた。
009のほんわか笑顔に 皆引きこまれた様子だ。
「 ほ〜〜〜 いろいろな店があるなあ 」
「 まあだいたいのモノは揃いますがな。
足りないモノは駅の向うに 大型スーパーがあるでのぉ
そこまで買い出しにゆけばよいよ。 クルマで行けば便利だそうじゃよ 」
「 ・・・ ぼく、この商店街 好きです!
なんか いいなあ〜〜 リンゴ一個からでも買えますよね 」
「 そうじゃねえ 」
「 金物屋さん とかもあったし。 ねえ 003 キッチン用品とかも
ここで揃うよ 」
「 そう? ・・・ わたし あまり詳しくないのよ・・・
フライパンとミルク・パン くらいしか使ってなかったの 」
「 大丈夫〜〜 ウチには料理人がいるもん、いろいろ教わるさ 」
「 009、楽しそうね 」
「 え〜〜 だってさ < ウチ > を作ってゆけるんだよ〜〜
楽しいよう〜 ねえ 003の部屋はどんな感じ? 」
「 日当たりのいいお部屋みたい。 」
「 ふうん ・・・ すごく上手く設計してあってさ〜〜 どの部屋も
お日様いっぱい なんだ。 」
「 そうなの? 」
「 うん。 いいよね〜〜 カーテンとかさ〜 何色にしよっかな〜
003はどうする? 」
「 ・・・ まだ考えてないけど ・・・ 無難にベージュとかでいいわ 」
「 え〜〜 なんか凝ってみようよぉ 」
「 009はどうするの 」
「 ぼく? 今 いろいろ検討中なんだ。 壁紙もさ。
人生で初めての個室なんだもん。 もっのすごく楽しみで・・・
うん、凝りまくるよ〜 」
「 そう? 楽しそうね 」
「 うん♪ あ 瀬戸物屋さんだあ〜〜 ねえねえ マグ・カップとか
買ってゆかないかい 」
「 え ・・・ 」
「 ごめんくださ〜〜い マグ・カップ ありますか〜〜 」
009は ずんずん店の中に入っていった。
「 あらら ・・・ ちょっと待ってよ 」
003は慌てて彼を追う。
― 結局 わんこの模様のと 薔薇を華麗に描いたものを買った。
「 ほい これでいいのかな? 」
瀬戸物屋の主人は 丁寧に包んでくれた。
「 はい! うわ〜〜 嬉しいなあ えへへ 可愛いわんこだし 」
「 彼氏〜〜 彼女とペアじゃなくていいのかなあ? 」
「 え ・・・ えへ あのぅ〜〜 彼女が好きなのがいいかな〜って 」
「 お〜〜 太っ腹だねえ。 彼女さん、 あんた幸せもんだ 」
「 あら ありがとうございます。 」
金髪美人は とても愛想よくにっこり☆ してくれた。
「 ・・・ あ! いっけね〜〜〜 忘れてた ! 」
「 え?? なあに? 」
「 ほら! < 御客さん用 > の食器! ( 皆の分〜〜 ) 」
「 ・・・ あ 」
「 すいません〜〜 ご飯茶碗 と 汁椀もください!
えっと・・10コづつ 」
「 ほえ?? 」
― 結局 大荷物になってしまった。
「 また どうぞ〜〜〜 」
店主は恵比寿顔で オマケの小皿までつけてくれてとても とても嬉しそうだった。
「 あ あの ごめん! 」
店から離れるや 009がすぐに言った。
「 え? 」
「 さっきのコト・・・ ごめん 勝手なこと、言って ・・・ 」
「 ? ・・・ ああ ペアがどうの〜ってこと? 」
「 そ! 誤解されるみたいな発言して ごめん! 不愉快だろ? 」
ぺこん、と 009はアタマを下げた。
「 いいわよ 別に。 何とも思ってないわ 世間向けの挨拶ってことよ 」
「 あは ・・・ ごめんね〜〜
でも その薔薇のカップ、本当に綺麗だよ 」
「 ね? わたしもとても気に入ったわ。
この国には 繊細で美しいものが多いのね 」
「 これはごく一般的なカップだよ。 でも ぼくもすごく気に入ってる♪ 」
「 ・・・ こうやってひとつ ひとつ そろえてゆくって
なんか楽しいわね 」
「 でしょ? な〜〜んにもないから その分 楽しみさ 」
「 ・・・ うふふ ・・・ いいヒトね 009って 」
「 え なに? 」
「 なんでもなあい〜〜 さあ 帰ってお茶タイムにしましょう 」
「 うわい〜 あ ねえ なにかお菓子、買って帰ろうよ 」
「 いいわね。 え〜と・・・ ケーキショップ あるの? 」
「 あ 和菓子って嫌いかなあ? あそこに和菓子屋さんがあるよ 」
「 ・・・食べたこと、ないの。 美味しいの、教えて 」
「 おっけ〜〜 一緒に選ぼうよ 」
ちょっと見には カップルに見える二人、 にこにこ・・・和菓子屋に
寄ってゆくのだった。
彼らは山ほどの食材やら食器を担いで帰宅した。
002と005は 大型ショッピング・モールに出かけていた。
それぞれの買い物をひろげ 賑やかに過ごした。
「 俺 帰国する。 」
「 まあ 005 ・・・ ここはイヤ? 」
「 いや。 この国は穏やかで いい。 」
「 それなら ・・・ 」
「 故郷 ( くに ) でやることが待っている。
003。 ここはいい地だ。 穏やかにすごせる 」
「 そう ・・・? 」
「 ああ。 ― これを 使ってくれ 」
005は 嵩張る布の束を差し出した。
「 ?? なあに?? 」
「 カーテンだ。 郊外型のショッピング・モール でみつけた。
女性の部屋には必要だ。 」
「 ありがとう! ・・・ わあ 〜〜 いい色ねえ 」
バサリ ― 広げた生地は 生成りに緑系の濃淡が染まっている。
「 これ ・・・ なんの色? 」
「 草木染 だ。 全て自然の色だ 」
「 くさきぞめ? これ ・・・ 木や草で染めたの? 」
「 うむ 本当は俺が染めたかったのだが ・・・ 今はこれを使ってほしい。
国に帰ったら ― ラグを染めて送る。 」
「 ありがとう! なんかとても落ち着く色ねえ 」
「 ふふ ― カーテンだ、明日の朝を楽しみにしてくれ。
お前の部屋は 東側だろう? 」
「 ええ 東南の角だから ・・・ 朝陽が眩しいかもね 」
「 いい位置だ。 一日のエネルギーを太陽から貰える。 」
「 そっか ・・・・ そうねえ 」
「 ― エネルギーを 蓄えろ。 身体も こころも 」
ふぁさ。 005の大きな掌が 彼女の金髪をそっと押さえた。
「 ・・・ 005 ・・・ 」
「 ここは いい土地だ。 空も 海も 土地の碧も ― エネルギーと
素直な意志に満ちている。 」
「 ・・・ 精霊は ・・・ いる? 」
「 いる。 精霊 というより この地の護り神がいる。
大丈夫 きっとうまくゆく。 」
「 え ― なにが 」
「 お前が望んでいること が。 」
「 わたしが 望んでいる こと ・・・? 」
003は 緑の濃淡のカーテンを そっと抱き上げた。
「 俺もドイツに帰る。 もちろん、 なにかあったらすぐに戻る。
ここは 俺達の家 だからな 」
― バサ。
ソファで新聞を広げていた004が 身体を起こした。
「 ほう ― なにか目的があるのかな 」
博士も広げていた書物から 顔をあげた。
「 博士。 やはり俺は ― 祖国の現在 ( いま ) を
しっかり見てきたい。 ひとつに戻った祖国を ね 」
「 それはいいことだ。 いつでも帰ってきておくれ。 」
「 勿論です。 ああ 002も帰るといっていましたよ。
アイツ、 アキバをみてくる〜 って飛んでいっちまったが・・・・ 」
「 ・・・ なにか淋しくなるわね 」
「 すぐにまた集まれる。 ここに < 家 > が
あるのだからな。 」
「 ― ありがとうよ ・・・ 004。 」
博士がすこし湿っぽい声をだした。
「 博士。 俺たち どこにいても仲間。 」
「 005 ・・・ 」
「 さあ〜〜〜 熱々のホット・サンド ができたよ〜〜〜 」
キッチンから 009が賑やかに出てきた。
「 へへ ・・・ 006に教わったんだ〜〜 さあ 皆で食べようよ 」
「 あら 006と007は?
」
「 ちょっと遅くなるって。 あ 晩ご飯は任せて!
ちゃんと 006から指示がきてるよ 」
「 ふふん それなら安心だ。 」
「 あ〜〜 ぼくの腕前 信用してないな? 」
「 ・・・ これから決める 」
「 それじゃ 張り切って〜〜 さあ お茶タイムにしようよ 」
温かい湯気がのぼる食卓を 仲間たちの笑顔が囲んだ。
― 翌朝。
・・・ あら ここ ・・・ 森の中 ・・・?
003は ベッドの中で ぼんやり明るい光をながめていた。
Last updated : 02,19,2019.
index / next
*********** 途中ですが
平ゼロ 初期 ・・・ かな〜〜
季節は 早春 がぴったりだと思うのです。
不安定な季節、 なぜかわくわくする かも☆