『 空へ ・・・ !  ― (3) ―  』

 

 

 

 

 

 

 

  ザザザザ ・・・・・  サ 〜〜〜〜 ・・・・

 

海は 永遠に揺蕩っているかと思われた。

「 ・・・ この辺りは 潮の流れが緩やかなのかしら  

彼女は もう一度目を凝らしてみた ― もちろん < 普通の目 > を。

「 ・・・ ふうん ・・・?  ああ やっぱり波はあるのね ・・・

 ゆるゆる 流れてゆく・・・  穏やかな海 ・・・

 

    ふう ・・・   明るい陽射しの下、彼女は大きくため息を吐く。

 

「 こんなトコまで来ちゃった ・・・  パリは  こっちね 

 ・・・ ニッポンは あのお家は ・・・ あっち ・・・ ああ 

白い手で強い陽射しをさえぎって 視線を飛ばす。

真っ青な空は いつしか海に溶け込んでゆくところの さらに彼方に ・・・

彼女が 帰りたい場所があるのだ。

 

 闘いに 闘いを続け とうとうこんなところまでやってきてしまった。

極東の島国は やはり安住の地にはならなかった。

自分たち自身と そして関係のない人々の平安のためにサイボーグ達は

放浪と転戦の旅に出た。

あちこちで 闘い 呻き ―  なんとか逃げ切ったか? と思ったとき

 とんでもない 挑戦状 が届いた。

 

「 ― 避けて通るわけにはゆかんだろう 

「 ですな。 」

「 へっ。 さっさとやっつけようぜ 」

「 ・・・ 仕方ないね。 」

 

彼らは 自身を完全に解放するためにこの地 ― ギリシアの果て にやってきた。

     

    ふう ・・・  青いため息が まっさらな陽射しに溶けてゆく。

 

仲間の ― いや あの彼の闘う姿が脳裏の焼き付いてしまっている。

「 ・・・ どんどん  009 になってゆくのね 」

「 え なに? 」

「 ?!! 」

思いの他 近くから声がきこえ 003は跳びあがらんばかりに驚いてしまった。

「 ・・・ う うそ  ! いつから そこにいるの ・?? 」

「 え? 見回りも兼ねて散歩してきたんだ。  声 かけたけど・・・

 聞こえなかったかい?   ―  あ ここに座っていい? 」

「 え ええ ・・・ どうぞ 」

「 ありがと、  あ〜〜〜〜  いい気持ちだなあ〜〜 」

  ぽすん。 彼は岩場に腰を下ろした。

「 ご ごめんなさい。 ちょっとぼ〜〜っとしてて・・・  

「 え なにか索敵してるのかな〜と思った 」

「 ちがうわよ。 ホントに ぼ〜〜〜っとしてたの。

 この ・・・ 海 見てて ・・・ ゆらゆらしてたの。」

 

     ざ ざざざざ −−−−− 緩くゆれる海面を彼女は指さした。

 

「 ゆらゆら?  ははは・・・・ 面白いこと、言うんだね 」

「 そう ・・? 」

「 うん ・・・ 確かにこの海を見てると ゆらゆらしてくるなあ  

彼は 額に手をかざし水平線に視線を飛ばした。

「 あなたもそう思う? 」

「 うん。 で なにを見ているんだい?

 本当にキレイな海だね  ・・・ あ〜〜 気持ちがいい 」

「 そう?   たしかに綺麗だけれど ・・・

 わたしは  日本の  あのお家の近くの海が 好きだわ。 」

「 え あそこの海?  どうして? 」  

「 ―   やさしいから。   あそこの海は ・・ 優しいから 」

「 そっかな〜   台風とか来ると 結構荒れたよ?  大波もくるし  

「 でも  やさしいわ    アナタみたいに … 」

「 え   なに?  風の音がけっこう大きいなあ 

「 ・・・ いえ なんでもないわ。  ああ そろそろミーティングよね 」

「 うん。  今度の闘いは ― 覚悟が必要だ。 

「 そう ・・・ 」

「 あれ そんな顔 やめようよ?

 きみが笑ってくれると 皆が元気になるもん 」

「 皆 ・・・?  ・・・ あ  あなたは ・・・ ジョー 」

「 もちろん ぼくだって!  さあ 行こう! 」

彼はぱっと立ち上がると 彼女にむかって手を差し伸べた。

「 はい。 」

彼女も 少しぎこちない笑顔をつくり立ち上がった。

 

  白い手が そ・・・っと 大きな手に触れた。

 

「 あは 元気ちゃ〜じ♪  ありがと、 フランソワーズ。 」

「 わたしこそ ・・ 

 

  コツコツコツ  ザザ ザザ ザザ ・・・・

 

白い砂を踏み 二人は海を臨む地から引き上げて行った。

 

     ジョー  あなたの笑顔が  わたしに希望をくれるわ 

     あなたの声が  わたしに勇気を教えてくれるわ  

 

      あなたは  わたしの  太陽   ・・・ かも ・・・

 

まっさらな光の下 顔所はその光よりも先をゆく男性 ( ひと ) の笑顔に

目を逸らすことすらできずに じっと・・・ 見入っていた。

 

「 ・・・ 009 なのね  

「 え??  なに 」

「 あなた どんどん009になってゆくわ 」

「 ・・・? 」

「 なんか ・・・ ちょっと淋しいわ。  いえ いいのよ 

 009は最新最強のサイボーグでなくちゃならないんですもの 」

「 ・・・・ 」

 

 強い陽射しの下  彼も眩しそうに瞳を細めた。

 

     !  胸が  痛い ・・・ いえ 甘い わ 甘い疼き・・・

 

    ― あれは 彼の微笑 だわ。  ええ きっとそうよ 

 

 

確かに その島での闘いは並大抵なものではなかった。

敵方もロボットやら戦闘機でなく サイボーグだったから、かもしれない。

ゼロゼロ・ナンバーサイボーグ達は 珍しく分散して闘うことになってしまった。

お互いがどこで誰を相手にしているのかも定かではない。

彼女はそれでも 彼の跡をしっかりとトレースしていた。

その彼は  ― 

 

         あとは 勇気だけだっ !

 

そう叫ぶと闘いの坩堝に身を投じていった。

 

003は別行動をしていたのだがなぜか その叫びは 心に響いてきたのだ。

「 ・・・ な なに!!?  ジョー 〜〜〜〜  」

その後は もうどんなに < 耳 > のレベルを上げ < 眼 > のレンジを

広げても 彼の反応を受け取ることはできなかった。

 

 

   ・・・ いって しまったの ・・・・?

   ねえ ・・・ 先に いってしまったの ・・・?

 

しかし悲しんだり嘆いたりしている余裕などなかった。

 

 ゴゴゴゴ −−−−−−−− !!!   ズズズズ ・・・・ !!

 

島は激しく揺れ 山の途中からは突然噴火が始まった。

勝ったのか 負けてしまったのか 仲間たちはどうなったのか・・・

なにもわからない。

彼女は濁流に呑みこまれ 崩れてゆく島を見やりつつ覚悟を決めていた。

   

    ああ もう ・・・だめ。

    A dieu ( アデュ )・・・  ジョー ・・・

    もう一回 会いたかった ・・・ !

 

目を閉じてしまった時 ― 

 

「 水面に出ろ。  逃げるんだっ 

力強い腕が彼女の身体を持ち上げた。

「 ・・・? 

「 上に出れば ― 脱出できる。 そして 逃げるんだっ 」

「 ・・・ ジョー ・・・? 」

「 ここは北ギリシア ・・・ フランスはすぐそこだろ? 」

「 ・・・ あなた は ・・・ 」

「 ぼくはなんとでもなるさ。  さあ ― 逃げて 生きろ! 

 

  ぐいっ!!  激しく押し上げられると水面から顔が出た。

 

「 ・・・ あ ・・???   」

水面は案外穏やかだったが  ―  周囲には誰もいなかった。

「 ・・・ 009?  皆 ???  博士 ・・・ 001?? 」

 ≪ ぱりニ帰リタマエ  大丈夫ダヨ ・・・ ≫

「 !?  001??  無事なの? どこにいるの?? 」

 ≪ モウ会ワナイ方ガイイ。  君ハぱりデ静カニ暮ラセ。 ≫

「 001??  001〜〜〜 !!!  ねえ 皆は?? 」

 ≪ ナントカ・・・無事ダ。  009モ無事ダ。 ≫

「 009!  009は どこ?? 

 ≪ サヨナラ 003。  デモ あでゅ ジャナイヨ お〜るぼわ〜る サ ≫

「 ・・・  そう ・・・ わかったわ 

  さよなら ・・・ ― Au revoir  ( また会う日まで )  」

 

 北ギリシアの果てで 無人島がひとつ、海に沈んだ。

 

 

 

 

 

 その夜 ― 劇場の楽屋はそれまでになく賑わっていた。

そう。 今晩は千秋楽。  

このバレエ・カンパニーは今季の定期公演を、今日打ち上げるのだ。

 

「 さあ ラストだぞ 」

バレエ・マスターが 舞台袖から声をかけた。

「 最高の舞台を!  たのむぞ、 マドモアゼルたち ムッシュウたち。 」

「 ・・・ 」

「 ん〜〜 」

ダンサー達は 肩を竦めたり舞台のヘソにキスを落としたり < いつもの儀式 >

に 余念がない。

「 ほっほ〜〜 一ベル 入るよ〜〜 

舞台監督の声が響く。

「 よっしゃあ〜〜 」

「 よろしく 」 

「 こっちこそ 」

ちいさく挨拶を交わし合い、ダンサーたちは一旦 楽屋に戻った。

 

「 ・・・ ふう ・・・ 」

彼女は 化粧前で小さくため息を吐いた。

「 あらァ〜〜 ファンションってば 大丈夫ぅ? 」

「 カトリーヌ・・・ うふふ やっぱりちょっと疲れたかなあ って 」

隣から覗きこんできたのは幼馴染の同僚だ。

「 あと一回だよ〜〜〜  あ 〜〜 でもさ、ファンとまた一緒に

 仕事できて ものすご〜〜くうれしいのよ、アタシ。 

「 ・・・ ありがと ・・・ 」

「 だ〜から そんな顔 やめようよ〜〜 

「 そ うね。 あと一回で ― 」

「 そ! 打ち上げ〜〜〜♪  ワインにオイスターが待ってるぅ〜〜 」

「 うふふ ・・・ 」

 

     ああ ・・・ この雰囲気 ・・・

     やっぱりここがわたしの生きる世界 なんだわ 

     ね  フランソワーズ?

 

彼女は鏡の中の 濃い化粧顔にちらっと微笑を送った。

「 ・・・は〜い え?  わかったわ。  フランソワーズ〜〜〜〜 

入口近くの席の女の子が 声を掛けてきた。

「 ?  はい? 」

「 お届けモノだって  わお♪  薔薇だよぉ〜〜 」

「 へ〜〜〜 あ きれい〜〜〜 」

「 お〜う これ ローズ・ガーデンのじゃない? 高級よぅ 」

同じ楽屋のダンサーたちは 一斉に振り向き声をあげた。

「 はい。 ど〜ぞ♪ 」

「 メルシ ・・・ 」

フランソワーズは花束を受け取った。

金のリボンの付いた透明な包みには 真紅の薔薇、大輪の薔薇が 三輪。

「 ・・・ 綺麗 ! 」

 

     ・・・ 三本 ・・・ ?

 

「 うわ〜〜〜 すごいね〜〜〜〜  カレシからでしょ? ファン 」

カトリーヌもウキウキしている。

「 わたし、カレシ いないの。 まあ ・・・ どなたから・・・? 

 あら 名札ないわ? 」

「 きゃ〜〜 ろまんちっくねえ〜 

「 ステキな薔薇 ・・・ でも 誰が ・・・ 」

「 ・・・・ 」

 

     三本。     もしかしたら。

 

フランソワーズは花束を胸に ひっそりと目を閉じた。

 

     ― 見ない。  見ない わ。  踊り終わるまで ・・・

     でも。  アナタ なの ・・・ ね?

 

     そうでしょ?

 

     わたし ―  あなたのために 踊ります ・・・!

 

「 ファン〜〜 感激に浸るのは後だよぉ〜〜 

「 うふふ・・ そうね。 気を抜かないこと ね! 」

「 そ〜〜いうこと 」 

 

  コンコン。 ドアがノックされ   「 二ベルはります〜〜 」

 

「 わお。 急がなくちゃ ・・・ 」

「 えっと ・・・ 全部そろってる 

「 タオル ・・・ 水 ・・・ オッケ〜〜 」

「 アタマ 袖  オッケ〜  ヒモ 出てない よね 」

ダンサー達は 最後の確認に集中するのだった。

 

   ― 千秋楽は 大好評のうちに無事 打ち上げることができた。

 

 

 そして ・・・ その夜。

多くの恋人たちに混じり、 セーヌ河畔をゆっくりと歩く一組のカップルが いた。

 

  コツ コツ コツ ・・・      コ  コ  コ ・・・

 

夜の闇にところどころで 街灯が優しい光を投げかけている。

< 二人 > は 微妙な距離を空けて歩いていた。

・・・ 甘いムード ・・・ では ない。

「 ・・・ それで あなたは来たの。  この街に ・・・  

「 もちろん きみの舞台を見るのも目的だったんだ 」

「 ・・・ いいのよ。 」

「 ・・・ ごめん フランソワーズ。 」

「 ふふ ・・ 003 って呼ばないの 」

「 呼ばない。  きみは フランソワーズ・アルヌール として生きてるんだ

 この美しいしっとりとした街で ね 」

「 ・・・ あなたは。  ジョー なの 009 なの 」

「 ぼくは ・・・・ ごめん 今は 009として話してる。 」

「 そう ・・・ 」

「 でも 信じてほしい。 きみの舞台を見て ― そのまま帰るつもりだったんだ。

 きみは あの光の中で生きてゆくべきだ。 そう直感したから 」

「 ・・・でも あなたはここにいるわ 

「 きみの 目 からは逃れられないだろ? 」

「 ・・・ わかってるじゃない? 」

「 そりゃ ・・・ 仲間だもの。 仲間だから伝えに来たよ。

 また ― 闘うことになったことを ね。  でも もういいんだ。

 こうしてきみと少しでも話ができたから。 ぼくは行くよ。 

 皆も 納得してくれる。  

「 ・・・ ・・・ 」

「 どうか 幸せに。  光の中のきみは 本当にキレイだった ・・・ !

 きみのシアワセが ぼくを支えてくれる。  ・・・ シアワセなきみが好きだ。 」

「 ・・・ ジョー ・・・ ! 」

「 さよなら ・・・ 幸せに ・・・ 」

彼は ひっそり微笑むと ごく自然に背を向けた。

 

     ・・・ あ ・・・・ !!!

 

今 彼は自分から 去ってゆく。 永遠に。  それは直感でわかった。

もう ― 会えない。

 

    ・・・ い いや ・・・! そ そんなの そんなの いや!!!

 

 コツ。  彼女の足が 勝手に動いた。

 

「 ・・・ ま  待って!  ジョー・・・ いえ 009 ! 」

 コツ コツコツ コツコツコツ 〜〜〜〜 足音は次第に速まってゆき

やがて 二つの影は一つになった。

 

 

 

 

 ・・・ こんなことって ・・・

 

窓の外には満月がゆったりと中天に浮いている。

フランソワーズは キッチンの窓からぼんやりとそんな月を見上げた。

「 ・・・ 遅いわね ・・・ 」

「 はへ?  あ〜〜 あの二人ネ、 箱根の帰り、デートしはってるん

ちゃいまっか〜〜〜 」

「 !  しっ 」

ガス台の前で鍋の火具合を調節していた大人を グレートがド突いた。

「 イタイがな〜〜〜 

「 シッ 余計なこと、言うなって ! 」

「 あら わたし。 あの二人のことなんか全然気にしてなんかいないわ?

 だって調査に行ったのでしょう?  その調査の結果が気になるだけよ。 」

「 ふむ ふむ そうであるな。 今回の調査は 」

「 そやそや〜〜  あのアヤシイ社長の別荘やさかい 」

「 だろ? だからヤツは調査に 」

「 そやな。 あの夜と同じ条件で 」

「 ・・・・ 」

彼女は そっとキッチンを離れテラスに出た。

 

彼は ― 009は 相変わらず優しかった。 ・・・ そう 誰にでも。

 

    ジョー ・・・ !

    どこにいるの。  あなたの隣には ― あの女が いるの?

 

    ジョー!  ・・・ はやくかえってきて ・・・

 

こんな気持ちは 初めてだった。

彼の笑顔を思い浮かべると 心地よさと同時にチリチリと心が焦げる。

 

    ・・・ ああ 嫌!

    わたし ヤキモチ妬き ・・・ !

 

フランソワーズは アタマを振って必死に平静を保とうとしていた。

 

 

故郷の街で再会した夜 ・・・

二人はどちらからともなく腕を差し伸べあい 抱き合い ― 一夜を共にした。

お互いに 求め合い 与え合い 愛している、と思った。

あまりに自然な成り行きに 彼も彼女も思わず笑みを交わすのだった。

 

「 ・・・ こんなことって  」

「 ・・・ きみが 好きさ 」

「 愛してるわ 」

「 ぼく も ・・・ 後悔してない? 」

「 なにを??? アナタを愛したことを? 」

「 え  そ そうじゃなくて ― また 闘いの日々に戻ることを 

「 もう言わないで ・・・ アナタがいれば いいの 」

「 ・・・ フランソワーズ ・・・ 」

「 ひとつだけ 聴いて ・・・ 」

「 なに ・・・ 」

彼女は すこしだけ彼から身体を離した。

「 ねえ ・・・ わたしの脚 ・・・ こんなんじゃないの。

 わたしの足も  こんなんじゃないのよっ 

「 フランソワーズ ・・・ 」

「 ずっと ・・・ 心の中に押し込めてきたわ。

 でも ― ねえ 聞いて。  わたし 踊りたいのっ 踊りたいのよ 」

「 フランソワーズ。  踊ればいい。 踊っているきみが いちばん好きだよ

「 ・・・ ジョ― ・・・ 

「 闘いを終わらせて ― また 踊るんだよ。 

 きみがシアワセなら ぼくは生きてゆける。 きみは踊るんだ。 」

「 ジョー ・・・ ああ ジョー 〜〜〜 」

きゅ。 白い腕が彼の首に絡まってきた。

「 ・・・ 大丈夫 ぼくはここにいるよ。 さあ ・・・ 」

彼は そっと彼女の涙を吸い取った。

 

  そして 再びサイボーグたちは闘いの日々に身を投じていったのだ が。

 

「 ・・・ こんな気持ちになるなんて ・・・  

 

彼が笑顔を向ける相手に 胸が妬けた。

彼が庇う相手を 殺したいとまで思った。

 

   ・・・ !  なんてことを  わたしったら・・・!

 

フランソワーズは 平静に振舞いつつ心の中でもがいていた。

一夜を共にした時から ― 愛と共に嫉妬の軛にしっかりと捕えられてしまった。

 

 しかし ― すぐにそんな感情を持て余す余裕などなくなった。

彼らは 本格的な戦闘状態に入り 生き残るための闘いの日々に巻き込まれた。

 

 

「 ・・・・・ 」

「 ・・・ ジョー ・・・? 」

彼は その日、起き上がったときに 彼女をそっと抱き寄せ  微笑んだ。

「 どうした  の ・・・? 」

「 フランソワーズ  さあ ゆこう! 」

 

―  それが最後だった。

 

 

              彼は  空へ  還っていった 

 

      ジョー  −−−−−−−−−−−−−−−− !!!

 

 

 

 

 

あの空を見上げれば 今もあの微笑が見える。

あの風を感じれば すぐに彼の笑顔が浮かんでくる。

 

そう ― 彼は今 空気となり 風となり 彼女の側にあるのだ。

 

「 ジョーの笑顔が わたしを支えているわ。 

 わたし ― また 踊るの !   新しいポアントを買うの。

 ね ジョー。 うふふ・・・ そこで待っていてね。 」

 

彼女は空へ笑顔を向けると 金髪をなびかせ颯爽と目の前の店に入っていった。

 

 

 

******************************         Fin.       ****************************

Last updated : 09,26,2017.                     back     /    index

 

 

****************  ひと言 ***************

原作 というか 平ゼロ仕様 かも ・・・・

冒頭 と 最後 が つながります。

頼りない新人 は  永遠の恋人 になるのでした☆