『  冬支度  ― (3) ―  』

 

 

 

 

 

 

 

  ほわり。  マフラーを広げてみた。

 

色彩を押さえたシックな部屋に  ぱあ〜 っと花が咲いた。

「 ほう ・・・ 一足先に春 か ・・・ 」

グレートは 少し目を細め、住み慣れた部屋を見回した。

 

 そこは 洗練された趣味により凝った作りなのだが

普通の人間には ただの地味な部屋にしかみえないかもしれない。

しかし。

「 ・・・ ダマスク織のタピストリ― も ペルシア絨毯も

 わかるヤツにしかわからんさ。  それが 狙いだからな。

 地味だの オジサン臭いだの わからんヤツらの戯言 さ。 」

 

  どすん。

 

ベビー・ピンクのマフラーを巻きつつ ソファに腰を下ろす。

この猫足のソファも アンティーク・ショップで手にいれた逸品なのだ。

 

  カチャ。  

 

ウィスキーのボトルとソーダ水は サイド・ボードに常備してある。

彼は 手慣れた様子で ソーダ割り をつくった。

 

「 ふ ん ・・・?  こりゃ 温かい。

 ヒーターの熱も顔負けだな ・・・ ほう こりゃ

 手編みかい ・・・  マドモアゼル、 やるな! 」

 

グラスに盛ったチョコを摘み ぽい、と口に放り込んだ。

冷え切った部屋でも ぽう ・・・と 身体の芯に暖気が起きた。

 

  ころん。 

 

身体を動かすと、マフラーが揺れ ピンクのまん丸玉が

ちょうど胸の真ん前に 落ちてきた。

「 うほ?  ああ こりゃいい。 ピンクのボンボンか〜 

 ふ ・・・ こんな他愛もないイタズラして 笑い合った日も

 あったなあ ・・・ ああ 彼女にヤドリギの下でキスしたり ・・・ 」

 

   いつもクリスマスは 一人、と決めているが 

   ― そうさなあ ・・・

 

   たまには  花でも買ってくる か・・・ 

 

一口含んだだけの ウィスキー・ソーダが ハートに回ったのかもしれない。

グレートは 身体の底の底からじんわ〜〜り 温かくなってきたのを

感じた。  いや 酒のせいではない。

名優氏は首の周りのベビー・ピンクを そっと抑えていた。

「 うん ・・・ この年末には < 帰って > みるか・・

ギルモア老の顔も たまには見ておかんと なあ ・・・・

お前さんの作り主嬢に 御礼を言いたい ・・・ 」

 

  ぽんぽん。  ピンクのぼんぼんが笑っていた。

 

 

 ― クリスマスの前日、 日本で。

 

「 あらあ〜〜〜 グレートから クリスマス・カード! 」

フランソワーズは ポストの前で歓声をあげた。

「 ばっちりなタイミングね。 嬉しいわ 〜〜〜

 ふふふ〜〜〜 皆の名前、書いてあるから 開けちゃう〜〜 」

 

 ぺりり・・・  白い封筒を開ける。

 

最近では ほとんど見かけなくなった by air  のスタンプが

懐かしい。

 

「 それにしても今時 郵送って       メールでもいいのに ・・・

 ふふふ グレートオジサンは やっぱりその世代なのかしらん 

 あらあ〜〜  綺麗なカードねえ  」

取りだしたカードは オーソドックスなツリーの絵柄。

キラキラしたオーナメントを楽しんでから 中を開ければ ―

 

「 めり くりすます。  なんで ひらがな?? 

 まあ いいけど ・・・  え・・・?

 ・・・ わあ〜〜 年末 一緒ね! 

 ジョー〜〜〜 ねえ ジョー 〜〜〜〜 グレートがね〜〜

 博士 〜〜〜  グレートが帰ってきます〜〜  」

フランソワーズは 封筒を翳し、玄関に駆けていった。  

 

  嬉しい知らせ がギルモア邸を笑顔で包んだ。

 

 

 

 

張々湖飯店の厨房は 今日も熱気で満ちている。

具材を炒める火力の強さ だけではない。

鍋を振るう者も 皿を洗う者 そして 給仕をするバイトさん達も

皆が活き活き動きまわっているからだ。

 

そんな人々の中で ― オーナー・シェフの張大人はしっかりと

店全体を見守っている。

 

「 あ〜〜 それやない、 こっちや!  そや そや。 」

「 ええんや。 宴会の御客はんらと いつものラーメンの御客はんらは

 一緒やで。 どちらもウチとこのだいぢな御方らや 」

「 アイヤ〜〜〜 あんたら 上がってヨロシ。 はよ お帰り。

 あとはワテがやるよってなあ  さ はよ はよ 」

ラスト・オーダーが終わると この店の主は従業員たちを

どんどん帰らせ始めた。

「 ええんや。 洗いモノやら 明日の仕込み、ワテがやるよって

 アンタらは はよ お帰り。 ほいで 明日また元気で来てやあ 」

 

     ふう ・・・ 今日も無事閉店時間 やなあ

 

張大人は 誰もいなくなった店で床掃除を終え ほ・・・・っと

息を吐いた。

「 ふんふん ほんならワテも帰りまひょか〜〜

 明日の仕込みもええ按配やさかい ・・・ 

 お客はんら ウチの従業員さんら  今日もありがとさん 」

 

大人は 調理場用の服から着替え 従業員用の裏口を開けた。

「 ふ・・・  ん? アイヤ〜〜〜 荷物 来ててんか

 ちょっとも気付かへんかったで  ・・・ 」

 

   カサリ。  届いていたのは軽いけれど大きな袋だった。

 

「 はあん?  なんやろ。  アイヤ〜〜 フランソワーズはんからや!

 しばらく あのお家にも行ってへんなあ ・・・ 」

 

   ガサガサ。 

 

紙袋の中からは ― 濃いピンク色の毛糸作品が出てきた。

「 お ・・・ ほっほ〜 こりゃ ええわな。 」

大人は 取りだした手編み作品を ぽわっと広げた。

「 ええ色やなあ 牡丹色やで  こりゃ ええ。  

 福々帽子や〜〜  ・・・ ん〜〜〜 温い( ぬくい )なあ 

 こりゃ ええなあ ・・・

 お? お揃いの首巻きやんか!  ええな ええな

 ワテの冬は もう寒いことないで〜〜 」

 

   もふもふもふ。  

 

丸まっちい身体を もこもこの毛糸の帽子、同じ色のマフラーで包み

張々湖飯店の大将は ほこほこ家路についた。

 

   ほわ〜〜〜 こりゃ 温いワ ・・・

   

   ・・・ しばらくあっこのおウチにもいてまへんな

   年末やし ・・・ ギルモア先生のご機嫌伺い せな

 

   ジョーはん や フランソワーズはんの お顔も 見たいさかい・・・ 

 

 

 ― 少し先のハナシになるが。

 

大晦日間近のある日 張々湖飯店のオーナー・シェフは 

とんでもない騒乱?の中に 飛び込むことになってしまった ・・・・

どこの戦場か ・・・って?

 

 そ れ は。

 

「 はい コンニチワ ・・・・?  お留守かいな 」

大人は 玄関で首をひねっていた。

ギルモア邸は 鉄壁のセキュリテイ・システムを完備しているが

メンバーズは全員登録済み の フリー・パス なのだ。

 

「 お留守でっか〜〜 失礼さしてもらいます〜 

よっこら ・・・ 彼は靴を脱いで玄関に上がった。

 

   くん ・・・?  ふんふん ・・・

 

「 皆はん いてはりますな〜〜 お台所から ええ匂いや〜

 ! これ なんか焦げてますで〜〜〜 

彼は 荷物もなにもかも放りだしキッチンに飛び込んだ。

 

  バン ッ !

 

キッチンのドアが開いて まるまっちい身体が飛び込んできた。

「 焦げてまっせ! 」

 

「 え!?  あ〜〜〜 いっけね〜〜〜 」

まな板に向かっていた茶髪少年が 本当に少し跳びあがり ― 

ガス台のところに飛んで行った。

「 わっ ヤバっ  〜〜 あっちっち〜〜〜 」

「 こりゃ 鍋、触ったらあかん、て。 火ぃ 消せばヨロシ。 」

 

  カチ。 大人は慣れた手つきで コンロのスイッチをひねった。

 

「 あ ・・・ あ〜〜 そっか・・・ 

 あ! でも 焦げちゃったかあ  ・・・ 」

少年は がっかりした顔で鍋を覗きこむ。

「 ふん・・・? これ なにね 」

「 え? あ ・・・ あのう〜〜 栗きんとんの餡のつもり 」

「 ・・・ ほう ?  」

料理人は 匙でほんの少し、鍋の中身を掬いあげ 口元に運ぶ。

「 ・・・ 大丈夫やで。 あ〜〜 味醂 ありまっか?

 ほんのちょい  ん ん ・・・ ふん も一回 練りまっせ〜〜〜 

「 は はい 」

 

  くい くい くい  太い手首が縦横無尽に動き

 

 やがて 鍋の中身は黄金色のきんとんの餡が出来上がった。

 

「 わあ 〜〜〜 すっげ〜〜〜〜〜   

 あ 大人〜〜〜 いらっしゃい! 」

「 まあ すごい!  ねえ ねえ 大人 〜〜〜

 かつらむき ってどうやるの?? 教えてください〜〜 」

 

    はあ  ん ??

 

どうやら 張々湖氏は 戦場のど真ん中に乱入してしまったらしい・・・

 そこは ―  お節料理作りにてんてこ舞いなギルモア邸のキッチン!

 

「 あんさんら なにしてはりますねん 」

「 え ・・・ なに、って。 お節、作ってるんだよ 」

ね、 と ジョーはフランソワーズの顔をのぞきこむ。

「 ええ そうなの。 せっかく日本で ニューイヤー を

 迎えるのですもの、 う〜〜んと日本らしくしたいな〜〜って

 ・・・ そしたら ジョーがね、 おせちりょうり 作ろうよって 」

「 はあん? ジョーはん、 あんた 作ったこと、ありまっか 」

「 ぼく? ううん 全然。  子供の頃の施設では ・・・ 

 あ〜〜 お雑煮 は出たな〜〜 正月に ・・・

 でも お節料理って 食べたこと、なかったなあ 

「 ほう ・・・ フランソワーズはん、 あんさんは 

「 わたしは 生まれて初めて。  見たこと、ないもの。

 あ でもね〜〜 今年は いろんな広告で 見たわ。 

 ね オモチャみたいな芸術品かと思ってたわ 」

「 アレは食べ物やで。 」

「 そうなんですってね !  だから 手作りおせち に

 ちゃれんじ〜〜って ね ジョー? 」

「 そ! 」

 ね〜〜〜 と 二人は顔を見合わせ にこにこ うふふ・・・

傍観者は もうやっちゃらんないのである。

「 ふん・・・ ほいで あんさんら なに 作りますねん 

「 だから〜 おせちりょうり 〜 」

「 そやから お節料理の なに作ろ、おもてるのんか? 」

「 あ〜〜〜 え〜とぉ  栗きんとん に 伊達巻。

 紅白なます に くろまめ たづくり。  それから・・・

 牛肉の松かさゴボウ とぉ〜〜 慈姑やニンジン、シイタケなんかの

 煮物 ・・・ かな。 紅白蒲鉾 と 昆布巻き は買ったよ 」

ジョーは もうずっとにこにこ〜〜 しっぱなし、だ。

  

     はぁ 〜〜〜〜   大人は 大きくため息を吐いた。

 

「 あの ・・・  どうか した、大人? 」

フランソワーズが おそるおそる尋ねた。

「 来てよかった、おもてますねん。 

 さ! ワテが手ぇ 貸しますよって 二人ともきりきり働いてや 」

「「 ・・・ は はい ・・・ 」」

「 ヨロシ。  ほんなら〜〜〜 」

 

  以後 ワカモノ二人は 息つく間もなくキッチンでの作業に追われた。

 

「 ・・・ ふん ・・・ 後は じ〜〜っと炊くだけやな 

ようやっと厨房の大将? の動きが止まった。

 

  はあああ〜〜〜〜〜  ふう ・・・・

 

配下となり 文字通りコマネズミのように働いていた若者達は

へなへな・・・ 床に座り込んでしまった。

「 ? なにね、あんさんら。 ええ若いもんが・・・ 」

「 ・・・ だってぇ〜〜 わたし へとへと・・・ 」

「 あ は。 ぼく ・・・ もう足が 」

「 はあん? なに言うとりますねん〜  

「 でもぉ・・・ お料理がこんなに大変だなんて 

「 ウン ・・・ 大人ってすごいねぇ〜 」

「 ふふん 料理いうもんはなあ そんなモンや。 

 ま よう手伝うてくれはったな。 おおきに 」

「 うふ ・・・ ね、オヤツにしましょ(^^♪ プリン、作ってあるの 」

「 わはは〜〜〜ん♪  珈琲 淹れるよう〜〜 」

ヘタっていた二人は たちまち元気になった。

「 ふん。 ほんなら頂きまひょか 」

「 ええ すぐに♪ 」

「 うん まってて 」

 

    カタカタ カチャ ・・・ たちまちティー・テーブルの準備ができた。

 

「 ん〜〜〜 おいし♪ 」

「 ん! あ〜〜〜 甘味が身体中に沁み渡るよう〜 」

「 ・・・ ふん ふん 優しいお味でんな 

 時に ギルモア先生は 」

「 博士はね コズミ博士とご一緒に学会なの。 」

「 あ 学会、というか 忘年会らしいよ 」

「 ご安全は 大丈夫やろか 

「 あ ごく内輪のお集まりみたい。 銀座の老舗ですって。 」

「 ガードマンします、って言ったら 大丈夫だよって

 駅まではお迎えにゆくけど 」

「 さよか  ほな 安心やね 」

「 ええ ・・・ すごく楽しみにしていらしたわ 」

「 忘年会ってさ、 ああ 年末だな〜って感じだね 

「 そうねえ  あ そうだわ。 あのねえ グレートも来るのよ 

「 そうなんだって。 多分 大晦日までには来るって 」

「 ! なんやて〜〜 ほんなら 膾 ふやさな あかん。 

「 なます?? 」

「 そや! 紅白膾たら グレートはんの好物なんや〜〜

 ジョーはん! お大根さん もう一本 こうてきてや 」

「 は はい! 」

「 フランソワーズはん その残りの人参さん 全部、かつら剥きしてや 」

「 は はい 〜〜 」

「 ふんふん ほんなら あと〜〜 数の子と コハダの酢〆、

 準備せなあかん。 ・・・ご酒はなにがええやろか 」

大人は ますます張り切り始めた。

 

  ― そして。

 

お重にぎっしり。  ギルモア邸の正月準備は完了した。

「 わあ すっご〜〜い・・・! 」

「 も〜〜 い〜〜くるね〜る〜と〜〜

 わはは〜〜ん  ぼく お正月がこんなに楽しみって 初めて! 」

「 ね! 大人も勿論 大晦日から泊まってね? 」

「 あは ワテは店がありますさかい・・・ 大晦日、終えてから来まっせ。

 元旦になるやろか ・・・ 

「 そうなの? あ でも 一緒に初詣しましょうよ 」

「 そうだよねえ  それで お屠蘇でおめでと〜〜 しようよ 」

「 ええな。  あ ! そやそや 忘れるとこやった。 

大人は リビングに駆けてゆきすぐに戻ってきた。

「 フランソワーズはん。 あったか〜い首巻と帽子、おおきに。

 ずっと使わせてもろてます、ええお色やし・・

 これはワテからや。 皆はんで召しあがってや 」

 

   ガサリ。  飯店の袋から茶色の焼き菓子が顔をみせている。 

 

「 まあ ・・・ 」

「 わお〜〜 月餅だあ〜〜 張々湖飯店の月餅って最高なんだよぉ 」

「 あのね、 コズミ先生もお好きなの。 お裾分けしていい? 」

「 勿論でっせ。 嬉しなあ〜〜 

 

   も〜〜 い〜くつね〜る〜と〜〜 お正月ぅ 〜〜〜 ♪

 

ジョーの歌声が 一段と大きくなった。

 

 

 

12月とはいえ ここ ― アフリカ大陸のとある国には 

寒風が吹き荒ぶことは ― まず、ない。

それでも 灼熱の太陽 からは一応解放されるし、熱風に晒されることも ない。

高地では朝晩と昼間の気温差が激しくなるのも 冬の特徴だ。

しかし クリスマスに雪が降ることはないし、寒い 寒い・・・と

ひーとてっく を着こむ必要も ないのだ。 

 

 ― そんな12月のある日。 そのオフィスでは女子達のひそひそ話が

めっちゃ盛り上がっていた !

 

「 ・・・ あれ なに 」

「 さあ ・・・ でも お気に入り みたいよ 」

「 ・・・手作り? 

「 みたい。 

「 ! カノジョ ?? 」

「 さあ ・・・ 」

「 え〜〜〜 カノジョ、いるのぉ〜〜 」

「 う〜〜ん ? 外国とかに いる かも ・・・ 」

「 ええ〜〜〜〜 」

「 でも さ。 暑くないのかなあ ・・・ 」

「 ね? ・・・ なにか特別なのかしら アレ。 。

「 さあ ・・・ あ 新開発の防弾ベスト とか? 」

「 ・・・ う〜ん ?  今 必要 ? 」

「 いらない わね 」

「 じゃあ なんで??? 」

「 さあ ・・・ 」

 

カノジョらの話題は 堂々巡りのぐるぐる話 に陥っていた。

カノジョらの視線の先には ― 

 

   真っ赤な毛糸のベスト を着こなすピュンマ氏の姿があった。

 

「 ん ん〜〜 了解。 じゃあ その線で頼みます。 」

彼は通話を切り そのままモニターに向かった。

「 あ  モニカさん。 報告書、締め切り時間厳守してください。

 セリアさん エア・チケットの予約 頼みますよ。

 ん〜〜 ・・・ ジーモアさん 15時に車、出します。

 あ 僕 自分で運転して行くから 

オフィスの中は ぱたぱた・・・ 皆の動く気配でいっぱいとなり

雰囲気も さっと引き締まった。

  ・・・ 無駄なウワサ話をしているヒマはなくなったのだ。

 

   ふ ん。  これで静かになったなあ〜〜

   ってか。 これがウチのオフィスの通常光景だよなあ 

 

「 ・・・ そんなに目立つ かなあ 

ピュンマは 毛糸編みにベストをちょい、と引っ張った。

「 ふ ふ ・・・ でも気に入ってるから。 脱がないよ〜 

数日前の朝 オフィスに来たら 届いていたのだ。

「 ニット製品 なんて久しぶりだよ〜〜  ああ いい手触り ・・・

 こういうもふもふ・・・ を触っているとなんか

 安心した気分になるよな ・・・ 不思議な感覚さ ・・・ 

 

     メリー・クリスマス ♪  

    ちょっと早いけど プレゼントです。

 

    忙しいのかしら、 でも

    たまには 一緒に聖夜かお正月すごしたいな

 

         フランソワーズ 

 

ツリーの絵柄のカードに ちまちま丸文字の日本が並ぶ。

「 フランソワーズ 〜〜 日本ではこんな字体、流行ってるのかなあ

 そっか ・・・ もうクリスマスかあ 新年も近いか・・・ 」

 

ピュンマは顔を上げ オフィスの中を見回す。

簡素な部屋だが ご〜ご〜 空調機が周り 送風装置は健在だ。

人々は 明るい表情で活き活きと仕事に取り組んでいる。

「 あ  は ・・・。 季節感のカケラもないよね ・・・

 う〜〜ん 今年も帰れないなあ ・・・  」

向かいの机の上に ドライ・フルーツがいくつか、皿に乗っている。

誰かの オヤツ かもしれない。

 

「 あ。 うん ・・・ アレを贈ろうよ。

 僕の代わりに ― 僕らの国を思い出してもらえれば いいなあ 」

ね? ・・・ と 彼は真っ赤なベストをちょいとひっぱり 語りかけていた。

 

 

 ― 数日後

 

「 は〜〜い 今 でま〜す〜〜〜  」

玄関のチャイムに フランソワーズは声を張り上げつつ玄関のドアを開けた。

ドアの前には 顔なじみの配達さんが立っていた。

「 郵便小包です〜〜  エア・メイルですね〜〜 

 えっと・・・? ふ らん そわず さん?? 」

「 あ はい わたしです。 ハンコ・・・? 」

「 あ〜 サインでもいいですよ〜 」

「 うふふ わたし ちゃんとハンコ、もってます〜〜

  ・・・ はい。 ご苦労様〜〜 あ これチョコレート。 どうぞ〜 」

「 あ〜 すいません〜〜 

 

チョコより金髪美人の微笑が嬉しくて 配達さんはにこにこ顔で

帰っていった。

 

「 エア・メイルで?  誰からかしら・・・

 あ !  ピュンマから !   なにかしら 

 う〜ん これは皆で開けてみた方がいいわね 

 ねえ 皆〜〜〜  ピュンマからよ〜 」

彼女は包みを抱いて リビングに駆けこんだ。

 

 そして 数分後 ・・・ リビングは歓声でいっぱいになった。

 

「 すっご〜〜い ・・・ これ 全部フルーツなの? 」

「 そうだね〜 ドライ・フルーツだあ 〜〜〜

 あ 見て。 手紙が入ってるよ ・・・ きみ宛だ 」

「 え なあに?   え〜と ・・・ 読むわね。

   

     フランソワーズ

 

   素敵なベストをありがとう! 手編み、最高だよ。

   毎日 着ているよ  すごく気に入ってる。

   僕からのクリスマス・プレゼント というか

   僕らの村では 冬支度にするのだけど

   フルーツを送ります。 美味しいよ!

 

   博士と皆に よろしく。 僕は元気だよ☆

 

   メリー・クリスマス そして 

      あけまして おめでとう 

 

             ピュンマ

 

 ・・・ ですって !! 」

「 あは ドライ・フルーツが冬支度なんだね 

 ねえ ・・・ どんな味かなあ 食べてみようよ 

「 ええ でも一つだけよ? これ 使ってケーキ 焼くわ!

 ほら クリスマス・プディング !

 グレートが来るから ちょうどいいわ。 」

「 ふうん?  ね これ 食べていい? 」

「 じゃ わたしは こっちね 

 

     ん〜〜〜〜  オイシイ 〜〜〜〜〜 !!!

  

 

  さて。  クリスマス前後 ギルモア邸は思いもかけず賑やかになった。

 帰れないなあ〜〜 の知らせばかりを貰っていたのだが。

 

ジェロニモ Jr. からは 木の実のアクセサリーと リースが。

アメリカからは ピンクとブルーの 激甘い砂糖菓子が。

ドイツからは 独逸ワインの逸品が  そして

ピュンマからは ドライ・フルーツが山ほど 届いた。

 

そして お重には ぎっちり詰まった手作り・お節。

明日にもグレートがやってきて、大晦日の夜には張大人が

駆け付けてくれる。

 

「 ほう〜〜 これはすごい。 賑やかで嬉しいなあ 」

博士も楽しそうだ。

「 ね? 日本のお正月ってなんだかステキですわね 」

「 ふふふ  お前たち皆が素敵にしてくれたのさ。

 日本では正月は家族で過ごすのが習慣らしい。 」

「 わたし達のクリスマスと同じですね 

「 らしい な。 ・・・ほら 

「 え・・・ あら。 うふふ・・・ 」

二人の視線の先には ―   

 

   いいな〜〜〜 お正月って こんなに楽しかったんだ♪

   ウチの正月 だよ〜〜 お正月! わあい♪

 

ジョーは ものすごく ものすごくシアワセそうだ。

そんな彼の笑顔を フランソワーズは にこにこ・・・見つめていた。

 

    ・・・ ふうん? 

    ジョーのこんな笑顔 ・・・

    初めて見た かもしれないわ。

 

    わたしのお正月 かも・・・

 

ここには集っていない仲間たちも ほっこり気分で

新しい年を 迎えることだろう。

 

 

「 あ フラン・・・ マフラーと手袋 ありがと♪

 も〜〜〜 めっちゃ嬉しい〜〜  最高だよ 

「 わあ 気に入ってくれた? よかった〜〜〜 

 ねえ ちゃんと毎日使ってね。 」

「 うん 勿論! 最高〜〜にあったかいし〜〜 

 えへへ ・・・ バイト先のヒトにもさ〜 手編み? 素敵ね とか

 褒めてもらっちゃったあ〜 」

「 うふふ ・・・ そう?

 あ。 ジョー ? もう寒くないでしょ? 」

「 え ・・・ あの 別にぼく・・・寒くない けど ・・・・ 」

ジョーは きょとん、としている。

「 え ・・・ それじゃ どうしてそんな恰好で歩くの? 」

「 はい?? 恰好・・・って ダウン・ジャケット・・・ ヘン? 」

「 いえ そうじゃなくて  ジョーの歩く姿のことよ。

 ・・・ あのマフラーとかしてないから 寒かったのでしょ? 

 だから あんな風に歩いてたのでしょ・・・? 」

「 へ???  べつに・・・ いっつもぼく、こんな風に歩くよ? 」

ジョーは 背を丸めスニーカーのカカトを潰しポケットに

手を突っ込み目を伏せ ぶらぶら歩いた。

「 こんなカンジ ・・・ 」

 

    キリリ −−−− !  フランソワーズの眉がつり上がった。

 

「 まあ  みっともない!  ちゃんと背筋伸ばしてっ ! 

「 ・・・ へ? 」

「 上から す・・っと糸で引っ張られるみたいに!

 顔 上げて! まっすぐ前を見て! 下、向かない!

 そして さっさと歩きましょう 」

「 ・・・・・ 」

「 そんな風に歩く人にね 似合うように・・・って。

 わたし、 そのマフラー 編んだのに。 手袋も ・・・ 」

 

  じわ〜〜ん ・・・ 碧い瞳に涙が滲んできて ・・・

 

「 わ! ご ごめん!  ごめんなさい !!!

 きみのマフラーが似合うように 歩くよぉ 〜〜 

 だから  泣かないでくれよぉ〜〜 」

「 ・・・ ホント? 」

「 うん! 」

「 嬉し〜〜  メルシ ジョー ♪ 」

 

   ちゅ。    小さなキスが ジョーのほっぺに降ってきた。

 

     わっは〜〜〜〜〜  やた〜〜〜

 

はい、 ここはもう一足飛びに  春 で〜す♪

 

 

***************************     Fin.    *************************

Last updated : 12,17,2019.                  back    /    index

 

**********    ひと言  ********

編み物話 から 年越し話 に シフトしちゃった・・・

多民族家族? ですから 

ギルモア邸のお正月は いろいろ賑やかでしょうね。

ええ ケンカなんかしなくても ね (^_-)-