『 おおさむ こさむ ― (1) ― 』

 

 

 

 

 

      ひゅうう〜〜〜〜〜   カタカタカタ ・・・

 

山から乾いた冷たい風が 吹き降りてくる。

 

    びゅうううう・・・  ざざざざざ 〜〜〜

 

海原を渡ってきた風は じくじく湿った冷えを運んでくる。

 

比較的温暖な地域であるけれど 霜月にはいれば この辺りも

しっかりと冬の寒さがやってくるのだ。

迫り出した崖の上に立つギルモア邸 ― そこまでの道のりは

・・・ やっぱり大変なのだ。

 

「 うう〜〜  ああ寒い〜〜〜  

 冬はこの坂道 本当に辛いわあ ・・・ 

 

フランソワーズはコートの襟を立て 大きなバッグと

買い物袋を 抱えなおした。

お日様はそろそろ西に傾き始めている。  

冬の陽はあっと言う間に隠れてしまう。

 

「 急がなくちゃ・・・ 一本電車、遅れちゃったし・・・

 今晩は 鶏団子とお野菜の煮込み にしよ。

 手間いらずだし お部屋も温かくなるわね。

 あ 洗濯モノ! 

  ・・・ ちび達 取り込んでてくれるといいだけど 」

 

  たたたたた・・・・!

 

最後の上りをクリアし低い門を開け 玄関に直行!

 

「 ただいまあ〜〜 」

玄関に入れば  なんとか寒風は避けられる。

「 ・・・ あ〜〜〜 あったか ・・・ い 〜〜 

彼女は ほっとして荷物を上がり框に置いた。

玄関には コドモ用のスニーカーが二足 一応、揃ってならんでいる。

「 ただいまもどりました。  すぴか すばる? 

 帰っているのでしょう?  晩御飯のお買い物してきたのよ

 荷物、運んでちょうだい 」

 

「  ・・・ おかえりなさ〜〜〜い おか〜さ〜〜ん 」

「 おか〜さ〜〜〜ん  おかえり〜〜〜 」

 

少し間があってから すこしぼわぼわした声が聞こえてきた。

  が。 玄関には誰も現れない。

 

「 ??  すぴか?  すばる〜〜 ?? 

荷物を玄関に置いたまま 彼女はリビングのドアを開けた。

 

「「 おか〜さ〜〜ん  」」

 

もごもご  ごそごそ。

リビングの真ん中に置かれたコタツの中から

色違いのアタマが 彼女を見上げた。

 

「 ただいま。 すぴか すばる お玄関に買い物袋が置いてあります。

 二人でキッチンに運んでちょうだい。 」

「 ・・・ う〜〜ん 

「 それから 洗濯モノ。 取り込んでくれた?

 これは二人のお仕事でしょう? 」

 

ちなみに ― 島村さんち では 皆 <お仕事> が決まっている。

お父さんは お風呂場とトイレの掃除。 

お母さんは キッチンを清潔に保つ。

博士も 表庭の掃除と植木の手入れを引き受けている。

勿論 コドモ達も例外ではない。

学校から帰ったら 洗濯モノを取り込む きちんと畳む は 

すぴかとすばるの仕事。

そして 買い物袋をキッチンまで運ぶのも 二人の任務である。

 

「 ・・・ あ〜〜〜 」

生返事をし コドモたちは顔を見合わせたまま ― コタツの中 だ。

 

「 すぴかさん。 すばる君。  聞こえましたか 」

「「 きこえマシタ 」」

一応 しおらしい返事が混声二部合唱でかえってきた。

「 それでは 行動に移しなさい。  」

「 ・・・ う〜〜ん  すばる 先に行っていいよ 」

「 僕 すぴかにゆずる。 おさきにどうぞ 」

 

   もぞもぞもぞ〜〜〜  

 

アタマは動くが身体は ― コタツから離れない。

 

「 すぴか。 すばる。  もう一回 言ってほしいですか 」

母の声がぐっと低くなり しかし ぐっと凄みを増した。

「 ・・・・・ 」

「 ・・・・ 」

二人の動きは 止まったまま。

 

    ぷち。  フランソワーズの 堪忍袋がキレた。

 

「 ― わかりました。  では今日、ウチは営業終了。

 オヤツも晩御飯も お休み です。  以上。 」

 

母は低い声で淡々と告げると すたすたとリビングから出てゆこうとした。

 

「 ! おか〜〜〜さん ! アタシ せんたくもの、とってくる! 」

「 ぼ 僕がいく〜〜〜〜〜 」

「「 だから オヤツ! ごはん つくって〜〜〜  」」

 

    ばたばたばた どたどたどた〜〜 

 

二人はコタツから飛び出すとダッシュで裏庭に飛んでいった。

すぴかは半袖に短パン  すばるも長袖Tシャツだけだ。

 

「 ・・・ 加速そ〜〜ち! ・・・ってね  

 ふふふ さすがにジョーの娘と息子だわねえ 」

母は にんまりしていた が。

「 やだ ・・・ また あんな恰好で・・・

 そりゃ いくら家の中だって半袖じゃ寒いでしょ。

 も〜〜〜 またどっかに脱ぎ捨ててあるんだわ  」

ったく! と ― 室内を振り返る  と

きりきりきり・・・ 彼女の形のいい眉毛が吊り上がった。

 

 TVはつけっぱなし。 コタツの周りには漫画やら本やらノートが散乱。

天板にはミカンの皮だのティッシュだの空のマグカップだのがご〜ろごろ。

果ては 二人のダウン・ジャケットやら ランドセルが部屋の隅に

転がっている。

ついでに 脱ぎ散らかしたとおぼしきトレーナーやらセーターは

コタツの中に半分埋もれていた。

 

「 !  ということは。 学校から帰って コタツに直行したってこと?

 ・・・ 手、洗ったの?? ウガイは?? 」

 

う〜む これはなんとかしないと、と母は腕組みをし仁王立ちだ。

 

     こ た つ。  特大のコタツ。

 

「 電気代の節約にもなるし 家族一緒〜〜っていいなって思ってたけど。

 こ〜れ〜〜は 問題ね! 」

 

コタツを前に 彼女はじっと考え込む。

「 コタツさん。 あなたはとても便利でステキなんだけど。

 う〜〜ん  問題なのは 使うヒト の方だわねえ 」

   どうしたもんだろう ・・・ 

あっちこっちに引っぱれらたコタツ布団をなおしつつ フランソワーズは

ムズカシイ顔をしていた。

 

 

そもそもこの特大のコタツを持ち込んだのは  ジョーなのだ。

 

いかに温暖な地域とはいえ 木枯らしが吹き抜けるようになった頃のこと。

「 ・・・ 今日は冷えるわね。  ヒーターの設定温度を

 上げた方がいいかも 」

フランソワーズは キッチンからちらり、とリビングを眺めた。

晩御飯前 コドモたちは宿題を終わらせ TVを眺めている。

「 あら。  すぴかがウチにいるなんて 珍しいわねえ 

 すぴかさ〜〜ん  今日は公園に遊びにゆかないの? 」

「 おか〜さん ・・・ 皆 寒いからよやくきゃんせる だってぇ 」

「 まあ 遊ぶのにも 予約 が要るの? 」

「 ・・・ ん。 やくそく するんだもん。 」

「 へえ〜〜 それで寒いからキャンセルなの?

 皆で ドッチボールとか缶蹴りでもすれば あったまるのに 」

「 こうえんでぼーるあそび きんしだもん。

 かんけり ってなに? 」

「 ・・・ 缶蹴り、しらないの?? 」

「 しらな〜〜い。  すばる しってる? 」

「 ・・・ ん〜〜    あ? なにぃ 」

すばるは 没頭していた 電車時刻表 からやっと顔をあげた。

「 かんけり。  しってる? 」

「 かんけり・・・? しらない。 ね〜 すぴか しってる??

 おおさかにも東京とおなじなまえの駅があるんだよ

 どこでしょう? 」

「 しらない。 べつに知りたくないもん。

 ・・・ すばる、もっとこっちきて 」

「 あ うん ・・・ 

リビングのソファの隅っこで 二人はぎゅうぎゅう詰めになっている。

「 あらあ 一人ずつ離れて座ったらどう? 」

「「 ・・・ これがあったかいんだも〜〜〜ん 」」

「 ・・・・ 」

母は リビングの真ん中までやってきた。

「 ・・・ ん〜〜 もうちょっと温かくしましょうか 

 ヒーター ・・ 」

「 うん!!!  ねえ おか〜さん ・・・ ウチ さむい。 」

「 がっこうのほうが あったかいよお 」

子供たちは 口々に母に訴えてきた。

「 まだ真冬じゃないし ・・・ ああ 毛糸のソックス はく?

 すぴか 毛糸のパンツ 温かいわよ? すばるも どう?

 二人とも長袖のシャツにしますか? 」

 

   「「 やあだあ〜〜〜  」」

 

「 しっかり着れば 寒くないでしょう? 」

 

   「「 ・・・・ う〜〜ん ・・・  」」

 

なんとなく険悪っぽい雰囲気になりかけた時。

 

 ―  バタン。  玄関のドアが派手に閉まった。

 

「 ただいま〜〜〜  すぴか すばる〜〜〜〜

 約束のモノ  買ってきたぞぉ〜〜〜 」

 

「「 あ  おと〜〜さ〜〜〜ん !! 」」

ちび達はソファから飛び出し ダッシュで玄関に消えた。

 

「 ?? な なんなの〜〜  

フランソワーズが 少々眉を寄せつつ玄関の方を眺めていると・・・

 

「 さあ〜 どこに置こうか? 」

「 まんなか!  おと〜さん まんなかにおいて 

「 ん! 僕 そふぁ と てーぶる よせるね う〜〜〜ん〜〜〜〜 」

「 あ アタシもやるよ! いっしょに う〜〜ん〜〜〜〜 」

すぴかとすばるは チカラを合わせ なんとソファを片隅の寄せてしまった。

「「 おと〜さん  ここがいい! 」」

「 お〜〜 よしよし。 」

 

   どごん。  ジョーは抱えてきた大きな包をリビング中央に置いた。

 

「 さあ 開けるぞ〜〜  あ フラン 」

「 ああ  お帰りなさい ジョー。 」

「 うん ただいま。  さっき帰ったんだけど・・・

 チビ達が寒い〜〜〜っていうからさ。 いいもの、かってきた! 」

「 え ・・・ 」

「 商店街でさ 格安になってたんだ。 

 あ・・ ねえなにか使ってない掛布団とか ない? 」

「 ? つ つかってない かけぶとん?? 」

「 うん。 できるだけ大きいのがいいなあ 」

「 う〜ん ・・・?  あ。 客用のがあるけど ・・・ 」

「 あ それさあ よかったらもってきてくれるかな 」

「 ・・ ここへ? 」

「 うん。 死蔵品 活用〜〜さ 」

「 ・・・ いいけど ・・・ 」

「 お願いします 」

 ぺこん、とアタマを下げられ フランソワーズは首を傾げつつ

屋根裏に 客用掛布団 を取りにいった。

 

 

「 ― と。 これでよしっと 」

ぱん ・・・ と ジョーは手を叩いた。

「 お おと〜さん  これ・・・ はいって  いい? 」

「 はいっていい・・・・? 

「 おう いいぞ。 さっきスイッチいれたから〜〜 」

 

   ぱふん ・・・ ぽん。

 

チビ達は 布団の中に脚を突っ込んだ。

 ・・・わあ〜〜〜 ほかほか〜〜〜 」

「 あったか〜〜い〜〜〜 」

「 な〜〜〜〜 いいだろ??

 あ フラン〜〜 フランも入っておいでよ ほかほかだよ〜 

ジョーは 彼の細君を笑顔で誘う ・・・ 布団の端を持ち上げて。

 

「 あの これ ・・・ なに? 」

 

「 え? ああ 知らないかあ〜〜  そうだよねえ〜〜

 フランスにはないよね〜 ってか 独逸にも英吉利にもアメリカにも

 ない!  あ ・・・ 中国とかには あるかもな〜〜 」

「 ・・ ジョー・・・・? 」

「 あ ごめん〜〜 ほら ここにすわって 座って〜〜

 脚 前にだしていいから さ   さあさあ〜〜 」

ジョーは彼女の両肩に手をおいて 満面の笑顔だ。

「 座るの? ・・・ あのう わたし 正座はちょっと・・・

 できないのね〜〜 」

「 正座?  そんな必要はないよ〜〜〜

 そのまま ど〜〜んと座ってみて? 」

「 え  ええ ・・・ こ こう? 」

「 そうそう!  あ ぼくもお隣にシツレイしまあ〜す 」

いそいそと 彼は彼女とならんですべりこんだ。

「 さあ 布団を直して ・・・  はあ〜〜〜〜〜 

 いいなあ〜〜〜  ね? 

「 ・・・ え ・・・  あ?  あああ ・・・? 」

 

  ほわああ〜〜〜ん  冷えた脚はたちまち暖気に包まれた。

 

「 ― どうだい 」

「 ・・・ すご ・・い ・・・

 ねえ これ・・・ なあに??  暖房機器 なの? 」

フランソワーズは 布団をそっと撫でた。

「 あは これ   コタツ  さ。 こ た つ! 

 日本の冬の 必需品なんだ  」

「 こ たつ ? 」

「 そ!  あ ほら ・・・ この板の上に顔、つけてみて? 」

「 ・・・ここ? 」

「 そ。 」

  ぱん。  ジョーは天板を 掌で軽く叩いた。

「 こ  こう ? 」

「 うん。  ・・・ どうだい? こう じわ〜〜〜っと・・・ 」

「 ・・・?  ・・・ う  わあああ ・・・ 」

その板の温かさに 頬がかなり冷たかったことに 気が付いた。

「 ・・・ き  もち  いい ・・・ 」

「 ふふふ  だろ?  これはスゴイと思わない? 」

「 ・・・ 思う!  あ〜〜〜  気持ちいい ・・・ 」

フランソワーズは 天板にぺったりと頬を寄せている。

「 熱過ぎず 冷た過ぎず ・・・ この温度、絶妙だよね〜 

 ほっんと コタツって最強だよなあ  

「 ・・・ ん ・・・ 」

「 へへ 気に入った?   ああ みかん ある? 」

「 みかん???  ええ キッチンの勝手口の側に

 箱ごと置いてあるけど・・・ 

「 お いいね  ちょっと取ってくる 

「 おと〜さ〜〜〜ん アタシにも みかん〜〜〜  」

「 僕も!! おみかん 〜〜〜〜 」

「 おっけ〜〜〜  コタツの上には籠にミカン〜〜っと 」

さっとコタツから抜け出すと ジョーはキッチンに消え ・・・

すぐに 籠に山盛りのミカンを共に戻ってきた。

「 ほ〜ら みかん! 」

 

   でん。   広い天板の真ん中にミカンの籠。

 

「 ん〜〜〜  これぞ ニッポンの冬☆  

 さあ みんな ミカン、食べよう 

「 うん!  〜〜〜 おいし〜〜〜

 ねえ おと〜さん  みかんってこんなにおいしいっけ? 」

「 あま〜〜〜〜♪ えへへ おいし〜 」

子供たちは 蜜柑に夢中だ。

「 へえ ・・・ いつもは またみかん〜〜? とか

 オレンジがいい〜〜 とか言うのに 」

「 そうなんだ?  あ〜 コタツに入ってるとねえ

 なんかノド、乾いて。 やっぱミカンが最高〜〜って感じるのかもな。

 ほら ほら フラン〜〜 きみもミカン! 」

 

  ズズズ・・・ ジョーは蜜柑の籠を彼女の前に押しやった。

 

「 そう なの? 」

「 ん。 さあ みかん どうぞ 」

ぽん、と渡されたごく平凡な・いつもの・蜜柑。

フランソワーズは 半信半疑で皮に 爪を立てた。

 

    ほんとうかしら ・・・

  

    !  あ ら ・・?

    おいしい〜〜〜〜〜☆

    みかんって こんなに美味しかった??

 

コタツの上には たちまち蜜柑の皮が積まれていった ・・・・

  

  ― それ以来 リビングの中央には ででん! と

特大コタツ が 鎮座ましましているのだ。

 

 

 

   ばたばたばた  どたどたどた〜〜〜

 

賑やかな足音が戻ってきた。

「 おか〜〜さ〜〜ん せんたくモノ!  」

「 せんたくモノ〜〜〜  ひゃっこい〜〜〜 」

ちび達は 両手に取り込んだ洗濯モノを抱え、駆けこんできた。

「 ああ ありがとう すぴか すばる。

 では ついでに全部畳んでちょうだい。 そして 皆に届けて? 」

「 え・・・っとぉ〜〜 これはつめたいのでぇ〜〜 」

「 冷たいのでぇ〜〜  あっためます! 」

「 はい  チン! 」

「 チン!! 」

二人と抱えてきた洗濯モノを そのまま ― コタツの中に放り込んだ。

 

「 !  な  なにするの!? せっかくキレイに洗ってぱりっと

 乾いたのに〜〜〜  

母の悲鳴が上がった。

清潔好きの彼女は 慌ててぱりぱりに乾いたシャツやらタオルを

コタツから引っぱりだした。

 

「 ? だってつめたいよ? 」

「 つめたいの、イヤだもん。 ほかほかがいいよ〜〜 」

「「 ね〜〜 」」

当たり前〜〜って顔で二人は頷き合う。

 

    !  なに この表情・・・

    ってことは。

 

    今まで 寒くなってからず〜〜っと

    取り込んだ洗濯モノは

 

    コタツの中に突っ込んでた ってこと???

 

「 冷え冷えでもいいです。 このまま・・・ ぱりっとしたまま

 畳んでちょうだい。 」

「 ・・・ え ・・・  手 つめたいもん 」

「 ほあほあ〜〜 がいいなあ 僕。」

    

     「  このまま 畳んでください。  」

 

母の声のトーンは低いままだ。

「「 ハイ 」」

「 さ こっちのソファの上でやってね。 」

「 ・・・ え 」

「 さむい ・・・よ? 」

「 そりゃ 半袖に短パンだったら寒いでしょ。

 ちゃんと トレーナーやセーター、着て。 

 すぴかさん。 ソックス 履く。 すばる君 ソファに腰かけて 」

「「 ・・・ ハイ 」」

「 二人ともお仕事、 お願いします 」

こくこく・・・ 色違いのアタマが頷く。

「 ・・・ おか〜さん ・・・? 」

すばるが ちっこい声で ― 甘ったれた声を出した。

「 なんですか 

「 おか〜さん ・・・ オヤツ ・・・ ある よね? 

「 おか〜さん! ばんごはん あり、だよね! 

すぴかがすごく真剣な顔で 念を押してきた。

 

「 ― 二人ともちゃんとお仕事 してくれていますし。

 ウチは 営業再開 です。  

「 うわ〜〜い♪ 」」

「 あ ・・・ その前に。 」

母は ソファの前に出ると ― カチン、とスイッチを切り

コタツの天板を 持ち上げた。

 

「 さ。 コタツは本日営業終了よ! 」

 

「「  え〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  そんなの ありぃ〜〜〜〜??? 

 

「 あり です。 さあ 晩ご飯の準備します。

 二人とも手伝ってちょうだい。  」

「 ・・・ う  ん ・・・ 」

「 え? お返事、 聞こえないけど? 」

「 はい。 」

「 よろしい。 すぴかさん、お野菜、洗ってちょうだい。

 すばるくん ネギを細かく切ってください。 」

「「  は〜〜い  」」

仏頂面のお返事をし チビ達はそれでもちゃんとお手伝いをした。

 

 

   ふつふつふつ ・・・・

 

煮立つ鍋の中で 鶏団子と白菜やらしめじ、ニンジンが揺れている。

「 ん〜〜〜〜 いい香〜〜〜  

 そうそう お庭の柚子をひとつ、取ってきてくれる? 」

「 ・・・ え ・・・ お庭 の? 」

「 そうよ、絞るといい香がするでしょう? 

「 あ あれ? すっぱくてオイシイよね〜〜〜 

 いいよ〜〜 一個でいい? 」

「 ええ。 黄色のをお願いね 」

「 うん 」

「 あ ちゃんとブルゾン、着て! 

「 へ〜〜いき!  ぱぴゅ! 」

 

  たたたた ・・・ がたん! 

 

すぴかは半そで短パンで暮れなずむ庭へ飛び出していった。

 

「 ・・・ もう〜〜 あれじゃ寒いのは当たり前! 

 あ すばる 食器を並べてね 

「 は〜〜い  えっと 石のスプーン いる? 」

「 いしのすぷーん?? 」

「 ウン ・・・ なんとかれんげ! 」

「 ああ ちりれんげ でしょう? はい お願いします。 」

 

わいわい がやがや・・・

湯気の上がる熱々の鶏団子鍋を 皆で囲んだ。

久し振りに食卓で の晩御飯だ。

「 あっち〜〜〜 はふはふ ・・・ おいし〜〜 」

「 じゃぼ〜ん ・・・ つけ汁のおふろ〜〜  」

チビ達の好きな具材ばかりなので 二人ともいっぱい食べた。

「 うむ うむ この季節には最高じゃなあ 

 冬野菜が ほんに美味いよ 」

博士も 箸が進む。

 

    ああ よかった ・・・

    熱々のお鍋ですものね、

    コタツじゃなくても あったまるわ

 

フランソワーズは ほっとしていた。

 

「 ごちそ〜さまあ〜〜〜  ・・・ あし さむい〜〜 」

「 おいしかったデス。 さむいぃ〜〜 僕ぅ〜〜 」

「 すぴかさん。 寒かったらソックス はく!

 すばる君、 セーター 着る! 」

 

    「「 やっぱ こたつ がい〜〜〜 」」

 

「 コタツはお休みです。 

 寒いならちゃんと 着る。 ヒーターの温度、上げてますよ 」

「 う〜〜ん ・・・ 」

「 ・・う〜〜ん 

「 二人とも?  風呂に入ろう。

 ぐ〜〜〜っとあったまるぞう〜  」

博士が 上手く気分を替えてくれた。

「 あ わあい おじいちゃまといっしょ〜〜〜 」

「 僕 はいる〜〜〜 」

「 そうか そうか  しばらく食休みしてから入ろうな 」

「「  うん!!  」」

不満たらたら〜〜な 顔は たちまち笑顔に変わった。

   

 

 ― その夜 ずっと遅く・・・

 

帰宅したジョーは 食卓で遅い晩御飯だ。

「 それで チビ達は膨れっ面でベッドに入ったってわけ? 」

彼は 熱々鍋を前にくつくつ・・・笑いが止まらない。

「 あ ううん 博士がお風呂に入れてくださって

 まあ はしゃいで温まって 寝ました。 」

「 そりゃ よかったねえ 」

「 ねえ ジョー。 あなたも コタツがいい? 」

「 え ・・・ ああ うん まあ ね・・・

だけどさ コタツに入るとついつい・・・ 寝転がって

居眠り・・・とかしちゃうから 」

「 でしょ? そりゃ わたしも気持ちいいって思うわ?

 でも ごろごろ寝そべるのは ― お行儀 わるいわ。 」

「 はい ワカリマシタ。 あ〜〜〜 美味かったぁ

 きみの鍋料理 最高だよ 

「 ふふふ 季節のお野菜のお蔭です。

 大根とか人参とかネギとか ほっんとうに美味しいわよね 」

二人は ほっこり・・・ 穏やかな笑顔を交わす。

「 そうそう ・・・ 週末にね、コズミ先生がいらっしゃるよ 」

「 ああ 博士とまた打合せ かしら 

「 それもあるけど なにか引き取ってくれるか って 」

「 ??? 」

「 嵩張るらしいんだ、車でお迎えにいってくる。 」

「 お願いします。 あら それじゃテイ・タイムに

 マーマレード・ケーキ 焼きましょうか 」

「 お  いいねえ〜〜 ウチの夏ミカン? 」

「 ええ。 ウチのマーマレードは全部あの夏ミカン製。 」

「 うほほ♪ た〜のしみ〜〜〜 」

「 そして。 コタツは撤去です。

 ちゃんと室温を快適レベルに設定しておきますから 」

「 頼みます。 あ〜〜〜 あったまったぁ〜〜 

 ぼくも風呂 はいってくるな 」

ジョーは ご機嫌ちゃんでバスルームに行った。

 

 

 さて その週末のこと。

 

ジョーは コズミ博士と一緒に なにやら大きな箱を運んで来た。

 

「 これをなあ よかったら使ってくだされ。

 人数の多いご家庭向きだと思うのでなあ  」

コズミ博士は 大きな箱を指した。

「 ジョー君 ありがとう、運んでもらってすいませんなあ 」

「 いえいえ  あのう これ なんですか? 」

「 ああ 和食器ですな。」

「 食器なんですか 」

「 左様  といってもかなり旧いもので・・・ 

 ウチでは 娘がまだ子供のころ 使ったりしていたのですがね 」

 

  カタン。 ガサゴソ ・・・

 

木箱の中に紙で包んだ食器が複数、入っていた。

ひとつ ひとつ その紙を解いてゆくと ― 

赤色を基調とした模様の蓋つきの 小型どんぶり が出てきた。 

 

「 わあ〜〜 可愛い!!  赤がとても鮮やかですのね 

 これは ・・・ なんの食器ですか 」

「 小ぶりの丼ものやら そうそう 冬にはウチのが

 茶碗蒸しやら 小田巻蒸し を作っていましたなあ 」

「 ちゃわん  むし ??  おだ・・・? 」

 

 

Last updated : 12,01,2020.            index      /     next

 

 

*********   途中ですが

いつもの 【島村さんち】 話です (>_<)

以前にも コタツ話 かきましたけど

ちょいと焼き直し? です〜〜〜 <m(__)m>