『 おおさむ こさむ ― (1) ― 』
ひゅうう〜〜〜〜〜 カタカタカタ ・・・
山から乾いた冷たい風が 吹き降りてくる。
びゅうううう・・・ ざざざざざ 〜〜〜
海原を渡ってきた風は じくじく湿った冷えを運んでくる。
比較的温暖な地域であるけれど 霜月にはいれば この辺りも
しっかりと冬の寒さがやってくるのだ。
迫り出した崖の上に立つギルモア邸 ― そこまでの道のりは
・・・ やっぱり大変なのだ。
「 うう〜〜 ああ寒い〜〜〜
冬はこの坂道 本当に辛いわあ ・・・ 」
フランソワーズはコートの襟を立て 大きなバッグと
買い物袋を 抱えなおした。
お日様はそろそろ西に傾き始めている。
冬の陽はあっと言う間に隠れてしまう。
「 急がなくちゃ・・・ 一本電車、遅れちゃったし・・・
今晩は 鶏団子とお野菜の煮込み にしよ。
手間いらずだし お部屋も温かくなるわね。
あ 洗濯モノ!
・・・ ちび達 取り込んでてくれるといいだけど 」
たたたたた・・・・!
最後の上りをクリアし低い門を開け 玄関に直行!
「 ただいまあ〜〜 」
玄関に入れば なんとか寒風は避けられる。
「 ・・・ あ〜〜〜 あったか ・・・ い 〜〜 」
彼女は ほっとして荷物を上がり框に置いた。
玄関には コドモ用のスニーカーが二足 一応、揃ってならんでいる。
「 ただいまもどりました。 すぴか すばる?
帰っているのでしょう? 晩御飯のお買い物してきたのよ
荷物、運んでちょうだい 」
「 ・・・ おかえりなさ〜〜〜い おか〜さ〜〜ん 」
「 おか〜さ〜〜〜ん おかえり〜〜〜 」
少し間があってから すこしぼわぼわした声が聞こえてきた。
が。 玄関には誰も現れない。
「 ?? すぴか? すばる〜〜 ?? 」
荷物を玄関に置いたまま 彼女はリビングのドアを開けた。
「「 おか〜さ〜〜ん 」」
もごもご ごそごそ。
リビングの真ん中に置かれたコタツの中から
色違いのアタマが 彼女を見上げた。
「 ただいま。 すぴか すばる お玄関に買い物袋が置いてあります。
二人でキッチンに運んでちょうだい。 」
「 ・・・ う〜〜ん 」
「 それから 洗濯モノ。 取り込んでくれた?
これは二人のお仕事でしょう? 」
ちなみに ― 島村さんち では 皆 <お仕事> が決まっている。
お父さんは お風呂場とトイレの掃除。
お母さんは キッチンを清潔に保つ。
博士も 表庭の掃除と植木の手入れを引き受けている。
勿論 コドモ達も例外ではない。
学校から帰ったら 洗濯モノを取り込む きちんと畳む は
すぴかとすばるの仕事。
そして 買い物袋をキッチンまで運ぶのも 二人の任務である。
「 ・・・ あ〜〜〜 」
生返事をし コドモたちは顔を見合わせたまま ― コタツの中 だ。
「 すぴかさん。 すばる君。 聞こえましたか 」
「「 きこえマシタ 」」
一応 しおらしい返事が混声二部合唱でかえってきた。
「 それでは 行動に移しなさい。 」
「 ・・・ う〜〜ん すばる 先に行っていいよ 」
「 僕 すぴかにゆずる。 おさきにどうぞ 」
もぞもぞもぞ〜〜〜
アタマは動くが身体は ― コタツから離れない。
「 すぴか。 すばる。 もう一回 言ってほしいですか 」
母の声がぐっと低くなり しかし ぐっと凄みを増した。
「 ・・・・・ 」
「 ・・・・ 」
二人の動きは 止まったまま。
ぷち。 フランソワーズの 堪忍袋がキレた。
「 ― わかりました。 では今日、ウチは営業終了。
オヤツも晩御飯も お休み です。 以上。 」
母は低い声で淡々と告げると すたすたとリビングから出てゆこうとした。
「 ! おか〜〜〜さん ! アタシ せんたくもの、とってくる! 」
「 ぼ 僕がいく〜〜〜〜〜 」
「「 だから オヤツ! ごはん つくって〜〜〜 」」
ばたばたばた どたどたどた〜〜
二人はコタツから飛び出すとダッシュで裏庭に飛んでいった。
すぴかは半袖に短パン すばるも長袖Tシャツだけだ。
「 ・・・ 加速そ〜〜ち! ・・・ってね
ふふふ さすがにジョーの娘と息子だわねえ 」
母は にんまりしていた が。
「 やだ ・・・ また あんな恰好で・・・
そりゃ いくら家の中だって半袖じゃ寒いでしょ。
も〜〜〜 またどっかに脱ぎ捨ててあるんだわ 」
ったく! と ― 室内を振り返る と
きりきりきり・・・ 彼女の形のいい眉毛が吊り上がった。
TVはつけっぱなし。 コタツの周りには漫画やら本やらノートが散乱。
天板にはミカンの皮だのティッシュだの空のマグカップだのがご〜ろごろ。
果ては 二人のダウン・ジャケットやら ランドセルが部屋の隅に
転がっている。
ついでに 脱ぎ散らかしたとおぼしきトレーナーやらセーターは
コタツの中に半分埋もれていた。
「 ! ということは。 学校から帰って コタツに直行したってこと?
・・・ 手、洗ったの?? ウガイは?? 」
う〜む これはなんとかしないと、と母は腕組みをし仁王立ちだ。
こ た つ。 特大のコタツ。
「 電気代の節約にもなるし 家族一緒〜〜っていいなって思ってたけど。
こ〜れ〜〜は 問題ね! 」
コタツを前に 彼女はじっと考え込む。
「 コタツさん。 あなたはとても便利でステキなんだけど。
う〜〜ん 問題なのは 使うヒト の方だわねえ 」
どうしたもんだろう ・・・
あっちこっちに引っぱれらたコタツ布団をなおしつつ フランソワーズは
ムズカシイ顔をしていた。
そもそもこの特大のコタツを持ち込んだのは ジョーなのだ。
いかに温暖な地域とはいえ 木枯らしが吹き抜けるようになった頃のこと。
「 ・・・ 今日は冷えるわね。 ヒーターの設定温度を
上げた方がいいかも 」
フランソワーズは キッチンからちらり、とリビングを眺めた。
晩御飯前 コドモたちは宿題を終わらせ TVを眺めている。
「 あら。 すぴかがウチにいるなんて 珍しいわねえ
すぴかさ〜〜ん 今日は公園に遊びにゆかないの? 」
「 おか〜さん ・・・ 皆 寒いからよやくきゃんせる だってぇ 」
「 まあ 遊ぶのにも 予約 が要るの? 」
「 ・・・ ん。 やくそく するんだもん。 」
「 へえ〜〜 それで寒いからキャンセルなの?
皆で ドッチボールとか缶蹴りでもすれば あったまるのに 」
「 こうえんでぼーるあそび きんしだもん。
かんけり ってなに? 」
「 ・・・ 缶蹴り、しらないの?? 」
「 しらな〜〜い。 すばる しってる? 」
「 ・・・ ん〜〜 あ? なにぃ 」
すばるは 没頭していた 電車時刻表 からやっと顔をあげた。
「 かんけり。 しってる? 」
「 かんけり・・・? しらない。 ね〜 すぴか しってる??
おおさかにも東京とおなじなまえの駅があるんだよ
どこでしょう? 」
「 しらない。 べつに知りたくないもん。
・・・ すばる、もっとこっちきて 」
「 あ うん ・・・ 」
リビングのソファの隅っこで 二人はぎゅうぎゅう詰めになっている。
「 あらあ 一人ずつ離れて座ったらどう? 」
「「 ・・・ これがあったかいんだも〜〜〜ん 」」
「 ・・・・ 」
母は リビングの真ん中までやってきた。
「 ・・・ ん〜〜 もうちょっと温かくしましょうか
ヒーター ・・ 」
「 うん!!! ねえ おか〜さん ・・・ ウチ さむい。 」
「 がっこうのほうが あったかいよお 」
子供たちは 口々に母に訴えてきた。
「 まだ真冬じゃないし ・・・ ああ 毛糸のソックス はく?
すぴか 毛糸のパンツ 温かいわよ? すばるも どう?
二人とも長袖のシャツにしますか? 」
「「 やあだあ〜〜〜 」」
「 しっかり着れば 寒くないでしょう? 」
「「 ・・・・ う〜〜ん ・・・ 」」
なんとなく険悪っぽい雰囲気になりかけた時。
― バタン。 玄関のドアが派手に閉まった。
「 ただいま〜〜〜 すぴか すばる〜〜〜〜
約束のモノ 買ってきたぞぉ〜〜〜 」
「「 あ おと〜〜さ〜〜〜ん !! 」」
ちび達はソファから飛び出し ダッシュで玄関に消えた。
「 ?? な なんなの〜〜
」
フランソワーズが 少々眉を寄せつつ玄関の方を眺めていると・・・
「 さあ〜 どこに置こうか? 」
「 まんなか! おと〜さん まんなかにおいて 」
「 ん! 僕 そふぁ と てーぶる よせるね う〜〜〜ん〜〜〜〜 」
「 あ アタシもやるよ! いっしょに う〜〜ん〜〜〜〜 」
すぴかとすばるは チカラを合わせ なんとソファを片隅の寄せてしまった。
「「 おと〜さん ここがいい! 」」
「 お〜〜 よしよし。 」
どごん。 ジョーは抱えてきた大きな包をリビング中央に置いた。
「 さあ 開けるぞ〜〜 あ フラン 」
「 ああ お帰りなさい ジョー。 」
「 うん ただいま。 さっき帰ったんだけど・・・
チビ達が寒い〜〜〜っていうからさ。 いいもの、かってきた! 」
「 え ・・・ 」
「 商店街でさ 格安になってたんだ。
あ・・ ねえなにか使ってない掛布団とか ない? 」
「 ? つ つかってない かけぶとん?? 」
「 うん。 できるだけ大きいのがいいなあ 」
「 う〜ん ・・・? あ。 客用のがあるけど ・・・ 」
「 あ それさあ よかったらもってきてくれるかな 」
「 ・・ ここへ? 」
「 うん。 死蔵品 活用〜〜さ 」
「 ・・・ いいけど ・・・ 」
「 お願いします 」
ぺこん、とアタマを下げられ フランソワーズは首を傾げつつ
屋根裏に 客用掛布団 を取りにいった。
「 ― と。 これでよしっと 」
ぱん ・・・ と ジョーは手を叩いた。
「 お おと〜さん これ・・・ はいって いい? 」
「 はいっていい・・・・? 」
「 おう いいぞ。 さっきスイッチいれたから〜〜 」
ぱふん ・・・ ぽん。
チビ達は 布団の中に脚を突っ込んだ。
「 ・・・わあ〜〜〜 ほかほか〜〜〜 」
「 あったか〜〜い〜〜〜 」
「 な〜〜〜〜 いいだろ??
あ フラン〜〜 フランも入っておいでよ ほかほかだよ〜 」
ジョーは 彼の細君を笑顔で誘う ・・・ 布団の端を持ち上げて。
「 あの これ ・・・ なに? 」
「 え? ああ 知らないかあ〜〜 そうだよねえ〜〜
フランスにはないよね〜 ってか 独逸にも英吉利にもアメリカにも
ない! あ ・・・ 中国とかには あるかもな〜〜 」
「 ・・ ジョー・・・・? 」
「 あ ごめん〜〜 ほら ここにすわって 座って〜〜
脚 前にだしていいから さ さあさあ〜〜 」
ジョーは彼女の両肩に手をおいて 満面の笑顔だ。
「 座るの? ・・・ あのう わたし 正座はちょっと・・・
できないのね〜〜 」
「 正座? そんな必要はないよ〜〜〜
そのまま ど〜〜んと座ってみて? 」
「 え ええ ・・・ こ こう? 」
「 そうそう! あ ぼくもお隣にシツレイしまあ〜す 」
いそいそと 彼は彼女とならんですべりこんだ。
「 さあ 布団を直して ・・・ はあ〜〜〜〜〜
いいなあ〜〜〜 ね? 」
「 ・・・ え ・・・ あ? あああ ・・・? 」
ほわああ〜〜〜ん 冷えた脚はたちまち暖気に包まれた。
「 ― どうだい 」
「 ・・・ すご ・・い ・・・
ねえ これ・・・ なあに?? 暖房機器 なの? 」
フランソワーズは 布団をそっと撫でた。
「 あは これ コタツ さ。 こ た つ!
日本の冬の 必需品なんだ 」
「 こ たつ ? 」
「 そ! あ ほら ・・・ この板の上に顔、つけてみて? 」
「 ・・・ここ? 」
「 そ。 」
ぱん。 ジョーは天板を 掌で軽く叩いた。
「 こ こう ? 」
「 うん。 ・・・ どうだい? こう じわ〜〜〜っと・・・ 」
「 ・・・? ・・・ う わあああ ・・・ 」
その板の温かさに 頬がかなり冷たかったことに 気が付いた。
「 ・・・ き もち いい ・・・ 」
「 ふふふ だろ? これはスゴイと思わない? 」
「 ・・・ 思う! あ〜〜〜 気持ちいい ・・・ 」
フランソワーズは 天板にぺったりと頬を寄せている。
「 熱過ぎず 冷た過ぎず ・・・ この温度、絶妙だよね〜
ほっんと コタツって最強だよなあ
」
「 ・・・ ん ・・・ 」
「 へへ 気に入った? ああ みかん ある? 」
「 みかん??? ええ キッチンの勝手口の側に
箱ごと置いてあるけど・・・ 」
「 お いいね ちょっと取ってくる 」
「 おと〜さ〜〜〜ん アタシにも みかん〜〜〜 」
「 僕も!! おみかん 〜〜〜〜 」
「 おっけ〜〜〜 コタツの上には籠にミカン〜〜っと 」
さっとコタツから抜け出すと ジョーはキッチンに消え ・・・
すぐに 籠に山盛りのミカンを共に戻ってきた。
「 ほ〜ら みかん! 」
でん。 広い天板の真ん中にミカンの籠。
「 ん〜〜〜 これぞ ニッポンの冬☆
さあ みんな ミカン、食べよう 」
「 うん! 〜〜〜 おいし〜〜〜
ねえ おと〜さん みかんってこんなにおいしいっけ? 」
「 あま〜〜〜〜♪ えへへ おいし〜 」
子供たちは 蜜柑に夢中だ。
「 へえ ・・・ いつもは またみかん〜〜? とか
オレンジがいい〜〜 とか言うのに 」
「 そうなんだ? あ〜 コタツに入ってるとねえ
なんかノド、乾いて。 やっぱミカンが最高〜〜って感じるのかもな。
ほら ほら フラン〜〜 きみもミカン! 」
ズズズ・・・ ジョーは蜜柑の籠を彼女の前に押しやった。
「 そう なの? 」
「 ん。 さあ みかん どうぞ 」
ぽん、と渡されたごく平凡な・いつもの・蜜柑。
フランソワーズは 半信半疑で皮に 爪を立てた。
ほんとうかしら ・・・
! あ ら ・・?
おいしい〜〜〜〜〜☆
みかんって こんなに美味しかった??
コタツの上には たちまち蜜柑の皮が積まれていった ・・・・
― それ以来 リビングの中央には ででん! と
特大コタツ が 鎮座ましましているのだ。
ばたばたばた どたどたどた〜〜〜
賑やかな足音が戻ってきた。
「 おか〜〜さ〜〜ん せんたくモノ! 」
「 せんたくモノ〜〜〜 ひゃっこい〜〜〜 」
ちび達は 両手に取り込んだ洗濯モノを抱え、駆けこんできた。
「 ああ ありがとう すぴか すばる。
では ついでに全部畳んでちょうだい。 そして 皆に届けて? 」
「 え・・・っとぉ〜〜 これはつめたいのでぇ〜〜 」
「 冷たいのでぇ〜〜 あっためます! 」
「 はい チン! 」
「 チン!! 」
二人と抱えてきた洗濯モノを そのまま ― コタツの中に放り込んだ。
「 ! な なにするの!? せっかくキレイに洗ってぱりっと
乾いたのに〜〜〜
」
母の悲鳴が上がった。
清潔好きの彼女は 慌ててぱりぱりに乾いたシャツやらタオルを
コタツから引っぱりだした。
「 ? だってつめたいよ? 」
「 つめたいの、イヤだもん。 ほかほかがいいよ〜〜 」
「「 ね〜〜 」」
当たり前〜〜って顔で二人は頷き合う。
! なに この表情・・・
ってことは。
今まで 寒くなってからず〜〜っと
取り込んだ洗濯モノは
コタツの中に突っ込んでた ってこと???
「 冷え冷えでもいいです。 このまま・・・ ぱりっとしたまま
畳んでちょうだい。 」
「 ・・・ え ・・・ 手 つめたいもん 」
「 ほあほあ〜〜 がいいなあ 僕。」
「 このまま 畳んでください。 」
母の声のトーンは低いままだ。
「「 ハイ 」」
「 さ こっちのソファの上でやってね。 」
「 ・・・ え 」
「 さむい ・・・よ? 」
「 そりゃ 半袖に短パンだったら寒いでしょ。
ちゃんと トレーナーやセーター、着て。
すぴかさん。 ソックス 履く。 すばる君 ソファに腰かけて 」
「「 ・・・ ハイ 」」
「 二人ともお仕事、 お願いします 」
こくこく・・・ 色違いのアタマが頷く。
「 ・・・ おか〜さん ・・・? 」
すばるが ちっこい声で ― 甘ったれた声を出した。
「 なんですか 」
「 おか〜さん ・・・ オヤツ ・・・ ある よね?
」
「 おか〜さん! ばんごはん あり、だよね! 」
すぴかがすごく真剣な顔で 念を押してきた。
「 ― 二人ともちゃんとお仕事 してくれていますし。
ウチは 営業再開 です。
」
「 「 うわ〜〜い♪ 」」
「 あ ・・・ その前に。 」
母は ソファの前に出ると ― カチン、とスイッチを切り
コタツの天板を 持ち上げた。
「 さ。 コタツは本日営業終了よ! 」
「「 え〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 そんなの ありぃ〜〜〜〜??? 」
「 あり です。 さあ 晩ご飯の準備します。
二人とも手伝ってちょうだい。 」
「 ・・・ う ん ・・・ 」
「 え? お返事、 聞こえないけど? 」
「 はい。 」
「 よろしい。 すぴかさん、お野菜、洗ってちょうだい。
すばるくん ネギを細かく切ってください。 」
「「 は〜〜い 」」
仏頂面のお返事をし チビ達はそれでもちゃんとお手伝いをした。
ふつふつふつ ・・・・
煮立つ鍋の中で 鶏団子と白菜やらしめじ、ニンジンが揺れている。
「 ん〜〜〜〜 いい香〜〜〜
そうそう お庭の柚子をひとつ、取ってきてくれる? 」
「 ・・・ え ・・・ お庭 の? 」
「 そうよ、絞るといい香がするでしょう? 」
「 あ あれ? すっぱくてオイシイよね〜〜〜
いいよ〜〜 一個でいい? 」
「 ええ。 黄色のをお願いね 」
「 うん 」
「 あ ちゃんとブルゾン、着て! 」
「 へ〜〜いき! ぱぴゅ! 」
たたたた ・・・ がたん!
すぴかは半そで短パンで暮れなずむ庭へ飛び出していった。
「 ・・・ もう〜〜 あれじゃ寒いのは当たり前!
あ すばる 食器を並べてね 」
「 は〜〜い えっと 石のスプーン いる? 」
「 いしのすぷーん?? 」
「 ウン ・・・ なんとかれんげ! 」
「 ああ ちりれんげ でしょう? はい お願いします。 」
わいわい がやがや・・・
湯気の上がる熱々の鶏団子鍋を 皆で囲んだ。
久し振りに食卓で の晩御飯だ。
「 あっち〜〜〜 はふはふ ・・・ おいし〜〜 」
「 じゃぼ〜ん ・・・ つけ汁のおふろ〜〜 」
チビ達の好きな具材ばかりなので 二人ともいっぱい食べた。
「 うむ うむ この季節には最高じゃなあ
冬野菜が ほんに美味いよ 」
博士も 箸が進む。
ああ よかった ・・・
熱々のお鍋ですものね、
コタツじゃなくても あったまるわ
フランソワーズは ほっとしていた。
「 ごちそ〜さまあ〜〜〜 ・・・ あし さむい〜〜 」
「 おいしかったデス。 さむいぃ〜〜 僕ぅ〜〜 」
「 すぴかさん。 寒かったらソックス はく!
すばる君、 セーター 着る! 」
「「 やっぱ こたつ がい〜〜〜 」」
「 コタツはお休みです。
寒いならちゃんと 着る。 ヒーターの温度、上げてますよ 」
「 う〜〜ん ・・・ 」
「 ・・う〜〜ん 」
「 二人とも? 風呂に入ろう。
ぐ〜〜〜っとあったまるぞう〜 」
博士が 上手く気分を替えてくれた。
「 あ わあい おじいちゃまといっしょ〜〜〜 」
「 僕 はいる〜〜〜 」
「 そうか そうか しばらく食休みしてから入ろうな 」
「「 うん!! 」」
不満たらたら〜〜な 顔は たちまち笑顔に変わった。
― その夜 ずっと遅く・・・
帰宅したジョーは 食卓で遅い晩御飯だ。
「 それで チビ達は膨れっ面でベッドに入ったってわけ? 」
彼は 熱々鍋を前にくつくつ・・・笑いが止まらない。
「 あ ううん 博士がお風呂に入れてくださって
まあ はしゃいで温まって 寝ました。 」
「 そりゃ よかったねえ 」
「 ねえ ジョー。 あなたも コタツがいい? 」
「 え ・・・ ああ うん まあ ね・・・
だけどさ コタツに入るとついつい・・・ 寝転がって
居眠り・・・とかしちゃうから 」
「 でしょ? そりゃ わたしも気持ちいいって思うわ?
でも ごろごろ寝そべるのは ― お行儀 わるいわ。 」
「 はい ワカリマシタ。 あ〜〜〜 美味かったぁ
きみの鍋料理 最高だよ 」
「 ふふふ 季節のお野菜のお蔭です。
大根とか人参とかネギとか ほっんとうに美味しいわよね 」
二人は ほっこり・・・ 穏やかな笑顔を交わす。
「 そうそう ・・・ 週末にね、コズミ先生がいらっしゃるよ 」
「 ああ 博士とまた打合せ かしら 」
「 それもあるけど なにか引き取ってくれるか って 」
「 ??? 」
「 嵩張るらしいんだ、車でお迎えにいってくる。 」
「 お願いします。 あら それじゃテイ・タイムに
マーマレード・ケーキ 焼きましょうか 」
「 お いいねえ〜〜 ウチの夏ミカン? 」
「 ええ。 ウチのマーマレードは全部あの夏ミカン製。 」
「 うほほ♪ た〜のしみ〜〜〜 」
「 そして。 コタツは撤去です。
ちゃんと室温を快適レベルに設定しておきますから 」
「 頼みます。 あ〜〜〜 あったまったぁ〜〜
ぼくも風呂 はいってくるな 」
ジョーは ご機嫌ちゃんでバスルームに行った。
さて その週末のこと。
ジョーは コズミ博士と一緒に なにやら大きな箱を運んで来た。
「 これをなあ よかったら使ってくだされ。
人数の多いご家庭向きだと思うのでなあ 」
コズミ博士は 大きな箱を指した。
「 ジョー君 ありがとう、運んでもらってすいませんなあ 」
「 いえいえ あのう これ なんですか? 」
「 ああ 和食器ですな。」
「 食器なんですか 」
「 左様 といってもかなり旧いもので・・・
ウチでは 娘がまだ子供のころ 使ったりしていたのですがね 」
カタン。 ガサゴソ ・・・
木箱の中に紙で包んだ食器が複数、入っていた。
ひとつ ひとつ その紙を解いてゆくと ―
赤色を基調とした模様の蓋つきの 小型どんぶり が出てきた。
「 わあ〜〜 可愛い!! 赤がとても鮮やかですのね
これは ・・・ なんの食器ですか 」
「 小ぶりの丼ものやら そうそう 冬にはウチのが
茶碗蒸しやら 小田巻蒸し を作っていましたなあ 」
「 ちゃわん むし ?? おだ・・・? 」
Last updated : 12,01,2020. index / next
********* 途中ですが
いつもの 【島村さんち】 話です (>_<)
以前にも コタツ話 かきましたけど
ちょいと焼き直し? です〜〜〜 <m(__)m>