『 聞いて ! ― (2) ― 』
育児日記 書いてよ シマちゃん!
「 ・・・・ 」
「 ・・・・ 」
ジョーもフランソワーズも そのメールを前に固まっていた。
当惑の沈黙を破り 妻はこそっと聞いた。
「 ・・・ あ〜 ・・・ ジョー。 なにか書いたの?
ウチのチビ達のこと 」
「 え? ・・・ あ 毎週のコラムに ちょこっとね
ほら あのSNS版のヤツ。
ほんの数行、ツイッター感覚で呟いてたんだ ・・・ 」
夫は ぼそぼそ・・・答えた。
「 それで 編集長さんが? 」
「 ・・・らしい なあ もうちょっと詳しく聞いてみるけど 」
「 そう ね・・・ 」
「 あ あのぉ〜〜 お母さん、書いてもいいですか
その ・・・ウチのチビ達のこと・・
勿論 個人情報はばっちり守りますが 」
「 アナタのコドモでもありますから ―
あ 本人たちの承諾を取ってくださいね・・一応。 」
「 畏まりました。 すぐに伺います 」
ジョーは すぐにPCの前を離れた。
「 とんとん。 入りますよ〜〜 」
コドモ部屋のドアを形だけノックし ジョーはベビー・ベッドの側に
寄った。
「 あは ねんねしてるね〜〜 可愛いなあ・・・
あ。 えっと・・・
すぴかさん すばるくん。 君達のことを書いてもいいですか?
勿論 個人情報をオープンにすることはありません。 」
くちゅ ぅ ・・・ むにゅう〜〜
金色と茶色のアタマが もぞもぞ動いた。
「 あ ご許可くださいますか! ありがとうございます!
島村ジョー、 渾身の文章にいたします所存であります。 」
― ぺこり。 彼は我が子たちの前で 最敬礼をした。
『 育ぱぱ日記 』
次の週から ジョーの勤務する編集部によるオンライン・マガジンに
そんなタイトルの短い連載が始まった。
初回の原稿を送信すると すぐに連絡がきた。
「 あ〜〜 島ちゃん? 」
「 あ はい アンドウチーフ。 読んでいただきましたか 」
「 いいねえ〜〜 育ぱぱ! それでさ 写真はやっぱマズイじゃん? 」
「 そうですねえ・・・ やっぱり・・・ ウチのもそれは って。 」
「 ウン でもさ やっぱ皆 チビちゃん達、会いたいのよ〜
で ね イラスト はどう? 」
「 あ いいですねえ〜〜 」
「 そう いい? あの さくらこサンに頼もうと思うんだけど 」
「 さくらこさん・・・? あ! あの水彩画風のイラストのヒト? 」
「 そ〜なのよぉ 彼女の絵 ふんわりいい感じじゃない?
話、通しておくからさ オタクのチビちゃん達の写真、送ってもらっていい? 」
「 はい〜〜 さくらこさんなら 喜んで。
ウチのと写真 選びます 」
「 頼むね〜〜 あ 奥さん 元気? 体調とか大丈夫? 」
「 あ ありがとうございます〜 チビたちひっくるめ元気です 」
「 よかった よかった 島ちゃん、育児と仕事、大丈夫?
・・・ 仕事振っておいてナンだけど ・・・ 」
「 ありがとうございます。 やってみます!
チビたちも協力してくれますから 」
「 あは〜〜 いいねえ〜〜 あ くれぐれも奥さん 大切に、ね!
一番大変なのは お母さん だからね 」
「 はい。 胆に命じて。 」
「 ほ〜ほ〜〜 島ちゃんもそんなこと、言うようになったか〜
あ それじゃ さくらこさん と連絡とっておくよ。
連絡先 送るから コンタクトしてね 」
「 了解です。 それではこれで失礼します 」
「 はいよ。 ・・・ あ〜〜 チビさん達 泣いてる・・・ 」
「 あは 聞こえます? すごいでしょう 」
「 二人分 だもんねえ 」
「 ウチ すっごい町外れなんで 近所への心配だけはないですけどね 」
「 ・・・ いやあ ・・・ 元気だね〜〜
主導してるのは ぼうやの方かな 」
「 い〜え! まず ムスメが泣き出して弟の方がつられて・・・
で 最後までぐずぐずしてるんです 」
「 ひええ・・・ 」
「 なんかね〜 アレって二人のレクリエーションなんじゃないかって
このごろ思えます 」
「 すご・・・ そんな風に思えるってすごいよ〜〜
あ 島ちゃん 行ってあげて 電話 切るね 」
「 あ どうも 編集長〜〜 」
「 いやいや ・・・ がんばれ! 双子のぱぱ と まま! 」
「 応援メッセージ 感謝感謝〜です〜 シツレイします〜 」
「 奥様にくれぐれも宜しくね〜〜 」
「 はい! では〜 」
ちゃ。 電話が切れると そのまま 彼は子供部屋に飛んでいった・・・
その晩 ― チビ達は奇跡的に 二人共ねんねしていた。
「 ・・・ あ〜〜〜 お茶 美味しいねえ・・・
熱いのをゆ〜っくり・・・ なんて久し振りだ 」
「 これね 頂きモノなの。 高そうよ ・・・ああ 美味しいわねえ 」
「 ん ・・・ あは きみとゆっくりお茶を味わう なんて
何か月ぶりだろ ・・・ 」
「 ふふふ そうねえ ・・・ 立ち飲みとか すぐに飲めるように
ぬるいものばかり飲んでいるから 」
「 ん ・・・ ああ 美味い! 」
「 もう一杯、 淹れましょうか 」
「 あ〜 いや その前にさ。 ちょっときみに相談したくて 」
「 なあに 」
「 例の連載コラムの件なんだけど。
写真の代わりにね イラスト どうですかって 編集長が 」
「 まあ イラスト?? 素敵〜〜〜 嬉しいわ
」
「 あ よかったあ〜〜
編集長がね きみのオッケーが取れたら イラスト・レーターさんに
頼んでくれるんだ 」
「 まあ どんな作風の方かしら 」
「 ああ さくさこさん。 きみも知ってると思うよ〜〜
ほら 水彩画風の ふわ・・っとした挿絵 のヒト。
ああ 去年の年賀状にさ イラスト、使わせてもらったじゃん 」
「 あ! あの方ね! うん うん すごくいいわ!
嬉しい〜〜〜 どんな作品になるかしらね 」
「 それでさ さくらこさん に 写真を送ってほしいって。 」
「 まあ そうなの? ・・・ めちゃくちゃたくさんあるわよ? 」
「 へへへ そうだよね〜 二人で撮りまくってるから 」
「 ・・・ だって泣いたって可愛いんだもん。 」
「 だよね〜〜 あ それでさ。
ねえ フラン。 きみが選んで。 チビたちの写真。 この中から 」
ジョーは PCの前に妻を誘った。
「 え いいの 」
「 勿論〜〜 あのさ 可愛いのだけじゃなくて そのう〜〜 」
「 はいはい ウチのチビたちらしい〜〜の、でしょ。
泣き顔 とか顰めっ面とか 」
「 その方が リアルで親近感 湧くと思うんだ 読むヒトにね。 」
「 そうよね〜 あ ウチと同じだあ〜 とか
思ってくれるひと、いると思うわ。 」
「 うんうん! お母さん のカンに任せるよ 」
「 わあ〜〜 大変! きゃあ でも楽しい迷いだわ 」
「 毎回 一〜二枚って感じかな 」
「 ふんふん ・・・リアル・タイムのがいいわね
さあ どれにしようかなあ 」
フランソワーズは にこにこ・・・ マウスを繰って
画面検索をしてている。
ジョーは一緒に覗きこみつつ またまた笑顔が零れそうだ。
「 あ それ 可愛いなあ ・・・ ほら すぴか 」
「 あら ホント! 撮ったの、忘れてるかも 」
「 だよねえ・・・ あ すばる、アクビしてる 」
「 きゃあ 可愛い〜〜 あ ねえ ジョーの記事は
リアルタイムなのでしょう? 」
「 まあ 一応。 今のとこ、現実から一月遅れくらいかな 」
「 そっか それじゃ あんまり小さい頃のはだめねえ
」
「 う〜〜ん ・・・ 惜しいなあ〜〜
生まれた頃の可愛さってさあ 格別だよねえ 」
「 ジョーってば 毎日涙ぐんでたでしょう〜〜 」
「 だってさあ もう 可愛いくて 可愛いくて・・・ 」
「 そうねえ あ これはどう? 」
「 うん いいね! これと・・ あと一枚 」
「 う〜〜ん ・・・ きめらんない〜〜 」
二人はめちゃくちゃに盛り上がって楽しんだ。
さんざん悩んだ挙句 二枚選び出し、イラストレーターさんに送った。
こちらも すぐに電話が掛かってきた。
「 もしも〜し? あ シマムラです〜〜
さくらこさん・・・ ですね?
」
電話の向うからは 明るい声が聞こえてきた。
そんなに若いヒトではないが 作品と同じくほっこり
温かい人柄なのだろう・・・
「 はあい さくらこです。 シマムラさん? ぱぱさんね?
写真〜〜〜 拝見。 かっわいいわねえ〜〜〜 」
「 あは ありがとうございます・・・ 」
「 ウチにも息子と娘、いるから。 子育ては 卒業 だけど
あ〜〜思い出しちゃったわあ〜 あの日々を・・・
ははは やっぱ戦争だったわよ 」
「 ・・・ ウチは動物園ですよ 今 」
「 まだまだこれからだよ〜〜 がんばれ ぱぱ! 」
「 暖かい応援メッセージ ありがとうございます!
そして イラスト お願いします〜〜 」
「 了解! ああ 久々 燃えてきちゃったわよぉ〜〜
チビちゃん達の可愛さを十二分に伝えられるよう 頑張りまっす!
で 今後のスケジュールなんですけど 」
「 はい それは ― 」
すぐに編集者と挿絵画家になり 仕事の話に没頭した。
しゅ しゅ〜〜〜〜 かさ。
「 ふう なんとかカタチになりそうだ・・・ ん? 」
ジョーが電話を置いて振り向いた。
リビングから あまり聞きなれない音が流れてきたから・・・
「 ん〜〜〜〜〜〜 っ! あ ジョー 電話 終わった? 」
「 おおおお 〜〜〜〜 」
ソファの背に軽く手を置き 彼の愛妻が脚を耳の横まで持ち上げていた。
「 うわお ・・・ 相変わらず柔らかいねえ 」
「 ううん だめよ。 しばらくやってなかったから ・・・
どうもねえ 不自由だわ 」
「 それの どこが!? 」
「 え〜 だって ・・・ あ お仕事の話 いかが?
さくらこさん ってどんなカンジの方? 」
「 あは 作品と同じさ、ふんわり優しそうで でも きっちり本質を
見てる って感じ。 」
「 そうなんだ・・・ あ 写真 気に入ってくださったかしら 」
「 うん♪ すっごく可愛い〜〜って・・・
やっぱりね お母さん なんだって。 もう卒業した って言ってたけど。
安心して イラスト、頼めるよ 」
「 よかった! ジョーの仕事も一歩前進 ね 」
「 したいな、と思う。 今はウチにいてもなにかしら出来る時代だからね 」
「 そうね。 ね わたしも始めることにしたの。 」
「 始める・・・って 仕事?? あ レッスン? 」
「 ん〜 まだ 身体も鈍ってるし チビ達も手がかかるでしょ
まずはウチでストレッチを十分にやるわ。
チビ達が寝てる間とか 活用します。 」
「 お すごいな! きみのスケジュール 教えて。
その時間は ぼくがチビ達を引き受ける 」
「 ジョー ありがとう ! 」
「 きみとぼくのコドモ達だよ? 育児も二人で 分業 さ! 」
「 ん! あの連合軍は超〜〜〜 強力ですからね〜〜
こっちもしっかりタッグ組んで 」
「 対抗だ! 負けないぞってね 」
「 ええ! チビ達には 負けません。 」
「 うむ。 ぼく達は全員が元気に笑って共存するんだ。
003 さあ 行くぞ! 」
「 了解! 009、ナヴィは任せて。 」
がし。 ぎゅ。
すぴかとすばるの両親は がっちり手を握りあった。
― さて 雑事てんこ盛りの日々は遠慮会釈なく続いてゆく。
わああ〜〜〜 あ 〜〜〜
「 あ すぴかが起きたわ・・・ すばるを誘わないでね〜〜 」
母は洗濯モノを乾すを手を 止め、 家に駆けこむ。
「 すぴか〜〜〜 」
「 あ フラン。 続き 乾しとくからね 」
「 お願いね〜〜 パンってやってから乾してね 」
「 了解〜〜 」
「 じゃ 」
ぱたぱたぱた ・・・・ かたかたかた
彼女は家に駆けこんでいった。 彼は裏庭に出ていった。
わああ〜〜〜あ え えええええ〜〜〜
「 あ〜あ すばるも起きちゃった かあ 」
子供部屋のドアをあければ ぶわっと泣き声が吹きだしてきた。
「 う わ ・・・ 圧力があるわねえ チビ達の泣き声は・・・
すぴか〜〜 どうしたの。 ち〜 したのかなあ?
すばる? お腹ぺここちゃんなのかなあ? 」
双子たちは オムツを換えてもらった時、 そしてお食事たいむ は
さすがに泣き止んだけれど ―
・・・ わ ああああ〜〜〜 えええ ええ〜〜〜
満足したからか? 二人は一層ボルテージ・アップで 泣き始めた。
「 ・・・あ〜らら ・・・ 大人しくねんね は無理ねえ・・・ 」
母はもう諦めているのか あやしたりせずに新しい毛布を取りだした。
「 ね 泣いてるならば お外 いこっか ね?
」
泣きわめいている赤ん坊たちを 毛布で包んだ。
「 どう あったかいでしょう? じゃあ ちょっとテラスにでようか 」
よいしょ。 両手で毛布を抱え 彼女は一階まで降りて
テラスへのサッシを開けた。
「 うわ・・・ 空気 冷たいわねえ ・・・
ねえ すぴか すばる。 あなた達のお父さんは山が好きよね
山はいいわよねえ 木や草やお花があるし。
そうね〜 今日は おかあさんとは 海 みようか 」
ギルモア邸のテラスは海に面した方に開けている。
端に置いてあるリゾート・チェアに腰かければ 庭木の間から
大海原が見え隠れする。
夏は明るく光る海も この季節には濃い藍色に揺蕩っている。
「 見える? あれが海よ。 綺麗ねえ・・・
ほうら すぴかの瞳と同じ色でしょう? おかあさんはね 海が好き。
すばる〜〜 君の瞳は大地の色 ね。 海を見て? 」
フランソワーズは コドモたちを海に向かって抱き上げた。
「 ねえ すぴか すばる。
この海はお母さんが生まれた国まで繋がっているの ・・・
お父さんの国では 海の中にママンがいるんですって
おかあさんの国は ママンの中に海があるのよ
・・・ すてきねぇ 」
( いらぬ注: 三好達治さんの詩『郷愁』の一節 より )
う ・・・わ ・・・ え・・・ ええ ・・・
外の空気が気持ちよかったのか、チビ達は少しづつ泣き止み始めた。
「 ・・・ あら ご機嫌 直ったかなあ?
ねえ 聞いて? これはね〜 お母さんのママンが歌ってくれたお歌よ 」
♪〜〜〜〜 ・・・・
フランソワーズは低い声で歌い始めた。
フランスの古い子守唄やら この国に来て覚えた童謡やら・・・
穏やかな声が 冷たい空気の中に流れてゆく。
やがて ― チビ達は すうすう大人しく眠ってしまった。
「 ・・・ ああ 寝てくれたわ ・・・ あら? 」
う・・・・っく ・・・・
テラスの後ろから 妙な声が聞こえるのだ。
「 ?? あ らあ まあ 」
「 ・・・ ご ごめん フラン ・・・ ぼくぅ ・・・ 」
振り返れば 後ろでジョーが 袖で一生懸命、目を拭っていた・・・
「 ジョー・・・? 」
「 ご ごめ ・・・ なんか涙 とまんなくて・・・
ああ チビ達が羨ましいよう ・・・ 」
「 お望みなら 毎晩歌いましょうか? 」
「 ・・・ きみが側にいてくれれば いい ・・・ 」
「 ・・・・・ 」
きゅ。 ぎゅ。
二人は手を繋ぎ二人の子供たちを抱いて 中に入っていった。
こんな静かな時間は 本当にマレで貴重なものだった。
短いその時に 二人はしっかりと充電 ― チビっ子連合軍に立ち向かう。
わあ 〜〜 ん すぴかが < 吼えて > いる。
「 はいはい すぴか〜〜 よしよし ・・・・ 」
ジョーは 反っくり返って泣く娘を 背中に括りつけPCの前に座っている。
rrrrrr ・・・
「 ? あ 編集部からだあ もしもし〜〜 」
ジョーはスマホを取り上げた。
「 あ 島ちゃん? 」
すぐに聞き慣れた声が 流れてきた。
「 はい 編集長 次回の原稿ですが 今日中には送れます 」
「 ああ うん 待ってるよ。 あは? 泣いてるねえ〜
この声は どっち? 」
「 うるさくてすいません〜〜 今 ぼくの背中にいるんで・・・
ああ すぴかです、娘のほう 」
「 うひゃひゃ こりゃすごい・・・
電話越しでも 迫力あるよぉ〜〜 元気だね〜〜 」
「 うるさくてすいません・・・ こらあ すぴか〜〜
すこし大人しくしてくれよぉ 」
わぁ 〜〜 ん 〜〜
すぴかは 父の懇願などまるで無視、勇気凛々?泣き続けている。
「 あはは いいよ いいよ。 赤んぼは泣くのが仕事。
ねえ 連載 すっごい人気だよ〜〜〜 やっぱさ さくらこさんに
イラスト 頼んで大正解 ! 」
「 そうですか! よかったあ〜〜 ぼくの駄文、助けてもらえました 」
「 な〜にいってるのぉ イラストも人気だけどね
島ちゃんの日記 男性ファンが急増だよん 」
「 え そうですか! 」
「 育ぱぱ・あるある みたいでさ〜 真っ最中組だけじゃなくて
懐かしい〜 の声も多いよ
」
「 えへ 先輩ぱぱさん達、 笑っているでしょう? 」
「 皆ね いい思い出 みたいだよ。
もちろん ままさん達からも応援のエール続々。 」
「 うわお ・・・ そりゃ さくらこさんのイラストのお蔭でしょう 」
「 彼女のイラスト、いいよねえ〜 ほんと 癒される・・・ 」
「 そうですよね ウチのなんかもう〜 ほれぼれ・・・眺めてます。
改めてさくらこ・ファン になったわあ・・・って 」
「 ふふふ こっちに届いた感想とか 送るね〜
じゃあ 次回もよろしくたのむ 」
「 了解しました。 それじゃ・・・ 」
「 あ 奥さんによろしく〜 あれ すぴかちゃん 大人しくなった? 」
「 え? ・・・ あ〜 寝たみたいですね 」
「 お父さん がんばれ〜〜 」
「 温かい応援、感謝します〜〜〜 では失礼します。
・・・ すぴか? ねんねしてくれたか・・・
なあ すぴか。 聞いてくれよ?
お父さん これから仕事するからさ しばらくそこで寝ててくれ 」
ジョーは 背中の娘を揺すりあげると PCの前に座りなおした。
カタカタ カタカタ ・・・
彼は ほぼ現実を 赤ん坊達を廻るドタバタをそのまま書いた。
オムツ騒動。 どこがどう違うんだ〜〜〜 一覧表にしてくれ!
ミルク選択。 どれもみんな似た味じゃね?? 試飲したけどよくわかんない
夜泣き。 なんで泣くんだ?? 眠くないのかなあ・・・ う〜〜〜
赤ん坊って 眠っていれば天使だけど 笑っていれば天使だけど。
― でも チビ達は 天使じゃない! いや やっぱり天使だ!
う〜〜ん どっちなんだ〜〜??
日々の喜び 驚き そして 嘆き やら 助けてくれ〜の悲鳴。
妻への感謝 時には行き違っての不満やら後悔やら・・・
彼は飾らず 書いた。
聞いて 聞いて! 聞いてくれよ〜〜
行間から 文字の間から そんな気持ちが溢れでていた。
その真摯な < 叫び > が 読むヒト達の心を打たないわけが ない。
最初は 似たような状況の人々が ― ぱぱ も まま も ―
いいね! 合戦を始め、次第にシニア世代も 『 育ぱぱ日記 』 のファンに
なり始めた。
ああ 懐かしい・・・! そんな日々だったわね
そうそう そうだった・・・ ず〜っと泣いてて・・・
俺と妻は一緒になって泣いたっけ
フランソワーズも 勿論 <一番最初の読者> で
<一番最初のファン> だ。
「 きゃはは・・・ そ〜よね そ〜なのよねえ 」
送信前の原稿を読み 笑い転げ激しく頷いたりしていた。
あははは ・・・ おかし〜〜〜〜
・・・ あ?
そっか。 ジョーはそう思ってたの ね・・・
記事を読むことで夫の気持ち、考え方に 初めて気が付くこともある。
・・・ そう なんだ ・・・
父親って オトコの人って そう思うのね
「 そう よね・・・ これは ジョーの < 聞いて! >
なんだわ。
そうよ! わたしの気持ちだって ちゃんと言わなくちゃ。
わたしのも < 聞いて! > だわ。 」
ジョーがPCに向かうのは チビ達が大人しく眠っている貴重な時間・・・
普通なら 彼自身だって気晴らししたり眠ったりしたいだろう。
コトン。
そんな夫の側に 彼の好きな甘いミルク・ティ と
手製のオーツ・ビスケットを置く。
「 ・・・ん〜〜 あ フラン〜〜 サンキュ 」
「 どうぞ〜〜 お砂糖 ミルク たっぷりよ。
チビ達は 任せてね 」
「 ありがと〜〜〜〜♪ 」
彼女は子供部屋に滑り込み、ベビーベッドを覗きこむ。
「 ねえ すぴか すばる? 君達のお父さんはね とっても素敵!
お母さんも頑張るからね〜〜 聞いて 聞いて。 」
フランソワーズは すばるを抱っこしつつ ストレッチに励む。
すぴかを抱き上げ くるりと回る。
「 また 踊るわ! ねえ 君達がもうちょっとおっきくなったらね 」
わああ〜〜〜ん え えええええ〜〜〜〜
泣き声days を どうやら卒業した後は ― やっぱり大騒ぎの日々が
待っていた。
「 ただいま〜〜〜 おか〜〜さ〜〜ん きいて きいて〜〜 」
「 おか〜さん ・・・ あのね きいて きいて〜〜 」
「 おと〜さん! おかえりなさ〜い ね 聞いて! 」
「 聞いて おと〜さん 」
島村さんち では 今日も < 聞いて > が 満ちている。
********************** Fin. ***********************
Last updated : 10,20,2020.
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************* ひと言 ***************
例によって な〜〜〜んにも事件は起きません。
全然 サイボーグ009 じゃないんですけど・・・
二人の本質は こんな感じだったらいいなあ〜〜
なんて思っています。
育児期間は 二人ともサイボーグであることに
感謝してた・・・かも・・・・?