『 聞いて ! ― (1) ― 』

 

 

 

 

 

        どさり。

 

「 ・・・ はあ ・・・・・ 」

フランソワーズは 大きな大きなため息を吐き ソファに腰を下ろした。

  ―  いや 身体を投げ出した、と言うほうが合っているだろう。

 

「 ・・・ つ ・・・っかれた ・・・ア ・・・ 

 ああ ちょっとだけ  ほんのちょっとだけ ・・・ 休ませて 

 

独り言 か 言い訳 か 彼女はぶつぶつ言うと 

そのまま   かっくん。  

ソファの背に顔を押し付け  ― 眠りに落ちた。

 

    すう 〜〜〜・・・・・

 

すぐに健やかな寝息をたて  すっかり寝入ってしまった。

 

 

 

 ― 冬も真っ盛り 12月のある朝。

 

ジョーとフランソワーズの元に 天使が二人、舞い降りてきた。

未明にはちらちらと雪が舞う 寒い日だったけれど

昨日からもう緊張しっぱなしだったジョーは 一睡もせず ( できず )

彼女に付き添った。

 

    〜〜〜〜〜〜〜 〜〜〜〜!!!

 

スプラノの素晴らしい大声を上げ まずオンナノコが生まれた。

 

     ・・・・・ 〜〜〜  !

 

すこし、いや かなり間を置き、のんびりした声で

オトコノコが ゆったりと誕生した。

 

「 二人とも元気ですよ〜〜 お母さんも元気。 よかったよかった 」

「 ほれ ジョー。 抱いておやり。 お前の子供たちだよ 」

 

     え・・・ あ ・・・

 

担当医と看護士さん、そして 博士にも促されて

彼は実にこわごわ・・・ ふにゃふにゃの我が子達を両腕に抱っこした。

「 う わ・・・ 熱い ・・・ 」

ジョーは 涙をぼとぼと零しつつ棒立ちしている。

「 ふ フラン ・・・  あ あ  ありがと〜〜〜〜 

「 ・・・・ 」

彼の愛妻は にこにこ そんな風景を見つめていた。

「 さあ 最高に楽しい日々がはじまるね! 」

「 そうね・・・ 嬉しいわ 嬉しいわ・・・ 」

 

 

   そうなのだ ― 

 

その日から 二人のとんでもない日々 が始まったのであるが。 

この時 二人のどちらも予想だにしていなかった。

 

 

 

  とん  とん  とん。

 

一歩 一歩 踏みしめて かっきりした足音が近づいてきた。

「 ・・・ ね〜〜  フラン? 

 二人とも ねんねしたよぉ〜〜 いいこだねえ 

小さな声が聞こえ  ―  かちゃり。

ドアが開き  ジョーが両手でふかふか毛布のカタマリを抱いて

入ってきた。

「 ねえ この顔 見て 見て ・・・ もう天使だよねえ  」

彼は 腕の中のふかふかをそのままに そう・・っとソファに

愛妻の隣に座ろうとして ― 

 

「 ??  あれえ・・・ フラン・・・? 

 あは ぐっすり寝てるなあ ・・・ 疲れてるんだよなあ 」

再びそう・・っと立ち上がり腕の中の毛布のカタマリに話しかけた。

「 ふふふ ねえ きみたち。 おかあさんはおねむ らしいよ

 きみたちと一緒だねえ すぴか すばる・・・ 」

 

    くちゅ ・・・・ むにゅう ・・・

 

チビ達はもぞ・・・っと動き口をむぐむぐさせると また丸くなった。

「 そうか そうか ・・・ いいこちゃんだねえ〜〜

 ん〜〜 じゃあ おとうさんと一緒に ちょっとお庭に出ようか?

 しっかり毛布の中だもの、寒くないよね〜 」

 

     ねんね〜〜 ねんねん♪♪

 

ジョーはハナウタを歌いつつ ( 子守唄のつもりらしい )

テラスから庭に出ていった。

 

 

 

チビ達を迎えて ―

あまりの小ささに 最初、ジョーは少しばかりびくびくしていたが。

すぐに そんなヒマはない 状態になった。

彼はしっかりと 育休を取り。 名実ともに イクメン となり

赤ん坊達の世話に没頭した。 

どこぞのゲームばかりに没頭するエセ・イクメン なんかとは

まったくの別次元だ。

 

 ― だってそうしなければ 二人を同時に育てるなんて無理だったから。

 

勿論 フランソワーズはチビ達にかかりっきり・・・

それでも < 二人同時 > は 至難のワザだ。

ジョーと分業、同時進行 シフト制? とあらゆるテクを使い

二人は子育てに追いまくられた。

 

 

ぱっちりと目が開くと 娘は碧い瞳で、そして 息子は

赤味がかった茶色の瞳で こちらをじ〜〜っと見上げるようになった。

 

「 う わあ〜〜〜  な・・・んてキレイな瞳なんだあ〜〜 」

「 ね? すばるってば ジョーにそっくり☆ 」

「 うふふ・・・ すぴかはきみに生き写しだねえ 」

「「 かわいい〜〜〜〜♪ 天使だあ  」」 

 

そう ― 見た目は。 

すぴかのくるくるカールした金色の髪は ティアラみたいだったし

すばるの明るい茶色の髪は 大地の祝福に見えた。

 

「 なあ ・・・ ぼく達 最高にシアワセだよねえ

 ウチに天使がいるんだ・・・ 」

「 ええ ええ ・・・ 幸せ・・・ 」

若い両親はシアワセの泣き笑い顔で 互いの身体に腕を回す。

「 ありがとう フラン〜 最高のプレゼントだ♪ 」

「 ジョー。 あなたの子供たちよ ・・・ 」

 

   くちゅ・・・ うにゅ・・・ 

 

色違いのアタマがもごもご動きだした。

「 お・・・?  お目覚めかなあ 」

「 そろそろお腹ぺここさんかしらあ 」

笑顔で見守る両親を 意識しているのかいないのか・・・

 

 

  ・・・ う わあ〜〜〜〜〜!!!  え えええ〜〜〜〜〜・・・

 

チビ達はほぼ同時、 いや 姉につられて弟も慌てて、という気分で

大泣き をし始めた。

 

「 うわ ・・・ ほいほい・・・ 泣かないよ〜〜 」

「 あらら ほらほら〜〜 ねんねしましょうねえ〜〜 」

 

父親も母親も もう慣れっこになっているのでさして驚いたりはしない。

最初は おろおろ・・ 泣きわめく赤ん坊たちの機嫌取りに必死になった。

 だけど。

「 ほうら すばる〜 いいこちゃんねえ 」

「 すぴか すぴか はいはい ねんねんよ〜〜 」

 

    うわああ〜〜〜   えええ〜〜〜〜

 

「 あ お腹 減ってるかなあ  ミルクだよ〜〜 」

「 あらあら もうお腹空いた? ほうら ミルク。」

 

    うわあ〜〜〜〜 えええええ〜〜〜〜

 

「 あれえ・・・ あ オムツかなあ? 替えよっか 」

「 ち〜 しちゃった?  気持ちよくしましょうねえ 」

 

    うわあああ〜〜〜〜   え えええええ〜〜〜

 

「 そうだ〜 すぴか? たかい  たか〜〜〜い 」

「 いいわねえ〜 すばるは ひこうき ぶ〜〜〜ん  どう?」

 

    うわあああああああ〜〜〜〜  ええええええ 〜〜〜〜〜〜

 

なにをやっても どうやっても。 あやそうがすかそうが

チビ達は 色違いのアタマを振るわせ 泣き続けるのだ。

 

大抵、 姉が泣き始めると弟が唱和?し 混声二部合唱は

延々と続く。

 

「 ・・・ はあ〜〜〜   もう ・・・ 」

フランソワーズは 広いクーファンの横にぺたん、と座り込んだ。

「 なんでそんなに泣くの? ねえ すぴか すばる・・・ 

 ・・・ わたしの方が泣きたいわ ・・・ 」

「 ・・・・ 」

 

   カサリ。 

 

ジョーは泣きわめく二人を毛布ごと抱き上げた。

「 ジョー ・・・? 」

「 ぼくに任せて 」

「 え?  だってジョー・・・ 昨夜もず〜〜っとチビ達の相手を

 してくれたでしょう?  ちゃんと寝てないんじゃない? 」

「 おいおい・・・ ぼくを誰だと思ってるんだ?

 一晩くらいの徹夜じゃ どうってことないよ。 」

「 でも ・・・  」

 

    いくらサイボーグでもね!

    寝不足は辛いはず・・・

 

    あ ・・・?

 

    そういえば ジョーってば・・

    チビ達が生まれてから 寝坊してない

 

    というか 夜泣きの時は

    ほとんど相手してくれてるわ!

 

「 ジョー そんなに無理しないで 」

「 無理なんかしてないってば 

「 わたし、夜はちゃんと寝てるし・・・ 」

「 いいから。 ここはぼくが引き受けるから。 

 きみは夕食の支度 とか 洗濯モノの片づけとか あるだろう? 」

「 洗濯モノは ジョー。 あなた 畳んでくれたじゃない?

 晩ご飯は ・・・ チン で済ませるわ 」

「 当分 泣き止まないよ? だっこして裏山にでもいってくる。

 気分 変わるだろうし ・・・ 」

「 寒いわよ? 」

「 チビたちは毛布ぐるぐるで大丈夫。 」

「 ジョー ダウン 着ていって・・・ 

「 わかったよ ・・・ さあ 行こうねえ 」

「 あ 待って!  ジョーのダウン〜〜 」

彼女は玄関に飛んでゆき ダウン・ジャケットを取ってきた。

「 は はい  これ 着て! 」

「 あ サンキュ。 ・・・ ねえ チン、のカレー、食べたい。

 だから きみ もうちょっと休めよ 」

「 え ・・・・ 」

フランの目の縁の色が悪いのを ジョーはちゃんと見ていたのだ。

「 すぴか  すばる〜〜 さあ 一緒にお散歩しようよ?

 ほうら ・・ 毛布で包めばほわほわだろ 」

 

    うわあ〜〜・・・あ?  えええ〜〜   え・・・

 

泣き声がほんの少し トーン・ダウン する。

赤ん坊でも 状態の変化には機敏に気が付いたのだろう。

「 よ・・・っと。  あは〜〜 二人一緒だと重いなあ〜〜 」

「 ジョー ・・・ 大丈夫? 

「 おいおい ぼくを誰だと  」

「 はい すみません。 009の腕力と注意力には

 畏敬の念を持っております 」

「 うむ よろしい。 じゃ イッテキマス 」

ジョーは 最高の宝モノを大事に 大事に そ〜〜っと両手で抱き上げると

悠々と玄関から出ていった。

 

 

 

 その少し 後 ―

 

リビングのソファでは 金髪お母さんが 妙な恰好で寝ていたのだ。

 

     ・・・  起きなくちゃ・・・ !

     ミルクの時間 ・・・

  

     ・・・あ オムツも ・・・

 

     起きるのよ 起きるのよ〜〜

     フランソワ―ズ ・・・!

 

     ファンション?  起きなさい。

     だらしないですよ。

 

 

誰かが耳元で囁いている ずっと。

「 ・・・う〜ん  ママン〜〜 ・・・

 わかってるわ  わかってるってば。 

 もうちょっと・・・ あと五分 寝させて・・・ 

フランソワーズは ころり、と寝がえりを打った ― 

 

   ズル・・・ ごろん。 ・・・どさ。

 

毛布にくるまったまま ソファから落ちてしまった。

 

「 ! ・・・ いった〜〜〜〜 ・・・

 あ!  いっけない〜〜〜  今 何時??? 」

慌てて毛布の中から抜け出し 暖炉の上の時計を見た。

「 ・・・ あ 」

鳩時計はチクタク 穏やかに時を刻んでいて 鳩クンは

まだ お家の中 らしい。

「 やだ・・・ ちょっとだけ、ってソファに座ったら

 そのまま寝ちゃったのね・・・ あ? 」

 

    泣き声 ・・・ 聞こえない わ ・・・

    二人とも大人しく寝てるってこと?

 

「 嬉しいけど ・・・ でも 静か過ぎない? 

 ジョー ??  出掛けたのかしら。  

 

 

   カラリ。  テラスのサッシが開いた。

 

「 ただいまあ〜〜  あ フラン 目が覚めたかい 」

ジョーが 毛布のカタマリを抱いて入ってきた。

「 あ ジョー ・・・! 」

「 ねえ 見て 見て〜〜 もう天使だよねえ ・・・

 二人とも。 ねんねの顔ってどうしてこんなに可愛いんだろ 」

彼はもうにこにこ・・・零れそうな笑顔で 毛布の中を眺めている。

「 ・・・ ジョー  お守りしてくれてたの ・・・? 」

「 あ? うん ・・・ まあたさあ ぐずりそうだったから

 ちょっと裏山まで散歩してきたんだ。

 空気 冷たいけど なんかいい感じで・・・

 チビ達もさ 揺れる葉っぱとか背の高い樹とか 見てたよ〜 」

「 ・・・二人 抱えて大変だったでしょう ? 

 ほら ソファの上に置いて 置いて 」

「 ぜ〜んぜん☆  3人でさあ いろいろおしゃべりして

 楽しかったよぉ〜〜〜

 なあ すぴかってば ぶ〜〜 とか みゃ〜 とか言うんだ。

 すばるは にこにこ・・・してる。 

ジョーは そう・・っと毛布のカタマリをソファに降ろした。

フランソワーズは そっと覗きこみ むにゃむにゃしている子供たちを

見つめた。

「 ジョー・・・ ありがと・・・ 」

「 え? あ きみ すこしは休めた? 」

「 ・・・ ええ すっかり眠ってしまって・・・

 ごめんなさい。 」

「 ? なんで謝るんだい?  疲れたらちょっとでも寝る!

 これ鉄則だよう 」

「 だって わたし・・・ ジョーだって疲れてるでしょう  

「 ぜ〜んぜん。 もし疲れてたとしても

 ああ この笑顔 見ちゃえば たちまち吹き飛ぶよう〜〜

 ・・・ああ 可愛いなあ ・・・ 」

「 あら おっきしてるのに大人しいわね 」

「 ふふふ あのさ ぼく、見つけちゃったんだ〜〜 」

「 ?? 」

「 すぴかってばさ お話、してるとあんまし泣かないよ?

 こう・・・ね じ〜〜〜っとぼくのこと 見てるんだ。 」

「 え そうなの??  わあわあ泣かない? 

「 泣くけど。 すぴか すぴか〜〜 ほら あの葉っぱきれいだよ

 とか 虫さんがいるねえ とか 話すると ちょっと黙るんだ 

「 え え〜〜〜  そんなの、気が付いてないわ わたし!

 で すばるは? 」

「 すばるはさ すぴかが泣き止むと自然に大人しくなるんだ。

 アイツ、つられて泣いてるんじゃないかなあ 」

「 ・・・ そ そんなことって あり?? 赤ちゃんなのに 」

「 う〜〜ん わかんないけど。 赤ちゃんだって知覚びんびんなんだもん、

 外からの刺激には反応するんだろうね 」

「 そうなんだ ・・・ すぴか? お母さんのこと、わかる? 」

 

    ふぇ・・・?  くちゅう〜〜〜

 

「 だいすき って言ってるよ、二人とも。 」

「 え!?  わ わかるの?? 」

「 あはは うっそ〜〜☆ そうだろうなあ〜って思っただけ。 」

「 もう〜〜〜 ジョーってばあ 」

「 へへへ ごめん〜 でもね ちゃんとそう言ってるよ きっと。

 いつでも側にいてくれるヒトのことは すぐ覚えるじゃん。

 ほら わんこでもにゃんこでも 」

「 そう ねえ ・・・ 

 あ ジョー。 熱いコーヒーでも淹れるわ 」

「 ああ 自分でやるから・・・ 

 フランはチビたち 見てて 」

「 あ ・・・ 大丈夫、ご機嫌ちゃんだもの。

 たまには 丁寧に淹れさせて・・・ 

 お砂糖とミルク、たっぷり入れて ね 」

「 ありがと フラン。  じゃ ぼく ここにいるね 」

「 ええ 任せて。 」

 

 

   カチン。  

 

香高い湯気とともに 彼の前におおぶりのカップが置かれた。

「 はい どうぞ。 あ クッキーもね 

「 わあい♪  ・・・ ん〜〜〜〜 美味い ! 」

「 ・・・ ふふふ よかったわ 」

「 きみも飲めば 」

「 ええ わたしは オ・レ ね 」

 

   カチン  コトン  カチャカチャ・・・

 

二人は久々・・・ゆっくりとお茶タイムを楽しんだ。

毛布の < 中身 > 達は 半分起きたり眠ったりしているのだろう、

ともかく大音声をあげることは なかった。

 

「 あ〜〜 おいし〜〜〜  熱い飲み物っていいね 」

「 ええ ・・・ ああ こんなにゆっくりお茶タイムって 

 ほんとに・・久しぶり ねえ 」

「 ふふふ ・・・ 今日はチビ達が協力してくれたもんなあ 

 ね〜〜 すぴか すばる?  貴重な時間、 ありがとな〜 

ジョーは ますます上機嫌だ。

 

     カチン。     フランソワーズは静かにカップを置いた。

 

  ふう〜〜〜〜 ・・・  満足だけじゃないため息が出た。

 

「 ・・・ ジョー わたし 母親失格ね 」

「 え??? なんで??? 」

「 だって ・・・ 居眠りしちゃうし ・・・ 」

「 疲れてるんだよ そんな時には ちょっとでも寝ることさ 」

「 でも・・ ジョーあなた、なんでもめちゃくちゃ上手よ?

 すぴかやすばるをお風呂に入れるのとか オムツ替えとか 

 びっくり ・・・ 練習したの? 」

「 あ  ああ 

彼は なぜかクスクス笑っている。

「 ・・・ わたし なにやってもダメだわ ・・・

 赤ちゃんはイワンで慣れてるわって  これでも自信 あったんだけど・・・

 でもね! こんな小さいってびっくりなのよ。

 ちょっとチカラ入れたら壊れそうなんですもの ・・・ 」

「 そうだよね  あ ごめん、笑ったりして・・・ 

 これはさ 単なる 慣れ だよ。 」

「 な 慣れ??  ・・・ ジョー ・・・ ??? 」

「 あは  ぼく、施設に居る時、ベイビーズのオムツ替えとか

 お風呂とか手伝っていたんだ。 」

「 え・・・ そんな小さな子もいたの 

「 うん。 ぼく自身も一才にならない頃から 居たからね 」

「 ・・・ そう なの ・・・ ごめんなさい、不用意なこと、言って 」

「 気にしてなんかいないってば。 現実だもん。

 ねえ それよりも チビ達、すっげ〜〜元気だね〜〜 」

「 ・・・ 元気すぎるわ。  なんであんな大声で泣き続けられるの??

 なんでず〜〜〜っとぐずぐずぶうぶう言ってられるの??

 泣く って疲れるわよねえ? 」

「 あはは  そうだよねえ〜〜

 オトナはあんなにスゴイ声で連続して泣けないよなあ〜

 すぴか も すばる も 体力鉄壁べびー かも 」

ジョーはもう にこにこしっぱなしだ。

 

      ・・・ このヒトって。

      どうしてこんなに ポジティブ なの?

 

      イラってすること、ないのかしら

 

 

「 ジョー ・・・ あなたってスゴイわ 」

「 え? どうして。 」

「 あなた ストレスじゃないの?  昼夜問わず泣き喚いて

 それも二人がまるで連帯攻撃するみたいに 泣き続けて・・・ 」

「 ん〜〜 そりゃ すごい声だなあって思うよ。

 でも ね。 ぼく 今 めっちゃ幸せなんだ 」

「 ・・・え 」

「 ぼく、今 ―  ず〜〜〜〜っと欲しくて 欲しくて

 仕方なかったモノを ぜ〜んぶ 手に入れたんだもん。 」

「 え?? なにか買ったの?  

 

   ノン ノン。  彼は笑顔で首を振る。

 

「 ?? 」

「 きみがいて きみとぼくの子供達がいて。

 ぼくの家族 がいるんだよ?  も〜 さっいこ〜〜〜さ 」

「 ・・・・・ 」

 

      ジョー ・・・・・

 

「 可笑しいだろ? 嗤っていいよ 単純〜って笑っていいさ。

 でも ぼくは 誰がなんといっても さ・・いこうに幸せ なのさ! 」

「 ジョー ・・・ あなたって・・・ 」

よいしょ。  彼は毛布ごとチビ達を抱き上げた。

「 さあ すぴか〜 すばる〜〜〜 お散歩 楽しかったね〜

 もうおねむだよね  ベッドに行こうか 

「 今夜はいいこちゃんね 二人とも 」

「 うん。 裏山でさんざん泣いたもんな〜 さすがに疲れたんだろ 」

「 え。 また泣いてたの 」

「 ああ。  ま あそこで泣いてもだ〜れも気にしないもん。

 気が済むまで 泣いてもらったよ 」

「 ・・・ すごい発想ねえ ・・・ 」

「 そっかなあ  泣きたいだけ泣けば すぴかも黙るのさ。

 ってか草臥れて寝ちゃうんだけど  」

「 う〜〜ん・・・ あんまり泣くと本当に疲れるわよね・・・

 < 泣き寝入り > って現実よ 」

「 そうそう!  だからね あれこれあやしたり機嫌をとったりするより

 自然かな〜 なんて思って。 」

「 そっか〜 ・・・ そこまで付き合えるって ジョーはすごいわ! 」

「 う〜ん ほら ウチは街中から離れてるし裏山の方に行けば

 大声だしても誰もなんにも言わないもんな 」

「 そうねえ・・・ 恵まれた環境ってことね 

「 ん。 だからね たまにはその恩恵を遠慮なく受け取ろうよ。 」

「 ・・・ いいのかしら。 」

「 いいと思う。 その分 う〜〜んとめっちゃくちゃに可愛いがってさ

 イイコになってもらいたいな 」

「 すごい! ジョーって もうしっかり お父さん してる! 」

「 きみはもうとっくに お母さん だろ 

「 ううん ・・・ はやく寝てほしい〜 とか 泣かないで とか。

 ミルクはちゃんと飲んで とか思うけど

 こんな風に育ってほしい とか 考える余裕、なしだわ。 」

「 これから考えてゆけばいいさ。 

 あのね〜 あれこれ将来の妄想してると 二人の夜泣きもあんまし

 気にならなくなる 」

「 そう・・・? 」

「 ぼくは ね。  

 あ 二人をねんねさせてくるね 」

「 お願いします。 わたし 美味しい晩御飯 作るわ! 」

「 レトルトのさあ あのカレーが食べたいな 」

「 え・・・ それでいいの 」

「 ぼく あれ大好きだもん。  あ できれば

 ウチの温室のさ ぷち・とまと と きゅうり のサラダ。

 ・・・ リクエストしていっかな〜 」

「 もっちろ〜〜〜ん!!!  任せて! 」

「 お願いします〜 えへへ 楽しみ〜〜〜 」

「 チビ達、ねんねしてくれれば 二人でゆっくり晩御飯、よ♪ 」

「 うん ♪ 」

ジョーは にこにこ顔で二階の子供部屋へ上っていった。

 

 

  さて その夜 ・・・

 

美味しい楽しい晩御飯をすませ ジョーとフランソワーズは

久々にのんびりした時間を過ごしていた。

 

    う わ〜〜〜   え ええええ〜〜〜

 

「 あ・・・ 起きたァ〜 」

「 今まで大人しくねんねしてたのが奇跡よね 」

「 あ ぼくがゆくよ 

立ち上がりかけた彼女を止め ジョーはさっさとリビングを出ていった。

 

 

 

   カタン ―  勝手口のドアを開けるとどっと冷気が入ってきた。

 

「 うわ・・・さむ〜〜 うん、寒くないかな? 」

ジョーは 毛布で包んだチビ達をあやす。

「 さあ ちょっとお星さま みようか 」

 

     う わわ〜 ・・・?   え ええ え・・・?

 

すぴかもすばるも ほとんど泣き止んでいた。

「 あ〜 いいこだね〜 二人とも〜

 ほうら ・・・ お星さまいっぱいだよう〜〜〜 」

 

ジョーは腕の中の子供たちを 夜空へと差し上げた。  

 

 

    お星さまあ〜〜〜

 

    ぼく 父親になったんだ。

 

    ほら。 ぼくの娘と息子だよ

    見守ってください

 

    母さん ・・・ 見てください

    

    ・・・ そして    と、父さん ・・・

 

    きっと見ててくれる  よね・・・

 

       ぼく の とうさん

 

 

カサリ。 ジョーの後ろで小さな音がして

「 ・・・・・ 

温かい身体が ぴと・・・っと寄ってきた。

「 !  フラン ・・・ 」

「 だいすき ! 」

 

フランソワーズは後ろから我が子ごと ジョーを抱きしめた。

 

 

 

 ― さて 数日後。

 

「 ・・・ え〜〜〜 そんなあ 」

ジョーは パソコンの前で声を上げている。

「 ? どうしたのぉ 編集部から ? 」

「 ん〜〜 

現在、彼は雑誌編集部勤務で 只今は花の!育休中。

それでも 定期的に連絡は取っているし、短い記事を送ったり

校了前で忙しい時は校正も やる。 ( ほとんど夜なべ仕事だけど )

「 編集長からなんだけど 

「 あ アンドウさんね 」

「 うん ・・・ 記事、担当しろって。 」

「 ? どなたかの担当さんになるってこと? 」

「 ううん  ぼくに書けってさ! 」

「 ?? 今までもあれこれ書いてたでしょ 」

「 それがさ〜〜〜〜  なあ これ見て! 」

「 ?? 」

フランソワーズはモニタ―を覗きこんだ。

メール画面が映っていて ―

 

     育児日記 書いてよ 島ちゃん!

 

                  ― の文章が踊っていた。

 

    さあ ジョー君   どうする???

 

 

Last updated : 10.13.2020.                   index     /     next

 

*********  途中ですが

【島村さんち】 シリーズ☆

双子ちゃんの赤ちゃん時代・・・・・  なにせ なんでも二倍☆

93奮闘記 かな〜   ひっちゃかめっちゃか だったことでしょうね