『 聞いて ! ― (1) ― 』
どさり。
「 ・・・ はあ ・・・・・ 」
フランソワーズは 大きな大きなため息を吐き ソファに腰を下ろした。
― いや 身体を投げ出した、と言うほうが合っているだろう。
「 ・・・ つ ・・・っかれた ・・・ア ・・・
ああ ちょっとだけ ほんのちょっとだけ ・・・ 休ませて 」
独り言 か 言い訳 か 彼女はぶつぶつ言うと
そのまま かっくん。
ソファの背に顔を押し付け ― 眠りに落ちた。
すう 〜〜〜・・・・・
すぐに健やかな寝息をたて すっかり寝入ってしまった。
― 冬も真っ盛り 12月のある朝。
ジョーとフランソワーズの元に 天使が二人、舞い降りてきた。
未明にはちらちらと雪が舞う 寒い日だったけれど
昨日からもう緊張しっぱなしだったジョーは 一睡もせず ( できず )
彼女に付き添った。
〜〜〜〜〜〜〜 〜〜〜〜!!!
スプラノの素晴らしい大声を上げ まずオンナノコが生まれた。
・・・・・ 〜〜〜 !
すこし、いや かなり間を置き、のんびりした声で
オトコノコが ゆったりと誕生した。
「 二人とも元気ですよ〜〜 お母さんも元気。 よかったよかった 」
「 ほれ ジョー。 抱いておやり。 お前の子供たちだよ 」
え・・・ あ ・・・
担当医と看護士さん、そして 博士にも促されて
彼は実にこわごわ・・・ ふにゃふにゃの我が子達を両腕に抱っこした。
「 う わ・・・ 熱い ・・・ 」
ジョーは 涙をぼとぼと零しつつ棒立ちしている。
「 ふ フラン ・・・ あ あ ありがと〜〜〜〜 」
「 ・・・・ 」
彼の愛妻は にこにこ そんな風景を見つめていた。
「 さあ 最高に楽しい日々がはじまるね! 」
「 そうね・・・ 嬉しいわ 嬉しいわ・・・ 」
そうなのだ ―
その日から 二人のとんでもない日々 が始まったのであるが。
この時 二人のどちらも予想だにしていなかった。
とん とん とん。
一歩 一歩 踏みしめて かっきりした足音が近づいてきた。
「 ・・・ ね〜〜 フラン?
二人とも ねんねしたよぉ〜〜 いいこだねえ 」
小さな声が聞こえ ― かちゃり。
ドアが開き ジョーが両手でふかふか毛布のカタマリを抱いて
入ってきた。
「 ねえ この顔 見て 見て ・・・ もう天使だよねえ 」
彼は 腕の中のふかふかをそのままに そう・・っとソファに
愛妻の隣に座ろうとして ―
「 ?? あれえ・・・ フラン・・・?
あは ぐっすり寝てるなあ ・・・ 疲れてるんだよなあ 」
再びそう・・っと立ち上がり腕の中の毛布のカタマリに話しかけた。
「 ふふふ ねえ きみたち。 おかあさんはおねむ らしいよ
きみたちと一緒だねえ すぴか すばる・・・ 」
くちゅ ・・・・ むにゅう ・・・
チビ達はもぞ・・・っと動き口をむぐむぐさせると また丸くなった。
「 そうか そうか ・・・ いいこちゃんだねえ〜〜
ん〜〜 じゃあ おとうさんと一緒に ちょっとお庭に出ようか?
しっかり毛布の中だもの、寒くないよね〜 」
ねんね〜〜 ねんねん♪♪
ジョーはハナウタを歌いつつ ( 子守唄のつもりらしい )
テラスから庭に出ていった。
チビ達を迎えて ―
あまりの小ささに 最初、ジョーは少しばかりびくびくしていたが。
すぐに そんなヒマはない 状態になった。
彼はしっかりと 育休を取り。 名実ともに イクメン となり
赤ん坊達の世話に没頭した。
どこぞのゲームばかりに没頭するエセ・イクメン なんかとは
まったくの別次元だ。
― だってそうしなければ 二人を同時に育てるなんて無理だったから。
勿論 フランソワーズはチビ達にかかりっきり・・・
それでも < 二人同時 > は 至難のワザだ。
ジョーと分業、同時進行 シフト制? とあらゆるテクを使い
二人は子育てに追いまくられた。
ぱっちりと目が開くと 娘は碧い瞳で、そして 息子は
赤味がかった茶色の瞳で こちらをじ〜〜っと見上げるようになった。
「 う わあ〜〜〜 な・・・んてキレイな瞳なんだあ〜〜 」
「 ね? すばるってば ジョーにそっくり☆ 」
「 うふふ・・・ すぴかはきみに生き写しだねえ 」
「「 かわいい〜〜〜〜♪ 天使だあ 」」
そう ― 見た目は。
すぴかのくるくるカールした金色の髪は ティアラみたいだったし
すばるの明るい茶色の髪は 大地の祝福に見えた。
「 なあ ・・・ ぼく達 最高にシアワセだよねえ
ウチに天使がいるんだ・・・ 」
「 ええ ええ ・・・ 幸せ・・・ 」
若い両親はシアワセの泣き笑い顔で 互いの身体に腕を回す。
「 ありがとう フラン〜 最高のプレゼントだ♪ 」
「 ジョー。 あなたの子供たちよ ・・・ 」
くちゅ・・・ うにゅ・・・
色違いのアタマがもごもご動きだした。
「 お・・・? お目覚めかなあ 」
「 そろそろお腹ぺここさんかしらあ 」
笑顔で見守る両親を 意識しているのかいないのか・・・
・・・ う わあ〜〜〜〜〜!!! え えええ〜〜〜〜〜・・・
チビ達はほぼ同時、 いや 姉につられて弟も慌てて、という気分で
大泣き をし始めた。
「 うわ ・・・ ほいほい・・・ 泣かないよ〜〜 」
「 あらら ほらほら〜〜 ねんねしましょうねえ〜〜 」
父親も母親も もう慣れっこになっているのでさして驚いたりはしない。
最初は おろおろ・・ 泣きわめく赤ん坊たちの機嫌取りに必死になった。
だけど。
「 ほうら すばる〜 いいこちゃんねえ 」
「 すぴか すぴか はいはい ねんねんよ〜〜 」
うわああ〜〜〜 えええ〜〜〜〜
「 あ お腹 減ってるかなあ ミルクだよ〜〜 」
「 あらあら もうお腹空いた? ほうら ミルク。」
うわあ〜〜〜〜 えええええ〜〜〜〜
「 あれえ・・・ あ オムツかなあ? 替えよっか 」
「 ち〜 しちゃった? 気持ちよくしましょうねえ 」
うわあああ〜〜〜〜 え えええええ〜〜〜
「 そうだ〜 すぴか? たかい たか〜〜〜い 」
「 いいわねえ〜 すばるは ひこうき ぶ〜〜〜ん どう?」
うわあああああああ〜〜〜〜 ええええええ 〜〜〜〜〜〜
なにをやっても どうやっても。 あやそうがすかそうが
チビ達は 色違いのアタマを振るわせ 泣き続けるのだ。
大抵、 姉が泣き始めると弟が唱和?し 混声二部合唱は
延々と続く。
「 ・・・ はあ〜〜〜 もう ・・・ 」
フランソワーズは 広いクーファンの横にぺたん、と座り込んだ。
「 なんでそんなに泣くの? ねえ すぴか すばる・・・
・・・ わたしの方が泣きたいわ ・・・ 」
「 ・・・・ 」
カサリ。
ジョーは泣きわめく二人を毛布ごと抱き上げた。
「 ジョー ・・・? 」
「 ぼくに任せて 」
「 え? だってジョー・・・ 昨夜もず〜〜っとチビ達の相手を
してくれたでしょう? ちゃんと寝てないんじゃない? 」
「 おいおい・・・ ぼくを誰だと思ってるんだ?
一晩くらいの徹夜じゃ どうってことないよ。 」
「 でも ・・・ 」
いくらサイボーグでもね!
寝不足は辛いはず・・・
あ ・・・?
そういえば ジョーってば・・
チビ達が生まれてから 寝坊してない
というか 夜泣きの時は
ほとんど相手してくれてるわ!
「 ジョー そんなに無理しないで 」
「 無理なんかしてないってば 」
「 わたし、夜はちゃんと寝てるし・・・ 」
「 いいから。 ここはぼくが引き受けるから。
きみは夕食の支度 とか 洗濯モノの片づけとか あるだろう? 」
「 洗濯モノは ジョー。 あなた 畳んでくれたじゃない?
晩ご飯は ・・・ チン で済ませるわ 」
「 当分 泣き止まないよ? だっこして裏山にでもいってくる。
気分 変わるだろうし ・・・ 」
「 寒いわよ? 」
「 チビたちは毛布ぐるぐるで大丈夫。 」
「 ジョー ダウン 着ていって・・・ 」
「 わかったよ ・・・ さあ 行こうねえ 」
「 あ 待って! ジョーのダウン〜〜 」
彼女は玄関に飛んでゆき ダウン・ジャケットを取ってきた。
「 は はい これ 着て! 」
「 あ サンキュ。 ・・・ ねえ チン、のカレー、食べたい。
だから きみ もうちょっと休めよ 」
「 え ・・・・ 」
フランの目の縁の色が悪いのを ジョーはちゃんと見ていたのだ。
「 すぴか すばる〜〜 さあ 一緒にお散歩しようよ?
ほうら ・・ 毛布で包めばほわほわだろ 」
うわあ〜〜・・・あ? えええ〜〜 え・・・
泣き声がほんの少し トーン・ダウン する。
赤ん坊でも 状態の変化には機敏に気が付いたのだろう。
「 よ・・・っと。 あは〜〜 二人一緒だと重いなあ〜〜 」
「 ジョー ・・・ 大丈夫? 」
「 おいおい ぼくを誰だと 」
「 はい すみません。 009の腕力と注意力には
畏敬の念を持っております 」
「 うむ よろしい。 じゃ イッテキマス 」
ジョーは 最高の宝モノを大事に 大事に そ〜〜っと両手で抱き上げると
悠々と玄関から出ていった。
その少し 後 ―
リビングのソファでは 金髪お母さんが 妙な恰好で寝ていたのだ。
・・・ 起きなくちゃ・・・ !
ミルクの時間 ・・・
・・・あ オムツも ・・・
起きるのよ 起きるのよ〜〜
フランソワ―ズ ・・・!
ファンション? 起きなさい。
だらしないですよ。
誰かが耳元で囁いている ずっと。
「 ・・・う〜ん ママン〜〜 ・・・
わかってるわ わかってるってば。
もうちょっと・・・ あと五分 寝させて・・・ 」
フランソワーズは ころり、と寝がえりを打った ―
ズル・・・ ごろん。 ・・・どさ。
毛布にくるまったまま ソファから落ちてしまった。
「 ! ・・・ いった〜〜〜〜 ・・・
あ! いっけない〜〜〜 今 何時??? 」
慌てて毛布の中から抜け出し 暖炉の上の時計を見た。
「 ・・・ あ 」
鳩時計はチクタク 穏やかに時を刻んでいて 鳩クンは
まだ お家の中 らしい。
「 やだ・・・ ちょっとだけ、ってソファに座ったら
そのまま寝ちゃったのね・・・ あ? 」
泣き声 ・・・ 聞こえない わ ・・・
二人とも大人しく寝てるってこと?
「 嬉しいけど ・・・ でも 静か過ぎない?
ジョー ?? 出掛けたのかしら。
カラリ。 テラスのサッシが開いた。
「 ただいまあ〜〜 あ フラン 目が覚めたかい 」
ジョーが 毛布のカタマリを抱いて入ってきた。
「 あ ジョー ・・・! 」
「 ねえ 見て 見て〜〜 もう天使だよねえ ・・・
二人とも。 ねんねの顔ってどうしてこんなに可愛いんだろ 」
彼はもうにこにこ・・・零れそうな笑顔で 毛布の中を眺めている。
「 ・・・ ジョー お守りしてくれてたの ・・・? 」
「 あ? うん ・・・ まあたさあ ぐずりそうだったから
ちょっと裏山まで散歩してきたんだ。
空気 冷たいけど なんかいい感じで・・・
チビ達もさ 揺れる葉っぱとか背の高い樹とか 見てたよ〜 」
「 ・・・二人 抱えて大変だったでしょう ?
ほら ソファの上に置いて 置いて 」
「 ぜ〜んぜん☆ 3人でさあ いろいろおしゃべりして
楽しかったよぉ〜〜〜
なあ すぴかってば ぶ〜〜 とか みゃ〜 とか言うんだ。
すばるは にこにこ・・・してる。 」
ジョーは そう・・っと毛布のカタマリをソファに降ろした。
フランソワーズは そっと覗きこみ むにゃむにゃしている子供たちを
見つめた。
「 ジョー・・・ ありがと・・・ 」
「 え? あ きみ すこしは休めた? 」
「 ・・・ ええ すっかり眠ってしまって・・・
ごめんなさい。 」
「 ? なんで謝るんだい? 疲れたらちょっとでも寝る!
これ鉄則だよう 」
「 だって わたし・・・ ジョーだって疲れてるでしょう
」
「 ぜ〜んぜん。 もし疲れてたとしても
ああ この笑顔 見ちゃえば たちまち吹き飛ぶよう〜〜
・・・ああ 可愛いなあ ・・・ 」
「 あら おっきしてるのに大人しいわね 」
「 ふふふ あのさ ぼく、見つけちゃったんだ〜〜 」
「 ?? 」
「 すぴかってばさ お話、してるとあんまし泣かないよ?
こう・・・ね じ〜〜〜っとぼくのこと 見てるんだ。 」
「 え そうなの?? わあわあ泣かない? 」
「 泣くけど。 すぴか すぴか〜〜 ほら あの葉っぱきれいだよ
とか 虫さんがいるねえ とか 話すると ちょっと黙るんだ 」
「 え え〜〜〜 そんなの、気が付いてないわ わたし!
で すばるは? 」
「 すばるはさ すぴかが泣き止むと自然に大人しくなるんだ。
アイツ、つられて泣いてるんじゃないかなあ 」
「 ・・・ そ そんなことって あり?? 赤ちゃんなのに 」
「 う〜〜ん わかんないけど。 赤ちゃんだって知覚びんびんなんだもん、
外からの刺激には反応するんだろうね 」
「 そうなんだ ・・・ すぴか? お母さんのこと、わかる? 」
ふぇ・・・? くちゅう〜〜〜
「 だいすき って言ってるよ、二人とも。 」
「 え!? わ わかるの?? 」
「 あはは うっそ〜〜☆ そうだろうなあ〜って思っただけ。 」
「 もう〜〜〜 ジョーってばあ 」
「 へへへ ごめん〜 でもね ちゃんとそう言ってるよ きっと。
いつでも側にいてくれるヒトのことは すぐ覚えるじゃん。
ほら わんこでもにゃんこでも 」
「 そう ねえ ・・・
あ ジョー。 熱いコーヒーでも淹れるわ 」
「 ああ 自分でやるから・・・
フランはチビたち 見てて 」
「 あ ・・・ 大丈夫、ご機嫌ちゃんだもの。
たまには 丁寧に淹れさせて・・・
お砂糖とミルク、たっぷり入れて ね 」
「 ありがと フラン。 じゃ ぼく ここにいるね 」
「 ええ 任せて。 」
カチン。
香高い湯気とともに 彼の前におおぶりのカップが置かれた。
「 はい どうぞ。 あ クッキーもね 」
「 わあい♪ ・・・ ん〜〜〜〜 美味い ! 」
「 ・・・ ふふふ よかったわ 」
「 きみも飲めば 」
「 ええ わたしは オ・レ ね 」
カチン コトン カチャカチャ・・・
二人は久々・・・ゆっくりとお茶タイムを楽しんだ。
毛布の < 中身 > 達は 半分起きたり眠ったりしているのだろう、
ともかく大音声をあげることは なかった。
「 あ〜〜 おいし〜〜〜 熱い飲み物っていいね 」
「 ええ ・・・ ああ こんなにゆっくりお茶タイムって
ほんとに・・久しぶり ねえ 」
「 ふふふ ・・・ 今日はチビ達が協力してくれたもんなあ
ね〜〜 すぴか すばる? 貴重な時間、 ありがとな〜 」
ジョーは ますます上機嫌だ。
カチン。 フランソワーズは静かにカップを置いた。
ふう〜〜〜〜 ・・・ 満足だけじゃないため息が出た。
「 ・・・ ジョー わたし 母親失格ね 」
「 え??? なんで??? 」
「 だって ・・・ 居眠りしちゃうし ・・・ 」
「 疲れてるんだよ そんな時には ちょっとでも寝ることさ 」
「 でも・・ ジョーあなた、なんでもめちゃくちゃ上手よ?
すぴかやすばるをお風呂に入れるのとか オムツ替えとか
びっくり ・・・ 練習したの? 」
「 あ ああ 」
彼は なぜかクスクス笑っている。
「 ・・・ わたし なにやってもダメだわ ・・・
赤ちゃんはイワンで慣れてるわって これでも自信 あったんだけど・・・
でもね! こんな小さいってびっくりなのよ。
ちょっとチカラ入れたら壊れそうなんですもの ・・・ 」
「 そうだよね あ ごめん、笑ったりして・・・
これはさ 単なる 慣れ だよ。 」
「 な 慣れ?? ・・・ ジョー ・・・ ??? 」
「 あは ぼく、施設に居る時、ベイビーズのオムツ替えとか
お風呂とか手伝っていたんだ。 」
「 え・・・ そんな小さな子もいたの 」
「 うん。 ぼく自身も一才にならない頃から 居たからね 」
「 ・・・ そう なの ・・・ ごめんなさい、不用意なこと、言って 」
「 気にしてなんかいないってば。 現実だもん。
ねえ それよりも チビ達、すっげ〜〜元気だね〜〜 」
「 ・・・ 元気すぎるわ。 なんであんな大声で泣き続けられるの??
なんでず〜〜〜っとぐずぐずぶうぶう言ってられるの??
泣く って疲れるわよねえ? 」
「 あはは そうだよねえ〜〜
オトナはあんなにスゴイ声で連続して泣けないよなあ〜
すぴか も すばる も 体力鉄壁べびー かも 」
ジョーはもう にこにこしっぱなしだ。
・・・ このヒトって。
どうしてこんなに ポジティブ なの?
イラってすること、ないのかしら
「 ジョー ・・・ あなたってスゴイわ 」
「 え? どうして。 」
「 あなた ストレスじゃないの? 昼夜問わず泣き喚いて
それも二人がまるで連帯攻撃するみたいに 泣き続けて・・・ 」
「 ん〜〜 そりゃ すごい声だなあって思うよ。
でも ね。 ぼく 今 めっちゃ幸せなんだ 」
「 ・・・え 」
「 ぼく、今 ― ず〜〜〜〜っと欲しくて 欲しくて
仕方なかったモノを ぜ〜んぶ 手に入れたんだもん。 」
「 え?? なにか買ったの?
」
ノン ノン。 彼は笑顔で首を振る。
「 ?? 」
「 きみがいて きみとぼくの子供達がいて。
ぼくの家族 がいるんだよ? も〜 さっいこ〜〜〜さ 」
「 ・・・・・ 」
ジョー ・・・・・
「 可笑しいだろ? 嗤っていいよ 単純〜って笑っていいさ。
でも ぼくは 誰がなんといっても さ・・いこうに幸せ なのさ! 」
「 ジョー ・・・ あなたって・・・ 」
よいしょ。 彼は毛布ごとチビ達を抱き上げた。
「 さあ すぴか〜 すばる〜〜〜 お散歩 楽しかったね〜
もうおねむだよね ベッドに行こうか 」
「 今夜はいいこちゃんね 二人とも 」
「 うん。 裏山でさんざん泣いたもんな〜 さすがに疲れたんだろ 」
「 え。 また泣いてたの 」
「 ああ。 ま あそこで泣いてもだ〜れも気にしないもん。
気が済むまで 泣いてもらったよ 」
「 ・・・ すごい発想ねえ ・・・ 」
「 そっかなあ 泣きたいだけ泣けば すぴかも黙るのさ。
ってか草臥れて寝ちゃうんだけど 」
「 う〜〜ん・・・ あんまり泣くと本当に疲れるわよね・・・
< 泣き寝入り > って現実よ 」
「 そうそう! だからね あれこれあやしたり機嫌をとったりするより
自然かな〜 なんて思って。 」
「 そっか〜 ・・・ そこまで付き合えるって ジョーはすごいわ! 」
「 う〜ん ほら ウチは街中から離れてるし裏山の方に行けば
大声だしても誰もなんにも言わないもんな 」
「 そうねえ・・・ 恵まれた環境ってことね 」
「 ん。 だからね たまにはその恩恵を遠慮なく受け取ろうよ。 」
「 ・・・ いいのかしら。 」
「 いいと思う。 その分 う〜〜んとめっちゃくちゃに可愛いがってさ
イイコになってもらいたいな 」
「 すごい! ジョーって もうしっかり お父さん してる! 」
「 きみはもうとっくに お母さん だろ 」
「 ううん ・・・ はやく寝てほしい〜 とか 泣かないで とか。
ミルクはちゃんと飲んで とか思うけど
こんな風に育ってほしい とか 考える余裕、なしだわ。 」
「 これから考えてゆけばいいさ。
あのね〜 あれこれ将来の妄想してると 二人の夜泣きもあんまし
気にならなくなる 」
「 そう・・・? 」
「 ぼくは ね。
あ 二人をねんねさせてくるね 」
「 お願いします。 わたし 美味しい晩御飯 作るわ! 」
「 レトルトのさあ あのカレーが食べたいな 」
「 え・・・ それでいいの 」
「 ぼく あれ大好きだもん。 あ できれば
ウチの温室のさ ぷち・とまと と きゅうり のサラダ。
・・・ リクエストしていっかな〜 」
「 もっちろ〜〜〜ん!!! 任せて! 」
「 お願いします〜 えへへ 楽しみ〜〜〜 」
「 チビ達、ねんねしてくれれば 二人でゆっくり晩御飯、よ♪ 」
「 うん ♪ 」
ジョーは にこにこ顔で二階の子供部屋へ上っていった。
さて その夜 ・・・
美味しい楽しい晩御飯をすませ ジョーとフランソワーズは
久々にのんびりした時間を過ごしていた。
う わ〜〜〜 え ええええ〜〜〜
「 あ・・・ 起きたァ〜 」
「 今まで大人しくねんねしてたのが奇跡よね 」
「 あ ぼくがゆくよ 」
立ち上がりかけた彼女を止め ジョーはさっさとリビングを出ていった。
カタン ― 勝手口のドアを開けるとどっと冷気が入ってきた。
「 うわ・・・さむ〜〜 うん、寒くないかな? 」
ジョーは 毛布で包んだチビ達をあやす。
「 さあ ちょっとお星さま みようか 」
う わわ〜 ・・・? え ええ え・・・?
すぴかもすばるも ほとんど泣き止んでいた。
「 あ〜 いいこだね〜 二人とも〜
ほうら ・・・ お星さまいっぱいだよう〜〜〜 」
ジョーは腕の中の子供たちを 夜空へと差し上げた。
お星さまあ〜〜〜
ぼく 父親になったんだ。
ほら。 ぼくの娘と息子だよ
見守ってください
母さん ・・・ 見てください
・・・ そして と、父さん ・・・
きっと見ててくれる よね・・・
ぼく の とうさん
カサリ。 ジョーの後ろで小さな音がして
「 ・・・・・ 」
温かい身体が ぴと・・・っと寄ってきた。
「 ! フラン ・・・ 」
「 だいすき ! 」
フランソワーズは後ろから我が子ごと ジョーを抱きしめた。
― さて 数日後。
「 ・・・ え〜〜〜 そんなあ 」
ジョーは パソコンの前で声を上げている。
「 ? どうしたのぉ 編集部から ? 」
「 ん〜〜 」
現在、彼は雑誌編集部勤務で 只今は花の!育休中。
それでも 定期的に連絡は取っているし、短い記事を送ったり
校了前で忙しい時は校正も やる。 ( ほとんど夜なべ仕事だけど )
「 編集長からなんだけど 」
「 あ アンドウさんね 」
「 うん ・・・ 記事、担当しろって。 」
「 ? どなたかの担当さんになるってこと? 」
「 ううん ぼくに書けってさ! 」
「 ?? 今までもあれこれ書いてたでしょ 」
「 それがさ〜〜〜〜 なあ これ見て! 」
「 ?? 」
フランソワーズはモニタ―を覗きこんだ。
メール画面が映っていて ―
育児日記 書いてよ 島ちゃん!
― の文章が踊っていた。
さあ ジョー君 どうする???
Last updated : 10.13.2020.
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********* 途中ですが
【島村さんち】 シリーズ☆
双子ちゃんの赤ちゃん時代・・・・・ なにせ なんでも二倍☆
93奮闘記 かな〜 ひっちゃかめっちゃか だったことでしょうね