『 鐘の鳴る街で ― (2) ― 』
ことん。 もらったばかりの置き物を目の高さまで持ち上げてみた。
「 可愛い・・・ すごく上手になってるわ ・・・
あら 勿論、アナタもカワイイわよ ねえ 黒ウサギさん 」
フランソワーズは 隣に蹲っている木彫りのウサギも手の上に乗せた。
年季が入り飴色になった木彫りのウサギと 彫りあげたばかりのすべすべした作品と。
「 ふうん? ちょっと見は違うけど・・・
よ〜〜くみれば 似てる! やっぱり同じヒトが作ったのよねえ 」
ちょん ちょん ・・・ 向かいあわせて 鼻づらを付き合わせてみる。
ウサギ達は じ〜〜っと見つめいあい おしゃべりしている ふうに見えた。
「 うふ・・・ 可愛い・・・ これは兄弟かな 姉妹かな・・
あら お兄ちゃんとアタシかも・・・ 『 黒いうさぎ と 白いうさぎ 』 みたい 」
ねえ? と ベッドの主に振り返る。
「 あのお話、 好きだって言ってたわよね。 」
「 ・・・・・ 」
穏やかな寝息が返ってくる。
「 これ・・・ ずっと大事にしてたものね。 ここにあるのは奇跡かも
< 高校生 > の間も持ってたなんて思わなかったわ 」
ことん。 手擦れがした方の木彫りを もう一度手に取った。
角がすっかり丸くなり、 手の中のウサギは丸い感覚がある。
「 あったかい ・・・ アナタ ず〜〜〜っと彼の側にいたのよねえ
お友達ができてよかったわね あ 兄弟だったっけ? 」
新しいウサギ は もうすでにしっかりとこの部屋に溶け込んでいた。
「 はやく起きて ・・・ ほら ステキなお友達が来てくれたのよ? 」
「 ・・・・・ 」
返事は ない。
濃い睫が落ちた頬は 案外と色白なのだ。
「 ふうん? ・・・ ジョーって 結構カワイイのね ・・・ 」
考えれば こんなにしげしげと、じっくり彼を見つめたのは ― 初めてかもしれない
「 うん ・・・ ゆっくり休んでいいの。
いつも待ってたわ ず〜〜っと。 わたしだけ先に歳を重ねてゆくのが
悲しかったの・・・ 見かけはかわらなくても 心が老いるわ・・
もう 一緒にはいられないかも・・・って こっそり泣いた時もあるの。 」
ふう ・・・ 溜息がもれるが ― 重いものではない。
「 でも。 もういいのよね ・・・ ずっと一緒だわ!
だから どうぞたっぷり眠ってね。 あなたの目覚めを のんびり待つわ 」
ことん。 木彫りのウサギをふたつ、枕元に並べた。
「 あ そうだわ? もしかしたらサプライズのお客さんがあるかもしれないんですって。
ね ・・・ 彼 だと思う? 」
すう ・・・ 彼の寝息はずっと穏やかだ。
「 ふふふ 一緒に待ちましょ ・・・ ええ きっと。 ね? 」
ブランケットを直すと 彼女は静かにベッド・サイドから離れた。
カ −−−−− ン カ −−−− ン ・・・
昼を知らせる鐘の音が 街中から聞こえている。
コツ コツ コツ ・・・ バサバサバサ 〜〜〜〜
石畳に足音が響くたびに 鳩たちが緩慢に飛び上がる。
本気で驚き逃げる ・・・ というのとはちょいと違う雰囲だ。
ヤツらは一応 場所を空けるが ― すぐに舞い降りてくる。
そして すぐに
ク クウ ・・・ グルルル 〜〜〜 ポッポウ・・
また群れて鳴いたり 石畳の間を啄んだりし始めた。
「 ・・・ へ お前ら いいなあ ・・・ やることがあって よ 」
ふう〜〜〜〜 鳩たちの間で彼はふか〜〜く何回目かのため息と吐く。
「 ち・・・ な〜〜んにもね〜んだから ここは ・・ 」
うんざりした口調とは裏腹に 視線はある地域にきっちりと向いている。
「 ・・・ なんて言えばいいんだよ ・・・
あ〜〜〜〜 それにしても なんだってここにいるんだ 俺はよっ 」
は ぁ ・・・ !!!
空へ吐息をなげつけたが ― 薄水色の空は難なくかわしてしまった。
「 ・・・ あの時 ・・・ 身体がばらばらになって行って
オレのパーツが浮いてるぜ ってぼ〜〜っと眺めてた
意識も薄れてきた時、 アレが、 天使が迎えにきたんだ 」
ああ ・・・ オレもこれで 終わり か ・・・・
真空の宇宙空間が とてつもなく心地よいものに思えた。
そんな妙に安堵の気分で その天使に手を伸ばした ― が。
ぱん っ !
「 ! 」
天使は いきなり彼の手を払ったのだ。
「 ・・・ へ ・・・ そっか 天国はお呼びじゃねえってことかよ ・・・
ま いっか ・・・ アイツはちゃんと居るんだろうな?
アイツがいるなら どこだっていい ・・・ ああ もう ・・・ 」
そこまで考えたあとで ― 意識は一気に奈落へと落ちていった。
― そして。
は あ 〜〜〜〜 ・・・
薄水色の空に またまたまた吐息が立ち上る。
やんわりと吹く風には まだ温かさは感じられない。
運河が多いからかもしれない。
「 まぶしい ・・・って顔顰めて 目 あけたら − ここにいたんだよな・・・
この・・・カッコでさ。 なんだってオレ様がスーツなんぞ着てるんだよ 」
自分自身の姿を 水辺に映してみれば 余計にやりきれない。
スーツの上にはご丁寧に < あのジャンパ― > を羽織っているのだ。
「 じょ〜だんじゃねえ! オレは決別したんだ!
あんだけのコト されてほいほい戻るバカはいねぇ〜〜〜 」
カリカリきて、 なんもかんもかなぐり捨るっ! と息巻いた。
でも。 でも、 なのだ。
「 ふ ふん ・・・ そんでもって なんでココにいるのかさっぱりわかんねぇ
オレは 002は 確か宇宙空間でバラバラになったんだ・・・
ああ パーツごとに燃え尽きるんだ ・・・って思ったぜ。
そんなのに なんでだよ?? 夢じゃね〜のかよぉ〜? 」
カツンッ !!!
蹴飛ばす地面はしっかりと固く どうみてもホンモノだ。
カンっ ・・ ころころころ ・・・ ぽっちゃん。
飛んでいった石クレは 運河に落ち ちゃんと水飛沫があがった。
「 ・・・ 夢 じゃねんだ。 オレは確かにここに居るんだ。
でも いや!
オレのことなんざ どうだっていい。
あの時。 オレは ヤツをともかく地上に帰すんだ〜〜 って
手を伸ばしたんだけど。 ああ 確かに握った。 アイツの手を ・・・
けど。 けど〜〜〜〜 」
ヤツは どうなっちまったんだ??
「 オレだってボケじゃねえ。
それとなくこの街を歩きまわってみて ― 見つけたさ。 研究所 で
もう通じたもんな ああ そうなんだ、って思ったよ。 」
カツン ッ ! 石畳の道を蹴飛ばしてみても なにも変わらない。
「 ― シカトできね〜じゃないか。
オレもココに来たのなら 行かなくちゃなんね〜じゃね〜〜かよ〜〜〜
その ・・・ あそこに よっ 」
カツン !!
彼はもう一度 ― もう何十回目かもしれないけど 思いっきり足元を蹴飛ばした。
「 クッソぉ〜〜〜〜 とっとと迎えにこいよぉ〜〜
オレは ここにいるぜえ〜〜〜 」
ジョー ・・・ !!! ふんっ!
ジェット・リンク は まだうろうろ・・・運河の街を歩きまわっている。
水面を渡る風が やけに寒く感じ、彼はジャンパーの襟をしっかりと掻き合わせた。
― その時。
「 ? あらァ〜〜 久し振りねぇ 」
後ろから ぽん・・・と肩を叩かれた。
「 へ??? 」
彼はぎょっとして 思わず小さく飛び下がってしまった。
「 なあに? そんなにびっくりした? ふふふふ 」
後ろに居た人物は ― 30代になるかならないか・・・くらいの でも
若々しい雰囲気の女性だった。
「 ・・・ ? 」
ジェットは 礼儀なんぞまったく放り捨て しげしげと、 いや じろじろ・・・
彼女を見つめた。
「 やぁだあ〜〜 忘れちゃったの? まあね、随分お久し振りですもんねえ 」
彼女は ころころ明るい声をたてて笑う。
「 ・・・ アンタ ・・・ ! あ〜〜〜〜 」
突如 脳裏で記憶が蘇った。
「 うふふ 思い出した? ね 今 来たところなの? 」
「 あ ・・・ ああ ・・・ 」
「 そう 遅かったのね? 皆 待ってるわよ 」
「 ・・・ あ〜〜〜 アンタは ・・・ その ずっと ここに? 」
「 私? ああ ちょっと昔の友人に会いに行ってきたのよ。
隣の区域に住んでるから ・・・ 彼女とも本当に久しぶりだったわ 」
「 そ ・・・ っか ・・・ 」
「 さあさ。 行きましょ? 皆 待ってるわ 」
彼女は くい、とジェットの腕を引く。
「 ・・・ 待ってなんか ・・・ 」
「 待ってるってば。 」
「 ・・・ 知ってるのかい その ・・・ 皆が 」
「 だって。 彼がさんざん ・・・ 人待ち顔なんですもん。
ええ そんなこと、一ッ言だって言わないけど すぐにわかっちゃうわ 」
うふふふ ・・・ 彼女は また小声をたて笑った。
「 は ・・・ 幸せそうに笑うな アンタ。 」
「 そう? そうねえ そうかもしれないわ。
だって 私、幸せなんですもん。 皆も よ
」
「 そっか ・・・ シアワセなんだ それなら いいんだ ・・・ うん。
それが分かれば オレはもう 」
彼は ぷい、と踵を返そうとした。
「 あ。 ダメよぉ〜〜 ほら 一緒に行きましょ?
美味しいチーズとビールも買ってきたの。 」
「 ・・・ ドイツ・ビールは好みじゃねえ 」
「 残念でした、これはこの街の地ビールよ 」
「 そんな得体の知れねぇもん ウマイわけ、ねえよ 」
「 あら 飲んでもみないのに なんでわかるの?
ま〜〜 ほっんと 屁理屈言いねえ〜〜〜 さあ 行きましょ 」
「 わ・・・! 」
彼女は むんずと彼の腕を掴むと どんどん目の前の小さな運河を渡ってゆく。
「 ・・・ お おい〜〜〜〜 離せよ 」
「 ちゃんと一緒に来る? 」
「 ・・・ っかったよ ・・・ アンタんちは嬶天下だな ! 」
「 あらァ〜 皆知ってるわよぉ〜〜 」
彼女はまた朗かに笑う。
ジェットは なぜか毒気も意地もすっかり消えてしまった。
「 ・・・ アンタ・・・ いいヒトだなア ヒルダさんよ 」
「 うふふ ありがと。 アルベルトの言う通りね、 ジェットって
面白いヒトね。 」
「 ・・・ サンキュ ・・・ 」
ジェットは 観念し大人しく彼女について行った。
「 皆 〜〜〜〜 お客さんですよぉ〜〜〜 」
カ −−−− ン カ −−−−− ン
聞き慣れれば 鐘の音は時計代わりにもなる。
「 あら ・・・ もうこんな時間なの?
市場に行ってみようかな ・・・ そうそうお昼のパンを買ってこなくちゃ。 」
フランソワーズは トート・バッグを手にして立ち上がった。
「 行ってきます。 」
ちらり、とベッドの方に視線を投げ 彼女は出かけた。
ひゅるり ・・・ 運河からの風は まだ少し冷たい。
「 きゃ・・・ ストールをもってくればよかったかしら ・・・ 」
彼女は 慌ててカーディガンの襟を掻き合わせる。
石畳みの路地を抜け 小さな運河を渡る。
「 ・・・ この街は住みやすいけれど ちょっと寒いわねえ ・・・
今までいろいろな街で暮らしたけど ― そうねえ 一番好きなのは 」
ふう 〜〜 ・・・・ ちょっとため息がもれる。
「 やっぱり あの海辺のお家が ― 日本のおうちが好き、かしら。
一日中 波の音が響いていて海鳥の声も聞こえたっけ ・・・
だから あの時はうれしいかったわ。 ええ 素直にとても嬉しかったのよ 」
博士から 行動計画を告げられた。
永い休眠の時を経て 再び彼らが起動する時がやってきたのだ。
「 ・・・! はい。 了解しました。 」
フランソワーズは しっかりと頷くと静かに立ち上がった。
「 発進は? ・・・ 了解。 」
時間を確認し 淡々とした足取りで部屋から出ていった。
ジョー ・・・・ !
「 心が震えたわ。 ううん 怖かったからじゃないの。
あなたが 009とまた会えるからよ 」
期待も恐怖も なかった。 湧き上がってくるのはただ 喜びのみ。
彼女は冷静に着実に そして 最高の悦びを秘めて 輸送機に搭乗したのだった。
「 空を飛んでいる時もね 嬉しかったの・・・
あなたの腕の中に戻るんだって わかっていたから。
でも ・・・ ちょっと長かったわ 空中の旅 は ・・・
うふふ ちゃ〜〜んとアナタはわたしを < 受け止めて > くれたけど ね 」
ジョー。 皆がまっているのよ ・・・
白っぽい空へ 彼女は呼びかける。
この空は 何処につながっているのだろう。
運河の多い街には 知った顔が多かった。 この界隈を歩くだけでも
にっこり微笑を交わす人々がそちこちにみられる。
近所だけではない。 フランソワーズと兄の両親は隣街にいた。
ここに来てから何回か 訪ねた。
「 パパもママンも 元気だし ・・・ 」
― あら。 わたし。 どうして ここにいるのかしら。
ふ・・っとそんなことも思うけれど でもそれはどうでもいい気持ちもする。
「 焼きたてのパンを買って ・・・ その香で彼の目が覚めるといいのに ・・ 」
待っている。 ずっと 待っている。
当てのない時間だけれど 不思議と哀しくも淋しくもない。
「 そう ねえ ・・・ この街にいるから、かしら。
だって皆 いるんですもの。 アルベルトやグレートたちだけじゃないわ
お兄ちゃんだって そうよ、この前はカトリーヌとお茶をしたもの。
明日はレッスンに行くし ・・・ あら きれい! 」
街角に 花屋が店を出している。
「 いい香り ・・・ これは 水仙? 」
「 ええ そうです。 東洋の花ですから地味だけど 香がいいでしょ 」
「 わたし 大好きなの。 以前、ニッポンに住んでいて ・・・
そこのお庭に咲いていたのよ 」
「 まあ そうですか? 如何ですか 春の使者ですよ 」
「 ステキね、 いただくわ 」
「 まいど〜〜〜 」
「 皆に 春を届けましょ。 」
フランソワーズは パン屋に寄ってから また 運河の向かいの家に行った。
カラン カラン ・・・ 今度はちゃんと玄関から入った。
「 ほい、 フランソワーズはん 」
「 春の香をもってきたわ〜 」
彼女は 白い小さな花を差し出した。
「 ほっほ〜〜〜 水仙でっか〜〜 いやア ええなあ〜〜〜
あ。 そやそや − お客さんやで。 」
ぱちん。 大人はちっこい目でウィンクした。
「 え? ・・・あ 彼? 」
「 自分で見いてみぃや 」
「 ! 」
フランソワーズは 花も焼きたてパンも大人に押し付けると
リビングに駆けこんだ。
ばんっ ! かなり乱暴にドアが開いてしまった。
「 !? フランソワーズ なんだ。 行儀の悪い。 」
「 あ〜〜 ごめんなさい アルベルト。 だって・・・
−−−−−− お帰り 〜〜〜 ! 」
彼女は 窓辺に突っ立っている人物の前にとんでいった。
「 ・・・ あ ぁあ ・・・ 」
その人物は ガラにもなく口の中でもごもご・・ なにかを言っている。
「 待ってたの〜〜〜〜 お帰り ジェット!!! 」
「 う あ〜〜〜 」
「 なんだ お前。 挨拶くらいちゃんと言え 」
「 ! 」
彼は一瞬 む・・・っとした顔をしたが ― すぐに顔を上げ
リビングの真ん中に進みでた。 そして目を閉じて 叫んだ!
た ・・・ ただいま ・・・ !
「 おかえりなさい〜〜〜〜 」
「 ようお帰り。 待ってたで 」
「 むう。 お帰り。 」
「 お帰り。 遅かったね 」
「 お帰り。 美味いコーヒーが淹れたてだぞ 」
「 あ ・・・ あの 」
「 点心、ありまっせ〜〜〜 はよ はよ 手ぇ洗って座りなはれ 」
「 う うん ・・・ 」
「 あ そうそう 焼きたてパンも買ってきたのよ〜〜
お茶にしましょ! 」
「 いいねえ〜〜 ほらほら ジェット、 こっちに座りなよ 」
「 むう。 クッションをもってくる 」
「 あ ・・・ ああ ・・・ ども 」
わいわい ガヤガヤ〜〜 リビングはたちまち賑やかになった。
あちこちから声を掛けられ ジェットの口も次第に解れ始めた。
そんな様子を アルベルトはそれとなく眺めていた。
広げた新聞の陰に 彼女がコーヒーを置いてくれた。
「 ヒルダ ・・・ お前は
」
「 あら お節介だったかしら? 」
「 ・・・ いや。 ありがと。 さすがだな 」
「 ふふ・・・ ダンケ。 さあ 厨房を手伝ってくるわ。
お茶にしましょう〜〜〜 」
ヒルダは 小さなキスを銀髪に落とすと 軽い足取りでキッチンに消えた。
「 ・・・? なあ フラン。 ヤツは 」
ジェットは少しもじもじしつつ聞いてきた。
「 え? 」
「 あのぅ・・・ ヤツは まだ帰ってないのかよ? 」
「 ああ ジョー ? いいえ もう帰ってきたわよ。 」
「 そっか ・・・ それならいい・・・ 」
「 でも ね。 まだ 目覚めてないの 」
「 ・・・ 目覚めてない? 」
「 そうなの。 眠っているの ずっと ・・・ 」
「 ここに来てから ずっとか 」
「 う〜ん ・・・ よくわからないけど ・・・
気がついたら 彼 ・・・ ウチのベッドで眠っていたの。 」
「 ・・・ そっか ・・・ アイツはフランの側に帰ってきたんだな 」
「 え ・・・ そ そう ・・? 」
「 そうさ。 ああ そうなんだ ・・・ うん 」
ジェットは 一人で頷くと ― いきなり窓の外に視線を飛ばした。
「 ? ( ・・・ あ ・・・ なみだ ・・・ ) 」
フランソワーズは 気づかぬフリをして立ち上がった。
「 あの ・・・ ちょっと気になるから帰ってくるわ 」
「 うん? どうしたね マドモアゼル 」
「 ええ あの。 なんか ジョーが < 起きた > かもしれない って
思って 」
「 はよ 行ってみぃ 」
「 うん! 」
仲間たちの笑顔を後に 彼女は向かいの自宅に戻った。
彼は ― 茶色の瞳ですこしぼんやり・・・彼女を見た。
「 ・・・・ こ こは ・・・・? 」
「 うふふ・・・ わたしのセーフ・ハウス よ 」
「 せーふ はうす? 」
「 そうよ。 ねえ 皆 ・・・ 待ってたの 」
「 まってた? 」
「 ええ ジョーが目覚めるのを。 皆 よ。 」
「 みんな ・・・ 」
「 ええ。 皆。 み〜〜〜んな よ。
ジョーが ここに来るのを待っていたの。 」
「 そっか ・・・ 皆 いるんだね 」
「 ええ。 懐かし友達もいるわ。 そうそう 五人姉妹にも会ったわよ 」
「 ・・・ 元気 だった? 」
「 ええ とっても。 わたしの兄もいるわ 」
「 お兄さん ・・・ 」
「 うふふ・・・ソレ、 兄のだもの 」
フランソワーズは ジョーの着ているシャツを指した。
少しばかり短い袖を 彼はつんつん引っ張ってみた。
「 え そ そうなんだ 」
「 ええ そうなのよ。 」
そっか ・・・ ジョーはもう一度呟くと静かに とても静かに微笑んだ。
「 わたし ね。 なんだかわかった気がするのよ 」
「 え なにが。 この ・・・ 天使のこと? 」
ジョーは 壁に広がるオブジェに目を向けた。
「 天使 ・・・ かどうかは わからないけど・・・・
わたし達がここにいる理由 ( わけ ) が ね
」
「 ぼくは ― 還ってきたんだね 」
「 ええ。 皆 還ってきたの。 」
ここは ね。 永遠 ( とわ ) の 街 なの
これから 本当の 生活が始まるわ
ね ・・・?
彼女は 微笑んで彼を見あげる。
うん。
彼も 笑みを浮かべ彼女を見つめた。
長い長い闘いの日々は終わりを告げ 真実の日々が始まる。
************************* Fin.
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Last updated : 10,10,2017.
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*********** ひと言 *********
RE の 最終シーン ・・・
『 ナルニア国物語 』 の 「 最後の戦い 」 だと
思ってたんですよ〜〜 コゼロ 見るまで ・・・
この設定だと コゼロ にはつながらないなあ〜