『 鐘の鳴る街で ― (1) ― 』
ポン ポン ポロロロロ 〜〜〜〜
軽やかな音色が 響いてくる。
「 うふ? アルベルト 相変わらず調子いいのね 」
フランソワーズは窓辺に駆けてゆくと 鎧戸のついた窓を左右大きく開けた。
「 ・・・ ああ いい風 ・・・ 今日も晴れるわねえ 」
カーテンを絞り朝の空気をいっぱいに取り入れた。
すこしひんやりする風と一緒に 軽いワルツが彼女を誘う。
「 ふふふ・・・ 足がムズムズしてきたわよ? レッスン、付き合ってもらおう
かしら 」
部屋の中に戻ると 大きなバッグを取ってきた。
「 ちょっと朝のレッスン してくるわね? いってきます♪ 」
二階に向かって 微笑とともにキスを送り ― ドアを開けた。
カ −−− ン カ −−−− ン ・・・
街のそこここから鐘の音が聞こえてきた。
鳩が あちこちから飛び立ってゆく。
「 あ〜〜〜 いい気持ち ・・・ あ・・・ 帰りにマルシェに寄らなくちゃ。
えっと セロリとトマト。 あとレモンもね ・・・
バゲットは お昼の焼き上がりを買うわ 」
ぴょん ぴょん ぴょん ・・・
飛び石を辿り浅い掘割を渡った。
向かい側にも 石造りの建物がならんでいる。
緑の低い扉の前で ちょっと止まり ― コン コンコン。
「 おはようございま〜〜す 」
「 ・・・ おう 」
ちょっとぶっきらぼうな声が返ってきた。
「 入りマス〜〜 」
カタン。 彼女は低い戸口を潜った。
ひんやりする空気の中、石段をおりてゆく。
「 おはようございます〜〜 」
「 ・・・ バレリーナ殿のおでましか 」
地下のスタジオを開けると ピアニスト氏の他にも先客があった。
「 あらあ〜〜 ムッシュウ、 お早うございます。 」
ピアノのすぐ脇のバーで ストレッチをしているスキン・ヘッドに
フランソワーズは優雅に会釈をした。
「 お早う マドモアゼル。 ちょいと今朝は 混ぜてもらっていいかな? 」
「 もちろんですわ、ムッシュウ。 ・・・近々 舞台でも? 」
「 ふん・・・ まだ先なんだが 本読みが始まるんでな。
ちょいと身体を解しておかんと ね 」
「 さすが名優さん。 お手柔らかにお願いします 」
「 こちらこそ。 」
俳優氏は じつに優美に彼女の手を取り身を屈めるとキスをした。
「 あ〜〜 ステキ! うふふ〜〜〜 ピアニストさん、お願いね〜〜 」
「 ・・・ 」
返事代わりに 華麗なアルペジオが響いた。
「 ストレッチするから 待っててね〜 」
ぽろん ぽろん。 ピアノが返事をした。
「 ・・・ 時に ヤツは 」
「 う〜ん まだみたい 」
「 そうか。 ゆっくり な 」
「 ええ ・・・ ゆっくり。 」
「 なにごとも ゆっくり、がよろしい。 急ぐ必要はあるまいよ。
― 我々には な 」
「 そう ね・・・ 」
「 そうさ。 では マドモアゼル? 足慣らしに 」
俳優氏は 慇懃にアタマをさげると レッスン場の真ん中に進み出た。
タン タタタタ ッ タンッ !
彼は軽快にステップをふむ。
「 あら タップ・シューズ? ・・・ いえ普通のジャズ・シューズよね?
すごいわあ〜〜 ちゃんと音が聞こえるわ 」
「 はっは〜〜 フレッド・アステア か ジーン・ケリーか グレート・ブリテンか♪ 」
「 ふん ふんふん ふん〜〜〜♪ ステキ〜〜
ねえ ミスタ・ブリテン しゃる うぃ〜 だんす? 」
「 御意。 」
「 あ〜 ピアニストさん ・・・ 」
「 わかってる。 まずは ワルツ 〜〜〜 」
ぽろぽろぽろん ぽろぽろぽろん〜〜〜
「 では 」
俳優は軽く会釈をすると す・・っとダンサーを ホールドした。
「 お手柔らかに ・・・ あのねえ いつかタンゴを華麗に踊るのが
夢なの 」
「 ほう? ・・・ ああ こらこら 一人で踊らない〜〜
パートナーのリードに任せたまえ 」
「 あ はあい ・・・ 」
「 ・・・ ふふふ マドモアゼル? 彼氏にもそういっているのかい 」
「 え・・・ ま まあ なんのこと?? 」
フランソワーズは慌ててグレートの肩ごしに 顔を出した。
赤くなった頬を見られたくなかったから・・・・
「 ふふん まあ いいさ。 おう さすがに脚捌きは軽いな 」
「 あらぁ〜 ムッシュウのリードが卓越していらっしゃるからですわあ〜 」
「 そりゃ あの青二才には負けせんですぞ?
どうかね、マドモアゼル? 中年の魅力にクラクラきてるのでは? 」
「 え〜え もう 足元が危ないですわ〜 」
「 あっはっは 」
無駄口を交わしつつも 二人はすべるように踊っている。
「 ほっほ〜〜〜 朝から優雅やねえ〜〜〜
朝ご飯 できてまっせぇ〜〜〜 」
入口から 料理人氏が色艶のよい笑顔をみせる。
同時に ― ほわ〜〜〜〜ん ・・・ 温かい香が流れてくる。
「 お。 ・・・ くんくん ・・・ これは中華風ポリッジ ( お粥 )
かな? 」
「 ふんふん・・・ あら オムレツの匂いも〜〜 」
「 では。 マドモアゼル? レッスンはひとまずお休みしまして
朝食など ご一緒しませんか? 」
ぽん ぽんっ!! ピアノが 大きく鳴った。
「 おらおら〜〜 音の存在を忘れてもらっちゃ困る。
レッスンは終わりなのか? 」
「 あ・・・ あ〜〜 これは失礼しました。
あの ピアニストさんも ご一緒にいかが? 」
「 光栄です、マドモアゼル。 では 」
カタン。 ピアニスト氏はゆっくりピアノの蓋を閉じた。
「 朝食をいただこう 」
「 は〜い 」
「 おう 」
稽古着の二人はニットを羽織り ピアニスト氏は手袋を外した。
「 みなはん〜〜〜 ほんなら 」
「 あ 書斎に声を掛けないと ・・・ 」
「 おう プロフェッサ・ピュンマ がカンヅメになってるからな。
なにやら原稿の締め切りが近いんだと。 」
「 まあそうなの? あら? 」
ギ・・・ 裏口のドアがあいて褐色の巨人が赤ん坊と共に入ってきた。
赤ん坊は逞しい腕の中に収まっている。
「 あ〜〜 ジェロニモ。 お早う 〜〜 あらイワン ? 」
「 むう。 散歩中に眠ってしまった。 気持ちのよい朝だな 」
「 あらあら ・・・ じゃ クーファンに寝かせてくるわ? 」
フランソワーズは腕を差し伸べたが ジェロニモは微かに微笑んだ。
「 このままここに居させてやろう。 俺がみている。 」
「 そう? ありがとう。 ね 朝ご飯にしましょ♪ 皆で食べましょ 」
「 おう。 あ。 」
「 ? なあに どうしたの? 」
「 むう ・・・ 」
ジェロニモは目を閉じなにかを捕えようとしていた。
「 ― 客が来る かもしれない 」
「 客? 」
「 うむ そんな気がする 」
「 まあ そうなの? それは楽しみね ゲスト用のティー・カップを
用意しておくわ。 」
「 それがいい。 ・・・ ヤツは? 」
彼は 窓の外、向かいの家に視線をとばす。
「 ん〜〜〜 まだ寝てるわ 」
「 そうか。 ゆっくり休むといい
」
「 そうよね。 ウチには空き部屋があるし 」
「 衣類とか大丈夫か。 」
「 ありがとう、 兄のものがあるから・・・ なんとかなるでしょ 」
「 そう か。 ・・・ イワン よく寝ている。 」
「 ふふふ ・・・ あとで ミルク〜〜 っていうかしら 」
「 だろうな。 」
ふわ〜〜〜ん
厨房からよい香りが流れてくる。
カチャン カチ カチ こぽこぽこぽ ・・・ カチン カチン
やがてダイニング・ルームからは食器の音とともに話声や笑い声が
聞こえ始めた。
「 うふふ〜〜 そうねえ あ そうだわ 大人。 」
「 ほっほ〜〜 なにね? 」
「 ええ ・・・ あの。 この点心、まだある? 」
「 フランソワーズはん まだ食べるアルか?
ワテはようけうれしけど ― 肥えまっせ〜〜〜 」
「 あら わたしじゃないわ。 あの ・・・ もしかしたら
御客様があるかも・・・って。 ジェロニモが。 」
「 はへ? 電話でもあったかネ? 」
「 いや ・・・ そんな風が吹いている 」
「 はあん? あ〜〜 ギルモア先生が予定より早うにお帰りかネ? 」
「 わからん。 」
「 あら 博士は今晩お帰りのはずでしょう? 」
フランソワーズは ピュンマをふり返る。
「 あ・・・ ちょい待ち。 博士の予定は ・・・っと こっちのファイルに 」
プロフェッサーは プライベート用のスマホをちゃちゃっと操作する。
「 ギルモア先生の予定はピュンマはんが管理しはってるアルか? 」
「 いや ・・・ 博士が僕にメールを送ってくるから
なんとなく僕が把握するようになったのさ。 ・・・ああ うん
別に変更のメールも来てないから・・・ 予定通り帰宅は今晩だね 」
「 さよか〜 ほんじゃ客は 誰ネ? あ フランソワーズはんの兄上・・・ 」
「 あ それはないわね。 今週いっぱいは帰らないわ。 」
「 ふん ・・・ 新しいカップをひとつ、用意しておけばいい 」
「 そうね。 ああ 今日もいいお天気ね 」
「 ふふん 腹ごなしにレッスンしようではないか マドモアゼル 」
「 はいはい 」
「 おっと もうこんな時間かあ・・・ 皆とのおしゃべりが楽しくてついつい・・・
原稿の締め切りが近いんだ。 」
「 ぴゅんま先生〜〜 気張ってやあ ごっつう美味いオヤツ、
つくったるで。 」
「 お〜 ありがとう 大人 」
「 ふふふ〜〜ん 皆はんの おいしい〜 いう笑顔がワテの生き甲斐やで
さ ・・・ 厨房 きっちり磨くで 」
皿小鉢をまとめると 料理人は意気揚々をキッチンに引き籠る。
「 それじゃ 僕は あ イワン? 」
「 うむ・・・ ぐっすり だ。 ちゃんとクーファンに寝かせてくる。 」
「 ふふ・・・ いい笑顔だねえ よろしく頼むね。 」
「 うむ・・・ 」
ピュンマは書斎で原稿の続きを書き
ジェロニモはイワンを寝かせに二階に上がっていった。
「 それでは 我々はレッスンの続きを マドモアゼル? 」
「 了解。 あ ヘル・アルベルト ピアノ ・・・ お願いできまして? 」
「 了解。 指のウオーミング・アップがまだまだ不完全だからな 」
「 ありがとう、 それでは 」
「 おう 」
レッスン組は 足音も賑やかに地下に降りてゆく。
こうして 彼らの静かな一日が始まるのだった。
― そして そろそろ時計の針が真上に重なるころ
カラン カラン ・・・ 玄関のベルが鳴った。
「 ほえ〜〜〜 誰かぁ〜〜 玄関 出てやあ〜〜〜 」
玄関に一番近いキッチンから 大人が声を張り上げたが ・・・
「 ・・・? もう〜〜 誰もおらへんのかいな ・・・
ワテは夕御飯の仕込みや、いうてんのに〜〜〜 」
ぶつぶつ言いつつ 彼は前掛けで手を拭った。
カラン ・・・カラン
「 はいはい 今出るがな〜〜 そう急かさんといてや
いったいどなたさんでっか〜〜〜 」
「 ― ワシじゃ 」
「 ? ワシさんやて? そないな御方 知りまへんな 」
ドアの前で 料理人はニベもない。
「 大人! ワシじゃよ、早く開けておくれ 」
「 ワシはん ・・・ どなたはんでっか 」
「 ワシじゃ!! 」
「 そやから ! あ ・・・ あかん! 」
彼は 慌ててドアに取り付き閂を引き抜いた。
「 あいや〜〜〜〜 ギルモア先生〜〜〜 えろうすんまへんなあ〜 」
「 やっと開いたか ・・・ 」
「 すんまへん すんまへん どこぞの悪餓鬼やろか、思うて
ささ・・・ お荷物 置きなはれ お疲れやろ 」
「 いやいや ・・・ あ〜〜 熱い紅茶を頼めるかな 」
「 アイアイサ〜〜〜 皆はん〜〜 ギルモア先生のお帰りどっせ〜〜 」
ガタン バタン。 カタカタカタ ・・・
大人の声に二階から そして 地下から、ドアが開き足音が集まってきた。
「 博士。 お帰りなさい。 学会は如何でした? 」
書斎にいたピュンマが一番に顔をみせた。
「 おう。 まああんなもんじゃろうよ 」
「 ふふふ いつもそんな風におっしゃいますね 」
「 そうか? < いつもそんな風 > なんじゃよ。 」
「 お帰りなさい イワン まだ眠っている。 」
ジェロニモは 巨躯に似合わず静かに二階から下りてきた。
「 ただいま。 そうか・・・ あ アイツは 」
「 むう ・・・ 同じだ。 」
「 ふむ。 変わりないのだな 」
「 < 同じ > だ 」
「 そうか・・・ 」
ぱたぱたぱた こつこつこつ かたかたかた・・
賑やかな足音が三つ、地下から上ってくる。
「 おかえりなさ〜〜い 博士! みなさん お元気でした? 」
「 やあ お疲れでしたな。 して首尾はいかに いかに 」
「 お疲れ様でした。 」
「 やあ 諸君 ただいま。 おお レッスン中だったのかい、邪魔したな 」
博士も言葉数が増えてゆく。
「 ええ でも もう終わってクールダウンしていましたから ・・・
ねえ お茶にしません? 」
「 お〜〜〜 よいね。 そうそう 昨日美味いのを手に入れましてな。
大人 あれを淹れてもらえるかな 」
「 グレートはん よっしゃ。 ジェロニモはん 先生のお荷物、
お書斎まで運んでや〜〜 」
「 了解 」
「 ありがとうよ。 」
ジェロニモは に・・・っと笑顔をつくると 博士の荷物をひょい、と持ち上げた。
「 あら やっぱり博士のこと・・?? 」
フランソワーズが あ・・・っという顔をした。
「 なにかな? 」
「 え いえ 予定外のお客さんがあるかも って・・ジェロニモが 」
「 予定外? ワシは必要があって予定変更したのじゃ。 予定外 では
ないな 」
「 そうですか。 あ ・・・ もしかしたら 」
「 うん? 」
「 あの ・・・ 起きるのかな なんて 」
「 う〜〜ん ・・・ それはワシにもわからんよ。 元気なのだろう? 」
「 ええ ・・・ 多分。 」
「 それならよいよ。 時に 兄上はお元気かな。 」
「 はい。 兄もここの暮らしが気に入ってるみたいですわ 」
「 それはよかったのう〜 ここは ― よいところじゃな 」
「 ええ ・・・ 今度 皆で晩御飯、しません? 」
「 いいのう〜〜 ・・・ < 皆 > でなあ 」
「 そうですねぇ。 」
サァ 〜〜〜〜 レースのカーテンが大きくゆれた。
「 あら 風がでてきたみたい・・・ くっしゅん! 着替えてきますね〜 」
フランソワーズは羽織っていたニットの前を掛け合わせると 勝手口から出ていった。
カツン カツン ・・・ 石畳の橋を渡り向かいの自宅に戻った。
「 ・・・ ただいま〜〜 ・・・ ふうん? 」
とんとんとん ・・・ 階段を上がってゆく。
「 ご機嫌いかが 天使さん・・・ ねえ 彼はまだ寝ているかしら 」
とん。 途中で足を止め ― 彼女はつくづくと天井を見上げた。
そこには 壮大なオブジェがあった。
羽根をもつものが 仰け反って天を臨んでいる。
「 ねえ アナタは ・・・ どうしてここにいるの? いつからいるの? 」
驚愕したみたいに大きく口を開けたソレは 天使 というよりも
悪魔 ・・・ いや 堕天使 に見えなくもない。
「 お兄ちゃんはどうしてこの家を借りたのかしら ・・・
気持ちのいいお家だけれど ― 初めてここに来た時にはびっくりしたわ 」
ふうん ・・・?
「 アナタは なにを見てきたの? 教えて? 」
彼女は首を傾けソレを眺めるが なにも応えてはくれない。
「 ・・・ まあ いいわ。 ウチの護り神さまよね〜〜 」
とん とん とん。 階段を上りきると大きな窓のある寝室がある。
「 いい風が吹いているの。 窓を開けましょうね 」
彼女はベッドに向かい声をかけると 閂を外し窓を左右に開けた。
「 ふ〜〜〜〜 ・・・ ほうら ・・・ いい風。
ねえ ― ジョー。 気持ちいいでしょう? 」
ベッドには リネンに埋もれ茶色の髪がのぞいている。
「 ・・・ まだその時ではないのかしら ・・・ つまんないなあ・・・
この街を一緒に散歩でもしたいのに・・・ 」 」
フランソワーズは また窓の側に戻った。
「 ・・・ あら? 」
〜〜だから それはわかってるけど〜〜 兄さんってば!
よくきけよ〜〜〜
二人の青年が声高に話ししつつ歩いてゆく。
「 あ〜らぁ・・・ あの二人、仲よしなのにいっつもケンカしてるのよねえ 」
わかってるけどぉ〜〜 じゃ そうしろよ マイナス。
・・・う ・・・ん ・・・ もう言い合いはやめようぜ。
うん ・・・ せっかく釣りに行くんだからさ うん!
結局 二人はわいわいと楽しそうに大きな運河に向かって行った。
「 ふふふ ・・・ 元気そうね。 あら? ステキなカップル〜〜 」
コツ コツ コツ カツ カツ カツ
長いスカートを風に遊ばせつつ貴婦人が 優雅に歩いてくる。
傍らには髭を蓄えた偉丈夫な紳士が付き添っている。
コソ ・・・ ふふふ ・・・ ははは
小声なので会話は聞こえないが 二人とも終始穏やかな笑顔だ。
「 ・・・ あ ・・・ あのマダム ね・・・ !
そうかあ〜〜 ムッシュウと再会できたのねえ ・・・ うふふ・・・
幸せそう ・・・ もうあの館に縛られることもないのよね 」
よかったこと ・・・ ちょっと羨ましいかな ・・・
フランソワーズは少し小首を傾げ 彼らを見送った。
「 お〜〜い 元気か〜〜〜い 」
「 ?? だあれ? 」
窓の下で気のよい少年が 声をかけ手を振っている。
「 あらあ。 ・・・ええ 元気よ〜〜 」
「 これ・・・ 作ったんだ。 あげる。 」
「 え? 」
「 行くよ、うけとって! 」
ぽ〜〜〜〜ん ・・・ !
彼は握っていたモノをこちらにむかって投げ上げた。
「 わ・・・? 〜〜〜 っと とれたっ 」
「 よかった〜〜 」
「 ・・・ これ・・・ あら ウサギ? 可愛い〜〜〜
君がつくったの? 」
「 ウン ・・・ いつかのとペア、 兄弟のつもり さ 」
「 まあ 嬉しい ! きっと喜ぶわあ〜〜〜 」
「 えへへ・・・ おらもウレシイよぉ〜 あ 今度はさ お姉さんにも
作ってあげるね〜〜 」
「 ほんと?? ね よかったらこのウサギさんのお友達、作って 」
「 おっけ〜〜〜 」
じゃあねえ〜〜 と 少年はぶんぶん手をふると水路を渡って行った。
「 元気ねえ ・・・ 可愛いわあ〜〜 さっそく見せてあげなくちゃ。
トウキョウでもらったの、もってきてよかった ・・・ 」
コトン。 もらったばかりの木彫りを 枕もとに置いた。
ずっといるウサギは飴色になっていて 並べると色違いの兄弟になった。
「 ねえ ・・・ ジョー。 そろそろ目を覚ませない?
皆 待っているの あ 皆 っていっても ・・・ 」
ふう・・・ ちょこっとため息が漏れてしまった。
― そう 彼もまだ 姿を見せていない。
「 ふふ ・・・ ここまで来たわね ・・・
ええ ずいぶん長い時間がかかった気もするけど ― 」
ねえ ― お願い。 目を 覚ませて ・・・
彼女は ほんの少しだけ開いた彼の唇に そっとキスを落とした。
彼は まだ 目覚めない。
カ −−−− ン カ −−−− ン ・・・ !
街のどこかから 鐘の音がひびいてきた。 夕べの鐘にはまだ少し早い。
Last updated : 10,03,2017.
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************* 途中ですが
RE です RE !!!
今回の設定では コゼロ には繋がりませぬ〜〜
こんな風に暮らしていてほしいな ・・・・
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