『 あめ あめ ふれふれ ― (2) ― 』
サ −−−−−− サ −−−−−
朝から、いや ひょっとしたら前の晩から まったく同じ調子で雨が降っている。
「 ・・・ やだあ〜 また 雨なの? 」
フランソワーズは寝室のカーテンの隙間からちらり、と空を眺めため息をついた。
「 秋の長雨 だったかしら? う〜〜〜 降り続くのは梅雨の頃だけで十分よねえ 」
はあ 〜〜〜〜 ・・ 特大のため息・再び。
「 ってことは今日もウチは 大賑わい ってことね 」
やれやれ・・・ 双子の母はきゅっとエプロンのヒモを締めると キッチンへ降りていった。
どたどたどた〜
ばたばたばた〜 どどどど −−− !
だだだだ −−−− ! ばった〜〜〜ん !!
「 きゃっは〜〜
どいて〜 どいて〜〜 すばる〜
」
「 ? んわわ?
」
「 どいてってばあ〜〜 」
ごん。
どったん。 ごろん。 ばた〜ん !
「 いって〜〜 〜〜〜 」
「 アンタ じゃま! 」
「 ・・・ すぴかが いきなりとんできたんじゃないかあ〜〜 」
「 どいて〜〜っていったもん! 」
「 ぶつかってきたの、すぴかじゃん 」
「 どかないの すばるじゃん! だっせ〜〜〜 」
・・・ うっく うっく ・・・ わあ〜〜
「 あ な〜きむし〜〜 泣き虫すばる〜〜〜 」
「
す すぴか けったあ〜 いった〜〜〜い〜〜〜 」
「
けってなんかい〜ません ぶつかっただけで〜す〜〜 」
「 けったあ〜 いたあ〜いぃ〜 いった〜〜い 」
「 どいて っていいましたっ 」
「 ちょっと!
いい加減にしなさい 二人とも! 」
ついに 母親の カミナリが落ちた。
「「 だって〜〜〜 すばる ・ すぴか が〜〜〜 」」
混声合唱団が抗議の声をあげる。
「 だって じゃありません。 すぴかさん、階段で滑り台 しないっ。
すばる君、階段で本 読まない ぷられーる しない!
階段は
子供部屋でもリビングでも! 公園でもありませ んっ 」
「「 ・・・ ふぁ〜い 」」
「 わかったら! ちゃんと片づけて本 読むとかTV見てもいいわ、ともかく
騒がないで静かにしてなさい。 」
「 だあってぇ〜 つまんないんだも〜ん 〜〜 」
「 ともかく! 階段で騒がないでちょうだい。 宿題はやったの? 」
「 これからするも〜ん 」
「 いま やる 」
「 それなら お部屋に行きなさい。 オヤツには呼ぶから。 」
「「 ふぁ〜〜い 」 」
二人は 不承不承子供部屋に上っていった。
もう〜〜〜〜 ・・・! この前みたいなことになったらどうするのよ!
フランソワーズは ぶつぶつ言いつつ、二階への階段をチェックした。
< この前みたいなこと > とは ― 先日の深夜の出来事なのだが。
「 ・・・ ごちそうさま。 あ〜〜〜 ・・・うまかったぁ〜〜 」
例によって遅く帰宅したジョーは これまた遅い晩御飯を済ませ満足のため息と吐いた。
「 うふふ・・・ よかったわ〜 」
「 ウン ミート・ボールの筑前煮・・・最高! これ、きみの傑作メニュウだよ〜 」
「 そう? いろんなお野菜が摂れて身体にもいいかな〜って思って。 」
「 それに ウマい♪ ああ〜〜〜 味噌汁も上手になったね〜〜〜
」
「 メルシ〜〜〜 うふふ・・・ 」
「 うん。 あ 片づけ、手伝うよ 」
「 あら いいわよ。 ゆっくりお風呂 どうぞ? 」
「 え・・・ そう? ゴメン ・・・ あは 待ってて? 」
「 ・・・ うふふ 」
ちゅ。 耳元に熱いキスを残してジョーはバス・ルームに消えた。
「 ふふふ ・・・ 」
フランソワーズはさっさとキッチンの後片付けをし、寝支度をしに寝室へ行こうとしていた。
うわあ〜〜〜?? どん。 ・・・ ボッ ! あっ!
「 な なんなの〜〜〜 ??? 」
異様な雰囲気に 彼女はキッチンを飛び出した。
「 え??? か 火事?? 」
玄関から二階に通じる階段には キナ臭い煙が立ち込めていた。
「 うそっ?? え どうしてスプリンクラーが作動しないの??
それより! すぴかっ すばるっ 」
フランソワーズは まだ煙の漂う階段に突進した。
子供たちっ! 二階に燃え広がる前に助けなくちゃっ !
二段おきに階段を駆け上り ―
「 うわ??? え??? 」
「 おわ?? フラン〜〜〜 」
階段の真ん中には 彼女の夫が座り込んでいた ― 半裸で 焼け焦げを纏って・・・
「 ジョー??? ど どうしたの?? あ 火事なの 火事〜〜 !!! 」
「 あ それ ぼくだよ。 火はもう消えたしスプリンクラーも止めた 」
「 えええ??? ジョーが??? 」
「 そ。 ああ 水浸しにならなくてよかったよ〜〜〜
ちょっと もう一回シャワー浴びてくる・・ すまん、新しいパジャマ頼む・・・ 」
「 わかったわ。 カゴに置いておくわね。 」
「 たのむ〜〜 あ〜あ・・・ あのパジャマ お気に入りだったのになあ・・・ 」
ジョーはぶつくさ言いつつバス・ルームに消えた。
「 着替え ね ?・・・ あ。 もしかして ・・・ 加速装置? 」
「 ぴんぽ〜〜ん 」 バスルームのドアの向こうから返事が聞こえた。
「 まあ ・・・ どうして家の中で それも階段で加速したのかしら???
・・・ あら? 」
― こつん。 彼女のスリッパがなにかを蹴飛ばした。
「 なに かしら?? 何か 固い小さなモノだったけど ・・・ あ あれ! 」
階段の下まで転げ落ちたソレを拾いあげれば
「 あ〜〜〜〜 すばるのプラレールの部品 〜〜〜 」
すばるは最近 < 階段読書 > が お気に入りで 本を何冊も ― ほぼ鉄道関係本 ―
を抱えて二階への途中に座り込んで読みふけっているのだ。
「 ! わかった! 本と一緒におもちゃももっていったのね! 」
母は うんうん! と頷いた。
そういえば 昼間すぴかとなにやらもめていたのも階段だった。
すぴかは・・・ といえば こちらも最近は < 階段ダイブ > がお気に入りで、
古い段ボールに乗って 階段を滑り下りる遊びを開発していた。
「 危ないからだめよ。 落ちたらどうするの? 」
「 アタシ おちないもん。 」
「 ・・・ 滑って壁に ごん! したら危ないでしょ 」
「 アタシ ごん しないもん。 」
運動神経抜群の娘は いっこうに納得しない。
「 ・・・ 階段が壊れます。 」
「 ウチのかいだんは ゾウさんがとおってもこわれないっておじいちゃまがいってた。 」
「 ・・・ ( そうなんだけど。 戦車が通ったって壊れないけど! )
ウチの階段は 滑り台じゃありません。 わかりましたか。 」
「 ふぇ〜〜い ・・・ 」
不承不承にすぴかは頷いたが ・・・ ぷっとほっぺが膨らんだ。
「 そうよ! あの時にすばるってばおもちゃを置きっぱなしにしてたのね! 」
それでもって 暗い中、ジョーが踏んづけて危うく転倒しそうになり ・・・
咄嗟に カチッ! → ボッ 服が燃え → スプリンクラー稼働〜
→ 再び カチッ! 稼働を止める という展開なのだろう。
「 ・・・ 家の中で加速装置! するジョーもジョーだけど ・・・
階段から落っこちても 怪我なんかしないでしょ・・・ あ でも大音響かしら。
要するに。 階段で遊んでいたチビ達がいけないのよ! 」
ダンダン ドン! 母はプリプリしつつ寝室に引き上げた。
「 ・・・ お〜〜い フラン〜〜 着替え ・・・ ないんだけど・・・?
・・・ 寝ちゃったのかなあ ・・・ へ〜〜〜っくしょんっ ! 」
十数分後ジョーがバスタオルを腰に、しょぼしょぼ階段を上っていった。
― オカンムリの細君は あのまま寝入ってしまった ・・・ らしい。
「 ね〜 おか〜さん。 な〜んかクサイよ〜
」
< おはよう > も言わずにその翌朝、 すばる がすぐに言った。
「 おか〜〜さ〜〜ん!
階段とこ ヘンなにおいがする〜
」
「
しな〜い 」
とっくに起きて、朝ご飯中のすぴかはそっけなく否定した。彼女は全く気にしていない。
「
すばる君。 お早う は 」
「 あ〜 おはよ〜〜〜 おと〜さん おか〜さん。 ね〜 ヘンなにおい〜〜 」
「 すばる君。 昨日、階段におもちゃが起きっぱなし でした。 お父さんがふんずけて
あぶなく階段から落ちるとこでした。 」
― ことん。 部品をテーブルに置いた。
「 ・・・? あ! 僕のプラレールの〜 壊しちゃったあ〜 」
すばるが 食卓に駆け寄ってきた。
「 これ ・・・ だい好きなんだ・・・一番大事にしてた・・・ 」
「
ごめんな〜 すばる 」
ジョーが慌てて謝った。
「
いいえ いいのよ、ジョー。 階段になんか置いておく方が悪いんです!
」
「 ・・・ うっく ・・・ こわれちゃった … 」
ひしゃげた部品を手に、すばるはもう涙目満杯だ。
「 おはよう・・・ うん? どうした・・・ 」
博士が早朝散歩から戻り リビングに顔をだした。
「 あら お帰りなさい。 」
「 ほい 朝刊 ・・・ すばるや・・・どうしたね? 」
大きな手が くしゃり、とクセッ毛を撫でる。
「 あ おじいちゃま〜〜 これ ・・・ こわれちゃった ・・・
僕 ・・・ かいだんにおいてて・・・ お父さんがふんじゃった 」
「 すばる君。 お父さんのせいじゃないのよ? 」
「 ・・・う うん ・・・ 」
どれ? と 博士は壊れた部品を受け取った。
「 ? ああ これか・・・
よしよし ワシが修理してやろう
」
「 ほ ほんと? おじいちゃま〜
」
「 ああ 本当だとも。 ただし お父さんに ごめんなさい、を言いなさい。
それで もう置きっぱなしは ダメだぞ 。 」
「
うん! ・・・ おと〜さん ごめんなさい。 」
「 いいよ いいよ ・・・ お父さんも不注意だったからね ・・・
けど 階段に置きっぱなし、はもうやめような。 」
「 ウン。 ごめんなさい。 」
「 ・・・・ ふふ〜〜ん ・・・ 朝食が終わったらすぐ修理するぞ。
なに すぐに直るさ。 楽しみにしておいで。 」
「 ホント?? 僕・・・ みててもいい? 」
「 ああ いいぞ。 それじゃ ワシの書斎へおいで。 よ〜〜く観察しなさい。 」
「 うん!! わあ〜〜い♪ 」
今泣いたカラスは もうにこにこ顔である。
「 ありがとうございます〜〜 」
「 なあに ・・・ ワシもこういう修理は大歓迎じゃからな 」
博士は悪戯っぽく笑い ばち!っとウィンクをした。
「 よかったわ〜〜 さあ 皆〜〜 朝ご飯にしましょ。 」
「 わい〜〜 おか〜さん、僕 トーストにね〜 ジャムとはちみつ、両方ぬっていい? 」
すばるは ひょんひょん食卓に駆けてゆく。
「
おと〜さん スリッパ こげてるよ 」
すぴかが ぽつり、と発言した。
「 ・・・ え?! 」
「 すりっぱ。 両方ともさきっちょがコゲ コゲ〜〜 」
ジョーは慌てて足元に視線を落とした。
! あ っちゃ〜〜〜〜
昨夜 服、燃えた時に ・・・ スリッパも・・・
全然気が付かなかった〜〜〜 マズい〜〜〜
「
あ こ これは〜 た
焚き火で ・・・うん そう焚き火に近づきすぎて 」
「 たきび なんてしてないじゃん 」
じろり。 大きな碧い瞳がジョーをみつめる。
「 え〜〜と その〜〜 」
「 ・・・
これ アタシたちが
おと〜さんのお誕生日に あげたの だよね? 」
「 あ ・・・ そ そ そうだった・・・ね? 」
「 ・・・ アタシが ししゅう したスリッパ ・・・ こげちゃった・・・ 」
じわ〜〜 ・・・ 今度は
娘が涙目満杯だ。
「 す すぴか〜〜〜 ごめん! お父さんが悪かった〜〜 だから 泣くな 」
掌中の玉 である娘、 転んでもケンカしても滅多に泣かない娘の涙を見て
父親の方がパニックになっている。
「 ジョー。 」
「 ふ フラン〜〜〜〜 どうしよう・・・ 」
すっと妻が彼の前に出てきてくれた。 彼女は目顔で頷くと、下を向いている娘の側に
屈みこんだ。
「 すぴか? お父さんね〜 わざとやったわけじゃないのよ。
お父さんってば すぴかがくれたスリッパがねえ 大事で大事で大事すぎて・・
もういっつでも履いててね・・・お掃除の後、ゴミ燃やしてて焦がしちゃったのですって
」
「 ・・・ ず〜っとはいてて? 」
「 そうなの。 ね? お母さんと一緒に直してあげない? 」
「 すぴか ・・・ できる かな ・・・ 」
「 刺繍のところ、 すぴかさんがやってくれる? 」
「 うん! すぴか ししゅう、とくいだもん! 」
「 じゃあ お願いね。 今日 材料を買ってきましょ? ね? 」
「 うん!! 」
すぴかは いつもの元気の塊に復活し、 にっか〜〜っと笑った。
あ〜〜〜 よかった〜〜〜〜
すぴか〜〜 お前の笑顔はお父さんの宝モノなんだ〜
ジョーは心底ほっとして 今度は彼の方がこそっと涙ぐんでしまった。
「 よ〜〜し それじゃ 朝ご飯が済んだらショッピング・モールに出発だ! 」
「 わ〜〜〜い♪ お買い物だあ〜〜〜 ねえねえ アタシさ、新しいスニーカー、ほしい 」
「 僕〜〜〜 ぷられ〜るのね 最新ポイント切り替えそうち! 」
「 そうだな〜〜? 」
「 お二人さん? いつものお買い物ですよ? 食料品やら洗剤やら ・・・ そうそう
トイレット・ペーパーもお願いします、 お父さん。 」
大甘な父が甘〜〜い発言の口を開く前に お母さんがぴしっ! と言い切った。
「 お手伝いだけど 一緒に行きますか? 」
「「 いく!! 」」
双子は即答で声を揃えた。
ウチの中で うだうだしているよりもず〜〜〜〜っと楽しい。
たとえ ショッピング・カート押しや荷物持ちであっても・・・!
「 まあ〜〜 嬉しいわ〜 それじゃお願いね、 すぴか すばる。 そして ジョー。 」
「「 はあ〜〜〜い♪ 」 」
「 ・・・ ハイ 」
「 いつものお買いモノを お願いしますね。 」
碧い瞳にしっかと見つめられジョーはこそっと首を縮めた。
< おでかけ > が控えているので、 双子たちは朝ご飯を残さずさっさと食べた。
「 ごちそ〜さまでした アタシ 用意してくる〜〜 」
「 ごちそ〜さま 僕も! 」
「 すばる君! キュウリが残ってますよ。 」
「 ・・・・! むぐ! 」
いつもはぐずぐず言う野菜嫌い坊主も サラダの残りをいっぺんに口に押し込んだ。
「 あら〜〜 えらいわ
」
「 ・・・ む〜〜〜 むぐぅ〜〜〜 」
なにやら怪音を発しつつ、 すばるは姉の後を追いかけていった。
あは ・・・ すばるには新しいプラレールの部品 買ってやるつもりだったんだ
すぴかには夏用のキャップとか・・・
う〜〜〜 先手を打たれちゃったな〜〜 さすが フラン・・・
ジョーはちょっとがっかりしたけれど、思い直した。
「 ウン。 ウチは質実剛健がモットーだからな。 なんでもほいほい買い与える
甘い有害な親とは違うんだ、うん。 」
「 おと〜〜〜さ〜〜〜ん !! まだあ〜〜〜 ??? 」
「 僕たち ちゃんとながぐつはいて れいんこーときたよぉ〜〜〜 」
玄関で 子供たちが大声で呼んでいる。
「 あは ・・・ 待てない、のはチビっこの通性だよな・・・
おう 今ゆくよ 〜〜 フラン〜〜 それじゃ行ってくるな 」
「 よろしくね〜〜〜 」
「 ウン♪ 」
ちゅ。 小さなキスをしてジョーは玄関に向かった。
ガラガラ ガラ〜〜〜
「 えっほ えっほ〜〜 すばる〜〜 しっかりおしてっ ! 」
「 う うん ・・・ えっほ〜〜 」
小学生のきょうだいとおぼしき子供たちが 買い物カートを押している。
その脇で 青年がメモを眺めしきりにカートの中身を確かめている。
「 えっと ・・・ 全部買えたかなあ〜〜 」
「 おと〜さん これでおしまい?? 」
「 えっほ〜〜〜 えっほ ・・・ 」
「 うん おっけ〜だな。 二人ともご苦労様〜〜 さあレジに行くぞ お父さんも押す
からね〜〜 」
「「 わ〜〜い 」」
親子なんだ?? うそっ?? 彼氏・・・ パパ??
なんとな〜くチラチラ見ていた客達から驚きの声が聞こえた・・・かもしれない。
バタンっ。
「 さあ〜〜 これで全部積みこんだぞ〜〜 」
ジョーは勢いよく車のドアを閉じた。
「 ?? おと〜さん 帰るんでしょ? 」
「 僕〜〜 たまご、もってゆくよ? 」
子供たちは あれ? と 父親を見上げている。
「 うん ・・・ 帰る前にさ ちょっと休憩して行こうよ? こっちおいで。 」
「「 うん! 」」
― で 数分後。
「 わ〜〜〜 アタシ〜〜〜 か〜にばる〜〜 」
「 僕 ・・・ ちょこみんと! 」
「 あは・・・ ぼくは っと・・? 」
フード・コートの隅っこに三人は ならんで座りアイスを舐めていた。
「 たまにはいいだろ? 二人ともショッピング・カートを押してくれてありがとう! 」
「 えへへ 〜〜 ん〜〜〜 おいし〜〜〜 」
「 むぐ〜〜〜 おいし・・・ 」
島村さんちでは滅多にフード・コートなどを利用しないので 子供たちは大喜び。
「 ・・・ あの さ。 昨夜 ごめんな? 」
「 なに?? おと〜さん 」
「 むぐ? 」
すぴかもすばるもアイスを舐めつつ 無邪気にジョーを見上げている。
「 え ・・・なにって・・・ そのう〜〜 スリッパ 焦がしちゃったし
プラレール、壊しちゃったり しただろ お父さん、さ。 」
「 あ〜〜 いいよ〜 お母さんと直すから。 」
「 僕も! おじいちゃまが修理してくれるもん 」
子供達は あっけらか〜んとしてに〜んまりアイスを舐めている。
「 あは ・・・ ありがとうな〜〜 すぴか すばる 」
きゅ。 ジョーはアイスと一緒に子供たちを抱き寄せた。
「 むきゅ? わあい〜〜♪ 」
「 えへへ〜〜 きゅう〜
」
「 さ〜 食べたら帰ろうな〜 いっぱいご飯の材料、買ったし。
今晩のご飯はな〜にっかな〜〜 」
「 うん! すぴかの好きなぷち・トマトも〜 タマネギも買ったね〜〜 」
「 えへ ・・・ 僕 ジャガイモ むく〜〜〜 」
「「「 今日〜〜の ごはんは な〜にっかな〜〜〜 ♪ 」」
外は しとしと秋の長雨。 ― けど 三人の心はほ〜〜っこり・ほかほか
ジョーの車は 食料品と日用品と。元気満杯なチビ達を積んで坂の上の我が家へと
ばりばり登っていった。
― そしてまた! 今日も 雨 なのだ。
ドタドタドタ 〜〜〜〜 バタバタバタバタ〜〜〜〜
きゃわ〜〜〜い♪ まてぇ〜〜〜〜 またないも〜〜ん
「 もう! また大騒ぎして ! さっきも言ったでしょう? 」
フランソワーズの眉毛が ぴりり・・・!と上がった。
「 ウチの中で走らないでって何回言えば・・・ ! 」
− がたんっ! ついに母はイスを鳴らして立ち上がろうとした。
「 まあまあ 座れよ。 う〜ん ・・・ ずっと雨続きだからなあ〜〜 無理ないよ 」
「 でもね! ウチは運動場じゃあないのよ? 」
「 そうだなあ ・・・ う〜ん?? あ そうだ そうだ。 」
読み止しの雑誌を置くと ジョーはのんびり立ち上がった。
「 なあに? 」
「 うん・・・ チビ達の < 運動場 > を思い付いたんだ。
ちょっとさ ガレージの掃除、してくる。 あそこなら少し走れるだろ? 」
「 あ〜〜 そうね! 暴れついでにお掃除、手伝わせて? 」
「 あはは〜〜 そりゃいいや。 お〜〜い すぴか〜〜 すばる〜〜 」
「 それじゃ どうぞたっぷり汚れてきてくださいな。 」
「 あれ いいのかい? 洗濯モノ、増えるよ〜〜 」
「 ウチの中でどたばたやられるよりず〜〜っとマシです。 洗濯機にがんばって
もらうから。 」
「 はいはい・・・ あ 来たな〜〜 」
どたどたどた ・・・ ばたばたばた ・・・ いつもより数倍喧しい足音がやってきた。
「 なに〜〜〜 おとうさん?? 」
「 おと〜さ〜〜ん ごよう??? 」
チビたちが わ・・・っと顔をだした。
「 おう 二人とも。 < 仕事 > だぞ〜〜
」
「 しごと?? 」
「 僕たち のしごと? 」
「 そうさ。 お父さんの手伝い、してくれ。 それでもって走り回っていいぞ。 」
「 え〜〜 ホント?? 」
「 なに なに〜〜 」
「 ホントさ。 大騒ぎしてもいいぞ〜〜 さあ ガレージへ GO!
車とガレージの掃除さ。 」
「 おにごっこ していい? 」
「 かくれんぼ していい? 」
「 いいさあ〜 その前に掃除の手伝いをたのむよ。 」
「「 は〜〜い〜〜〜 」」
「 よぉし。 あ そうだ、すばる。お前、親友君を呼んだらどうだい? 」
「 え いいの、おと〜〜さ〜〜ん ? 」
「 ああ 勿論。 お母さんに電話してもらおうよ。 」
「 わあ〜〜〜い♪ おかあさ〜〜ん 」
程無くして 同じく退屈していたわたなべ君は大喜びでお父さんに送ってもらってきた。
「 コンニチワ〜〜〜 」
「 あ わたなべクン〜〜〜 」
「 やあ いらっしゃい〜〜 待ってたよ〜 」
「 コンニチワ すばる君のお父さん。 お母さん。 」
わたなべ君はぺこり・・とお辞儀をした。
「 あの これ ・・・ ウチのお母さんとお父さんから 」
よいしょ・・・っと わたなべ君は背負ってきたリュックを下ろした。
中からは 焼きたてのクッキーと挽き立てのコーヒーの袋が出てきた。
「 僕んちのお父さんさ、コーヒーの勉強してるんだ〜 お母さんはね お菓子の勉強。
いつか お店、やりたいんだって。 」
「 まあ そうなの、素敵ねえ〜〜 わあ〜 ありがとう〜〜 わたなべ君 」
「 お。 いい匂いだなあ〜〜
」
「 皆でオヤツにいただきましょうね。 ああ おいしそうねえ〜〜〜 楽しみ♪ 」
「 さあ 皆でガレージにゆこうよ ナイショだけど?
騒いでも 走っても・・・ 汚れても オッケ〜 だぞ。 」
「「「 わあ〜〜〜い 〜〜〜 」」
ドタドタドタ 〜〜〜 バタバタバタ ・・・
ジョーと子供たちは一塊になって 雨の中、ガレージへと駆けて行った。
「 ふう ・・・ やれやれ・・・ また洗濯モノの山ねえ ・・・
ま いっか・・・ 皆が楽しくすごしてくれれば ・・・ ね。 」
フランソワーズはちょっとため息を吐いたが すぐに笑顔になった。
「 さあて ・・・と。 わたしは束の間の静寂を楽しみましょうかしら?
そうそ、 グレートが送ってくれた紅茶でお茶タイム〜〜〜
博士もお呼びして ・・・ それから すぴかのスリッパ直しを仕上げなくちゃね 」
なんだかとても楽しい気持ちがゆらゆら・・・浮かびあがってきた。
「 ・・・ うふふ ・・・ 雨の日もそんなに悪くないってことかしら
そうよ〜〜 たまには秘蔵のカップを使いましょうか 」
カチ カチ チリン ― 高価なティー・カップが澄ました顔で音を鳴らした。
雨降りの日が続くと ウチの中はもう・・・大賑わいなのだ。
幼児の頃は 外に出てしまってげでげで・・・程度ですんだが 小学生になると
雨の日はウチのなかで
大騒ぎが始まる。
なにせ元気の塊みたいなのが二人、いるのだから。
「 へ〜〜んだ! すばるってば ドンくさい〜〜〜 」
「 ドンくさくないもん! ぼ 僕ぅ〜〜 」
「 ドンくさ〜〜〜 鬼ごっこものろまさんだし〜 木登りもヘタっぴ〜〜
ドッジボールもすぐ外野〜〜 」
「 そ そんなこと ないもん〜 」
「 へえ? そんじゃ運動会のときょうそう、何番だった?
アタシはあ〜〜 一年生の時からずう〜〜〜っと いっちばん♪ 」
「 ぼ 僕ぅ・・・ 」
「 ほ〜〜ら ドンくさ〜〜〜 すばるってばドンくさ〜〜〜 」
「 ・・・ うっく ・・・ 僕 ・・・ 僕ぅ ・・・ 」
「 あ〜〜 泣いた〜〜 泣き虫すばる〜〜
」
「 な な なきむしじゃないもんっ ! 」
「 泣いてるじゃ〜〜ん ? 泣き虫〜〜 な〜きむし〜〜〜 」
「 ちがう もんっ ! うっく うっく 〜〜〜 」
「 すと〜〜〜っぷ !! 」
毎度お馴染みな姉弟喧嘩に ついにジョーは介入した。
「 いい加減にしなさい すぴか すばる! 」
「「 だあってぇ〜〜〜〜 すばる ・ すぴか があ〜〜〜 」」
姉弟は声を揃えて抗議する。
「 ったく〜〜 こういう時だけ気が合うんだな 二人とも。 」
「 きがあう ってなに? 」
「 ・・・ 仲がいいってこと。 」
「 アタシ〜〜 泣き虫すばる となんか仲よしじゃないも〜ん 」
「 ぼ 僕だって! いじわるすぴか〜〜 」
「 なによっ! 」
「 こら〜〜〜 もうやめろってば。 お母さんが顰めっ面してるぞ。 」
「 だあってぇ〜〜〜 」
「 外で遊べないからかもしれないけど。 ケンカはやめろ。
絡むすぴか も悪いけど すぐにぴ〜ぴ〜泣くすばるも だらしないぞ! 」
「「 だあってぇ〜〜 すばる ・ すぴか があ〜〜〜 」」
「 ! もう〜〜 喧嘩両成敗だ! 」
「 なにそれ〜
」
「 どっちも悪いってことだ。 今日はオヤツ ナシ! 」
「
え〜〜〜 そんなのヤダぁ〜〜〜
」
「 オヤツ〜〜〜 」
「 う〜〜 ・・・ それじゃ お母さんの手伝いしなさい。 風呂場の掃除だ!
」
「 おと〜さんも! おと〜さんもいっしょにやろ? 」
「 わ〜〜〜 おと〜さんもいっしょだあ〜〜〜い
」
「 え?? そんなコト言ってないぞ? 」
「 いっしょだも〜〜ん♪ ね〜〜 すばる? 」
「 うん すぴか。 おと〜さんといっしょにおふろばのおそうじ〜〜〜 」
「「 わい♪ 」」
「 あ ・・・ あ〜〜 ちょ ちょっと 〜〜 」
すぴかとすばるは ずんずんお父さんの手をお風呂場に引っ張って行った。
「 ・・・ やれやれ ・・・ また三人ともびしょ濡れになるのね・・・
ま いっか・・・ お風呂場はピカピカになるし ね ?
雨 あめ 降れ降れ ・・・ かしら ・・・ 」
フランソワーズはちょいと肩を竦め、ため息を吐いた。
やさしい雨が 岬の家に落ちてくる ・・・
Last updated : 09,22,2015.
back / index / next
********* 途中ですが
チビっこのパワーって 底なしですよねえ〜
サイボーグ戦士だってタジタジかも・・・
そして彼らはどんどん成長して行きます。