お転婆・すぴか と 泣き虫・すばる。
そんな双子の子供達と ジョ−もフランソワ−ズも
一緒になって泣いたり笑ったり 怒ったりして過してきた。
いま、彼らは両親の元から飛び立つ準備を始めている。
温かい巣は懐かしいけれど、そこはやはり親達の場所であり、
これからは<自分の居場所>をみつけに 大空へ 大海原へ 飛び立つのだ。
・・・ そう、元気と勇気とを背負ってちょびっと武者震いしながら。
息子とほぼ対等にやりあい、娘の仕草に目を細め・・・
ジョ−は時々 自分自身もこんな風に育ってきたような気分になることがある。
そうなんだよな。 ぼくはフランソワ−ズから、そしてコイツたちから
いろいろなものを貰ってたんだ・・・ 形がなくても、目に見えなくても。
プレゼントをもらっていたのは ・・・ ぼくだったんだ。
ジョ−は 子供たちと一緒に少年期をそして青年期を<やりなおし>た。
・・・それは まったく素晴らしく魅惑に満ちた復習だった。
「 今日のご馳走はなにかしらね、お父さん。 」
「 え? だってすぴか、お前がリクエストしてたろ? シチュ−とクロケットって。 」
「 うん、でもお母さんさ、う〜〜んと張り切っていろいろ作ると思うな。 」
「 あはは・・・そうだね。 自分の誕生日なのにな。 」
「 ・・・なんか ・・・ 申し訳ないかも。 」
「 ふふふ・・・ すぴかでもそんなコト言うのか?
大丈夫。 みんなが揃ってお母さんの御飯を食べるってのも<プレゼント>だよ。 」
「 そっか。 そうだね! ・・・ねえ、シャンパン、開けてよ、お父さん。 」
「 こら、未成年だろ? お前ら。 」
「 ウチは<日本>じゃないからいいのよ。 島村さんち・ル−ル! 」
遠目には ちょっと恋人同士にも見える、ジョ−とすぴかは
声を上げて笑い、腕を組んでショッピングを楽しんだ。
ねえ。 お母さんには 何をあげるの、お父さん。
え・・・ ナイショ!
あ〜 すみませんね、恋人達にヤボな質問でした〜
母の誕生日を祝う宴も終わり、家族はあったかい思いを山ほどかかえ
それぞれの部屋に引き取っていた。
母となにやら話し込んでいたすぴかは、今度は弟の部屋に座りこんでいる。
「 ・・・ それで。 なに、進路どうするの。 」
「 うん ・・・ 」
姉に促され、弟はぽつぽつと話はじめた。
姉貴。
覚えてる? 父さん達にはミッションがあるんだって教えてくれたの。
チビの頃、母さんがメンテナンスでいないくて ・・・ オレが淋しくて泣いてると、
姉貴はよく そういったよ。
大事な仕事なんだから、淋しいくらいガマンしなくちゃダメよってさ。
・・・ああ、あんた泣き虫だったものね。
何回も何回も話してあげたっけ。
<ミッション>っていうと 不思議にあんたの涙は 止まったわ。
うん。 それで、あの。 おれ、さ ・・・
なによ。
・・・ おれ。 医者になりたい。
おれの・・・おれができる ミッションは 命を守る手助けだと思う。
そうか・・・。
すぴかがそう決めたのなら それでいいのよ。
応援するわ。 ・・・ がんばんなよ。
うん。 ありがと、姉貴。
僕らは 幸せすぎるよな。
・・・ そうね。
あんなにいいお父さんとお母さんは ・・・ どこにもいないわ。
僕らの父さんと母さんは 世界一だ。
お父さんとお母さんの子供に生まれてよかった!
・・・ うん。
ふふふ・・・ あんたと姉弟ってのはちょっとな〜って思うけどさ。
ふん! それはこっちのセリフだぜ。
つん・・・とおでこを突っついて。
ぽすん、とシリモチをついてみせて。
島村さんちの双子は けらけらと笑いあっていた。
・・・そう、 まだいまの背丈の半分にもならない頃と同じように・・・・
「 あら・・・ あの子たち、まだ起きてるんだわ。 」
寝室のカ−テンを直しに立ったフランソワ−ズは ふと呟いた。
こことは鍵の手になったすばるの部屋から まだ灯りが漏れている。
「 ・・・ また二人で飲んでいるんじゃないでしょうね・・・! 」
「 まさか。 気になるなら ・・・ <見て>みたら? 」
「 ・・・ ジョ− ? 」
真面目な顔で振り返ったフランソワ−ズにジョ−は素直に謝った。
・・・ ごめん。
そうだよね・・・
そんなコトしなくても、きみにはちゃんとあの子達のことわかるものね。
碧い瞳が 優しい光をたたえ、 亜麻色の髪がふわりと揺れた。
ジョ−の大切な奥さんは そっと彼の側に座った。
すばるは・・・なにか考えているみたいね。
うん・・・ ま、アイツの気持ちがしっかり固まったら話てくれるさ。
そうね。
子供たち。
自分のお腹の中でちいさな手足を突っ張っていたあの感覚を
フランソワ−ズはまだちゃんと覚えてる。
二つも続けざまに聞かせてもらった産声は 天使の歌声だった。
でも。
なによりも嬉しかったのは・・・・
生まれたてのわが子たちを しっかりとその腕に抱いたときの ジョ−の笑顔だった。
泣いているみたいな、笑っているみたいな ・・・ 情けない表情だったけど、
それは幸せに満ち溢れたほやほやの父親の顔だった。
・・・ ジョ−のあの笑顔。 あれは・・・わたしの宝物だわ。
わたし達は 時の流れからはじき出されてしまった存在だけれど。
子供たちが わたし達のかけがえのないあの愛の存在たちが
ちゃんと 受け継いでくれる・・・ 生命を そして 愛の心を。
・・・後、何回こうやって家族全員でなにかのお祝いをできるだろう。
子供たちは ・・・ 行ってしまう。
自分たちを追い越して 時の彼方に走り去ってゆく・・・
それでも いい。 ・・・ それで、いい。
ぼくは わたしは。
いつだって あなたたちのことを忘れない。
あなたたちからもらった沢山の 楽しい日々、微笑みの時間 ・・・そして 愛のこころ。
ずっとずっと忘れない。
だから、どうぞ。
思い通りに 生きて・・・。 しあわせに 生きて欲しい。
ジョ−とフランソワ−ズは肩を寄せ合い、
お互いの温か味の心地よさを存分に味わっていた。
「 ・・・ねえ? 」
「 なあに。 」
「 あの・・・ ひとつ、どうしても聞きたいことがあるんだ。 」
「 まあ・・・なあに。 」
ジョ−は 相変わらず目を逸らせてちょっとそわそわする。
そんな彼のクセが フランソワ−ズにはたまらなく愛しい。
「 うん ・・・ あのう・・・・ きみは、その・・・どうしてぼくのこと?
やっぱり お兄さんと似ていたから? 」
「 ・・・やだ、今頃、なによ・・・
ふふふ・・・・ ひみつよ、ひ・み・つ。 どうしてだったかな〜
さあてねえ・・・・? もう忘れちゃったわ。 」
「 ・・・意地悪しないで〜〜 教えてくれよ ・・・ 」
「 もう、忘れちゃったって言ったでしょ。
とんだおばあちゃんで ごめんなさいね。 」
「 フランソワ−ズぅ〜〜〜〜 」
1月24日の夜は おだやかに更けていった。
*** 何年か後 ***
*** ある電話の会話 ***
− 島村・・・? おい、すばるか?
− 渡辺! おい、お前大丈夫か?! ニュ−ス見てびっくりしたぜ。
あの国がそんなに危険地帯とは思わなかったよ。
− ああ 俺もだよ ・・・ あれだけのテロに巻き込まれたのに ・・・奇跡的だよ。
− 無事でよかったな〜〜
− ありがとう。 あのな! 俺・・・ おまえの 親父さんとお袋さんに会ったよ!
俺・・・ あの現場でお前の親父さんに助けてもらったんだ。
だから・・・ 俺はなんとか生還できたんだ。
− ・・・渡辺。 俺の両親は・・・
− ああ、ああ! お前がレジデントの頃に亡くなったって言ってたよな。
・・・・ でも、あれはぜったいお前の両親だよ。
昔の・・・ お前と一緒に車に乗っけてもらった頃のおじさんと
すごく美味しいケ−キを焼いてくれたおばさん、あの頃のまんまだった・・・
− ・・・ お前さ。 きっと・・・幻覚でも見たんだよ。
さもなきゃ・・・あの世から ウチの親たちがエ−ルを送ったんだ。
− ・・・ そうかもしれない。 でも! とにかく! 今度線香をあげに行くから!
− 待ってるから。 早く怪我治せ。
− うん・・・ ありがとう ・・・!
*** また 別の会話 ***
− はい、シマムラ。 ・・・・ アロー??? もしも〜し??
− ・・・ 姉さん おれ。
− ・・・すばる??? なに。 どうしたの ・・・ なにかあったの?
- ウン。 あの、な。
009と003は ・・・ ミッションを遂行していたそうだよ。
− ・・・・ そう・・・!
− なあ。 俺らの両親は ・・・ 最高だよね。
− うん。 あんな素敵なお父さんとお母さんはどこにもいないわ。
***** Fin. *****
Last updated: 01,31,2006. back / index
*** ひと言 ***
これはまったく 描き手と書き手の妄想の暴走の結果でございます。
こんな話もありかな〜〜と気楽に読み流してくださいませ。
また、弓道に関しましては 描き手・書き手ともに全くの素人ですので
どうぞ寛大にお目をお瞑りくださいますよう、お願いいたします〜〜〜