Happy Birthday !   Francoise
『 プレゼント   - (1) - 』
Collaboration story
イラスト・写真 :  めぼうき 【 Eve Green 】
    文    :  ばちるど 【 うたかたの記 
          ***** はじめに *****
このお話は【 Eve Green 】様宅の <島村さんち>の設定を
拝借しています。 ジョ−とフランソワ−ズはめでたく結婚し
二人の間には双子の姉弟、 すぴか と すばる が生まれました。
さて・・・ ( 平ゼロ・べ-スでお読みください。 )
 ー やれやれ・・・。 やっと片付いたわ。
フランソワ−ズはほっと溜息をつき、キッチンを見回した。
最近、皆それぞれに忙しく家族そろって食卓を囲むことなど、年に数えるほどに
なってしまっていた。
全員、といっても4人しかいないのだが、それでも食べ盛りの子供達が
揃うと思えばあれも、これも・・・・とかなり賑やかな夕食になった。

 - ふふふ・・・。 みんな結局<好きなモノ>はちっちゃい頃と同じね。

布巾を干しながら、フランソワ−ズはひとり、微笑んだ。
お母さん お母さんと連呼して自分のあとを追廻し
一日中さえずりまわっていた子供たち。
仲良く遊んでいると安心しているとたちまち泣き声があがり
・・・たいていは弟のすばるの声だったけれど・・・
その涙が乾かないうちに姉弟の笑い声が聞こえてくる。
そんな賑やかな − はっきりいえば騒々しい − 日々は
いつのことだったろう。

いつの間にか自分たちと変らないくらいの背丈となり、
今晩など、いっぱし大人ぶって食事をしていた島村家の双子の姉弟。

 − なんだか ・・・ 淋しいわ 

微笑みながらもちいさな吐息が漏れてしまった。


「 ・・・ お母さん ・・・ 」
キッチンのドアが小さく軋った。
すぴかが半分だけ、顔を覗かせている。

・・・なにか、あったの・・・?

その声音だけでフランソワ−ズは娘がどんな表情をしているかがわかった。
小学生、いや幼稚園に通うころから、
娘のすぴかは <ひみつのおはなし> があるときには必ず
寝る前にキッチンに来た。
そうっとキッチンのドアを少しだけ開けて、こそっと声を掛けるのだった。

オネショをしてしまったとき。 大事なハンカチを失くしてしまったとき。
忘れ物をして叱られちゃった・・・  宿題があるのを今思い出した・・・
お友達と喧嘩したの、仲直りしたいの。  すばるが<うるさいな>って意地悪なの。
・・・女の子の日、になったみたい・・・  〇〇君にあげるの、チョコレ−トの作り方教えて・・・
お母さんの国へ行っても・・・いい?

そんな沢山の<ひみつ>を打ち明けてきた娘の表情が
次々と母の脳裏に浮かんできた。

今度はなあに。 ・・・ あ・・ もしかして ・・・?

・・・どきん、と一つフランソワ−ズの胸が鳴った。
そうだ、もうそんな年頃なのだ、と気が付きいっそう慌ててしまった。
わたしが ジョ−と出合ったのもこの子とそんなに変らないころだった・・・
淡く染まった頬を気にしつつ、フランソワ−ズはさり気なく振り向いた。

「 あら。 まだ起きていたの? 」
「 うん。 あのね ・・・ ちょっと いい? 」
「 ええ・・・ リビングに行きましょうか。 」
「 ううん・・・ ここでいいわ。 」
姉娘のすぴかは 神妙な顔でキッチンにある丈の高いスツ−ルに腰かけた。
ふわり、と髪を掻き揚げる仕草がなんとなくジョ−に似ている。
その髪も、子供のころは母と同じ色だったが今はどちらかといえば父の髪色に近い。

「 ・・・ なあに。 オネショでもしたの? 」
「 やだあ、お母さんってば。 」
「 ふふふ・・・ それで、今日の<ひみつ>は何ですか。 」
「 ・・・あの、ね。 お母さんにあげるモノが ・・・ううん、返すものがあるの。 」
「 え? もう今日は沢山もらったわ、あなたからも、すばるやお父さんからも・・・ 」
今日は 1月24日、フランソワ−ズの誕生日である。
この日にあわせ、島村家では家族全員が久し振りで顔を揃え、
母のお祝いをしたのだ。
その楽しい雰囲気は まだ家全体に漂っている。

「 ・・・ これ。 」
「 ・・・ ? 」
母ゆずりの碧い瞳がじっとフランソワ−ズに注がれ、なにやら両手で包み込んでいるものを
すぴかはそうっと母の手に押し付けた。
「 なあに・・・ アクセサリ−、 ブロ−チね ・・・ ・・・えっ・・・ 」

するり、と渡されたアクセサリ−。
新品ではないが優雅な細工と宝玉の落ち着いた
煌きの取り合わせがエレガントである。
もっとよく見ようと 手を開いたその時・・・
フランソワ−ズの瞳は 大きく見開かれたまま
瞬きすら忘れてしまった。

  ・・・ まさ・・か。 似たデザイン? 
  いいえ、いいえちがうわ。
  だって ・・・ この、ここのちいさなキズは
 ・・・ わたしが・・・

フランソワ−ズの白い手が小刻みに震える。
掌のブロ−チも一緒にゆれ、気遣ったすぴかが両手で今度は母の手を包んだ。

「 ・・・ お母さん 」
「 ・・・ これ ・・・ どうして? どこ・・・で。 アンティ−ク・ショップ・・・ううん、
 ああ、蚤の市・・・? でも ・・・ どうして・・・ 」
「 お母さん 」
しどろもどろになり、自分の顔と掌の中を交互に見つめている母に、娘は静かに
語りかけた。

「 お母さん。 これ、お返ししてくださいって預かってきたの。 
 ある方 ・・・ ううん、 お母さんの姪にあたる方から。 ジャン伯父様のお嬢さん。 」
「 ・・・ すぴか 」
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