『　　お手をどうぞ　　―　（１）　―　』

******　　はじめに　　*****

このお話は　拙作　『　Ｏｕｒ　Ｐｒｉｍａ　ｄｏｎｎａ』　より以前の設定です。

　　ヴァ　－－－－－　　！！！

大型トラックは　ライトを煌々と照らして最後の角を曲がった。

「　ふん　・・・　あと　少し　か　・・・　　」

ハンドルを握りつつ　アルベルトはふと呟いた。

＜　あと少し　＞　で　配送センターの車庫に着く。

車を戻し　事務所に顔をだして報告書にサインをすれば、今回の仕事は終わる。

トラックによる長距離運送は慣れたものだが　やはり終了後はほっとする。

彼はちらり、と時計に視線を送った。

「　・・・　ああ　まだこんな時間なのか。　予定より早かったな・・・　

　ま　早めに解放されるってことだが　」

　　　キュウ　－－－－　　　大きな空の車体は次第に減速していった。

九月の声を聞くと　この町では午後はめだって短くなる。

午後の早い時間から　街灯が点り、店々は明かりをつけ家庭ではカーテンを引く。

秋とともに　長い長い夜が始まるのだ。

その夜の中を　大型トラックは抜けてゆく。

　　　夜長　・・・　か。　　気ままに過ごせるのもいいが　・・

一人の時間を過ごすには本とアルコールもなかなかの相棒だが　

なんとなく物足りない気もしてきた。

「　―　　毎年のことだが　・・・　長い夜はやはりあまり歓迎できんなあ　」

こっそり呟きつつ、　アルベルトは車をガレージに戻し事務所に寄った。

馴染みの事務員に　書類を差し出す。

「　あ～～　お疲れサン。　　・・・　はい　確かに。　」

「　じゃ　俺はこれで　」

「　いやあ～　アンタはいつも正確で確実なんで助かるよ。

　長距離ばっかりで悪いなあ～　と思うんだが　安心して任せられるんでねえ・・・　」

「　いや　仕事だから　」

「　そりゃそうだけどよ。　えっと　次は　」

「　―　　あ　　　休暇　とってもいいかい。　」

　　　あ？？　　なんで俺はこんなこと　言ってるんだ？？

「　え？？？　　休暇？？　アルベルト、アンタがかい？？　珍しいこともあるもんだ！　」

「　あ　・・・　いや　その　・・・　」

自分自身でも思わぬ発言をしてしまい、当の本人が一番驚いている。

「　いいぞ～～～　ず～～っと無理言って頼んできたからなあ～

　うん　・・・　しばらく短期の仕事が多いから　休め。　三週間くらい　いいぞ。　」

「　そうか。　それじゃ　・・・　すまんね。　」

「　そりゃこっちのセリフさ。　クリスマス・シーズン前にはまたびしばし

　長距離を転がしてもらうから～～　う～んとリフレッシュしてこいや　」

「　―　ダンケ　」

　　ガシ・・・・っと握手を交わして　事務所を出た。

　つう～～～ん　と　夜気が落ちてくる。

街灯の光が淡く滲む舗道を歩きつつ　ふ・・と暗い空を見上げた。

「　・・・　あ　は　　そうか　　　　俺は　あの空が　　あの青空が見たかったんだ　」

彼は故郷の街の夜の空の先に　あの　―　あっけらか～～んと晴れ上がった空を見ていた。

極東の小さな島国の　空。　　現在の彼にとっての　＜　家族　＞　の住まう地の空　　だ。

「　ふん　・・・　たまには　―　　いいかも　な。　　・・・　うん？　」

夜気の中に　ピアノの音が流れてきた。

かなり達者な弾き方なのだが　・・・

「　・・・　おい？　　ショパンをそんな風に弾いたら　彼が悲しむぞ？　」

弾き手はまだまだ勉強中、なのだろう。

「　ふん　・・・　まだまだ練習が足らん。　　弾きこみが　な。　」

通り過ぎつつ　ちょいと悪態をついてみたが　―　ふと　自分自身の手に目が落ちた。

黒い革手袋が馴染んだ　手。

　　　キシ。　　五本の指を開いて　また　閉じた。　

右はマシンガン　左は電磁ナイフ　―　００４の象徴にも近いその両手の指は

今は　＜　弾ける手　＞　に　再改造されている。

碁敵でもあるコズミ博士が　どうしても！　と改造してくれたのだ。

　―　これで　君もまた音楽の世界に戻れるじゃろう

アルベルトのピアノ歴を知った博士は大いに奨めてくれたけれど

　なぜか彼は躊躇しているままだ。

「　・・・　この手は。　相応しくない　さ　」

　　　キュ。　手袋を鳴らし、彼はその手を握りしめそして視界から外した。

「　ふん　・・・　ちょいと気分転換が必要だな。　」

角にまだ開いている煙草屋があった。

彼は足をとめ、お気に入りの銘柄一箱と絵葉書を一枚、買った。

アパートに戻る前、アルベルトはブランデンブルグ門の、いかにも～～な絵葉書を

ぽん、と近くのポストに放り込んだのである。

　カッタン　　―　　郵便受けは　かなり抵抗してからようやく開いた。

「　うわ　・・・　今日もたくさんねえ～～　えいっ！　」

フランソワーズは　両手にどさっと郵便物を受け止めた。

種々様々な印刷物が彼女の手の中に落ちてきた。

「　お～～　相変わらずダイレクト・メール　たくさんねえ～～～　

　読まれること、ほとんどないってわからないのかしら・・・　おっとっと・・・　」

大きさもまちまちな　＜　荷物　＞　を　慌てて抱えなおした。

「　メール全盛でも　やっぱり紙媒体のがいいわ　わたしは・・・

　あ　・・・　いつもの雑誌も来てる♪　うれしいわあ～～　」

　カタカタカタ　・・・　　庭サンダルを鳴らし、彼女は玄関へと戻っていった。

「　えっと？　ＤＭ類はこっちで　・・・　これは博士宛ね、学会の会報　か。　

　わたしの雑誌でしょ、　あ～～　これ　ジョーの車雑誌ね。　

　あとは　・・・　領収書に請求書に　っと。　あとは　―　　」

彼女はリビングのテーブルに　郵便物を置き、仕分けを始めた。

「　あら　これはジョーに　ね。　○×出版？　お仕事関係かしらね　」

　　ぽとん。　　今時　珍しいみたいな絵葉書が落ちた。

「　あら　・・・　絵葉書？　　まあ　アルベルトからだわ～～　　

　ギルモア邸の皆さんへ　ですって？　　読んでもいいわよね　・・・

　ふうん・・・？　　　あら♪　博士～～～　　アルベルトが来ますよぉ～～　」

フランソワーズは　笑顔で声を張り上げた。

「　ほう　・・・　珍しいのう～～　アイツが　・・・　」

「　ええ。　　久しぶりに日本の休日を楽しみたい、なんてねえ？　」

「　まあな　アイツもたまには息抜きがしたいんじゃろ。

　ここでなら　誰に気兼ねもなくのんびりできるしな。　」

「　うふふ～～～　アルベルトが　＜　気兼ね　＞　なんてします？　」

「　いやいや　・・・　アイツは案外気を使うタイプだと思うぞ？

　まあ　のんびりさせてやろうじゃないか。　」

「　そうですね～～　　あ　そうだわ！　お庭の樹の剪定を頼もうかしら。

　あと～～　温室の修理も頼みたいなあ　」

「　あはは　まあ　いい気分転換になるじゃろ、　めいっぱいコキ使っておやり。　」

「　はい　そうしますわ。　博士も研究室の模様替えとかお頼みになったら？　」

「　そうじゃなあ～　アイツは力持ちじゃからの　」

「　そうですよね～　　ジョーってば忙しい～～って全然手伝ってくれないんですもの。」

「　ふむ～　ジョーは今　仕事が楽しくて仕方ないのじゃろ。　いいことさ。　」

「　アルバイトだけどって言ってますけど　楽しそう　」

「　フランソワーズ、お前も楽しそうじゃないか。　　レッスンはどうかね。　」

「　うふふ　・・・　もう～～　クラス・レッスンに着いてゆくだけで大変なんです～～　」

「　ふっふっふ　頑張りなさい。　ステージを楽しみにしているよ。　」

「　まだまだですけど　・・・　でも　今とっても幸せす、わたし。　」

「　・・・・　」

香り立つティー・カップを挟み、　二人は静かに微笑みあった。

近々　ここに珍しい顔が加わることだろう。　　

数日後

　　パチン　　パチン　　・・・　剪定鋏の音が途切れ　途切れにひびく。

「あ　その隣の夏みかんもね　少し枝落としして？　」

「　なつみかん・・・　って　これか？　　」

脚立の上から　アルベルトは身を乗り出した。

地上では　フランソワーズがあちこち歩き回りつつ采配を振るう。

「　そうよ～～　ほら　ウチのマーマレードの材料になる木なの。　」

「　・・・　ああ。　　あのほろ苦いヤツな。　アレはウマいなあ　」

「　もともとこの土地に生えてた樹なのよ～～もうねえ　枝もなにもかも伸び放題だったの。

　余分な枝とか落としたら　たくさん実をつけるようになったのよ。　」

「　ほう？　それじゃ～　　来年の朝食のためにも　・・・　すこし手を入れるか。　」

「　お願いね～～　　あ　それからねえ、　柿がねそろそろ色づくの。　

　まだ早いかなあ～　ちょっと上の方を見ておいてね。　」

「　へいへい　」

「　え～と　・・・　あと栗も～　」

「　くり？　マロン、か？　そんな樹　あるのか？」

「　あ～ウチの庭じゃなくて　―　裏山なんだけど～見てきてくれる？　」

「　おいおい … ガキじゃね～んだぞ～裏山で木登りしろってのか～　」

「　・・・　いいじゃな～いたまには～～　それにね、栗は下に落ちてます。」

「　ふん　そういうことは　アイツに頼めよ。　」

「　・・・　ジョーってば最近帰りは遅いし朝はギリギリまで寝てるし　」

「　ふん　家事手伝わんのか　」

「　あ　ウウン家のことはやってくれるわ。　好きなんだって。

　でも庭仕事までは手か回らないみたいで　だから～～　お願い！　」

「　 … 畏まりました姫君」

「　ありがとう～～　今晩は肉ジャガにするわね！　」

「　へいへい　ありがとうございます。　」

アルベルトは　計画通り？いとも牧歌的な　の～～びりした日を過ごし始めていた　　のだが。

　―　ある朝。

「　・・・　おはよ～～～　」

ジョーがぼ～～～っとリビングに顔をだした。

「　おはよう。　へえ？　今日は休みか　」

「　あ　・・・　ううん～～　遅番なんだ。　だから　午後からで・・・　」

「　ほう？　そりゃよかったな。　　昨夜も遅かっただろ　」

ほい、　と　香たかい湯気を立ち上らせているカップがジョーの前に現れた。

「　わあ～～　ありがとう～～～　　ふ～～ん　・・・　あ　　おいし～～～～　　」

「　ふん　　どうせ日々　甘ったる～い液体を飲まされているんだろう？

　コーヒーと称して　さ。　」

「　ん～～～　・・・　え？　　　あ～～　フランのカフェ・オ・レのことかあ～

　あはは　・・・　ぼく　甘いの、大好きだからいいんだ。

　けど　・・・　あ～～～～　ウマ～～～～　」

ジョーは目を閉じ　しみじみ～～～　アルベルトのブラックを味わっている。

「　ふふん！　　オトコはブラックさ。　」

「　・・・　か　どうかはわかんないけど。　あ～～～　オイシイ～～～　」

　　　　ｒｒｒｒｒｒ　・・・　　リビングの固定電話が鳴った。

「　なんだ、こんな時間に・・・　ああ俺が出る　」

アルベルトはもうコーヒーを飲み終えていたし、気軽に食卓を立ち受話器をとった。

「　―　はろ～？　」

「　あ　アルベルト　！　　すぐ来て。　ジョー～～　　加速して彼をつれてきて！　

　あ！着替え～～～　忘れないで　　　え？どこって　稽古場よ！

すぐにね、朝のクラスに間に合わないわ！　　じゃあね！　」

「　は？　」

　―　電話の向こうでフランソワーズは一方的に喋りまくり　そして　一方的に切った。

「　―　なんだアイツ？　なにを言ってるのかさっぱりわからん。」

受話器を睨みつけ　静かに置いた途端　―

　　　ばさ。　　防護服が飛んできた。

「　うわ？？？　な　なんだ～～～　？　」

「　行くよアルベルトほら、君の着替え、このケースに入れて！　」

目の前にはジョーが小型のケースを手に立っている　―　防護服姿の臨戦態勢で。

「　！？？　ジョー　？？　どうなっているんだ～～　」

「　うん　だから今からすぐ出るから。　さっさと着替えてくれるかな。　」

「　はあ？？　」

「　フランのリクエスト、わかっただろ？　最高レベルで加速してゆくからね～～

　しっかり防護服、　着ておいてね。　」

「　出発・・・って　どこへだ　」

「　フランのとこ。　　だって稽古場に来てくれって言ってただろ？　」

「　あ　・・・・　ああ　　そんなこと言ってたな　」

００３ほどではないが　ジョーも超聴覚の持ち主、普通の電話くらい当たり前に聞きとれる。

「　博士～～　それじゃちょっと行ってきます～～　」

「　ああ　気を付けてな～　ああ　そのケースならマッハ５でも耐久性はるからな。　」

「　は～～い　　　じゃ　いいかい　アルベルト？　」

ジョーは　がしっと００４を背中に担ぎ上げた。

「　・・・　お前～～～　完全に尻に敷かれてるなあ　」

「　え　なに？　なにを敷いてあるって？　」

「　いや　・・　お前んちは将来　嬶天下だって言ったのさ。　」

「　？？？　　話は後さ。　ゆくよっ！　　」

　　　カチ　カチ　カチッ　！！！！　　　

微かな機械音が聞こえると　アルベルトの視界にはなにも映らなくなった。

　　くっそ～～～～　なんだってんだ～～～～～

ぶうぶう言いつつも　二人はフランソワーズの　＜　指示　＞　通りに

一路　彼女が通うバレエ団の稽古場を目指す。

普通なら　バスと電車とメトロを乗り継いでゆくのだが　―　

　　　　　　００９の加速装置全開！　ならあっと言う間なのだ。

　　　・・・　なんだってオレがこんな目に遭わんといかのだ～～～

マッハのスピードに耐えつつ　アルベルトは心の中で思いっきり毒づいたが

彼とて　断固として拒否をするわけではない。　いや・・・出来るワケがない。

　　―　そう　・・・　天下の００３には誰だって逆らえないのだ！

　　　　シュ　－－－－－－－　・・・　　！　　　００９は都心目指し突っ走る。

　　さて。　―　時間は少し遡る。

「　！　　だって代わりのピアニストさん、　頼んでくれたのでしょう？　」

その女性は抑えた声で　しかし苛立ちを隠せない様子だ。

「　はあ　・・・　それが急に海外留学が決まったとかで　・・・　」

「　・・・　それは　・・・　仕方ないわね。　でも　今朝のクラスはどうするの？

　私　機械の音では　クラスはしませんよ。　」

「　代わりの方を探します　・・・　すみません、先生。　」

「　今から？？　」

「　な　なんとか　・・・　！　」

不機嫌満載！　な　初老の女性の前で事務員風の男性はすっとんで逃げていった。

「　もう　・・・　！　時間ないのに　・・・　」

ここは都内の中規模なバレエ団。　伝統もあり、主宰するマダムの振付家として

そして指導者としての名声はこの業界では定評がある。

縁あって　フランソワーズはこのバレエ団でのレッスンに通っている。

毎朝、泣いたり笑ったり・・・　同じ道を志す仲間たちと汗を流す。

　　　　・・・　嬉しい　・・・！　また　踊れるなんて・・・　！

　　　　わたし　踊れるだけで　もう本当にシアワセよ　！

彼女は嬉々として崖っぷちの洋館から遠い道のりを通っているのだ。

「　おはよ～～～　ございます～～～　」

「　あ　フランソワーズ～～　おはよ～～　　早いじゃな～い　」

「　みちよ～～　おはよう～～　」

更衣室のドアを開ければ　仲良しになった同年輩の娘が着替えていた。

「　えへ・・・　わたし、いっつもぎりぎりだから・・　たまには早く来ようって

　思って　」

「　えらいね～～　ウチ　遠いのにね～　」

「　うふ・・・　覚悟の上だもん、わたし　ココが好きよ　」

「　み～んなそうだよ～～　先生に怒鳴れても　ココが好きなの。　」

「　そうよね！　　さ～～～て　今日も頑張るもんね～～　」

「　あ　今日から違うピアニストさんだよね　」

「　・・・　あ　そうね。　今までの方、もうすぐべべさんでしょ？　」

「　べべさん？　」

「　あ　赤ちゃんのこと　」

「　そうそう　もうこ～んなお腹でさあ　」

「　うふふ・・・　双子さんなんですってね？　いいわねえ～　　」

「　もう～～　お腹が邪魔で～～　手もこれ以上伸びないし～　鍵盤に届かないわ～って

　言ってたもんね～～　」

「　そうねえ。　　今度のピアニストさんはどんな方かしらね～　　」

二人はおしゃべりしつつ更衣室を出た。

「　・・・　あら？　」

「　なに　」

「　ほら　・・・　先生とオフィスの方　・・・　なにか心配ごとかしら。　」

「　あ～？　　さあ…　」

稽古場に入る前に　フランソワーズは奥の廊下でのボソボソ立ち話に気づいた。

　　　　？？　あら。　先生　深刻な顔・・・　なにかあったのかしら

思わずそっと耳を澄ませてしまった。

勿論　＜　耳　＞　なんか使わない。　日常生活ではまったく無縁のモノなのだから。

「　・・・　あ　おはよございます　　」

ふっとこちらを向いた先生と　目があったので、彼女はにこやかに挨拶をした。

「　ああ　　おはよう　　フランソワーズ。　」

「　あの・・・？　　なにか　・・・　あったのですか　」

「　う～～ん　・・・　ピアニストさんがねえ　見つからなくて

　・・・　ふふ　そうだわ　いつか　あなたの従兄の方　ほら　あの銀髪の方に

　弾いていただいたこと　あったわねえ　」

「　　あの！ピアニストいます！　」　　

「　え？？？　」

「　呼びます。　今　！　」

「　なんですって？？　」

「　あの！　今　あのぅ～前に臨時で弾いてくれたわたしの身内の　」

「　ええ　そうね、ヘル・アルベルトね？　」

「はい！ちょうどこっちに来てて … 　あの～～　ひ、曰比谷のホテルに泊まってます、

　今呼びますから！」

ちら・・・っと彼の渋面が脳裏に浮かんだが　―　強制的に消去した。

「　まあ本当？　彼のピアノ素晴らしかったわ～　はっきり覚えているわ。

　何より私の意思をすぐ汲み取ってくださるのが嬉しくて　・・・

　こんな方がウチのピアニストさんだったらなあ～～って思ったものよ。　」

「　彼　・・・　プロフェッショナルを目指していたんです　」

「　？？　勿論　プロの演奏家さんでしょう？

あでもお仕事で来日していらっしゃるのでしょう？それじゃ　・・・　」

「　いいえ～～ただの休暇ですから。　今呼びますね～

もしもし～　・・・あアルベルト？　」

フランソワーズは携帯を取りだすと先生の側を離れたが　

（　まさか　加速装置だの防護服だの・・　聞かせられないし！　）

すぐに　満面の笑みで戻ってきた。

「は～いオッケーですって先生～すぐ車できますって！」

「　まああ～奇跡だわ … ！」

「　うふふ　先生～～～　奇跡なんかじゃありませんわ。

　あ　・・・　わたし、ストレッチしなくちゃ・・・失礼します～～　」

フランソワーズは　スタジオに駆けてゆく。

「　ありがとう～～～　フランソワーズ　！　」

「　先生～～　ピアノ　弾くのはわたしじゃありませ～～ん♪　」

「　うふふ　・・・　そうね。　じゃ　最高に美味しいコーヒーでも用意しておきましょうか　」

マダムは上機嫌で　事務室に入っていった。

数分後　―　バレエ団の玄関からジャケットの襟を直しつつ銀髪の男性が足早に入ってきた。

微かにほんの少しだけ焦げ臭いニオイがしたが、殊更言い立てる者はいなかった。

よしんば気づいたとしても外で一服してきたのだろうと思っただけであだろう。

そのくらい　彼はごく自然に　当たり前に　出現した。

≪　アルベルト？　　ちゃんと間に合ったよね？　≫

≪　ああ。　お前の暴走のお蔭でな～～　≫

≪　暴走って・・・あれは最高レベルの加速だよ？　≫

≪　・・・　俺に加速装置が付いてなくてよかったよ！　≫

≪　？？　加速酔いでもしたの？　≫

≪　！　そんなもん、するか！　　ともかくお前はとっとと帰れ　≫

≪　ウン　この恰好じゃね～～　・・・　フランのこと、頼むね！　≫

≪　わかった　わかった　早く帰れ　≫

≪　うん。　じゃね～～　≫

そんなやりとりがあったとは　―　神様だってご存知ないだろう。

「あ～スミマセン～こちらに　・・・・　」

銀髪の男性は　少しぎこちない日本語で受付に声をかけた。

Last updated : 10,06,2015. index / next

*********　　　途中ですが

短くてすみませぬ～～～　<m(__)m>

ワタクシ的には　００４は　ピアニストさんなんです♪

後半は　我らがジョー君　・・・・？